タイムマシン (ドラえもん)
タイムマシン(Time Machine[1])は藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』、『大長編ドラえもん』シリーズ、その他『ドラえもん』派生作品に登場するひみつ道具。
作中の概要
2008年に発明され[2]、実用化された時間旅行用の乗り物。のび太の勉強机の最上段の引き出しの中が時空間への入り口になっており、そこに浮かべてある「空飛ぶじゅうたん型」のタイムマシンが作中でしばしば使われる。『ドラえもん』という作品において「タイムマシン」といえばおもにこれを指す。以下に記すようにさまざまなタイプがある。
空飛ぶじゅうたん型
概要
全長2.2メートル、全高1.28メートル、全幅1.6メートル、重量538キログラム、メビウス・ロータリーエンジンを搭載[3]。ドラえもんの所有するものは中古品のためエンジンの始動に多少時間がかかる。『ドラえもん のび太の恐竜』に登場した黒い男が使っていたものは「悪のタイムマシン」と呼ばれる。定員は1名で、ドラえもんの所持するものより速く飛ぶことが可能で、また故障も少ない。
時間移動は時空間を通って行い、移動後は現実空間の虚空にタイムホールと呼ばれる穴が空き、これが時空間と現実空間の出入口となる。タイムホールや机の引き出しからは時空間の風景が見える[4]。ドラえもんが初めてのび太のもとへやって来た際は、この出入口がのび太の勉強机の引き出しの中に空いてしまったため、以来、この引き出しがタイムマシンへの搭乗口となっている。そのため、野比家以外の場所にいても、のび太の机を「とりよせバッグ」で取り寄せれば、タイムマシンに乗り込むことができる。
当初は、ドラえもんは「タイムマシンの秘密は他人に知られてはいけない」とのび太に告げていた[5]が、それ以前にクラスメイトを勝手に乗せたことがある[6]。さらにその後、クラスメイト以外の赤の他人を乗せたこともある[7]。
操縦は比較的容易のようで、後述の音声認識機能が装備される前の手動操作時でも、のび太やしずかが操縦したこともある[8]。また、殿様が誤ってタイムマシンに搭乗し、タイムマシンが勝手に動き出したこともあった[9]。連続ワープで地球外まで移動することも可能[8]。さらに『ドラえもん のび太の新魔界大冒険』『ドラえもん のび太のロボット王国』ではパラレルワールド(異世界あるいは別次元)と現実世界を行き来する描写もある。当初は行先の設定を手動で行っていたが、のちに音声認識機能がつき、年代や歴史上の人物名を言うだけでその時代に行けるようになった[10]。その後、大幅に改造して「時空間ナビ」がつき、ある一定の人物や物などの年代(もしくは次元)に直接向かえるようになる[11]が、このバージョンはその1度しか使用されていない。また、故障して制御不能に陥ったタイムマシンに「なんでも操縦機」を取り付けて操縦したこともある[11]。
当初の搭乗可能定員は3人で[12]、5人搭乗した上に黒い男の銃撃を受け故障した[13]。のちに改良されて5人(『ドラえもん のび太の日本誕生』『ドラえもんのび太のドラビアンナイト』などでは6人)以上が搭乗可能となり[14]、サイズも一回り大きくなっている。座席は操縦者の分が用意されているのみで、他の乗員は構造上、操縦席より後方の板状ボディの上に立つか座るしかない。
進行中は、機体を囲むように球形の保護空間が形成され、これを「タイムマシン空間」と呼ぶ[15]。これにより、搭乗者は安全に時間の流れの中を進むことができるという。しかし時間の流れの中に発生した時空乱流[16]や時空の迷宮[11]、それに「ねじれゾーン」[17]を完全には回避できていない。
用例
のび太が大人となった時代では、野比家はマンションに引っ越し、野比家のあった場所は公衆便所になったため、タイムマシンの出口は公衆便所の、しかも個室の中になってしまった[18]。ただし、それは「のび太の机があった場所」を出入り口に設定したためである。「のび太の机」を出入り口に設定することも可能で、物置に仕舞われていた勉強机につながったこともある[19]。
ノビスケはのび太の勉強机をそのまま使っており、ドラミがその時代へやって来たときは、その引き出しから現れた[20]。またセワシもその机を持っており、同じ引き出しが出入り口になっている[21]。
種類
ドラえもんの使用する空飛ぶじゅうたん型以外にも多くの種類が存在する。
タイムマリン
- 主にタイムパトロールが使用する潜水艇型巡視船[13]。四次元振動機で時間を移動する。
- 翼には原子力エンジン、足にはタキオンエンジンを搭載しており、時空間捜索用のタイムソーナーや時空間を超えて使用できるTP(ティーピー)ミサイルを保有[22]。地中潜航も可能。
- 基本形は潜水艇型だが、しばしば大型動物に化けて調査を行う場合もある[23]。
時空間チューリップ号
- 主にドラミの使用するタイムマシン。チューリップの花を模している。開放型の「空飛ぶじゅうたん型」と異なり、内部に搭乗して操縦する。
