Delphi
| 開発元 | ボーランド(1-3、6-Turbo) インプライズ(4、5) コードギア (2007、2009) エンバカデロ・テクノロジーズ (2010以降) |
|---|---|
| 初版 | 1995年 |
| 最新版 | XE(2010年8月31日) |
| 対応OS | Microsoft Windows |
| 対応言語 | 日本語、英語、フランス語、ドイツ語 |
| 種別 | 統合開発環境 |
| 公式サイト | www.embarcadero.com/jp/products/delphi |
Embarcadero Delphi(エンバカデロ デルファイ)は、エンバカデロ・テクノロジーズが開発するMicrosoft Windows向けの統合開発環境である。開発会社の変更に伴って名称も少しずつ変わっており、かつてはCodeGear Delphi(コードギア-)、 Borland Delphi(ボーランド-)として開発されていた。
プログラミング言語として、教育用として見られる事の多い「Pascal」を大幅に拡張し、オブジェクト指向開発を可能とした「Delphi言語(Delphi6まではObject Pascalと呼ばれた)」を用いる。独自のフレームワークにより迅速なユーザーインターフェイスの設計、オブジェクト指向開発を可能とする。
本項ではDelphi Prismについても述べる。
目次 |
[編集] 概要
Win32 APIをObject Pascal用のクラスライブラリとして体系的に構築し直したVisual Component Library (VCL) を使用する。「コンポーネント」と呼ばれるソフトウェア部品を利用する事で、より少ない記述量でのコンピューターソフトウェアの開発が可能である。「フォーム」や「データモジュール」と呼ばれる台紙となるコンポーネント上に各種のコンポーネントを貼り付ける手法により、ユーザーインターフェイスやアプリケーションロジックの設計を視覚的に行う事ができ、試作の迅速化を実現する。またDelphiでソフトウェア部品であるコンポーネントの開発も可能であり、その開発環境自身も利用者のニーズに従って拡張可能である。
Delphiのプログラムのコンパイルに要する時間は、Visual C++などの他のソフトウェア開発製品に比べ群を抜いて短い。これは、Delphi言語(Object Pascal)が引き継いでいるPascalの構文法に由来し、Delphiの前身であるTurbo Pascalから続く伝統的性質である。その反面、最適化が甘いという欠点もある。
Delphiはまた、データベースとの親和性が高い。
Delphiで使われるコンポーネントの枠組は「Visual Component Library」(VCL) と呼ばれる。このフレームワークを用いてC++言語でのWindows向けソフトウェア開発を実現したものが「C++ Builder」である。また、Delphi自体はWindows専用の開発環境であるが、Delphi言語でのLinuxソフトウェア開発を可能とした製品として「Kylix」がある。
Delphiでは、ほとんどのWin32 APIが使えるようになっているうえ、関数を適切に宣言することにより、DLL内の関数も使える。
[編集] 歴史
[編集] 名前の由来
「Delphi」とは、ギリシャの古代都市「デルフォイ」を意味する。
当初、Oracleデータベースサーバのフロントエンドとしての採用を目論んでおり、古代ギリシャにおいてアポロンの神託(オラクル)を与えたのがデルフォイの神殿であった事からこの名前が付けられた。 これは元々はボーランド社内部のコードネームであったが、英語版が正式に発売される1995年2月よりも前の、1994年秋に開催されたCOMDEXにて Byte 誌の Best of COMDEX 賞(最優秀開発システムソフトウェア製品部門)を受賞し、一般に名前が広まったため、最終的な製品名となった。
[編集] Delphi 1から5まで
最初のDelphi(製品名:Delphi for Windows、コードネーム:Delphi)は、16ビットWindows(Win16)であるWindows 3.1向けに開発された。「コンポーネント」と呼ばれる設計部材による視覚的(ビジュアル)開発手法を採用するDelphiの基本的な性格は、この時既に定まっており、この画期的な製品はソフトウェア開発者らから大きな注目を浴びた。1995年9月に発売された。Delphi 1はまた、Delphiシリーズとしては唯一の16ビット開発環境としての側面も併せ持っている。なお、当初の日本語版には英語版で提供されていた Database Desktop や InterBase などが含まれておらず、価格も安価(29,800円)に設定されていた。その後、これらのツールを含む Delphi and Database Tools(68,000円)が発売された。
