女性器切除
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
女性器切除(じょせいきせつじょ、Female Genital Mutilation、略称FGM)あるいは女子割礼(じょしかつれい、Female Circumcision)とは、主にアフリカを中心に行われている風習。
目次 |
[編集] 概要
歴史的に見てFGMは2,000年もの間、赤道沿いの広い地域のアフリカで行なわれてきた。現在ではアフリカの28ヶ国で、主に生後1週間から初潮前の少女に行われる。アフリカの人口増加に伴い、以前より多くの少女達が性器切除を施されている。
欧米においては、この慣習の存在する地域から移民した人々の間においてもFGMが広く行われていることが昨今の調査で明らかになり、それに対して法的な規制を制定する国も増えてきている。
[編集] 目的
- 大人の女性への通過儀礼。
- 結婚の条件とされている。
- 結婚までの純潔・処女性の維持を保てると信じられている。
- 女性の外性器を取り去り性感を失わせることで、女性の性欲をコントロールできると信じられている。
- ソマリアでは、「女性は二本の足の間に悪い物をつけて生まれた」と言われており、陰部封鎖させる。
[編集] 手術方法
- 一般に土地の伝統的助産婦によって、剃刀やナイフ、鋭い石などが使われ、母親や親族の女性に押さえ付けられて行われる。
- 不衛生な状況下でたいていは麻酔や鎮痛剤無しで行われることが多いが、エジプトなどでは医療関係者が行っていることがわかり問題となった。
- 泥や灰などが出血を止めるために用いられることもある。
[編集] 名称
女子割礼、女性性器変質あるいは女性性器の切れ込み (Female Genital Cutting) 等、この風習を呼び表すために様々な言葉が用いられてきた。そんな中、1990年に開催されたインター・アフリカン・コミッティ (IAC) の総会において、今後は女性器切除 (Female Genital Mutilation) という名称を用いることが決定された。これは、「割礼」という表現がFGMの本質である性器の切除という事実を正確に伝達するものではないばかりか、むしろ、その非人道性を曖昧にしてしまう点を改善しようとするものである。現在このFGMという呼称はEUやアフリカ連合等で正式に採用されている。
[編集] 分布
アフリカにおけるFGMの分布と比率
[編集] 定義と分類
国際会議などでは、WHO(国際保健機構)の定義を使うことで同意されている。
- タイプ1:クリトリデクトミー(スンナ割礼、clitoridectomy)
- クリトリスの一部または全部の切除。
- タイプ2:エクシジョン (excision)
- クリトリス切除と小陰唇の一部または全部の切除。地域によっては出産を楽にするためとしてさらに膣が切除されるが、実際には逆に困難にしてしまうらしい。伝統的に成年に達した際の儀式として行なわれるが、最近では若年化が進み、もっと幼い少女に行われる。FGMを受ける少女のうち、タイプ1とこのタイプを合わせて約85%である。
- タイプ3:陰部封鎖(ファラオニック割礼、infibulation)
- 外性器(クリトリス、小陰唇、大陰唇)の一部または全部の切除および膣の入り口の縫合による膣口の狭小化または封鎖。その際尿や月経血を出すための小さな穴を残し、少女の両脚をしっかり縛って数週間傷が治るまで固定する。主に4歳から8歳の少女に行なわれ、こちらも若年化が進んでおり、生後数日に行なわれた例もある。FGMを受ける少女のうち、約15%がこのタイプになる。
- タイプ4:その他の施術(タイプ1-3に属さないもの)
- その他、治療を目的とせず、文化的理由のもとに、女性外性器の一部あるいは全部を削除し、あるいは女性の生殖器官を意図的に傷つける行為のすべて。
[編集] 性器切除に伴う体への弊害
- 先述の施術方法で行われることが多いため、大量出血、施術中の激痛、回復まで続く痛み、様々な感染症などを引き起こす。また、手術中のショックで意識不明や死亡に至る場合もある。
- 後遺症としては排尿痛、失禁、性交時の激痛、性行為への恐怖、月経困難症、難産による死亡、HIV感染の危険性など、女性の生涯にわたって極度の影響を与える。
- 痛みを恐れて排尿しなかったために逆に一回排尿量が増える為,尿が傷口を刺激し、さらに痛みを増すという。
- 陰部封鎖の場合、結婚初夜に夫が縫い閉じられた陰部を切り開く部族がいる。自力で花嫁の陰部を開いて性交を果たせなければ面目を失うという。
[編集] 国際的世論と廃絶
- 国際社会において、特に1970年代頃から著しい女性虐待であるとして非難の声が強くあがっていた。対する当事国では、そうしたプレッシャーは自国の文化を否定するものとして、文化相対論的論議がおこった。しかしながら昨今では国際的世論とアフリカ内からの廃絶の声とが手を取り合った動きが活発化しはじめている。
- 最近の動向では、西アフリカの指導者や、ケニアでは性器切除を禁止しているものの、その後まったく実効が上がっていない。
- FGM廃絶の国際運動を行っているワリス・ディリーが1999年発表したデータによると年間に200万人、日間に5,500人近い少女が性器切除を受け、性器切除された女性は1億3千万人以上で、累計では13億人にも達すると推定している。
- 女性器切除廃止のための女性団体、La Palabre(ラ・パラーブル)が設立された。同団体の欧州メンバーとして性器切除、性的暴力や強制結婚を綴った自伝「切除されて」の著者であるキャディ・コイタがいる。
- アメリカでは1990年代に(アフリカ移民の間で行われる)この問題が広く知れ渡るようになったが、アフリカの伝統を守るべきという意見がアメリカの男性に多くなかなか法制化に踏み切れないでいる(2008年2月現在)。
[編集] 事件
- アメリカでナイジェリアからの移住者の母親が、娘に自分でFGMを施して傷害罪で訴えられた。
- フランスに住むアフリカ系女性28人が、娘にFGMを施したとして禁錮2~5年の判決を受けた(1999年2月18日朝日新聞より)。
- アフリカではFGMの影響で出産時の母子死亡率が極めて高い。
[編集] 文献
- ドキュメント女子割礼(著:内海夏子 2003年 集英社新書 ISBN 4087202089)
- 切除されて(著:キャディ 2007年 ヴィレッジブックス ISBN 9784789730976)
[編集] 関連項目
- 纏足
- キャディ・コイタ - 因習により女性器切除をされたセネガル人の女性作家、活動家。
- アリス・ウォーカー
- 女性器
- 割礼
- ファウジーヤの叫び - 女子割礼から逃れるためトーゴからアメリカへ亡命した女性の手記。
- センベーヌ・ウスマン - 女性器切除をめぐる映画『母たちの村』を監督。


