ドリーム (2016年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ドリーム
Hidden Figures
監督 セオドア・メルフィ
脚本 セオドア・メルフィ
アリソン・シュローダー
原作 マーゴット・リー・シェタリーHidden Figures
製作 セオドア・メルフィ
ファレル・ウィリアムス
ピーター・チャーニン
ドナ・ジグリオッティ
ジェンノ・トッピング
出演者 タラジ・P・ヘンソン
ジャネール・モネイ
オクタヴィア・スペンサー
ケビン・コスナー
音楽 ファレル・ウィリアムス
ハンス・ジマー
ベンジャミン・ウォルフィッシュ
撮影 マンディ・ウォーカー
編集 ピーター・テッシュナー
製作会社 フォックス2000・ピクチャーズ
レヴァンティン・フィルムズ
チャーニン・エンターテインメント
TSGエンターテインメント
配給 アメリカ合衆国の旗 日本の旗20世紀フォックス
公開 アメリカ合衆国の旗2016年12月25日(限定公開)
アメリカ合衆国の旗2017年1月6日(拡大公開)
日本の旗2017年9月29日
上映時間 127分[1]
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $25,000,000[2]
興行収入 世界の旗$229,321,121[3]
テンプレートを表示

ドリーム』(原題:Hidden Figures)は2016年にアメリカ合衆国で公開された伝記映画である。本作はマーゴット・リー・シェタリーのノンフィクション小説『Hidden Figures』を原作としている。監督・脚本はセオドア・メルフィが、主演はタラジ・P・ヘンソンが務めた。本作は第23回全米映画俳優組合賞キャスト賞を受賞するなど極めて高い評価を得た[4]

概略[編集]

1961年のバージニア州ハンプトン。アメリカ南部において、依然として白人と有色人種の分離政策が行われていた時代。優秀な黒人女性のキャサリンは、同僚のドロシーとメアリーと共にアメリカ南東部のラングレー研究所計算手として働いていた。

ソ連の人工衛星打ち上げ成功を受けて、アメリカ国内では有人宇宙船計画へのプレッシャーが強まっていた。そんな中、キャサリンは上司のミッチェルからスペース・タスク・グループでの作業を命じられた。図らずも、キャサリンはグループ初の黒人でしかも女性スタッフとなったのだが、彼女は職場の建物に黒人向けのトイレがないなどの劣悪な環境に苦しめられることとなった。

キャサリンに対する同僚の反応は酷いもので、エンジニアを総括するポールに至っては露骨に嫌な顔をし、計算部の代理スーパーバイザーであるドロシーは自身の昇進を願い出ていたが、ミッチェルに前例がないという理由で断られていた。また、メアリーは実験用の宇宙カプセルの耐熱壁に欠陥があることに気がついていたが、上司からのエンジニアへ転身する勧めを「女で黒人でエンジニアになることはできない」として受け入れられなかった。

本作はこの3人の黒人女性が偏見や差別と戦いながら、いかにして科学史に残る偉業であるマーキュリー計画の達成に貢献したかを描き出した作品である。

キャスト[編集]

※括弧内は海外版DVDに収録されている吹替キャスト。

製作[編集]

2015年7月9日、ドナ・ジグリオッティはマーゴット・リー・シェタリーのノンフィクション小説を映画化する権利を購入したと報じられた[5]。脚本を執筆したアリソン・シュローダーはケープ・カナベラルの出身で、祖父母はNASAで働いていた人物で、自身もNASAでのインターン経験のある人物であった[6]。企画を煮詰める過程で、セオドア・メルフィはシュローダーの脚本に修正を加え、3人の黒人女性が如何にしてキャリアと私生活の両立を図ったかという点に焦点を当てるようなストーリーにした[6]。製作サイドは3人の黒人女性を演じる女優として、オプラ・ウィンフリーオクタヴィア・スペンサータラジ・P・ヘンソンヴィオラ・デイヴィスらに目を付けていた[5]

2016年2月10日、FOXはキャサリン・ジョンソン役にヘンソンを起用すると発表した[7]。17日、ドロシー・ヴォーン役にスペンサーが選ばれたとの報道があった[8]。3月1日、ケビン・コスナーの出演が決まった[9]。3月下旬にはジャネール・モネイ、クリスティン・ダンスト、グレン・パウエル、マハーシャラ・アリらの出演が決まっていった[10][11][12]。4月1日には、ジム・パーソンズが本作に出演するとの報道があった[13]

