カツラ (植物)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カツラ
Cercidiphyllum japonicum UW.JPG
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
: ユキノシタ目 Saxifragales
: カツラ科 Cercidiphyllaceae
: カツラ属 Cercidiphyllum
: カツラ C. japonicum
学名
Cercidiphyllum japonicum Siebold et Zucc. ex Hoffm. et Schult.[1]


Cercidiphyllum japonicum
Sieb. & Zucc.[2]

和名
カツラ

カツラ(桂[3]学名: Cercidiphyllum japonicum)は、カツラ科カツラ属の落葉高木。別名、トワダカツラ。ハート形の葉が特徴的で、秋に黄葉して落葉した葉はよい香りを放つ。樹形の美しさから庭木や街路樹にされるほか、材から家具、碁盤、将棋盤が作られる。

名称[編集]

和名カツラは葉の香りに由来し、落葉した葉は甘い香りを発することから、香りが出ることを意味する「香出(かづ)る」が名前の由来といわれている[4][5]。別名ではトワダカツラ[1]ともよばれる。

中国植物名は、「連香樹」と書かれる[1]。中国の伝説では、「桂」は「月の中にあるという高い理想」を表す木であり、「カツラ(桂)を折る」とも用いられる。しかし中国で言う「桂」はモクセイ(木犀)のことであって、日本と韓国では古くからカツラと混同されている(万葉集でも月にいる「かつらをとこ(桂男)」を歌ったものがある)。

分布・生育地[編集]

日本北海道本州四国九州の各地[3]中国朝鮮半島に分布する。街路樹や公園樹に利用され、アメリカなどでも植栽されている。日本で自生するものはブナ林域などの冷温帯の渓流などに多く見られる[6]。水際に多く自生し、湿地を好む典型的な樹種で、日当たりの良い乾いた尾根ではほとんど見られない[7]。カツラの大木の下には、必ず水脈があるといわれた[5]

日本においては、奥入瀬渓谷奥日光奥多摩丹沢上高地芦生の森などで見られるが[7]、山形県最上郡最上町にある「権現山の大カツラ」が最も太く[8]、地上から約1.3メートル (m) の位置での幹周が20 m近くにまで成長している[注釈 1]。北海道にはカツラの人工林も見られる[5]

形態・生態[編集]

落葉広葉樹大高木で、高さはふつう20 - 25メートル (m) [3]、高いものは30 mほどで[7]、樹幹の直径は2 mほどにもなる[5]。幹は直立し、1本立ちのものから株立ちのものもある[3]。寿命は長く、成長すると主幹が折れ、根元からたくさんの「ひこばえ(萌芽)」を伸ばし、株立ちするものが多い[7]。樹形は幹がまっすぐに立ち、整った三角形を呈する[4]樹皮は灰褐色で、はじめは滑らかであるが、生長に従い縦に浅く割れ目が入り、薄く剥がれる[4][7][9]。一年枝は濃褐色や赤褐色で無毛で、皮目が多く、短枝もよくできる[9]。幼木の樹皮は赤褐色で、縦長の皮目が点在する[9]

花期は3 - 5月で[9]雌雄異株である[3]。早春のころ、葉が出る前に花被片花弁)がない独特な形状の目立たない薄紅色のが開き、そのあとに黄色く色づいたが芽吹く[3][7][5]雌花は、細長い角のような紅紫色の雌蕊が3個から5個突き出し、柱頭は糸状で紅色[3]雄花は、紅紫色の細長い雄蕊を十数本ぶら下げ、葯は紅色[3]。果期は10月[3]果実袋果が集まってつく[3]。冬の枝に果実がついていることも多く、袋果の中には翼のある種子がたくさん詰まっている[9]

対生し、小枝の両脇に隙間なく並んでいる[7]葉身は長さ4 - 10センチメートル (cm) ほどのハート形の広卵形[3][7]、もしくはハート形に似た円形[5]。若い枝ではハート形よりも細長い葉もでる[10]葉柄の付け根から7 - 9本に分かれて放射状に広がる葉脈が良く目立つ[11]。葉縁は波型の鋸歯がありギザギザではない[11]葉柄は、細長く2 - 2.5 cm[11]。葉の裏面は粉白色[5]。秋(10月上旬 - 下旬)には、黄色から褐色、時にオレンジ色に黄葉して美しい[3][7]。側脈は葉縁までは伸びていない[11]。落葉して葉が乾燥すると、甘い香り(カラメルのような良いにおいに似ている)を発するが、匂いを発するのは落葉した直後だけで、都市部に植えられたカツラには匂いを発しないものもある[4]

