民営化
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民営化(みんえいか,英: Privatization)とは、国や地方公共団体が経営していた企業および特殊法人などが、一般民間企業に改組されること、運営が民間委託されること、さらには民間に売却されることなど、さまざまな形態を指して用いられているきわめて政治的な言葉である。Privatization とは別な言葉である Corporatization も民営化と日本語訳される。
多くの場合、根拠法の廃止又は改正により商法上の会社となることを指す。一般には、公社・公団、現業事業などが特殊会社に移行することも「民営化」と呼ばれる。また、PFIによる半官半民の公営事業の委託も民営化ということがある。民営化の目的は効率化、サービスの向上、透明化、税金の納入による国民負担の軽減、債務の切り離し、労働組合の弱体化などである。総じて、政府による経済介入を減らす小さな政府政策に関連している。
逆に、国又は国の出資する特殊法人が民間会社の議決権の過半数を取得することを国有化という。
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[編集] 民営化の効果が出る仕組み
[編集] 自然選択からのアプローチ
国営企業と民間企業の違いは、根拠法に依って定められた独占市場の有無である。新規参入の激しい自由市場では自然選択説が適用でき、企業は市場環境により適応した別の企業に置き換わる。根拠法の廃止又は改正により、国営企業から独占市場を奪い市場環境を適切に定めれば、自然選択の力で最適化された企業を得る。 新規参入企業が国営の場合がある。民営化#諸外国での民営化のニュージーランドポストを参照。
[編集] 株式市場からのアプローチ
民営化された国営・公営企業は通常株式公開される。段階的に株式を放出し、やがて市場がすべてを保持するようになった(国有分の株式が完全に放出された)場合、完全民営化と言われる。国によっては時限的に黄金株をつけるなどの工夫により市場の安定化を図るケースもあった。
市場によって保持される企業は利益増大が必須命題となる。このため各企業は利益をあげるよう企業努力をするようになる。利益が増大できない場合、市場から経営者の交代を求められる可能性もある。
また、利益が極めて薄い場合、株価が低迷し買収により効率化が図られることも考えられる。
[編集] 資源配分からのアプローチ
完全な民営化のプロセスが整った場合、企業は価格と利潤の関係を適正化する。価格機構が正常化すれば、市場への供給に対して過剰や過少がなくなり、経済全体が効率化する。
供給過剰だった場合は、使用していた資源(リソース)を解放するようになるため、他の産業の活動を支援することになる。供給過少だった場合は、必要とされる量が供給されるようになるため、利用者の経済活動が活性化する。
[編集] 民営化による問題点
日本の場合については国鉄分割民営化、構造計算書偽造問題を参照。
[編集] 日本における民営化への反応
マスコミ報道における社会保険庁による相次ぐ不祥事や、いわゆる天下りの問題、高級官僚による接待などの官民癒着で公務員に対する印象の悪化もあって「身分保障のある公務員は仕事をしていない」、あるいは「民間より給与が不正に高い」との認識が広まり、日本では政治家が「○○を民営化する」とした場合「改革」をしていると好印象でとられることが多かったが、近年では安易な民営化による弊害も顕著になっていることから、必ずしも歓迎されるとは限らなくなっている。なお、公務員の労働環境は部署ごとに大幅に違い、選挙管理委員会など時期により極端に仕事が少なくなる部署がある一方で、かなりの激務である部署も少なからず存在する。
小泉純一郎総理大臣時代、いわゆる「郵政解散」の際に「郵便局の職員がなぜ公務員でなければならないのか」と訴え議席を伸ばしたことからも日本における国家機関の民営化あるいは公務員の非公務員化は歓迎されたといえるが、安倍政権になり、中川幹事長(当時)等がマスコミを通じ同様の公務員批判を行っていたが、参院選で議席を減らす大敗を喫していることから、公務員の非公務員化を必ずしも歓迎しているとは限らない。