「Delphi 2」(コードネーム:Polaris)は1996年に発売された。これ以降、Delphiは開発対象をWindows 95に代表される32ビットWindows (Win32)へと移した。マイクロソフト社のVisual BasicとVisual C++の長所を兼ね備えた開発環境として人気を博し、その後も順調にバージョンアップを繰り返した。
「Delphi 3」(コードネーム:Ivory)は1997年に発売された。パッケージと呼ばれるDelphi独自のDLL形式をサポートし、その後のDelphiの原型となった。ActiveXコントロールの開発をサポート。Webアプリケーション開発機能の提供。
「Delphi 4」(コードネーム:Allegro)は1998年に発売された。NTサービスアプリケーションの開発、CORBAをサポート。
「Delphi 5」(コードネーム:Argus)は1999年に発売された。ADO対応、COMオブジェクトコンポーネントラッパーを提供。
[編集] Delphi 6
「Delphi 6」(コードネーム:Iliad)は2001年7月9日に発表された。日本でもPersonal版が無償で提供され、多くの著名なフリーウェアがDelphiで作成された。Kylixと互換性のある、Component Library for Cross-Platform(CLX)を搭載。
[編集] Delphi 7
「Delphi 7」(コードネーム:Aurora)は2002年8月22日に発表された。Professional版以上では「Delphi 7 Studio」の名称を使用。6で無償であったPersonal版は有償に変更になった。IntraWeb、RaveReportを搭載。Delphi for .NETのプレビュー版を添付。Professional版以上にはKylix 3のDelphi言語版が付属したが、その後KylixおよびCLXがこのバージョン限りで廃止された。エンバカデロ・テクノロジーズによる再販版が存在するが、こちらも「Borland Delphi 7」の名称を用いていた。ただし、「Studio」の文字は外された。
[編集] Delphi 8 for the Microsoft .NET Framework
「Delphi 8 for the Microsoft .NET Framework」(コードネーム:Octane)は2003年11月3日に発表された。「.NET Framework」に対応した「Delphi for the Microsoft .NET Framework」(Delphi.NET)の最初の製品だった。それ以前のDelphiの言語構文を殆ど変更する事なく.NETアプリケーションを開発できる。また統合開発環境(IDE)のユーザーインターフェイスが一新され、「Galileo」と呼ばれるMicrosoft Visual Studioと似た外観が導入された。.NET専用という点でDelphiの系譜の中ではやや異端のバージョンである。Win32の開発の為にDelphi 7.1が付属した。
[編集] Delphi 2005
「Delphi 2005」(コードネーム:DiamondBack、内部バージョン:9.0)は2004年11月4日に発表された。ボーランド社のC#言語開発環境である「C# Builder」とWin32開発用および.NET開発用のDelphiが統合された。Delphi 2005には無償版が用意されていたが、実際に提供されたのは欧州など限られた国のみだった。この製品では、IDEが大幅に強化された。UMLモデリング機能(「Borland Together」)や構成管理機能(「Borland StarTeam」)、リファクタリング機能の導入などである。また言語にもfor ... in構文(C#のforeachに相当)やinline命令などが追加された。
[編集] Delphi 2006、Turbo Delphi
「Delphi 2006」という名称の製品は単体では存在しない。他言語との統合版(Borland Developer Studio 2006)と単体製品(Turbo Delphi)で名称が異なっている。
