大衆文化における近親相姦

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大衆文化における近親相姦(たいしゅうぶんかにおけるきんしんそうかん)とは、大衆文化において扱われる近親相姦のことである。小説、音楽や映画などといった大衆文化の分野においては近親相姦のテーマが様々な形で扱われる。

概説

近親相姦は日本の官能小説の幾分普及した題材である。官能小説以外でも、近親相姦は時々非好色的な文学作品で記述されている。それに含蓄される意味は様々であり肯定的であったり否定的であったりする。近親相姦小説として知られている官能小説のジャンルにもっぱら捧げられるウェブサイトがある。インターネットの出現により、このタイプのフィクションは頻繁に閲覧できるようになった。

大衆文学において近親相姦が描かれる背景には、他の多くのフェティシズムと同じように、恐らく行為のタブーの性質が背徳感を加えることがあるためと考えられている。一方で、こういった作品に対しては家庭内暴力(性的虐待)の側面の軽視や、実際の話との差異が指摘されることもある。例えば、大衆文学は母親との関係を力関係の逆転のように描く傾向があるが、これは現実的に行うことが出来る話ではないと指摘される。

また、インセスト・タブーの規則は文化人類学的な贈与によるところが大きいとされ、ある文化において禁忌な近親性関係が他の文化では禁忌ではなく経済的な理由などから地域社会で認められており、そういった場合はその文化の内部においては倫理的な問題は感じられないということは現実社会ではよく見られる。そのため、禁忌に裏付けされたインセスト幻想論は説得力がなく、むしろ個々人の趣味に制約されるところが大きい。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


小説・戯曲・映画

西洋では『オイディプス王』や『ハムレット』など、古来より近親相姦をテーマにした作品が制作されてきた。『ハムレット』の扱っているのは死んだ夫の弟との結婚ではあるが、近親相姦的な意味合いを感じ悩む息子像が描かれる。

日本でも平安時代の義理の母と息子の近親姦の描写がある『源氏物語』(紫式部)は余りにも有名である。17世紀のジョン・ミルトン作の『失楽園』ではサタンは娘と交わり子供達を作る。雑誌『猟奇』の昭和3年(1928)10月号に掲載された兄妹の近親相姦を匂わせる『瓶詰の地獄』など、近年に至るまで近親相姦の主題はポップカルチャーの一つであった。

1967年のガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』では甥と叔母の近親姦が描かれる。ロバート・A・ハインラインのいくつかの短編小説にも近親相姦は描かれている。小説『ロリータ』(ロリータ・コンプレックスの語源)で知られるウラジーミル・ナボコフも『Ada or Ardor』(1969年)で近親相姦に満ちた家庭を描いた。

近親相姦はG・R・R・マーティンのベストセラー『氷と炎の歌』シリーズの主題を担う。シリーズでは、近親相姦のサディスティックな異常が描かれている。J・R・R・トールキンの『シルマリルの物語』においては記憶喪失になっている間に近親婚が行われる。

藤井重夫の小説『家紋の果』では息子が売春婦に使う金が欲しいからと母親に身体を与える。

1971年の平岩弓枝の小説『日野富子』では息子を自らの傀儡にしようとして交わる母親像が描かれる。

ルイ・マルの小説『好奇心 -Le Souffle au coeur』(1971)では母親と息子の近親姦が扱われる。ロマン・ポランスキーの『チャイナタウン』(1974)では父と娘の近親相姦が扱われる。イアン・マキューアンの小説『セメント・ガーデン』(1978)においても兄弟姉妹姦は扱われる。ベルナルド・ベルトルッチの小説『ルナ』Luna(1979)でも近親相姦が扱われる。

ジョン・アーヴィングの映画『ホテル・ニューハンプシャー』(The Hotel New Hampshire、1981)ではジョン(ロブ・ロウ)は姉妹に強い性欲求を感じる。1985年の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では母親がタイムトラベルで過去に戻った息子に恋をする話があり、台湾でクレームが来た。

デヴィッド・O・ラッセルの小説『Spanking the Monkey』(通称:猿たたき、1994)では母息子の近親姦が描かれたが息子は自殺未遂をしている。

ジョン・アーヴィングが1985年に書き上げ、1999年ラッセ・ハルストレム監督で映画化された『サイダーハウス・ルール』(The Cider House Rules) は父娘の近親相姦と妊娠を描く。

2003年の韓国映画『オールド・ボーイ』(Old Boy)は、姉と弟の近親姦を描く。

2007年刊行の桜庭一樹の小説『私の男』は父と娘の近親相姦が描かれている。なお、この作品で桜庭は第138回(2007年下半期)直木賞を受賞した。

アニメ・漫画

日本では1972~1973年に手塚治虫による近親相姦を扱った漫画作品『奇子』が連載される。手塚は1976年にも『火の鳥 望郷編』で母と息子の相姦を描く。

1980~1984年にかけ「血の繋がらない妹」を扱った『みゆき』が連載される。これが現在も続いている形式の一つの始まりである。

1984年には義理の妹を扱った『くりいむレモンパート1 媚・妹・Baby』(ビー・マイ・ベイビー)が発表された。これは、ビデオ倫理審査委員会(ビデ倫)を騒がせた問題作として当時話題となり、近親相姦系のアニメの始まりであったといわれる。

1994年に実の兄と妹の近親相姦と天使と悪魔の攻防を主題に描く『天使禁猟区』の連載が開始される。少女漫画では1998年には実の姉と弟の近親姦を描く『罪に濡れたふたり』の連載が開始される。