一部の勢力・識者(特に対象とする国家機関が民営化されることによって利益を得る業界関係者)が主導となって「国家機関や公務員は民間より優遇されていて十分働いていない。民営化を推進する勢力は国民に利益をもたらす真の改革勢力」・「民営化によりサービス向上とコスト削減が確実に実現する」と主張している向きもあり、民営化が全てがうまくいくようになる「特効薬」ととらえられている部分も否めない。そのため民営化は公務員の数を減らし改革の成果をアピールするための数合わせとなっている側面がある。
実際のところ、民営化は「官僚主義の脱却」→「競争原理の導入」→「サービスの向上」に繋がるとして肯定的なイメージがあるが、代償として(民間会社としては当然のことではあるが)利益優先主義に陥りやすく安全メンテナンスにどうしてもコストを割きにくくなる。その結果、恒常的に事故のリスクを伴う状況が発生する場合がある(実際にイギリスやドイツでは、鉄道民営化後に大事故が続発し批判されている。ただし日本に限ってはこの傾向は当てはまらず、JALやJRでは民営化後に事故率は減少している)。よって民営化に関しては、法による規制で一定の利潤追求の歯止めをかける努力が必要である。民間企業は一度不祥事や事故を起こすと消費者の信頼を失い淘汰への道を歩むことになる(食品偽装事件など)ため、安全性を向上させようというインセンティブが働くという主張もある。利益が上がれば安全投資に回せる金額も増加するはずであるため、利益を上げることが問題なのではなく、利益を安全投資に回さず株主への配当などを優先してしまうことが問題なのだという指摘もある。また、これも民間会社としては当然であるが、誰もが公平・平等にサービスを受けられるとは限らなくなり、会社にとって客側の要求を受け入れてサービスを行うメリット(対価など)があるかどうかで判断されるようになり、サービスに対するニーズがある人が対価を支払えずに受けられないと言った事態も容易に想定される。
防災・軍事・警察・消防といった、国民の安全・安心にかかわる分野は、現時点では民営化になじまないとの見解が一般的であり[1]、社会保障などの「セーフティーネット」についても公営事業として行うかはともかくとして、国が責任を持つべきであるとする考えが一般的である。また民営化できると考えられる分野についても、単なる市場化が善という前提でよしとすることなく、民営化することによって国民へのサービスを向上させることが目的であるというのが本来の姿勢であるべきであるが、経済財政諮問会議の議事録などをみると、民営化により新たな公共事業の創造や、公務員の数を削減すること自体が目的となっている側面があることが指摘されている。
[編集] 主な民営化が為された日本の会社
右側の括弧内は根拠法が廃止又は改正された年を表す
- 日本通運株式会社 - 日本通運株式会社法の廃止(日通法、1950年)
- 帝国石油株式会社 - 帝国石油株式会社法の廃止(帝石法、1950年)
- 日本発送電株式会社 - 電気事業再編成令・公益事業令公布(1951年)
- 日本合成ゴム株式会社(現・JSR株式会社) - 日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律の廃止(JSR法、1969年)
- 日本電信電話公社(NTT)- 日本電信電話株式会社法の制定(NTT法(旧電電法)、1984年)※
- 現・NTTグループ各社
- 日本電信電話株式会社(持株会社)
- 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
- 西日本電信電話株式会社(NTT西日本)
- NTTコミュニケーションズ株式会社
- 株式会社NTTドコモ(NTT移動通信網+NTTパーソナル通信網)
- 株式会社NTTデータ(旧NTTデータ通信)
- NTT都市開発株式会社
- 株式会社NTTファシリティーズ
- NTTコムウェア株式会社
- 現・NTTグループ各社
- 日本自動車ターミナル株式会社 - 日本自動車ターミナル株式会社法(JMT法)の廃止(1985年)
- 日本専売公社(現・日本たばこ産業株式会社) - 日本たばこ産業株式会社法の制定(1985年)※
- 東北開発株式会社 - 東北開発株式会社法の廃止(1986年) 注1