冬芽は枝に対生し、円錐状卵形で、芽鱗は2枚のうち外側の1枚が冬芽全体を覆って裏側で重なる[9]。短枝に側芽がつき、短枝が発達すると側芽は内側に曲がる[9]。枝先には仮頂芽が2個つき、赤褐色や紅紫色をしている[9]。冬芽の下にある葉痕は三日月形からV字形で、維管束痕は3個ある[9]

植栽[編集]

生長が速く、日なたから半日陰を好み、根を深く張る性質で、砂壌土で湿りがちな土壌に植える[12]。植栽にすると、春の芽出しから新緑、秋の黄葉まで楽しむことができ、幹はまっすぐで、左右対称に枝が広がる端正な樹形と、優しい雰囲気のある枝先の葉から人気がある[12]。夏の暑さにはやや弱い以外は丈夫な樹種で、剪定にもよく耐える[12]。植栽期は12月中旬 - 3月上旬、施肥は8月 - 9月に行い、剪定は1 - 2月に枝を間引く程度に行う[12]

利用[編集]

桂の無垢一枚板

用途として、庭木街路樹公園樹として植えられるほか、整った樹形からシンボルツリーとして広場やビルの中庭に植えられることもある[4][5]。材は香りがよく、広葉樹の中では材質は腐りにくくて耐久性があり[13]、軽くて柔らかく加工しやすい上、狂いがない特性を持っている[5]。建築、家具、鉛筆、碁盤将棋盤など様々な用途の生活用品に使われる[5][注釈 2]。ただし、近年は市場への供給が減っており、貴重な木材となりつつある。ヒノキの生えない東北地方では、木彫りの用材にもなった[5]

秋に黄葉するとよい香りがする葉から、抹香を作る[5]。桂皮(シナモン)は、同じ桂の字を使うがクスノキ科の異種の樹皮である。

文化[編集]

日本では直立する幹が仏像の一本づくりに使われたことから、カツラの前で手を合わせる習慣もある[13]

カツラの花言葉は、「不変」とされる[5]

著名なカツラ[編集]

国の天然記念物[編集]

  • シダレカツラ(岩手県盛岡市)
  • 赤津のカツラ(福島県郡山市)
  • 糸井の大カツラ(兵庫県朝来市)
  • 海潮のカツラ(島根県雲南市)
  • 竹崎のカツラ(島根県仁多郡奥出雲町)
  • 鎮西村のカツラ(福岡県飯塚市)
  • 下合瀬の大カツラ(佐賀県佐賀市)

その他[編集]

市町村の木に指定されている自治体[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 環境省調査による
  2. ^ ただし、最高級品とされるカヤに比べると、色は茶色が強く安値である。また6寸を超える厚盤はとりにくい。値段は榧の薄い脚付き盤(板目木表盤)と同じくらいになる。

出典[編集]

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cercidiphyllum japonicum Siebold et Zucc. ex Hoffm. et Schult.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月5日閲覧。
  2. ^ "Cercidiphyllum japonicum". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2012年8月20日閲覧
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 27.
  4. ^ a b c d e 林将之 2008, p. 43.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 田中潔 2011, p. 50.
  6. ^ 岡山理科大学 総合情報学部 生物地球システム学科 植物生態研究室 植物雑学事典『カツラ』”. 2012年8月20日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i 松倉一夫 2009, p. 20.
  8. ^ 日本の巨樹・巨木 権現山の大カツラ”. 2012年8月20日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 215.
  10. ^ 林将之 2008, p. 42.
  11. ^ a b c d 松倉一夫 2009, p. 21.
  12. ^ a b c d 正木覚 2012, p. 46.
  13. ^ a b 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 111.

参考文献[編集]

関連項目[編集]