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半導体素子

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半導体素子(はんどうたいそし)は、半導体による電子部品、または電子部品の根幹である機能中心部の素子である。半導体の電子工学的な特性を利用した固体による電子回路の主要な構成要素であり「ソリッドステート・デバイス」とも呼ばれる。

半導体素子にはトランジスタ集積回路(IC・LSI)、抵抗コンデンサなどがあり、[1][2]テレビ受像機携帯電話コンピュータといった電気製品(電子機器)のほとんどに内蔵され、さらに自動車や各種産業機器などにもコンピュータなどの形で組込まれており、その工学上の重要性は非常に大きい。また経済上の重要性も非常に大きく、世界の半導体市場の売り上げは2009年で2,284億ドルであった[3]

半導体素子製作の大まかな流れ
クリーンルーム 半導体を利用した電子機器はホコリに弱いため、作業はこのような清浄な環境下で行われる。
シリコンインゴット(左の長い円柱)をスライスして、シリコンウェハー(下の薄い円盤)を作る。
回路の実装が済んだ様々なウェハー。碁盤の目状に見えるのは同一の回路(ダイ)が並んでいるため。これをダイヤモンドカッターで切り分ける。
ウェハーから切り分けられたダイ(上の写真の碁盤の目ひとつ分に相当)。複雑に入り組んだ回路が見える。
最終的な状態。
これは中身の見えるチップの例。中心に見えるのが、ウェハーから切り分けられたダイ。
その後、パソコンやテレビといった様々な電子機器内部に搭載される。

特徴

半導体素子が一般的に使われる前には、電子機器内の能動素子としては真空や気体を利用した電子管真空管など)が使われていた。しかし、半導体素子には次のような特徴があるため、殆どの応用分野で電子管を代替し、凌駕した。

  • ヒーターが不要なため消費電力が少なく、電源投入と同時に動作する。
  • 低温で動作するため寿命が長い。
  • 固体であるため振動加速度に強く信頼性が高い。
  • 同じ動作をさせるのに必要な体積・面積が小さい。

当初電子管に比べて不利とされていた弱点についても、それを補う方法が開発され、さらに広く普及した。

  • 温度による特性の変化が大きいので、補償回路が必要である。→補償回路を含んだ集積回路の製作。
  • 製造工程の少しの変化が大きな特性変化として現れる。→デジタル回路化し、特性のばらつきの影響を小さくする。または、製造工程の管理を厳しく行う。
  • 電気的なストレス(過負荷、過電圧、過電流など)に弱い。→回路設計上の工夫や各種保護回路との併用。

材料とその性質

殆どの半導体素子は、単結晶シリコンを使用するが、他に利用される材料としてゲルマニウムヒ化ガリウム (GaAs)、ガリウム砒素リン窒化ガリウム (GaN)、炭化珪素 (SiC)、等がある。

半導体材料の伝導性は、結晶構造中の自由電子の過不足を生む不純物に依存する。通常多数キャリア(majority carrier)(N型半導体では電子、P型半導体では正孔)を通じて担われる。しかし、トランジスタなど多くの半導体素子では、動作するためには少数キャリア(minority carrier)N型半導体では正孔、P型半導体では電子が必要である。

半導体の整流効果(電流を一方にだけ良く通す性質)は、元来は方鉛鉱の結晶で発見された。初期のラジオ受信機鉱石ラジオ)では、鉛の保持具に埋め込んだ方鉛鉱の結晶の表面に「猫のひげ」と呼ばれた細い金属線をわずかに接触させたものが用いられた。

能動素子の構造の歴史

点接触形

もっとも初期のタイプである。ゲルマニウムなどの半導体表面に針を刺して各端子にする物である。1945年にダイオードが、1948年にトランジスタが開発された。点接触形ダイオードは端子間容量が小さく、高周波特性が良いので検波用ダイオードとして広く用いられ、今日でも特定用途に生産されている。他方、点接触形トランジスタは、トランジスタ発明当時の姿であり、エミッタ端子とコレクタ端子との間隔を微小に保つことの困難さや、動作の不安定さなどからまもなく接合型トランジスタに取って代わられた。 この方式以外の半導体は、原則としてすべて接合型構造に分類される。

