X-14 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

X-14

Bell Type 68 VTOL

Bell Type 68 VTOL

X-14アメリカ空軍アメリカ航空宇宙局が試験していた垂直離着陸機(VTOL)。開発はベル社、社内モデル名称ベル 68。1957年2月19日初飛行。推力偏向方式の機体であり、各種の試験に用いられた。

概要[編集]

X-14
インディアナ州の個人収集家により改修中のX-14。
インディアナ州のロッキーアーマー博物館英語版に展示されているX-14。

ベル社はVTOL機を社内開発しており、ジェットエンジンを回転させる方式の試験機モデル65は1954年に初飛行し、垂直離陸に成功していた。これに着目した空軍は、これを発展させた機体を実験機として望み、1955年7月にX-14として開発契約が結ばれた。

X-14は推力偏向方式のVTOL機であり、2基のジェットエンジン排気を下方向に変更させ、垂直離着陸を行う。ジェットエンジンは機首に搭載し、排気口は機体中ほどにある。胴体末端と主翼端にもガスを導き、姿勢制御を行うこととなっていた。機体そのものはキャノピーが省略され、主翼と降着装置はビーチ・ボナンザから、尾翼はT-34メンターから流用されるなど簡略化されていた。Xプレーンとしては唯一の開放式操縦席を使用する機体である。

1957年2月17日に初飛行として垂直離着陸に成功し、1958年5月24日には遷移飛行にも成功している。1959年からはNASAのエイムズ研究センターで試験が行われた。同年中にはエンジンをアームストロング・シドレー ヴァイパー8(推力:700kg)からGE J85-GE-5(推力:1,220kg)に換装し名称もX-14Aに変更された。1971年にはGE J85-GE-19(推力:1,370kg)に再換装し、X-14Bに名称変更されている。1981年5月29日に着陸事故を起こし、修復が不能となったことから、機体は放棄された。1999年まではスクラップ置き場に放置されていたが、その後は民間人が機体を取得している。

X-14は実験機としては異例の24年にも渡る長期に使用され、VTOL機に関する多くのデータと有用な情報をもたらした。X-14AはNASAで月面着陸の機動に関する研究にも用いられ、X-14Aの制御システムは月面着陸機の物の基になった。

仕様[編集]

要目 (X-14A)[編集]

諸元

  • 乗員: 1
  • 全長: 7.62 m (25 ft 0 in)
  • 全高: 2.40 m (8 ft 0 in)
  • 翼幅: 10.36 m(34 ft 10 in)
  • 運用時重量: 1,406 kg (3,100 lb)
  • 最大離陸重量: 1,936 kg (4,269 lb)
  • 動力: アームストロング・シドレー ヴァイパー 8 ターボジェット、7.8 kN (1,750 lbf) × 2

性能

  • 最大速度: 277 km/h (172 mph)
  • 航続距離: 482 km (300 miles)
  • 実用上昇限度: 6,096 m (20,000 ft)
  • 推力重量比: 1:0.9


お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

要目(X-14B)[編集]

  • 全長:7.62m
  • 全幅:10.36m
  • 全高:2.40m
  • 自重:1.4t
  • エンジン:GE J85-GE-19ターボジェットエンジン(推力:1,370kg)2基
  • 最大速度:277km/h
  • 乗員:1名

参考文献[編集]

  • X-プレーンズ 世界の傑作機No67 文林堂 ISBN 9784893190642 1997年
  • 航空ファン別冊 No.32 アメリカ軍用機1945~1986 空軍編 文林堂 雑誌コード 03344-8 1986年

外部リンク[編集]