2004年4月から6月には兄妹の相姦を描く漫画『恋風』がアニメ化。2007年には兄妹の相姦を描く少女漫画『僕は妹に恋をする』が実写映画化される。

2007年から実の母と子の相姦を描く漫画『たとえば母が』が連載される。

2008年から実の姉と弟の相姦を描く漫画『あきそら』が連載される。

音楽

19世紀のドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーの音楽であるニーベルングの指環においても近親相姦は扱われた。

三上寛は「近親相姦の唄」と文字通りの楽曲を持ち歌とし、1972年のアルバム『1972・高知大学ライブ』にライブヴァージョンで収録された。

ケイト・ブッシュの1978年のデビューアルバム『The Kick Inside』では兄弟姉妹の近親相姦がモチーフにされている。

プリンスは『ダーティ・マインド』(1980)の「Sister」で近親相姦を取り扱う。

セルジュ・ゲンズブールは、1984年のアルバム『ラヴ・オン・ザ・ビート』収録曲「レモン・インセスト」で父娘の近親相姦を扱う。同曲は娘のシャルロット・ゲンズブールとのデュエットで歌われた。

ピクシーズは1987年の「Holiday Song」など、いくつかの楽曲に近親相姦をモチーフにしたものがある。

1992年12月にはニルヴァーナのコンピレーション・アルバム『インセスティサイド(Incesticide)』が発売された。

X Japanhideは1994年2月23日、初のソロアルバム『HIDE YOUR FACE』をリリースし、「HONEY BLADE」で近親相姦を取り扱う。

Dir en grey2001年12月19日に近親相姦をモチーフにした「embryo」を発売。

3ドアーズ・ダウンも2002年発売のアルバム『Away from the Sun』の楽曲「Sarah Yellin」で父と娘の近親相姦を扱う。

ドラマ

1993年のドラマ『高校教師』では父と娘の近親相姦が扱われ、1994年の『禁断の果実』では姉と弟の近親姦が扱われた。

舞台

1978年~2008年に上演された『身毒丸』も間接的ではあるが、義理の母子の近親愛が描かれた。

アダルトゲーム

1991年には、夢オチながら兄妹や父娘の近親相姦画像が幻覚という設定で含まれていたアダルトゲーム沙織 -美少女達の館-』を男子中学生が万引きする沙織事件が発生。

この当時もアダルトゲーム業界では近親相姦は良く扱われていた。代表的なものとして1995年のゲーム『夢幻泡影』(ALICESOFT)などがある。この作品では近親相姦の次の最後のシーンで実兄と実妹は心中する。1996年のゲーム『』でも主題ではないが実の兄妹姦は話題にされた。だが、リメイクの際にこの設定は義理に変更された。1996年にはエルフから父と娘の近親相姦の描写のある超大作のゲーム『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』も発表された。

1998年12月には、実の父と息子、実の母と息子、実の妹と兄、実の姉と弟の近親姦を取り扱ったアダルトゲーム『コ・コ・ロ・・・』が発売される。だが、販売禁止処分を受け回収される。

1999年6月22日、コンピュータソフトウェア倫理機構・倫理規程の改定により、「近親相姦の全面禁止」「18歳未満の性交描写禁止」「獣姦表現禁止」が成文化されたが、義理を除くと条件を出す。10月1日にこれは施行された。

1999年には義理の兄妹の相姦を主題にしたゲーム『加奈 ~いもうと~』も発売され筑紫哲也 NEWS23でも取り上げられ話題を博す。

2000年には、同人ゲーム『月姫』も発売され、この作品にも義理の兄妹の相姦描写は登場する。

2002年には義理の兄妹の相姦を主題として、「枯れない桜」をモチーフにファンタジー世界を描いたアダルトゲーム『D.C. 〜ダ・カーポ〜』も発売される。この作品は漫画化、小説化、官能小説化、テレビアニメ化、ラジオ化、CD化と様々なメディアミックスを見せ続けた。

2003年には義理の兄と弟の相姦の描写もあるゲーム『恋する妹はせつなくてお兄ちゃんを想うとすぐHしちゃうの』が発売される。

2004年秋には再びコンピュータソフトウェア倫理機構の規約は改定[1]。『死妹人形[2]が10月29日に発売され、一回のみながら実の兄妹の近親相姦シーンが出る。2004年11月には、実の兄妹の相姦シーンのあるアダルトゲーム『ALMA〜ずっとそばに…〜 -Complete Edition-』が発売された。2004年12月には、『おやつのじかん』(StudioRing)で兄妹相姦が扱われた。

2005年8月発売の『夜明け前より瑠璃色な』でも主人公の義理の妹が登場した。

2007年発売の『あかね色に染まる坂』では、主人公の実妹がヒロインの一人として扱われたが、2008年のテレビアニメ版では義理の関係であることを仄めかすような描写が挿入された。2008年発売の『ヨスガノソラ』でも、主人公の双子の妹がヒロインの一人として扱われており、年齢制限を掛けることになったが、2010年のテレビアニメ版でもそのままの設定で制作された。

2011年の作品では、『ラブラブル 〜lover able〜』や『SuGirly Wish』など実妹を登場させたアダルトゲームがある。

関連項目

出典・脚注

  1. ^ 倫理機構 倫理規程
  2. ^ 血縁関係のある肉体でのHは一回のみ

関連書籍