- 日本国有鉄道(国鉄)- 日本国有鉄道改革法の制定(国鉄改革法、1987年)※
- 現・JR各社
- 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)- 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR法)の改正(2001年)
- 東海旅客鉄道株式会社(JR東海)- 同上
- 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)- 同上
- 北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)
- 四国旅客鉄道株式会社(JR四国)
- 九州旅客鉄道株式会社(JR九州)
- 日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)- 旧国鉄の貨物部門・路線を継承、主に本州が中心。
- 鉄道総合技術研究所(JR総研)
- 鉄道通信株式会社(旧日本テレコム(長距離通信)、旧J-PHONE(ジェイフォン)→ボーダフォン日本法人(移動体通信)、現・ソフトバンクモバイル株式会社)
- 鉄道情報システム株式会社(JRシステム)- 現JR各社の全額出資により設立、同社設立を主導していたJR東日本が支配株主。
- 新幹線鉄道保有機構(1991年解散)
- 日本国有鉄道清算事業団(国鉄清算事業団、1998年解散)
- 現・JR各社
- 日本航空株式会社(JAL) - 日本航空株式会社法の廃止(日航法(JAL法)、1987年)
- 沖縄電力株式会社 - 沖縄振興開発特別措置法の改正(1988年)
- 国際電信電話株式会社(旧KDD→旧KDDI(初代)、現・KDDI株式会社) - 国際電信電話株式会社法の廃止(KDD法、1998年) 注2
- 電源開発株式会社 - 電源開発促進法の廃止(電発法、2003年)
- 帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄株式会社、通称:東京メトロ)(東京メトロ法(旧営団法)、2004年)
- 新東京国際空港公団(現・成田国際空港株式会社)(2004年)
- 日本郵政公社 - 郵政民営化関連法(2005年)
- 日本道路公団(JH)- 道路関係四公団民営化関係四法の可決により(2005年)
- 本州四国連絡橋公団(本四(公団)、現・本州四国連絡高速道路株式会社(本四道路))(2005年)
- 首都高速道路公団(首都高速、現・首都高速道路株式会社)(2005年)
- 阪神高速道路公団(阪神高速、現・阪神高速道路株式会社)(2005年)
※印は新設会社への事業継承。
注1:1991年10月1日に三菱マテリアル株式会社と合併し解散。
注2:1998年12月1日に日本高速通信(Teleway(テレウェイ))と合併し、ケイディディ株式会社と商号を変更、2000年10月1日に第二電電株式会社(現・KDDI株式会社)と合併し解散。
[編集] 過去に民営化が検討された機関
- 公共職業安定所
- 関連事業分野が市場化テストの対象となっていた。当時盛んに政府の「改革」会議、経済財政諮問会議等で民営化が叫ばれていた(途中で叫ばれていた場所が改革会議から経済財政諮問会議に移動したのは、当時推進を主張していた八代尚宏民間議員が途中で経済財政諮問会議に移ったからである)。また、日本経済新聞など一部新聞中には社説等で民営化賛成論調での記事(八代尚宏民間議員が「経済企画庁」→「日本経済研究センター(日本経済新聞社と同じフロアにある組織)」の経歴であることと関係している)が書かれており、当時民営化を鼓吹し誘導記事で推進運動する日本経済新聞のような一部マスコミも過去に存在した。リクルート等が職業紹介事業に参入している中セーフティーネットの構築について国会で検討すべき課題は多い。リクルートは官民比較時に就職困難者をハローワーク側に誘導するなど不正行為もあったが、2006年市場化テスト評価委員会(座長=佐藤博樹・東京大学社会科学研究所教授。前述の八代尚宏も評価委員会のメンバーである)は2007年11月26日、2006年度に市場化テストモデル事業として実施した求人開拓事業の実績評価を行い、民間実施地域では、開拓求人件数、開拓求人数、充足数のすべてにおいて、国の比較対象地域の結果を大きく下回った。民間実施地域では、それぞれ同地域における平成17年度の国実施時の実績を下回り、開拓求人数1人当たり、充足数1人あたりのコストは国の比較対象地域よりもはるかに高くなっている、と公式に結論づけた。「民に任せた方が、サービスの質の向上とコスト削減を同時に実現できる」という民営化推進論者の主張に反し、民営化テストは国の連戦連勝の結果に終わった。
