市場経済
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市場経済(しじょうけいざい、英: market economy)とは、市場機能(需要と供給を参照)を通じて需給調節と価格調節が行われる経済のことである。対立概念は、計画経済である。また、市場機能を重視する経済のことを、特に市場主義経済(しじょうしゅぎけいざい)や自由主義経済(じゆうしゅぎけいざい)などと呼ぶことがある。
概要
市場経済は、不適切な市場参加者の排除等を前提とすれば、優れた経済システムである。たとえば、政府が需要や供給に関するあらゆる情報を集めて配分を決定するという計画経済に対し、政府による決定ではなく市場による価格メカニズムを利用した方が適切な配分が達成できると考えられる。これは、ある人が支払ってもいいと思うコストなど個々人に関する情報(私的情報)を正確に収集することは中央政府であっても不可能であり、それが仮に可能であっても、あらゆる財の需給というような大量の情報を正しく即座に処理出来るということは非現実的であるが、市場機能を使えば価格がシグナルとなって多くの場合うまく需給が調整されるからである。
市場経済を特徴づけるものとしては、次のものをあげることができる。
- 私有財産制
- それぞれの私的経済主体は、財産権(所有権)が認められた財産を有する。これにより、財産を効率的に利用しようとするインセンティブが与えられる。
- 分権化された経済主体
- 個人・私企業などの私的経済主体は、政府の指示を極力抑え自らの自己責任で行う。
- 価格システム
- 財・サービスの価格および取引量は、市場機能と呼ばれる需給を均衡させるしくみで決定される。
自由主義の立場からの理想的な市場は自由放任主義による完全競争だが、概要冒頭で述べた前提が満たされず、市場がその本来の機能を十分発揮できずに最適な状況が達成されなくなる「市場の失敗」と呼ばれる問題も存在するため、現代の大半の国や地域ではこれらの問題を緩和または調整するために限定的ながら政府の援助が行われている。
利点
市場経済は、何をどれだけ生産し、誰にどれだけ配分するかという経済の根本機能においては他の経済システムより優れていると考えられる。ただし、前述したように、また、「市場経済自体の欠点」で後述するように、不適切な市場参加者の排除等が前提となる。
市場経済においては必要で不足している商品は価格が上がり、利益水準が高まるため、生産が増加する。このため、経済的需要に応えやすいメカニズムになっている。また、より利益の出せる効率のいい生産体制を持つ企業がより強い資源購買力を持つため、効率的な生産を行える者へ自然と資源配分されるシステムになっている。このため、商品生産において過剰や過少が温存されることなく、効率的な経済となる。もっとも、ここでの「効率的」は、財務的に効率的なのであって、本来の意味での経済的に効率的でもあるとは限らない。
また、市場経済は、競争を促進する機構が働くため労働者の勤労意欲が増し、生産力の増強・投資を誘発して経済成長が起きやすくなる。
欠点
- 外部経済(技術的外部性)と呼ばれる市場を通じない影響が存在する取引においては、市場による資源配分は最適とはならない(例:排気ガスや工業排水などによる汚染)。その他の市場の失敗が存在する場合にも、最適な資源配分を保証しない。
- 効率的な資源配分が達成されるが、それが公平なものであるとは限らない。効率的であることは望ましい社会の必要条件ではあるが十分条件とは言えず、このため再分配政策が必要となる可能性がある(→パレート効率性)。
- 貨幣によって取引が媒介される場合が多いが、貨幣が交換だけでなく蓄蔵の機能を持っているために、市場経済に需給ギャップが発生する場合がある。
- 生産工程が複雑化し定価取引が普及するなど価格による需給調整が行われにくい場合は、数量による調整が行なわれ、失業や在庫が発生する。
- 倫理的価値を包含しない。(穀物価格上昇による餓死者発生、防衛産業の肥大化等)