X-43 (航空機)

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X-43

NB-52Bから投下されるペガサスロケット、先端にX-43。

NB-52Bから投下されるペガサスロケット、先端にX-43。

  • 用途:スクラムジェット試験機
  • 製造者NASA
  • 運用者NASA
  • 初飛行:2001年6月2日
  • 生産数:3機
  • 退役:2004年11月16日
  • 運用状況:退役
X-43A極超音速実験機のイメージ
ラングレー研究所の高温風洞にあるX-43の実物大モデル
マッハ7到達時のコンピュータ計算による流体解析の等高線図(CFD画像)

X-43は、NASAで開発、実験が行われた、スクラムジェットエンジン搭載の無人試験機である。愛称はハイパーXHyper-X)。2004年11月16日に、エア・ブリージングエンジン(空気吸込み型エンジン。要は、ロケット推進ではない、という意味)を搭載した機体としては最高速度となる1万1854キロメートル毎時(7546マイル毎時マッハ9.68)を記録した世界最速航空機である。

概要[編集]

X-43は実験を通して極超音速飛行下のスクラムジェットの性能、挙動を確認するハイパーX計画のために建造された無人機であり、将来の再使用型宇宙往還機に必要なデータを集めることが目的であった。計画は1996年10月9日に発表された。A型をはじめ、B、C、D型の機体が建造される予定であり、多くの実験が行われるはずであった。X-43Bでは複合サイクルエンジンの搭載が検討され、X-43Cでは炭化水素系燃料の使用が検討されていた。しかし、高額な予算が計画遂行の障害となり、B型以降の機体はキャンセルされ、また飛行計画も大きく削減された。

2001年6月2日に行なわれた1回目の実験では加速用のペガサスロケットの不調で、空中発進後からわずか11秒後に、稼働状態に至らずに太平洋に落下、機体を喪失した。この事故によって計画は遅延。約3年後の2004年3月27日に2回目の飛行試験が行われ、マッハ6.83[1]を記録した。

そして2004年11月16日、結果的に最後の飛行となった3回目の飛行試験でマッハ9.68[1]の最高速度を記録した。この3回目の計画をもって、X-43計画は終了した。

機体形状[編集]

機体規模はきわめて小さく、大人の身長ほどの全長しかない。形状はX-30ジェネラル・ダイナミクス案に酷似したリフティングボディで、全体で揚力を生み出す構造となっている。機体側面、及び上面に極めて小さな主翼と2枚の垂直尾翼を持ち、胴体下部に箱型のスクラムジェットを装備している。推進剤は液体水素を用い、空気中の酸素を酸化剤とする。燃料搭載量は約1kgに過ぎない。

飛行は、ブースター用に改修されたペガサスロケットの先端に取り付けられた状態でNASAのNB-52に搭載され、1万メートル程度の高空から空中発進した後、さらに高空まで上昇。マッハ2まで加速、ブースターを切り離してスクラムジェットを作動する。スクラムジェット燃焼時間はわずか10秒足らずで、おおむねマッハ10まで加速、高度3万メートルを飛行する。エンジンカット後は滑空しながらデータを収集し、廃棄される。つまり機体は使い捨てである。

後続計画[編集]

X-43計画はA型の3回の飛行のみで中止された。後続の機体・計画は、液体水素ではなく一般的な炭化水素燃料を用いてマッハ7程度まで加速する、X-51計画であった。

スペック[編集]

  • 乗員:無人
  • 全長:3.7メートル
  • 全幅:1.5メートル
  • 全高:0.6メートル
  • 動力:スクラムジェットエンジン×1基
  • 最大速度:マッハ9.68(1万2144キロメートル毎時)
  • 最大到達高度:3万500メートル
  • 航続距離:1100キロメートル

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 『Xの時代―未知の領域に踏み込んだ実験機全機紹介』 文林堂〈世界の傑作機スペシャル・エディション〉、2004年、74-75頁、ISBN 4-89319-117-9、ISBN-13:978-4893191175。

外部リンク[編集]