本作の主要撮影は2016年3月初頭にジョージア州アトランタにあるモアハウス大学で始まった[14]。撮影はドビンス空軍基地内にあるロッキード・マーティン・エアロニュークスの施設でも行われた[15]

興行収入[編集]

2016年12月25日、全米25館で本作の限定公開が始まり、51万ドル余りを稼ぎ出した[16]。翌年1月6日から始まった拡大公開の初週末には2280万ドルを稼ぎ出し、全米興行収入ランキング1位となった[17]

史実との相違点[編集]

本作は1961年のNASAを舞台にした作品であり、当時のNASAに白人用の設備と黒人用の設備が存在したかのように描かれている。しかし、1958年にアメリカ航空諮問委員会(NACA)アメリカ航空宇宙局に改組された際、そうした差別的な設備は取り払われた。また、劇中のドロシー・ヴォーンは昇進願いを却下されているが、実際のヴォーンは1949年の段階でスーパーヴァイザーに昇進している[18]

劇中でメアリー・ジャクソンは工学の学位を得ようと奮闘する女性として描かれているが、実際のジャクソンは1958年の段階で工学の学位を修得し、エンジニアの職を得ている[19]。また、劇中でキャサリン・ジョンソンは1961年にNASAに配属されたことになっているが、実際のジャクソンは1953年の段階でNASAの前身であるNACAに配属されている[20]

劇中では、アル・ハリソンがTSGの責任者であったとされているが、実際のTSGの責任者はロバート・ギルラスであった。これは複雑な人間関係を分かりやすくするための処置であった。ヴィヴィアン・ミッチェルとポール・スタフォードは実在の人物ではなく、当時のスタッフの行動及び価値観を分かりやすい形で反映したキャラクターとなっている。なお、カール・ジーリンスキーはメアリー・ジャクソンのメンターであったカジミェシュ・クザルネッキをモデルにした人物である[21]

ジョン・ハーシェル・グレンがジョンソンにIBMの計算が正しいかどうか確かめて欲しいと依頼するシーンがあるが、現実のジョンソンはそのシーンの数日前から検算に取り組んでいた[22]

評価[編集]

本作は批評家からも観客からも極めて高い評価を受けている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには171件のレビューがあり、批評家支持率は92%、平均点は10点満点で7.6点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「観客が喜ぶであろう心温まる雰囲気の中で、『ドリーム』はアメリカ史から見落とされてきた人々による重大な貢献を周知している」となっている[23]。また、Metacriticには43件のレビューがあり、加重平均値は74/100となっている[24]。なお、本作のシネマスコアはA+となっている[25]

IGNサイモン・トンプソンは本作に10点満点中9点を与え、「『ドリーム』は魅力を引き出す演出によって、忘却の彼方に追いやられた―そこまでは行かなくとも、多くの人々に知られていない―黒人女性たちを見事に描ききっている。俳優陣による上質の演技と優れた物語によって、本作は観客の時間と金、注目を得るに値する娯楽映画になっている」と評している[26]。『ボストン・グローブ』のタイ・バールは「『ドリーム』は実在した3人の女性たちと彼女たちを演じる3人の女優のおかげで見事な作品になっている。何より良いのは、この映画を見ることで、キャサリン・ジョンソン、ドロシー・ヴォーン、メアリー・ジャクソンの業績を知ることが出来るということだ。この映画が後世に残ることで、私たちの子孫もこの3人の功績を知ることが出来るのだ。」と述べている[27]

キャサリン・ジョンソンは「よく出来た映画でした。主演3人は私たちを見事に演じきっていると思います」と述べている[28]

日本語題に関して[編集]

当初、本作の日本語題は『ドリーム 私たちのアポロ計画』と発表された。しかし、「マーキュリー計画を扱った作品なのに、なぜアポロ計画なのか」という主旨の批判がSNS上で相次いだ[29]。こうした批判に対し、日本での配給を担当する20世紀フォックスは、「日本の観客に広く知ってもらうための邦題として、宇宙開発のイメージを連想しやすい『アポロ計画』という言葉を選んだ」「ドキュメンタリー映画ではないので、日本人に伝わりやすいタイトルや言葉を思案した結果」とコメントした[30]。また、この件に関して尋ねられたメルフィ監督はTwitterで「私も何故こうなったのか分かりません。問い合わせてみますが、(日本語題を)変更するにはもう遅すぎると思います。」とコメントした[31]

