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鏡の国のアリス

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鏡の国のアリス

鏡の国のアリス』(かがみのくにのアリス、: Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)は、『不思議の国のアリス』の続編として、1871年ルイス・キャロル(本名:チャールズ・ラトウィジ・ドジスン)によって書かれた児童文学である。原題を直訳すると「姿見を抜けて、そこでアリスが見つけた(見いだした)もの」となる。先述の『不思議の国のアリス』と本作は両編の要素を組み合わせた映像化が何度も行われている。

この作品の中には、対称や時間の逆転などを含めた、多くののテーマがある。

前作『不思議の国のアリス』が夏の日の物語であるのに対して、この物語はイギリスの冬の風物詩である「ガイ・フォークスの日」(11月5日)の前日から始まる。

チェス

『不思議の国のアリス』ではトランプの一組がテーマであったが、『鏡の国のアリス』はチェスの勝負に緩やかに基づいている。

前作に続いて登場する人物

帽子屋三月ウサギが、ハッタ(Hatta)とヘイヤ(Haigha)として姿を見せる。

目次

  • 第1章/鏡の向こうの家 “Looking-glass house” 
  • 第2章/生きた花の庭 “The Garden of Live Flowers”
  • 第3章/鏡の国の虫たち “Looking-glass Insects”
  • 第4章/トウィードルダムとトウィードルディー “Tweedledum and Tweedledee”
  • 第5章/羊毛と水 “Wool and Water”
  • 第6章/ハンプティ・ダンプティ “Humpty Dumpty”
  • 第7章/ライオンとユニコーン “The Lion and The Unicorn”
  • 第8章/ぼくの発明 “It's my own Invention”
  • 第9章/女王様アリス “Queen Alice”
  • 第10章/ゆすぶると “Shaking”
  • 第11章/目が覚めて見ると “Waking”
  • 第12章/夢を見たのはどっち “Which Dreamed It?”

注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


あらすじ

ガイ・フォークス(イギリスの祭日)の前の寒い日にアリスは暖炉の前で子猫と遊んでいた。いつものように子猫と空想遊びをしていたアリスは、暖炉の上に掛けられた大きな鏡が通り抜けられるような気がしたかと思うと、次の瞬間には鏡を通り抜けて向こう側の世界に抜け出ていた。アリスはそこで「ジャバウォックの詩」という、鏡に映さないと読めない鏡文字の本を見つける。鏡の中の家を出て、庭に入ったアリスは、おしゃべりをする花たちに、花と間違えられてしまう。さらに、その庭でアリスが出会った赤の女王は、アリスがチェスの試合で8番目の列まで動けば、アリスを女王にしてあげよう(プロモーションのこと)と持ちかける。アリスは白の女王の小さい娘の代わりにポーンとなって、チェスのポーンが最初の1手で2マス動けるように、4番目の列への列車に乗ってゲームを始める。

それからアリスは、トウィードルダムとトウィードルディー[1]と出会う。「セイウチと大工」という長い詩を暗誦した2人は、マザーグースの詩通りに決闘をはじめてしまう。アリスは続けて白の女王と会うが、白の女王はぼうっとしたままで、最後には羊に変身してしまう。

次の章で、塀から落ちる寸前のハンプティ・ダンプティ[1]と出会ったアリスは、「ジャバウォックの詩」の意味を説明してもらう。続けて、やはりマザーグースの唄通りに振舞う、ライオンとユニコーン[1]に出くわす。それから、アリスは白のナイトによって、赤のナイトから助けられる(この白のナイトは、多くの人々からルイス・キャロル自身を表現したものと考えられている)。

ついに8番目の列まで進んで女王になったアリスは、赤の女王を捕まえて、物語を通して動かずじまいだった赤の王にチェックメイトを掛ける。その後、アリスは夢(それが夢だったのなら)から目をさました。

夢からさめたアリスはそばにいた黒い子猫のキティに「あなたは赤の女王様だったんでしょう?」と話しかける。そして親猫のダイナにおめかしをされていた最中の白い子猫のスノードロップは白の女王、ダイナはハンプティ・ダンプティだったのだろうとアリスは考える。そして最後は自らに問いかける。夢の中の全ては赤の王様の夢の作り出したもの。だけどその夢を見ていたのは私。それならどっちがどっちの夢の中にいたのかしら? 私? それとも赤の王様? と。

詩と童謡

  • 序詩 “Prelude
  • ジャバウォックの詩Jabberwocky(en)” (鏡の家の場面参照)
  • トウィードルダムとトウィードルディー[2]Tweedledum and Tweedledee(en)”
  • セイウチと大工 “The Walrus and the Carpenter(en)”
  • 「冬の野の白き時」 “"In Winter when the fields are white..."
  • ハンプティ・ダンプティ[2]  “Humpty Dumpty
  • タラの目 “Haddocks' Eyes” / ひどく年老いた男 “The Aged Aged Man” / 方法と手段 “Ways and Means”/ 門の上に座って“A-sitting on a gate” (Haddocks eyes(en)参照) この詩は「門の上に座って」であるが、この詩の名前や呼び方が事前に示される。
  • ライオンとユニコーン[3] “The Lion and The Unicorn
  • アリス女王の歌 “Queen Alice song
  • 白の女王様のなぞなぞ “White Queen's riddle

