飢餓

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世界の栄養失調人口の割合。濃緑色:2.5%未満、黄緑色:2.5%から4%、黄褐色:5%から19%、朱色:20%から34%、濃褐色35パーセント以上、灰色:資料なし。(世界食糧計画FAO-2006年)

飢餓(きが、: Starvation)とは、食糧の不足によって栄養失調が続き、体調の維持が困難になっている状態である。栄養失調の状態を経て、それが原因で死んだ場合、餓死といわれる。飢饉の際には地域全体が飢餓状態となる。

飢餓問題[編集]

1958-61年の中国の大飢饉(en:Great Chinese Famine)、1970年代と80年代から90年代にかけてのエチオピア大飢饉en:1983–1985_famine_in_Ethiopia)。
国際連合食糧農業機関(FAO)では食料過不足のしきい値を2700kcalとしており[1]、21世紀に入り世界平均ではそれを満たしている。なお表の数値は食料供給ベースであり、摂取量はその60-70%である。

現在十分に栄養の取れない飢餓人口は9億6300万人おり、その数は毎年増加傾向にある。毎年約1500万人、4秒に1人の割合で飢餓が原因で死亡している[2]

原因[編集]

1971年には、フランシス・ムア・ラッペが、食べものを富めるものが浪費してしまうという富の格差が、飢餓の根本的な原因であり政治的な問題であると告発した本がミリオンセラーとなった[3]

1日1ドル以下で生活する絶対的貧困の状態がある。2007年後半からの穀物の価格高騰は、貧困層が買うことができる食糧の量を減らした[4]

上智大学のビセンテ・ボネット名誉教授は、UNDPの「1日1人あたりキロカロリー供給量」、FAOの「世界の食肉消費量」の統計などをもとに、「世界に飢えている人々がいるのは、世界で生産されている食料が不足しているから」という説明に下記の疑問を投げかけている。

食料生産
世界の食料生産総量は、世界中の人々を養うに十分な量がある[要出典]
貧しい国の貧しい生産者は、家族がもはや生活できないほどの低価格を、商社(値段を決める権限を持つ)から強制されている[要出典]
貧しい国の貧しい生産者は、家族の生活を維持するために必要な穀物は、商社に売り渡され、豊かな国の人々の肉類生産用家畜飼料にされている[要出典]
流通・消費
世界の肥満(食料の摂取しすぎ)の人数は、世界で飢えている人とほぼ同じ人数[要出典]である。
豊かな国は、必要量以上[要出典]の食料を輸入している。
廃棄
大量の食料の損失と廃棄;世界の食料総生産重量の約3分の1が廃棄されている。大半が生産・加工・流通段階での廃棄で、先進国か発展途上国かに関わらず、1人あたり年間150kgから200kgの廃棄がある。例外は東南および南アジアの100kg余である。これに加えて、「豊かな国」では、最終消費者により約100kgの食料が捨てられている[5]。(例; 東京都23区の家庭から1日に捨てられる食物は、アジアの50万人以上が1日に食べる食料に相当)
作物の使途
畜産物・油脂1kgを生産するために
必要な穀物等の量(試算)[6]
牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 なたね油
11kg 7kg 4kg 3kg 5kg 2kg
肉類の消費量増加の意味は、飼料用の穀物消費量が増える→国際市場における穀物の価格が上昇→貧しい人々が必要とする穀物を買えなくなる、ことである(注:したがって、完全放牧による飼育などの場合には別である)肉類は食べないほうが健康に効果がある、と主張する医師[誰?]がいる。
バイオ燃料バイオエタノールの原料としてサトウキビトウモロコシが、バイオディーゼルの原料として植物油の消費が拡大している。
その他
各家庭が必要以上に購入しなければ、商社は輸入量を減らすかもしれない。
戦争による食料生産量の減少と流通の阻害。
軍隊に入れば食べることができるので、子供達は食べるために軍隊に入る。食料生産者の減少。

飢餓に関連する国連の規定[編集]

分布[編集]

世界的に見ると、特に南部アフリカに集中している。

飢餓の生化学[編集]

成人では基礎代謝量は体重の25~30倍、すなわち、体重60kgの男性なら1500~1800キロカロリー程度である。ヒトは日々の活動のエネルギー源として、肝臓筋肉グリコーゲンを蓄えているが、これは、絶食後約1日ですべて血糖グルコース)となり全身で使い果たされる。グリコーゲンを使い果たした結果、血糖値が低下すると、肝臓中で脂肪酸の分解経路であるβ酸化回路が活性化され、肝臓中の脂肪がβ酸化を経てケトン体β-ヒドロキシ酪酸アセトンアセト酢酸)に変化し血流中に流出する。ケトン体は、全身でグルコースに代わるエネルギー源として利用される。したがって、栄養が欠乏するとまず肝臓や筋肉中のグリコーゲンが、ついで肝脂肪がエネルギー源として使われる。飢餓状態が更に進むと、体脂肪皮下脂肪など肝臓以外の脂肪が血流に乗って肝臓へと運ばれ、これもまた、肝臓でβ酸化されてケトン体に変わり、同様にエネルギー源となる。これにより、ヒトは、理論上は水分の補給さえあれば絶食状態で2~3ヶ月程度生存が可能であり、この限界を越えれば餓死に至ることになる。たとえば、仮に、体重70kg、体脂肪率20%とし、脂肪のカロリーを9kcal/g、絶食により運動強度が下がった結果として低下する基礎代謝量を1200kcal/日とすると、70 kg × 0.2(体脂肪率)× 9 kcal/g / 1200 kcal/日 = 105日、となり、この計算だと、ヒトは絶食後3ヶ月半ほど生存することができることになる。ただし、これはあくまでエネルギーの計算上というだけで、実際には健康な状態を維持することは不可能に近い。その理由は、ヒトの体内ではタンパク質核酸、無機塩類、その他様々な生理活性物質が緩やかに代謝回転しており、それらの新規合成のために、必須アミノ酸必須脂肪酸、ミネラル類や、様々なビタミンなどを食物より摂取する必要があるからである。逆にこれらの摂取がない場合、筋肉などがアミノ酸に分解して、別のタンパク質の合成のためのアミノ酸源や糖の原料(糖新生)として使われることになる[7]

参考事例[編集]

脚注[編集]

  1. ^ FAO How the world is fed
  2. ^ 国連食糧農業機関の統計(2008年)
  3. ^ フランシス・ムア・ラッペ『小さな惑星の緑の食卓』 奥沢喜久栄訳、講談社、1982年。i、16~17、62~63頁。
  4. ^ 2008年02月24日放送「NHK海外ネットワーク 」NHKデジタル総合
  5. ^ FAO - The Swedish Institute for Food and Biotechnology (SIK) Global food losses and food waste
  6. ^ 我が国の食料自給率-平成15年度食料自給率レポート』農林水産省(農林水産省)
  7. ^ 餓死

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • フランセス・ムア・ラッペ、ジョセフ・コリンズ 『世界飢餓の構造 いま世界に食糧が不足しているか』 鶴見宗之介訳、三一書房、1988年。ISBN 978-4380882210

外部リンク[編集]