- かつては、動力源はエネルギータンクに蓄える愛エネルギー、速度は「空飛ぶじゅうたん型」の2倍、価格は同じく5倍であった[24]。
- 現在は、動力源は太陽エネルギーで、速度は「空飛ぶじゅうたん型」の3倍、価格は同じく10倍である。高性能タイムセンサーを搭載しており、他のタイムマシンを追跡することも可能。22世紀のドラミの自室にある鏡台の鏡が搭乗口になっている。
- 原作では名前が出ていない。「チューリップ号」という通称が『ドラえもん百科』(方倉陽二著)に登場したのち、現在正式名称は「時空間チューリップ号」とされている[25]。
ディノハンター
『ドラえもん のび太の恐竜』に登場する、ドルマンスタインらが使用する亜空母艦[13]。スコルピオンを10機以上積載可能。反重力エンジンを使うことで最高速度での飛行が可能。超大型四次元振動機によって時間を移動する。タイムパトロールを探すためにタイムレーダーを備える。時空間を超えて打ち込むことのできるミサイルや、小規模の飛行艇を一発で打ち落とすことのできるレーザー砲を備える[22]。
スコルピオン
『ドラえもん のび太の恐竜』に登場する、ドルマンスタインらが使用するタイム装甲車。翼に原子力エンジンを備える。内蔵されたタイムマシンで時間移動を行う。恐竜捕獲のためのマシン[22]。
レンタルのタイムマシン
球形のタイムマシン。22世紀では、各リース会社が格安のタイムマシンを貸し出しており、手軽に時間旅行を楽しめるという。人気が高く、ガタガタと揺れる、乗り心地の悪い型しか借りられない場合もある[26]。
タイムパラドックス
タイムマシンに付き物のタイムパラドックスについてはほとんど言及されていない(SFによくある様々な設定が織り混ざっている)が、あまりに歴史に大きな影響をおよぼすような行為は「航時法」と呼ばれる法律によって禁止されている。そうした禁止行為のひとつに古代生物の狩猟があり、ハンターとタイムパトロールとのイタチごっこが続いている[13]。そういいつつも、ドラえもんとのび太は何度か歴史を変えたこともある[27]。
また、ドラえもん世界でのタイムパラドックスの1つの特徴として、「時間を改変しようとした者が、出発した時間以前に発生した出来事についての記憶や記録は、時間改変後も変わらない」というものがある[28][8]。ただし、基本的にはタイムマシン搭乗者以外の記憶は時間改変後に変わる[29]。 もう1つの特徴としては、「過去を変えようとした行動がすでに歴史の一部として組み込まれている」というものもある。[30]
なお、のび太が、ドラえもんが自分の将来像や結婚相手を変えてしまったらセワシが生まれてこなくなるのではないかと指摘したのに対して、セワシは「ほかでつりあいをとる」「違う交通機関を使っても同じ目的地に着けるように、経過はどうあれ自分は必ず生まれてくる」との説明をしている[31]。
基本式
D.T.C.M.データ(ドラえもん、タイムコントロールマシン)[32]
- エンジン
- 藤子製作所AF2型
- 出力
- E=1.4×N
- 空間わん曲率
- P=12.1×MKS
- 性能疲労率
- w/s
- バランス・時間加速度
- tα=4×C
E(エネルギー)=m(質量)×c(光速)の2乗 に基づく。
作中での活躍
タイムマシンに関するエピソードとして、「ドラえもんだらけ」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』5巻に収録)など、以下の作品があげられる。
- 「ぼくを止めるのび太」(てんとう虫コミックス『ドラえもんプラス』第1巻に収録)
- 「月給騒動」(てんとう虫コミックス『ドラえもんプラス』第2巻に収録)
- 「あやうし! ライオン仮面」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』第3巻に収録)
- 「無事故でけがをした話」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』第22巻に収録)
- 「タイムマシンがなくなった!!」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』第22巻に収録)
- 「ガラパ星から来た男」(てんとう虫コミックス『ドラえもん』第45巻に収録)
大長編や映画では劇中の舞台となる時代(白亜紀や7万年前の日本など)に移動したり、長期の無断外泊で留守にしてしまった際出発した日に戻るといった描写がある[33] 。
美術上の演出
原作では、タイムマシンが航行する空間は壁がカーテンのようにねじれており、そこに時計がゆがんで描かれている。アニメでも基本的にこれを踏襲した描写がなされている。
アニメ第1作(日テレ版)では、オープニング映像の冒頭でタイムマシンに乗ったドラえもんが描かれている。背景の画面はセルアニメでゆがんだ時計が描かれている。