「かつらをかぶった雀蜂(すずめばち)」

挿絵を描いたジョン・テニエルの提案により、ルイス・キャロルはアリスと弁護士のかつらをかぶった雀蜂が遭遇する場面を削除することに決めた。 この場面は、マーチン・ガードナーの“The Annotated Alice: The Definitive Edition(en)”に収録されている。

本文からの引用

「素晴らしいジャムなのにねえ」と、白の女王様はおっしゃいました。
「そうですね。でもわたし、今日はジャムはほしくないんです」
欲しがったって、あなたはもらえやしませんよ」白の女王様はおっしゃいました。「明日と昨日にジャムはある――でも、今日のジャムは絶対にない。そういう規則なんですから」

ラテン語: iamあるいはjamは、未来と過去の中だけでの「今」を意味する)

「足し算はできますわね?」と、白の女王様は尋ねました。「1たす1たす1たす1たす1たす1たす1たす1たす1たす1はいくつかしら?」
「分かりません」アリスは答えました。「数えそこないました」
「足し算はできないんだね」赤の女王様が話をさえぎりました。「引き算はどうなんだろね? 8ひく9は?」
「8から9を引くなんて、できっこありませんよ」アリスはすぐに答えました。「だけど――」
「引き算もできない」白の女王様がおっしゃいました。「割り算はできるかしら? パンわるナイフ――その答えは?」
「ええっと――」アリスが答えかけましたが、赤の女王様がわりこみました。「そりゃ、トーストに決まってるさ。引き算をもういっぺんやってごらん。犬ひく骨。残ったのは?」
アリスはじっくりと考えました。「もちろん、骨は残りません。でも、骨を取り上げたら―犬だって残りません。度を失ってかみついてくるでしょうから――それで、わたしも残りません!」
「それじゃ、あんたはなんにも残らないって思うのかい?」赤の女王様がおっしゃいました。
「それで、あってると思います」
「いつもながら、あんた間違ってるね」赤の女王様がおっしゃいました。「犬の度が残ってるじゃないか」
「だって、わたしはそんな――」
「そら、見てごらんよ」赤の女王様は叫びました。「犬は度を失ったわけだね、ええ?」
「そうかもしれませんね」アリスは慎重に答えました。
「犬がいっちまったんなら、犬の度が残ってるじゃないか!」と、赤の女王様は勝ちほこって叫びたてました。

映像化作品

主な日本語訳書

関連項目

作品中に、本作中の詩「セイウチと大工」から「時は来た」の詩句、および「ジャバウォックの詩」が引用されている。
作品中に、本作中の詩「セイウチと大工」から「時は来た」の詩句が、章のタイトルとして引用されている。
  • エラリー・クイーンの短編推理作品「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」(1934年
原題は " The Adventure of the Mad Tea-Party "[4]。作品中で、「セイウチと大工」の詩に登場する靴・船・封蠟(ふうろう)・王様・キャベツが、犯行を暗示する小道具として用いられている。
作品中に、本作中の詩「ライオンとユニコーン」の詩句が合い言葉としてそのまま引用されている。
1936年に公開されたミッキーマウス・シリーズ第83作目の短編映画の1つで、本作のミッキーバージョンである。なお、この作品はチェスの代わりにトランプを下敷きにしている。
1951年公開のディズニー製作のアニメーション映画には、本作の登場人物やエピソードが含まれている。(例えば、トウィードルダムとトウィードルディーやセイウチと大工さんなどが登場する)
作品中で、探偵エルキュール・ポアロが登場人物の1人に手がかりを与えるため「セイウチと大工」から「時は来た」の詩を引用している。
本作に基づいた同名の管弦楽曲を作曲している(作品12)。
ジョン・レノン作による歌詞は本作中の詩「セイウチと大工」から着想を得ており、「ウォルラス(セイウチ)」「エッグマン(ハンプティ・ダンプティ)」などの登場キャラクターが歌詞に登場する。
本作を題材にした同題の長編SF小説で、左右が逆転した世界を扱った。この作品内では、キャロルの元作品への言及も行われている。
1973年に提唱された生物の進化における仮説の1つ。常に進化しないと生存競争に負けるという内容が、本作の赤の女王を連想させるために、このような名前が付けられた。
1974年に開発されたサンリオキャラクター。本作に登場する子猫からキャラクター名を拝借した[5][6]

脚注

  1. ^ a b c マザーグースに登場するキャラクター。
  2. ^ a b マザーグースの唄の引用であり、作者の創作詩ではない。
  3. ^ マザーグースの唄の引用であるが、最終節の歌詞「どちらも街から追い出した」(And sent them out of town)が、「太鼓たたいて街から追い出した」(And drummed them out of town)に変えられている。
  4. ^ 江戸川乱歩 編『世界短編傑作集 4』(創元推理文庫、1961年。ISBN 978-4488100049)に所収。嶋中文庫版エラリー・クイーン短編傑作集『神の灯』(2004年。ISBN 978-4861563140)には「マッド・ティー・パーティ」のタイトルで所収。
  5. ^ 秋山孝『キャラクター・コミュニケーション入門』角川書店、2002年。ISBN 4047040827
  6. ^ ハローキティ検定実行委員会『ハローキティ検定』サンリオ、2009年、17-18頁。ISBN 978-4387090564

外部リンク