ササニシキ

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ササニシキは、イネ品種の1つである。水稲農林150号、旧系統名東北78号。

概要[編集]

ササニシキは宮城県古川農業試験場ハツニシキ(奥羽224号)とササシグレの掛け合わせにより誕生した(実際には「農林22号」と「農林1号」との交配試験米とササシグレの掛け合わせ)。「農林22号」と「農林1号」の交配でできたコシヒカリとは兄弟親戚品種に当たる。

コシヒカリと比較すると、ササニシキはアミロース含有量が多いため相対的にはあっさりしており和食に向くが、好みの分かれる米とも言われる[1]。寿司酢をいれてもべたべたしないため寿司職人が好み、寿司店によってはササニシキの使用をセールスポイントにしている。このため一般消費者より寿司屋への供給が多い。

かつてササニシキはコシヒカリと共に「両横綱」と呼ばれた人気品種で、ピーク時の1990年(平成2年)には作付け面積が20万7438ヘクタールに達し、コシヒカリに次いで日本国内第二位の作付け面積になっていた。しかし耐倒伏性、いもち病抵抗性に弱く、気象被害も受けやすいという短所があり、1993年米騒動を引き起こした1993年(平成5年)の冷害では大きな打撃を受けた[2]。そのため、冷害に強い品種であるひとめぼれへ転換されてササニシキの作付面積は大幅に減少した。

いもち病への抵抗性を高めたササニシキBL(ささろまん)という派生品種もあるが、開発地の宮城県以外ではほとんど栽培されていない。また宮城県はつや姫などの他品種を奨励品種としており、2013年(平成25年)にはササニシキの作付面積が3000ヘクタールまで減少していた。しかし誕生50周年に合わせて開発地である古川農協がササニシキの生産拡大に乗り出した他[3]2015年(平成27年)には宮城県内に工場を置くキリンビール一番搾りの限定版に副材料としてササニシキを採用している[4]

2017年(平成29年)、宮城県におけるササニシキの作付面積はひとめぼれ、つや姫に続く3位に後退した。しかし、一定の需要があるためササニシキ系の「東北194号」と共にササニシキの栽培に乗り出す農家もあり、宮城県では、ひとめぼれ、だて正夢、ササニシキを柱にしたブランド化戦略を推進している[5]

歴史[編集]

1953年(昭和28年)に宮城県の古川農業試験場で、後に「ハツニシキ」と呼ばれることになる「奥羽224号」と「ササシグレ」の掛け合わせが行われ、1955年(昭和30年)にこの雑種第2代において個体選抜が行われた。この品種改良の当初の目標は稲麦二毛作で用いる晩植用の多収穫品種の実現にあったが、稲麦二毛作は次第に行われなくなってきており、やがて普通栽培用の多収穫品種育成へと目的が変化していった。選抜された個体は1960年(昭和35年)に「東北78号」として関係各県で適応性の試験に供された後、1963年(昭和38年)に「水稲農林150号」として登録、「ササニシキ」と命名されて、宮城県における奨励品種となった。ササニシキの名称は、交配の元の品種であるササシグレとハツニシキからそれぞれ取られたものである[6]

ササニシキは、当時東北地方で広く栽培されていたササシグレに比べて収穫量が8パーセント多かった。またササシグレに比べていもち病抵抗性と耐倒伏性もやや強かった。玄米の品質においてもササニシキがササシグレを上回っていた。食味の良さについてはササシグレの方が優れていたが、当時は収穫量の多さが重要視されていた時代だったことから、この点はそれほど問題にはならなかった。多収穫品種として開発されたササニシキだったが、良質良食味品種として市場で評価され、作付面積を拡大することになった。ササニシキは宮城県の他に岩手県福島県秋田県山形県群馬県千葉県神奈川県山梨県で奨励品種として扱われ、1985年(昭和60年)には作付面積19万8800ヘクタールに及ぶに至り、この時にコシヒカリに次ぐ作付面積日本国内第2位に躍り出た[6]

一方で、昭和40年代頃から気象変動が大きくなったことから、ササニシキは度々いもち病を発症するようになり、またその品質が不安定になるという問題が起こるようになっていた。1980年(昭和55年)から1983年(昭和58年)にかけて続けて起こった冷害で、ササニシキは大きな打撃を受け、その市場評価は低下した。この時は銘柄米として栽培が続けられたが、1993年(平成5年)の冷夏による不作と翌年の高温多雨による品質低下によって、ササニシキはその市場評価を失い、その後急速に耐冷性のある「ひとめぼれ」に取って代わられることになった[6]

ササニシキと同等の品質を持ちながらいもち病に強い品種を実現しようとする試みは、古川農業試験場で1977年(昭和52年)から取り組まれていた。この取り組みで育成された品種は1994年(平成6年)に農林水産省に新品種「水稲農林同質327号」として登録された。これは「ササニシキBL」とも呼ばれ、実用的な多系品種としては世界の中でも先駆的な例だった。ササニシキと同質と認められている事から、ササニシキBLをササニシキの銘柄で流通させる事も可能だった。しかし、この頃はちょうど平成の米騒動などの影響によってササニシキの市場評価が失われていた時期に当たり、この新品種はササニシキとの差別化のために「ささろまん」の銘柄で販売されることになった[7]

系譜[編集]

交配系譜[8][9]
東北24号
 
農林8号
(近畿15号)
 
農林1号
(北陸4号)
 
農林22号
(近畿34号)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
東北54号
(ササシグレ)
 
 
 
 
 
 
奥羽224号
(ハツニシキ)
 
農林100号
越南17号
(コシヒカリ)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
農林150号
東北78号
(ササニシキ)

脚注[編集]

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参考文献[編集]

  • 古川市史編さん委員会 『古川市史』第4巻 産業・交通 大崎市、2007年。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]