アニメ第2作第1期では、背景がスキャニメイトで描かれていた。これは当時の他のアニメやニュース番組のオープニングなどでも頻繁に使われ、アニメ第2作第1期の放送が開始した1978年から1980年代初頭当時にかけては一般的なエフェクトであった。(詳しくはスキャニメイトを参照)
アニメ第2作第2期では、CGによりゆがんだ時計の壁が描かれている。
脚注・出典
- ^ “『ドラえもん』はアメリカでも人気を得られるか? 今夏から「米国版」放送開始”. THEPAGE. (2014年5月26日)
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第41巻収録「未来図書券」
- ^ 『決定版 ドラえもん大事典』(2001年、小学館)
- ^ 『STAND BY ME ドラえもん』、アニメ第2作第2期『赤いくつの女の子』『スネ夫ゆうかい事件』『のび太の息子が家出した』その他多数。
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第16巻収録「宇宙ターザン」
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第44巻収録「のび太の名場面」(初出は1977年11月)。この話でしずか、スネ夫、ジャイアンが初めてタイムマシンに搭乗する。またすでに彼らはタイムマシンの存在を知っていた模様で、そのことを示唆する発言がある
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第24巻収録「火災予定報知ベル」
- ^ a b c 『ドラえもん のび太と鉄人兵団』
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第24巻収録「二十世紀のおとのさま」
- ^ 『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』
- ^ a b c 『ドラえもん のび太とロボット王国』
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第25巻収録「竜宮城の八日間」
- ^ a b c d 『ドラえもん のび太の恐竜』
- ^ 映画『ドラえもん ぼく、桃太郎のなんなのさ』
- ^ 『ドラえもんひみつ全百科(ドラえもんひみつオールひゃっか)』(『てれびくん』1980年6月号付録)小学館、1980年。
- ^ 『ドラえもん のび太の日本誕生』
- ^ 『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』6巻収録「のび太のおよめさん」
- ^ 藤子・F・不二雄大全集『ドラえもん』第2巻収録「大きくなってジャイアンをやっつけろ」
- ^ 『ドラミちゃん ミニドラSOS!!!』
- ^ テレビアニメ『ドラえもん』(第2作第1期)「のび太の『夢の金メダル』」(1980年5月5日放送、ビデオおよびDVD「ドラえもん テレビ版スペシャル特大号」春の巻1に収録)
- ^ a b c 『映画アニメドラえもん』小学館〈コロコロコミックデラックス 3〉、1980年4月3日発行
- ^ 『ドラえもん のび太の日本誕生』ではマンモス、『ドラえもん のび太の南海大冒険』ではクジラ
- ^ 『ドラえもん百科』第2巻収録『ドラミちゃん質問箱』
- ^ テレビアニメ『ドラえもん』(第2作第2期)『のび太くん、さようなら! ドラえもん、未来に帰る…』(2006年9月1日放送)
- ^ テレビアニメ『ドラえもん』(第2作第1期)「セワシくんの家出」(1997年3月29日放送、ビデオ「ドラえもん テレビ版スペシャル特大号」春の巻5、DVD「ドラえもん コレクション・スペシャル」春の5に収録)
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第17巻収録「モアよドードーよ、永遠に」、てんとう虫コミックス『ドラえもん』第24巻収録「火災予定報知ベル」ほか
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第3巻収録「ペロ! 生きかえって」(※ペロがドラえもん達によって眠らされていたという解釈も存在する)
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第22巻収録「無事故でけがをした話」
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第15巻収録「タイムマシンで犯人を」、37巻収録「のび太の0点脱出作戦」
- ^ てんとう虫コミックス『ドラえもん』第1巻収録「未来の国からはるばると」
- ^ 『ドラえもん百科』第1巻収録「ドラえもん秘密百科」
- ^ 「のび太の恐竜」「のび太とアニマル惑星」など。