男女共同参画社会

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男女共同参画社会(だんじょきょうどうさんかくしゃかい)とは、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」のこと。そしてこの理念を実現するために「男女共同参画社会基本法」が制定され、1999年平成11年)6月23日に公布・施行された。 「男女共同参画」は英語で公式に"gender equality"と表記する。

概要

男女共同参画社会実現の為に2001年(平成13年)1月6日内閣府特命担当大臣が置かれている。詳細は内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画担当)を参照。同時に内閣府男女共同参画局が設立された。以降、各省庁に男女共同参画関係予算が割り当てられ、毎年度、数兆円単位の予算が費やされている(尚、男女共同参画関連とされる事業の23年度総予算は約6.7兆円だが、そのうち2.8兆円は高齢者や障がい者への福祉関連の予算として分類されており、それを除いた事業(女性の労働環境整備等)の予算となる)[1]

政府を始め全国の市町村に至るまで 役所には男女共同参画部署が設けられ専任担当者が複数存在する。それぞれの参画関連部署では 「市民の意識改革」と題し21世紀職業財団(厚生労働省管轄)等の政府傘下の男女共同参画団体と共に「女性の経済的自立(賃金労働者化)」といった「男女共同参画」を奨励している。また、男女共同参画社会の形成の促進に関連する施策として、厚生労働省が中心となって、女性の活躍や格差解消を推進するポジティブアクションが実施されている。

内閣府男女共同参画局の施策

  1. 毎年、男女共同参画週間を設けて啓蒙活動を行っている。(毎年6月23日~29日)
  2. 男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰をする。内閣府が関係府省から候補者の推薦を受けて審査を行い、内閣総理大臣が決定するものである。
  3. 正しい男女共同参画の概念を広めるため、誤解や混乱を招く「ジェンダーフリー」の用語を使用することが無いよう、各都道府県・政令指定都市などの地方公共団体に周知徹底を呼びかける[2]
  • 「メディアにおける男女共同参画の推進」として[2]
  1. 児童を対象とする性・暴力表現の根絶や、
  2. インターネットのフィルタリングを一層普及させるよう促進している。

地方自治体レベルでの取り組み

男女参画基本法第14条に従い、地方自治体に於いても男女参画社会の推進を目的とした条例の策定が行われている。男女共同参画センターを名乗る組織は従来「婦人会館」などと称していた女性教育施設が名称を変更したものであり、基本的に女性の立場を重視した活動を行なっている。また「北名古屋市女性の会男女共同参画委員会」は、男女の立場を入れ替えた女性版桃太郎のお話「モモタロー・ノー・リターン」のビデオを愛知県の補助金により製作して配布している[3][4]

その実現の為と称される政府や自治体の政策内容や運用形態については賛否両論が有り、保守家族宗教観から反対する日本会議等に属する宗教右派団体などは、専業主婦の役割の尊重を廃止し、就労を望まない女性を働かせようとしているという批判、女性は子供が小さいうちは子育てに専念するべき、などと主張し男女共同参画の各種活動に対して反対運動を行っている。

議論されている取り組み

選択的夫婦別姓制度

グローバル化が進む現代、選択的夫婦別姓制度を導入し結婚しても改姓しないことを選択できるようになれば、女性の社会進出や国際的な活躍の場を広げられ、男女共同参画を大幅に進めるになると考えられる、との主張がある[5][6]。現状では、パスポートが戸籍姓に限られるため、別姓を選べない制度が国をまたいで活躍する女性の足を引っ張っている[7][8]、などの指摘もある。また、理工系の職に関しては、特許を戸籍名でしかとることができない[9]文部科学省若手科学者賞」の表彰者名簿など、研究成果が認められる重要な場面で名前が混在する[8]、などの問題も指摘されている。2015年日本経済新聞による調査によれば、働く既婚女性の77%が、夫婦が望む場合に結婚後もそれぞれ結婚前の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別姓制度」に賛成している。現在仕事で旧姓を使っている人に限ると賛成は83%にのぼっている[10]

クオータ制

世界との比較

世界経済フォーラム2006年(平成18年)、世界各国の性による格差の度合いを指標化した「男女格差報告」(Global Gender Gap Report 2006)を発表したが、日本は世界115カ国中79位と、途上国以下の評価となり、日本女性が責任を伴った影響力のある仕事に就いている割合や国政への参加率が低いといった実態が浮き彫りになった。2012年の同報告では、世界135カ国中101位と男女間格差の改善がほとんど進んでおらず、相対的にはこの分野で後退してしまった事が明らかとなっている[11]。また、婚姻時に夫婦同氏しか選択肢がない国は2012年現在で日本のみとなっており、夫婦同氏の原則が男女共同参画の障害となりえるとの主張もある[12]

批判

この考え方は男女の権利を平等にするという賛意がある一方で、積極的改善措置(ポジティブ・アクション)に対しては、世界各国で様々な批判も上がっている。[13]。特に調査対象となったほとんどの国で「女性が優遇される結果、同じ能力を持つ男性が差別される」との批判が出されており、このような批判は男女平等意識の高いと言われているスウェーデン等の北欧諸国でも同様である。また、アメリカでは「自由な競争を妨げ、社会や企業の活力を損なう恐れがある」との指摘もなされている。

脚注

参考文献

第5章 3 東京女性財団発行物『ジェンダーチェック』への違和感
第5章 4 なぜ多くの女性センターや女性行政担当が『ジェンダーチェック』にとびついたのか
  • 渡辺真由子著『オトナのメディア・リテラシー』 リベルタ出版 (2007年10月)
  • 家庭科の男女共修をすすめる会『家庭科、なぜ女だけ!』(1977年)
  • 「経営の情識:「技術とは何か」、学校で習いましたか? 」(日経BP、ITPro、2008年5月)
  • 桜井宏著『社会教養のための技術リテラシー』東海大学出版会 (2006年7月)
  • 国際技術教育学会著『国際競争力を高めるアメリカの教育戦略―技術教育からの改革』(2002年7月)
  • 民法改正を考える会『よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて』朝陽会、2010年
  • 日本弁護士連合会編『今こそ変えよう!家族法―婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える』日本加除出版、2011年
  • 渡辺淳一『事実婚―新しい愛の形』集英社、2011年
  • 池内ひろ美『男の復権』女は男を尊敬したい、ダイヤモンド社、2006年

関連文献・記事

関連項目

外部リンク