- 公立病院
- 岡山市では、すでに不採算だった岡山市立吉備病院が済生会に売却され済生会吉備病院となった。岡山県立岡山病院は地方独立行政法人化し、岡山県精神科医療センターとなった。今後も増加すると思われる。また、PFI方式(半官半民方式)では、県立中央病院と高知市立市民病院の機能を統合して、高知医療センターが開院している。しかし、前院長と民間会社社員が贈収賄で逮捕されており「官民癒着の温床」、民間のみ黒字で病院本体が赤字であることや、「下請け、孫請け」企業の悲惨な雇用実態などから「医療分野では失敗」の指摘もある[2]。
- 一部の独立行政法人
- 一部報道では、造幣局・印刷局等、収入に占める政府からの補助金の割合が低く、政府の補助の必要性が低いとされる法人の民営化が検討されている、と報じられた。この事態に関して、両法人は貨幣流通という国家の存立にかかわる事業を行っているから、民営化にはなじまないとする見解がある。
- 刑務所
- 民間企業が運営に一部参加するPFI方式による刑務所が美祢社会復帰促進センターを皮切りに現在までに全国で4ヶ所開所している。なお、PFIは民間活力を利用した半官半民方式であり、ここでいう「民営化」には該当しない。
- 日本放送協会(NHK)
詳細は「NHK民営化」を参照
- 大阪市交通局など、各自治体が直営している公共交通事業
[編集] 諸外国での民営化
- ドイツポスト
- 郵便、貯金、通信の3部門に分割され民営化。郵便部門のドイツポストは、ドイツの枠を超えて、国際的物流企業となったが、同社は、通常郵便の独占利潤をもって小荷物部門への国際事業展開を行っており、通常郵便に競合他社が事実上クリームスキミング[3]的に参入している日本とは事情が大きく異なる。
- カリフォルニア州の電力事業
- 民営化に失敗し、カリフォルニア電力危機を引き起こした。
- イギリス国鉄
- 1994年に施設管理を行うレールトラック社と25の列車運行会社、13の軌道メンテナンス会社に分割民営化された[4]。レールトラック社は株主への配当を重視するあまり施設管理への投資を怠ったため、多くの重大な鉄道事故を引き起こし2002年に倒産、施設管理事業は国営企業のネットワーク・レールに引き継がれた。
- ニュージーランド・ポスト
- 1987年に旧郵便電信省が郵便、金融、通信の3つに分割され、金融と通信部門は民営化され郵便部門は公社化された。金融部門はその後オーストラリア資本のオーストラリア・ニュージーランド銀行グループへ売却され、通信部門はアメリカ合衆国資本のベル・アトランティック社とアメリテック社へ売却された。郵便局の店舗数削減により国民へのサービスが低下したため、郵便公社傘下で国営銀行「キーウィ銀行」が2002年に設立された。
- ボリビアの上下水道
- 世界銀行の指示により民営化したが、大幅な値上げにより反発を呼び、コチャバンバ水紛争を引き起こした。
- 大韓航空公社
- 1969年に韓進グループが引き受け大韓航空に改名、民営化。
- 韓国タバコ人参公社
- 2002年、KT&Gに社名変更。民営化。
- 浦項製鉄
- 2000年、韓国産業銀行が所有していた株式を全株売却。民営化。2002年にポスコに社名変更。
[編集] 脚注
- ^ これらの分野についても、日本では消防団、駐車禁止取締り活動など民間の協力によって担われている部分が少なからずあり、どこまで行政が責任を持つべきなのか議論となっている。
- ^ 2007年10月17日付東京新聞
- ^ 利益の多いところだけに参入していいとこ取りをすること
- ^ 民営化の後、減少の一途を辿っていた旅客数は過去最高のレベルに達したが、これについては民営化による効果によるのか、イギリス経済が好調である結果なのか、議論がある。