「Borland Developer Studio 2006」(コードネーム:DeXter)は2005年11月24日に発表された。「Delphi 2005」の後継製品であり、Win32開発用および.NET開発用の環境として「Delphi 2006」(内部バージョン:10.0)が提供された。さらに、ボーランドのC++言語によるVCL開発環境「C++ Builder」が統合されている。
「Turbo Delphi」(内部バージョン:10.0)は2006年9月6日(英語版は8月8日)に発表された。これは「Borland Developer Studio 2006」上で他の言語と統合されていた「Delphi 2006」のうち、Win32開発用の環境を単体化したものである。Delphi2006 Update2 とほぼ同等の機能を持つ。また、.NET開発用の環境は分離され、「Turbo Delphi for .NET」の名称で同時リリースされた。無料版(Turbo Delphi Explorer / Turbo Delphi for .NET Explorer)も提供された。
[編集] Delphi 2007
2007年2月21日に「Delphi 2007 for Win32」(コードネーム:Spacely、内部バージョン:11.0)が発表された。名称が示すとおり、Win32開発用の環境である。Microsoft Windows Vistaに対応。
2007年9月6日にはこの他に.NET開発用の「Delphi 2007 for .NET」を含む統合版「CodeGear RAD Studio 2007」(コードネーム:Highlander)が発表された。.NET 2.0に対応。なおC#やWinformのサポートは打ち切られた。
その後、「Delphi 2007 for Win32 R2」が発表された。これはDelphi 2007 for Win32 Update3に、BlackFish SQLを追加した物である。
[編集] Delphi 2009
2008年8月26日に「Delphi 2009」(コードネーム:Tiburón、内部バージョン:12.0)が発表された。VCLとRTLのUnicode化が行われた。「for Win32」の文字はないがWin32開発用である。ジェネリクスや匿名メソッドが導入された。
2008年12月2日には.NET開発用の「Delphi Prism」を含む統合版「CodeGear RAD Studio 2009」が発表された。Delphi Prismについては後述する。
[編集] Delphi 2010
2009年8月25日に「Delphi 2010」(コードネーム:Weaver、内部バージョン:14.0)が発表された。Windows 7に正式対応。タッチインターフェイスやマウスジェスチャーの制作支援機能、オープンDBのFirebirdのサポート、IDEの改良などが盛り込まれた。
[編集] Delphi XE
2010年9月2日に「Delphi XE」(コードネーム:Fulcrum、内部バージョン:15.0)が発表された。XEは「Cross Platform Edition」の略で、今後のバージョンは「XE 2」、「XE 3」のようにする予定。名称通りクロスプラットフォーム開発環境を目指して開発が進められたものの、不完全であったため見送られている。アカデミック版を除き、Delphi 7、2007、2009、2010のライセンスが付属する[1][2][3]
[編集] 今後のDelphi
今後、x64ネイティブ、MacOS X、Linuxの各アプリケーション開発機能を組み込む予定である。また、先だってx64向けのコンパイラプレビューをリリースする予定である。
[編集] Delphi用コンポーネント
DelphiのVCLは、コンポーネントと呼ばれるソフトウェア部品の集合で構成され、プログラマはこのコンポーネントを組み合わせて視覚的にアプリケーションを開発する方式となっているが、ユーザープログラマがコンポーネントを自由に作成して開発環境自体に組み込み、開発環境を拡張することが可能となっている。 多くの有償/無償のコンポーネントが作成・公開され、開発環境を容易に拡張できるシステムはユーザープログラマからの支持も高いが、Delphiのバージョン毎に互換性が無い場合も多く、コンポーネントのソースコードが公開されている場合は使用しているDelphiのバージョンに合わせて自分でコンポーネントのコードを修正する必要がある。
[編集] Delphiで開発されたアプリケーション
かつてBorland社から提供されていたvclscannerというツールを使うと、DelphiまたはC++Builderで作成されたアプリケーションを知ることができる。有償/無償の製品・シェアウェア・フリーウェアが多数作成されている。