結晶成長形

純粋な半導体の単結晶を溶融半導体中に入れ、ゆっくり引き上げ棒状に成長させるものである。

レートグローン形
ドナー不純物とアクセプタ不純物をともに少量含ませた溶液から引き上げるものである。引き上げる速度を速くするとP型半導体が成長し、遅くするとN型半導体が成長する。ベース領域が厚くなるため高周波特性を良くすることが困難である。
グローン拡散形
引き上げる過程で溶融半導体中に加える不純物を変化させると結晶の場所によりP型あるいはN型半導体が成長する。これによりダイオードの場合PN、トランジスタの場合P-N-P(あるいはN-P-N)構造を作るものである。

合金接合形(アロイ形)

ゲルマニウムトランジスタ全盛期に一般的だった製法である。ゲルマニウムの薄いN型単結晶を、アクセプタとなるインジウム等の金属粒で両面から挟んで熱接合し、合金部分から拡散したアクセプタによってPNP構造を形成したもの。(NPN型もあったが、Siトランジスタでは使われなかったと思われる)

  • ドリフトトランジスタ
  • 表面障壁形
  • マイクロアロイ形
  • マイクロアロイ拡散形

メサ形

断面が台地(メサ)状で、厚み方向に電流を流すものである。PN接合ダイオードの場合PN、バイポーラトランジスタの場合PNP/NPN、サイリスタの場合PNPN構造を形成する。

2000年代では、大電力用パワーデバイスのみに使用されている。

プレーナ形

同一平面上に端子用電極を形成したものである。電流経路を短くすることが可能で高周波特性が良いなどの特徴がある。

また、微細加工により多くの素子を並べて写真技術の応用で製造できるためばらつきが少なく大量生産に向く。この特徴を生かしてモノリシック集積回路が発明された。

プロセスによる分類

拡散接合形
半導体基板に拡散イオン注入などで不純物を含ませるものである。
エピタキシャル形
低い抵抗値の半導体基板の表面に薄い高抵抗の結晶層を形成するものである。
SOI (silicon on insulator)
絶縁体上にシリコンのプレーナ形半導体素子を形成する技術である。絶縁体上の薄膜を利用するので、基板下部からの漏れ電流が少なく、耐放射線性能が向上する。システム液晶ディスプレイ・漏れ電流が少なく高速動作が可能なCMOS-IC・高耐圧MOS-IC・耐放射線素子の製作に使用される。絶縁体には人工的に作られたサファイアが使われることもある(silicon on sapphire:SOS)。

半導体素子の例

半導体素子には、トランジスタダイオード(整流器)・発光ダイオード (LED) 等がある。こういった単体の半導体素子は「ディスクリート半導体」(個別半導体)と呼ばれる個別部品として生産・使用されているが、多数の半導体素子を一括して作成した集積回路 (IC, LSI) の方が流通量や産業規模としても大きな位置を占めている。集積回路になると、トランジスタやダイオードといった能動素子に加えて、抵抗やコンデンサといった受動素子も半導体素子として構築される。

2端子素子

2端子素子は通常「ダイオード」と呼ばれる。

3端子素子

素子のオン状態およびオフ状態を外部から与える信号によって任意に切り替えられることが出来るものを自己消弧素子という。

トランジスタ

サイリスタ (SCR)

主な半導体製造メーカー

日本

日立製作所三菱電機日本電気のDRAM部門が独立・合併して設立された。
日立製作所三菱電機の半導体部門が合併して設立されたルネサス テクノロジNECエレクトロニクスがさらに合併して設立された。

大韓民国

台湾

米国

ヨーロッパ

フィリップスの半導体部門が分社化して誕生
シーメンスの半導体部門が分社化して誕生
インフィニオン・テクノロジーズの半導体メモリー部門が分社化して誕生

主なファブレス半導体ベンダー

ファブレスとは、自社内に製造部門を持たずに開発や設計を行い、他社に製造を委託すること、またはその会社を指す。詳細はファブレスを参照。

米国

台湾

出典・脚注

  1. ^ 菊池正典著、『やさしくわかる半導体』、日本実業出版社、2000年6月30日初版発行、ISBN 4534030975
  2. ^ 西久保靖彦著、『半導体の基本と仕組み』、秀和システム、2003年3月6日第1版第1刷発行、ISBN 4798004928
  3. ^ 米ガートナー社 2010年3月29日プレス・リリース

関連項目