2017年6月9日、こうした批判を重く見た20世紀フォックスは日本語題を『ドリーム』に変更すると発表した[32][33]

出典[編集]

  1. ^ HIDDEN FIGURES”. 2017年2月7日閲覧。
  2. ^ Fall 2016 Director's Profile: Ted Melfi”. 2017年2月7日閲覧。
  3. ^ Hidden Figures”. 2017年5月11日閲覧。
  4. ^ NASA躍進を支えた黒人女性の実話!作品賞にあたるアンサンブル賞に!”. 2017年2月7日閲覧。
  5. ^ a b Ted Melfi & Fox 2000 In Talks For ‘Hidden Figures’; How A Group Of Math-Savvy Black Women Helped NASA Win Space Race”. 2017年2月7日閲覧。
  6. ^ a b Hidden Figures: “A Mathematical Juggling Act””. 2017年2月7日閲覧。
  7. ^ Taraji P. Henson to Play Math Genius in New Film ‘Hidden Figures’”. 2017年2月7日閲覧。
  8. ^ Octavia Spencer to Play Mathematician Opposite Taraji P. Henson in ‘Hidden Figures’ (EXCLUSIVE)”. 2017年2月7日閲覧。
  9. ^ Kevin Costner Joins Taraji P. Henson, Octavia Spencer in ‘Hidden Figures’ (EXCLUSIVE)”. 2017年2月7日閲覧。
  10. ^ Janelle Monae Joins Taraji P. Henson, Octavia Spencer in Fox 2000’s ‘Hidden Figures’ (Exclusive)”. 2017年2月7日閲覧。
  11. ^ Kirsten Dunst Joins Ted Melfi-Directed ‘Hidden Figures’ At Fox 2000”. 2017年2月7日閲覧。
  12. ^ Ted Melfi’s ‘Hidden Figures’ Adds Glen Powell & Mahershala Ali”. 2017年2月7日閲覧。
  13. ^ Jim Parsons Joins Ted Melfi’s ‘Hidden Figures’ For Fox 2000”. 2017年2月7日閲覧。
  14. ^ On the Set for 3/11/16: Taraji P. Henson & Octavia Spencer Team Up for ‘Hidden Figures’ While Jordan Peele, Allison Williams & Catherine Keener Wrap ‘Get Out’”. 2017年2月7日閲覧。
  15. ^ What’s Filming in Atlanta Now? Baby Driver, Hidden Figures, and Thank You for Your Service”. 2017年2月7日閲覧。
  16. ^ December 23-25, 2016”. 2017年2月7日閲覧。
  17. ^ January 6-8, 2017”. 2017年2月7日閲覧。
  18. ^ Dorothy Vaughan Biography”. 2017年2月7日閲覧。
  19. ^ Mary Jackson Biography”. 2017年2月7日閲覧。
  20. ^ Katherine Johnson Biography”. 2017年2月7日閲覧。
  21. ^ Modern Figures: Frequently Asked Questions”. 2017年2月7日閲覧。
  22. ^ 'Hidden Figures': When did John Glenn ask for 'the girl' to check the numbers?”. 2017年2月7日閲覧。
  23. ^ Hidden Figures (2017)”. 2017年2月7日閲覧。
  24. ^ Hidden Figures”. 2017年2月7日閲覧。
  25. ^ ‘Hidden Figures’ Outsmarts ‘Rogue One’ For Weekend Win”. 2017年2月7日閲覧。
  26. ^ Hidden Figures Review”. 2017年2月7日閲覧。
  27. ^ Hidden Figures”. 2017年2月7日閲覧。
  28. ^ Q&A: Our interview with Katherine G. Johnson, the real-life mathematician who inspired 'Hidden Figures'”. 2017年5月1日閲覧。
  29. ^ エピローグでアポロ計画に言及されるのは間違いないが、ストーリーのメインはマーキュリー計画である
  30. ^ タイトルと内容が違う…?大ヒット映画の邦題「私たちのアポロ計画」に批判の声 配給会社に聞く”. 2017年6月8日閲覧。
  31. ^ 2:58 - 2017年6月7日 by Theodore Melfi”. 2017年6月8日閲覧。
  32. ^ 「ドリーム 私たちのアポロ計画」日本語題変更 「ドリーム」に”. 2017年6月9日閲覧。
  33. ^ 19:36 - 2017年6月9日 by20世紀フォックス”. 2017年6月9日閲覧。

外部リンク[編集]