Delphi 6のPersonal版が無償で提供されたことから、多くのフリーウェアが開発された。
[編集] Delphi Prism
| 開発元 | コードギア (2009) エンバカデロ・テクノロジーズ (2010以降) |
|---|---|
| 初版 | 2009年 |
| 最新版 | XE(2010年8月31日) |
| 対応OS | Microsoft Windows |
| 対応言語 | 日本語、英語、フランス語、ドイツ語 |
| 種別 | 統合開発環境 |
| 公式サイト | www.embarcadero.com/jp/products/delphi-prism |
Embarcadero Delphi Prism(エンバカデロ デルファイ プリズム)は、エンバカデロ・テクノロジーズが販売する.NET向けの新たな統合開発環境である。
Delphi 8以降、.NET開発用の環境はWin32開発用の環境と一度は統合されたものの、Turbo DelphiおよびDelphi 2007で再び分離されることになった。それまでの.NET開発では、Win32開発で用いられていたVCLを.NET向けに移植したVCL.NETが用いられ、コードギアおよび、それを買収したエンバカデロ・テクノロジーズが独自に開発を行っていた。
Delphi 2009よりエンバカデロ・テクノロジーズは方針転換を行い、分離したDelphi for .NET (Delphi.NET) を置き換える決定を下した。こうして生まれたDelphi Prismは、Rem Objects社の言語コンパイラOxygeneとMicrosoft社のIDEを使用する全く新しい製品である。
Delphi for Win32 (Delphi Win32) と異なり、Delphi Prismは更新が頻繁に行われる。単体製品版には初年度分の年間メンテナンス&サポートが付属しており、翌年度以降も契約更新が可能で、この契約期間中であればいつでも最新版を入手することができる。このため、バージョンアップ版の設定がない。また、一度契約が切れてしまうと新規での製品購入が必要である。さらに、RAD Studio版には初年度分の年間メンテナンス&サポートも付属していないため、購入年度から加入していないとメンテナンスリリースを入手できないので注意が必要である。
[編集] 互換性
- Delphi for .NET (Delphi.NET)
- 製品名が示すとおり、VCL.NETを主体とした従来のDelphi.NETとは、ほとんど互換性が無い。しかし今までVCLとの互換性を維持する為に犠牲となっていた最新技術に対応している。
- Delphi for Win32 (Delphi Win32)
- Delphi Win32で作成したコードは、修正が必要になる場合が多い。また、Delphi PrismにはDelphi Win32とある程度互換性を保つオプションが存在する。
[編集] 主要バージョン
これらの他、メンテナンスリリースが存在する。
「Delphi Prism 2009」は2008年12月2日に発表された。Prismの最初のバージョン。
「Delphi Prism 2010」は2009年8月25日に発表された。クロスプラットフォーム開発機能により、Linux用のアプリケーション開発をサポート。
「Delphi Prism 2011」は2010年6月3日に発表された。クロスプラットフォーム開発機能がさらに拡張され、MacOS X、iPhone、iPod Touch、iPad用のアプリケーション開発をサポート。
「Delphi Prism XE」は2010年9月2日に発表された。Delphi Prism 2009、2010、2011のライセンスが付属する[1][2][3]。
[編集] 脚注
- ^ a b アップグレードした場合、元のバージョンと同じバージョンのライセンスの重複取得はできない。
- ^ a b 旧バージョンライセンスの取得は、購入180日以内に行う必要がある。
- ^ a b アカデミック版以外のRAD Studioでは、Delphi、Delphi Prismに含まれる旧バージョンライセンスの他、C++ Builder 6、2007、2009、2010のライセンスも含まれる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Delphi 公式サイト
- Turbo Explorer Turbo シリーズ公式サイト
- RAD Studio RAD Studio のオンライン ヘルプ
- Delphi Prism Delphi Prism Wiki