D言語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
D言語
en:File:D programming language logo.png
パラダイム マルチパラダイム
登場時期 1999年
開発者 ウォルター・ブライト
最新リリース 2.066.0 2014年8月18日
1.076 2012年12月31日
型付け 強い静的型付け
主な処理系 DMD(公式実装), GDC(GCC), LDC(LLVM)
影響を受けた言語 C言語, C++, C#, Java, Ruby, Eiffel, Python, 関数型言語
ウェブサイト dlang.org

D言語(ディーげんご、D programming language)は、プログラミング言語のひとつ。

Digital Mars社のウォルター・ブライトによって開発された、C言語に似た構文と静的型付けを持ち、テンプレートによるジェネリックプログラミングオブジェクト指向プログラミング、関数型プログラミングなどをサポートするマルチパラダイムプログラミング言語である。

概要[編集]

特徴[編集]

型推論ガベージコレクション(もちろんプログラマによる明示的なメモリ管理も可能である)、組み込みの動的配列連想配列など、効率的なプログラミングを可能にする機能を備えている。また例外処理テンプレートなどへの対応がなされているほか、メッセージパッシングを用いた並行処理や正規表現、スレッドソケットなども標準ライブラリに含まれている。単体テスト、事前・事後条件のチェックや不変条件のチェック、debug 識別子の導入など、プログラムのデバッグ・保守に対する重点的なサポートもこの言語の特徴である。またコンパイラの作成を非常に重視しており、言語仕様そのものがコンパイラ側の効率を意識して作られている。これはC言語が幅広く普及した背景に処理系のポーティングの容易さがあったことを踏まえている。

  • C言語ファミリーとの比較
  • 静的型付けの強化
    • 型のプロパティへのアクセス(init, min/max, sizeofなど)
    • 複素数、虚数、列挙型、function型、delegate型
    • 機能強化された配列(動的サイズ変更、スライシング、連想配列、組み込みの文字列)
    • 配列演算
    • 強力な foreach文[7]
    • 参照型のクラス (Objectから派生)
    • 多くのリテラル(関数リテラル、delegateリテラル、連想配列リテラル、構造体リテラルなど)
    • 値型の高機能な構造体[8] (コンストラクタ、アラインメントの変更)
    • 変数や配列のアクセス制御(immutable、const、enum 記号定数)
  • テンプレート、メタプログラミングのための機能
    • 改良されたテンプレート構文、テンプレートミックスイン、可変個引数、タプル
    • 関数テンプレートの戻り値推論
    • 暗黙の型推論
    • 型の別名定義、強い型付け(2.057より非推奨)
    • 参照でのリターン
    • 委譲 (opDispatch、Alias This)
    • Traits(型特性、関数特性、クラス特性など。)
    • ユーザー定義の属性
  • 並列化
  • その他
  • 関数の強化
  • 強力なコンパイル時処理
    • 文字列をコードとして生成する文字列ミックスイン
    • 任意のファイルをコンパイル時に読み込み、文字列リテラルとして参照
    • 関数のコンパイル時実行
  • 開発支援のための言語標準の機能

コード例[編集]

  • Hello, world!
import std.stdio;  // モジュールを読み込む
 
void main()  // プログラムのエントリーポイントは C と同じ main
{
    writeln("Hello, world!");
 
    // void main() 関数から抜けると適切な終了コードが返る
}
  • 引数の和
import std.stdio, std.conv : to;
 
void main(string[] args)  // D の配列は要素数の情報を持っている
{
    int sum;              // 値型はコンパイラにより0で初期化される
    foreach(arg; args[1..$])  // 変数 arg は型推論により string 型になる
    {                         // 配列のスライシングも組込みでサポートされる
        sum += to!(int)(arg);  // to はテンプレート関数
    }
    writeln(sum);
}

高階関数を使い、より関数的なスタイルで書くことも可能である。標準ライブラリに含まれるmap,reduce関数を利用する例を示す。

import std.algorithm;
import std.conv;
import std.stdio;
 
void main(string[] args)
{
    writeln(args[1 .. $].map!(to!int).reduce!((a, b) => a + b));
}

歴史[編集]

  • 1999年12月にウォルター・ブライトが考案。
  • 2007年1月にバージョン1.0リリース。
  • 2007年6月にバージョン2のブランチが切られる。
  • 2007年8月にD言語の第1回国際カンファレンス[1]がアメリカ合衆国のシアトルで開催された。
  • 2012年12月にバージョン1.0の最終リリース(1.076)。
  • 2013年5月にDConf2013[2]がシリコンバレーの Facebook 社屋を借りて開催された。
  • 2014年5月にDConf2014[3]が同じ場所で開催された。

D1とD2[編集]

D1は、機能的には成熟したとされ、メンテナンスモードに移行している。標準ライブラリの非力さを補うためTangoライブラリとセットで利用されることが多い。なお、D1は2012年いっぱいでのサポート停止がアナウンスされた。

当初D2は、新しい機能を積極的に取り込むための開発系バージョンとして分離された。標準ライブラリPhobosが強化され、また言語仕様の面では文字列型(string)が変更不可能な配列となり、スレッド局所変数がデフォルトとなったなど、言語機能のさまざまな変更[11]が行われ、D1の上位互換ではない。 互換性より言語やライブラリの改良を重視し、言語機能やライブラリの破壊的変更が頻繁に起きるのも特徴の一つであった。現在では、推奨されない、あるいは廃止される機能としてコンパイル時に警告が表示され、また公式ドキュメントなどで事前に告知されるようになっている。[12]

開発ツール[編集]

デバッガはC言語やC++と同じobjectフォーマットを使用するためCやC++用に書かれたものが使える。GDBなど、D言語に対するサポートを含んでいるものもある。既存の開発ツールについては以下のページが詳しい。
http://wiki.dlang.org/IDEs http://wiki.dlang.org/Editors

  • Visual D[4](Windows専用)

Microsoft社の統合開発環境 Visual Studio 向けのプラグイン。無償利用可能な Visual Studio Shell にも対応。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

ライブラリ[編集]

  • DUB registry - 公式のパッケージマネージャDUBで使用可能なパッケージの一覧

リソース[編集]

その他[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ ABI - プログラミング言語 D 2.0
  2. ^ Cとのインターフェイス - プログラミング言語 D 2.0
  3. ^ C++とのインターフェイス - プログラミング言語 D 2.0
  4. ^ インラインアセンブラ - プログラミング言語 D 2.0
  5. ^ 文 - プログラミング言語 D 2.0#Goto 文
  6. ^ Cプリプロセッサ vs D - プログラミング言語 D 2.0
  7. ^ 文 - プログラミング言語 D 2.0 # Foreach 文
  8. ^ 構造体, 共用体 - プログラミング言語 D 2.0
  9. ^ ガベージコレクション - プログラミング言語 D 2.0
  10. ^ 埋め込みドキュメント - プログラミング言語 D 2.0
  11. ^ D 2.0 の 1.0 からの違い - プログラミング言語 D 2.0
  12. ^ Deprecated Features