財政
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財政(ざいせい、英: public finance)とは、国家や地方公共団体がその任務を遂行するために営む経済行動で、総体収入の取得のための権力作用と、取得した財・役務の管理・経営のための管理作用とがある。これらの現象を学ぶ学問が財政学である。
財政の定義と機能
経済学では、経済循環における1つの経済主体である政府の経済的行動として「財政」を定義している。財政には以下のような機能を有する。
- 資源配分機能
- 財政は、その活動により市場を通じては供給が過少になりがちな公共財を必要量供給できる。公共財にはインフラストラクチャーや学校教育、国防などがある。
- 所得再分配機能
- 需要創出効果
- 財政赤字の経済学的な効果としてマクロ経済学の立場からは乗数効果による有効需要の創出があげられる。ヨーロッパでは財政赤字に対して規制をおこなっている。恣意的な財政政策による需要調整に対しては、有効であるとする立場、無効であるとする立場などがある。
- 財政政策は有効
- 経済は、もし財政が存在しなければ非常に不安定であり、恐慌や、不況に見舞われることがある。その際に財政は、自由に歳出を伸ばすことによって財政赤字を生み出し、有効需要を創出する。その後に景気回復が起こった場合に税収が多くなることを期待して赤字財政とすることは経済安定効果の面からも正当化されるという主張がある。公債はそのような意味での経済安定効果を持つと考えられてきた。
- 財政政策は無効
- 財政の経済安定化機能(ビルト・イン・スタビライザー)
- さらに財政自体の効果として経済の自動安定化機能がある。
財政の歴史
財政の歴史は、ほぼ「歳入不足・歳出過剰」の歴史となっている[要出典]。また、歳入と歳出のあり方は、国の構造や方向性に大きく影響した。
3世紀頃のローマ帝国は、膨大な社会資本維持や異民族侵入防御のための歳出により、都市の財政負担が膨張し荘園化による帝政崩壊の一因となった。
16世紀になると、スペイン・ポルトガルは、南米からの莫大な銀収入により、莫大な浪費を続け欧州に価格革命をもたらした。また、明は、未熟な紙幣を流通させることに失敗し、一条鞭法によって銀収入に統一した。
17世紀にはイギリス・フランスなど、絶対王政の国々は対外侵略に明け暮れ、莫大な国債残高を抱えていた。
日本は明治維新後、米現物が中心だった歳入を地租改正によって貨幣経済に合わせた。
20世紀
20世紀にはいるとアメリカは、世界恐慌に際して、均衡財政主義を破り積極的な歳出増額により失業者救済を図った。1942年に日本は、米ドル建て国債(ソブリン債)のデフォルトに陥っている[1]。
戦後日本は、世界銀行からの借り入れにより、大規模なインフラストラクチャー建設を実施。産業開発と高度経済成長により得た歳入で、期日どおり利付きで世界銀行へ返済した。延滞や棒引きを起こさなかったことは世界銀行を驚かせた。
戦後混乱期の1947年(昭和22年)には国債発行額が税収を上回り、それが戦後インフレの原因になったという反省から財政法が制定され、赤字国債の発行と日銀の赤字国債引き受けを禁止して、均衡財政主義を取ることとなった。
しかし1965年(昭和40年)には赤字国債の発行が再開され、1990年にはバブル景気の税収増によりいったん発行額ゼロになるも94年には再開された。
1998年には、アジア通貨危機を受けてロシア財政危機が発生。ロシアは債務不履行(デフォルト)状態になった。
21世紀
2007年、アメリカの住宅バブル崩壊に端を発した世界金融危機が発生してからは、世界各国・各地域で財政危機も発生している。
2008年10月には、カリフォルニア州が財政危機表面化した。
2010年にはギリシアの財政状況からソブリン・リスクが意識され、欧州ソブリン危機が発生した。スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドなどユーロ加盟諸国(PIIGS)への波及が懸念され、各国が危機を回避するよう対策をとっている。
日本の財政
日本国憲法上の財政
- 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
- すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない
国の財政
財政用語
- 地方譲与税
- 支出負担行為
- 契約の締結、職員の任命など支出の原因となる行為のことで、戦後設けられた。
- 財政投融資
- 国の財政資金による投資および融資のこと。
- 資金源は、資金運用部資金(郵便貯金や厚生年金,国民年金)、産業投資特別会計、簡易保険、等である。
- 運用先は、対民間投融資、政府事業建設投資、地方公共団体への貸付または地方債の引受等である。
地方財政
地方財政用語
- 実質収支
- 形式収支から、翌年に繰り越す継続費逓次繰越、繰越明許費繰越等を控除したもの。
- 単年度収支
- 当該年度における実質収支から前年度の実質収支を引いたもの。
- 一般財源
- 自主財源
- 地方公共団体自身で調達した財源。反対語は依存財源。
- 経常収支比率
- (経常的経費に計上された一般財源)/(経常一般財源+減税補填債+臨時財政対策費)
- 地方公共団体の財政の弾力性の指標である。
- 公債費比率
- 公債費充当一般財源/一般財源
- 公債費負担比率ともいい、公債費による財政負担の指標である。
- 財政力指数
- 基準財政収入額/基準財政需要額 の過去3年間の平均。
政府保有米国債に関する政府答弁
衆議院議員江田憲司は日本政府の外貨準備高は2011年8月末時点で1.22兆ドルで大部分を米国債で保有しているが、近年のドル安のため政府保有の米国債の含み損が約40兆円にものぼる巨額な規模になっていると指摘した。これに対し安住淳財務大臣は「円高にはさまざまな要因があります」「ヨーロッパにおける金融不安等があってこういうレートになっている」と答弁した。
また江田は毎年約15兆円の米国債が満期になって償還されるが、再度米国債に再投資している状態を「日本の国民が米国財政を支えているようなもの」と指摘した。これに対し安住は「外貨で保有をしっかりして、介入等のときに適正に使わせていただくというのがこのお金の使い方」と答弁した[2]。
脚注
- ^ “WAR ENDS SERVICE ON DOLLAR ISSUES; Italian, Japanese, Estonian and Czechoslovak Bonds Are in Default OTHERS PAY NO INTEREST Reduced Payments by Eight European Obligors Also Are Halted”. The New York Times. (1942年6月1日) 2012年1月14日閲覧。
- ^ http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001817820110927002.htm?OpenDocument
関連項目
- 財政政策
- 官庁会計
- 地方財政
- 財政融資資金特別会計
- 財政再建
- 国債
- 公債
- リカードの等価定理 - 財政赤字による公債の負担が現在世代と将来世代では変わりがないことを示した定理。
- 小さな政府
- 大きな政府
外部リンク
- 財政法(総務省法令データ提供システム)
- 地方財政法 (法令データ提供システム
- 『日本の借金』時計
- リアルタイム財政赤字カウンター