桂男

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呉剛
Yoshitoshi - 100 Aspects of the Moon - 26.jpg
つきのかつら、呉剛(月岡芳年画)
各種表記
繁体字 吳剛
簡体字 吴刚
拼音 Wú Gāng
ラテン字 Wu Kang
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桂男(かつらおとこ)とは、に住んでいるとされる伝説上の住人、または日本妖怪。前者の意味から「桂男」は「美男」のことをさす慣用句としてもつかわれる。

概要[編集]

中国代に編まれた『酉陽雑俎』によれば、桂男は呉剛という名の人間で、仙法を学んだ罪で月にある月宮殿という大宮殿で500丈(約1500メートル)もの高さのの木(モクセイのことをさす)を伐っているという。月宮殿で桂男が桂の木を伐っているという伝説は早い時期から日本にも伝わっており、平安時代の私撰集『拾遺抄』にも「久かたの月の桂もをるばかり家の風をもふかせてしがな」という歌がある[1]。月と桂(かつら)は古くから文学上でも結びつけられており、『万葉集』では「目には見て手には取らえぬ月の内の桂のごとき妹をいかにせむ」と詠まれている[2]

伊勢物語』の中では、後の中宮となる藤原徳子と恋をした美男として知られる在原業平(ありわらのなりひら)に比される主人公に対し万葉集の歌を踏まえて月の桂のように余人が触れてはならぬ人に通じた男という含みを持たせて「桂男の君のような」という表現を行って以来、日本文学において「桂男」は単に美男のことも指すようにもなった。

妖怪としての桂男[編集]

竹原春泉画『絵本百物語』より「桂男」

桂男は江戸時代の奇談集『絵本百物語』にも描かれており「月の中に隅あり。俗に桂男という。久しく見る時は、手を出して見る物を招く。招かるる者、命ちぢまるといい伝う。」などとあり、「見るたびに 延びぬ年こそうたてけり 人のいのちを月はかかねど」という歌があるとして紹介している[3]

和歌山県東牟婁郡下里村(現・那智勝浦町)に桂男と呼ばれる妖怪の伝承があったと記録されている。満月ではないときに月を長く見ていると、桂男に招かれて命を落とすことにもなりかねないという[4]

桂男は月の兎と同様に、もとはインドの説話が中国を経て伝わったものだともいわれるが、日本神話では月の神であるツクヨミ保食神(うけもちのかみ)を殺害したといわれることから、月の神に死のイメージが伴っている。桂男に招かれて寿命が縮まるという説は、そのような伝説・神話が重なって付与されたのではないかと考えられている[1]

備考[編集]

日本の忍者が用いたと伝えられた忍術にも「桂男の術」という術がある。平時より敵陣に自分たちの味方となる忍者を忍ばせて様々な活動をさせるものであり、敵陣にいる自軍の忍者を、月にいる桂男に例えて呼んだものである[5]

桂男にちなんだ作品[編集]

小説

脚注[編集]

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  1. ^ a b 『竹原春泉 絵本百物語 -桃山人夜話-』 多田克己編、国書刊行会1997年6月24日、171頁。ISBN 978-4-336-03948-4
  2. ^ 《新版 万葉秀歌365ふばこ》10月”. 三陸書房 (2006年). 2016年9月12日閲覧。
  3. ^ 多田編 1997, p. 114.
  4. ^ 村上健司編著 『日本妖怪大事典』 角川書店〈Kwai books〉、2005年7月16日、95頁。ISBN 978-4-04-883926-6
  5. ^ 奥瀬平七郎 『忍法 その秘伝と実例』 新人物往来社1995年9月6日、新装版、123-127頁。ISBN 978-4-404-02242-4