マコモ

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マコモ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: イネ科 Poaceae
亜科 : エールハルタ亜科 Ehrhartoideae
: Oryzeae
: マコモ属 Zizania
: マコモ Z. latifolia
学名
Zizania latifolia L.
和名
マコモ(真菰)、ハナガツミ(花勝美)
英名
Manchurian Wild Rice

マコモZizania latifolia、真菰)は、イネ科マコモ属多年草。別名ハナガツミ。肥大した新芽はマコモダケと称して食用にされる。

特徴

東アジア東南アジアに分布しており、日本では全国に見られる。水辺に群生し、河川などに生育。また食用にも利用される。成長すると大型になり、人の背くらいになる。花期は夏から秋で、雌花は黄緑色、雄花は紫色。葉脈は平行。

栽培と利用

マコモダケ。緑色の葉鞘を何枚か剥ぎとっていくと、中から真っ白な可食部分が現れる。
調理済みのワイルドライス

マコモダケ(下記参照)として食用されるほか、日本では、マコモダケから採取した黒穂菌の胞子マコモズミと呼び、お歯黒眉墨漆器の顔料などに用いられてきた。

マコモダケ

黒穂菌英語版(くろぼきん)の一種 Ustilago esculenta寄生されて肥大した新芽はマコモダケ(真菰筍、茭白。マコモタケとも)と呼ばれる食材で、古くは万葉集に登場する。中国台湾ベトナムタイラオスカンボジアなどのアジア各国でも食用や薬用とされる。台湾では「茭白」が標準的な呼び方であるが、中部の南投県埔里鎮周辺が特産地として名高く、色白の女性の足に見立てた「美人腿」の愛称で出荷されている。

たけのこを優しくしたような適度の食感と、ほのかな甘味、ヤングコーンのような香りがある。くせがなく、さっと茹でたり、グリル焼き、炒めものにも向いているほか、新鮮なものは生食してもおいしい。沖縄県では「まくむ」、鹿児島県奄美大島では「台湾だーな(竹)」と呼んで、炒め物のイリチー奄美料理の「いっき」、油ぞうめんなどに使用する。中国では他にスープの具にもされ、台湾では麺類の具のひとつにも加えられることがある。細かく刻んで餃子ハンバーグチャーハンなどに用いることもできる。

収穫は秋で、新芽の根元がじゅうぶんに肥大したらすぐに収穫する。収穫が遅れると、組織内に真っ黒な胞子が斑点状に混じるようになり、食感・食味も落ちて、商品価値は失われる。

石川県河北郡津幡町は町の特産品としてマコモの栽培に力を入れている[1]

ワイルドライス

北米大陸の近縁種(Z. aquatica、アメリカマコモ)の種子は古くから穀物として食用とされており、今日もワイルドライスWild rice)の名で利用されている。

ワイルドライスの生育圏はオジブワ族メノミニー族など、五大湖地方アメリカ・インディアンの部族それぞれによって縄張りがあり、彼らの保留地(Reservation)で栽培されるワイルドライスは近年、スローフード運動の一環としても注目され、商品化もされている。

このような事情から、マコモは野生植物から食用作物への過渡期の初期段階と見られる場合がある。しかし、種子の発芽力が乾燥に弱いため[2]イネに割合近い植物でありながら、種子から栽培できる変異種の選別が行われなかったと考えられている。従って、日本でマコモの栽培を行う場合は、種子からではなく親株から株を分けるという方法を採る。

なお、近年では米国(カリフォルニア州ミネソタ州など)、カナダハンガリーオーストラリアなどでワイルドライスの商業栽培がすすめられている[3]

脚注

  1. ^ 水田を活用したマコモタケ栽培事例(石川県津幡町)
  2. ^ 乾燥2-3日で発芽しなくなる。
  3. ^ 英語版による。

参考文献

  • 小野寺広志『マコモ誕生の記』EYE企画、1985年
  • 中村重正 『菌食の民俗誌 -マコモと黒穂菌の利用-』(八坂書房、2000年) ISBN 978-4-89694-453-2 URL
  • 永田信治「不思議の国の「マコモ」」『まこも草子』100号、2010年3月
  • 星川清親「食用作物」
  • まこも草子編集部『まこも草子』マコモの会 会報誌、企画制作: デラフィック

関連項目

外部リンク