貴志駅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
貴志駅
駅舎(2代目駅舎。撮影:2020年11月)
きし
KISHI
13 甘露寺前 (1.2 km)
地図
和歌山県紀の川市貴志川町神戸803番地
北緯34度12分33.87秒 東経135度18分43.11秒 / 北緯34.2094083度 東経135.3119750度 / 34.2094083; 135.3119750座標: 北緯34度12分33.87秒 東経135度18分43.11秒 / 北緯34.2094083度 東経135.3119750度 / 34.2094083; 135.3119750
駅番号 14
所属事業者 和歌山電鐵
所属路線 貴志川線
キロ程 14.3 km(和歌山起点)
電報略号 キシ
駅構造 地上駅
ホーム 1面1線
乗降人員
-統計年度-
653人/日
-2020年-
開業年月日 1933年昭和8年)8月18日
備考 無人駅
(「猫の駅長・助役」配置)
テンプレートを表示
貴志駅 2代目駅舎
〈たまミュージアム貴志駅 駅舎〉
入口付近
(2012年2月)
情報
用途 鉄道駅舎
設計者 水戸岡鋭治 + ドーンデザイン研究所
施工 南海辰村建設 [注釈 1]
建築主 和歌山電鐵
構造形式 檜皮葺木造平屋建
階数 地上1階
着工 2010年(平成22年)2月
竣工 2010年(平成22年)8月
開館開所 2010年(平成22年)8月4日
テンプレートを表示

貴志駅(きしえき)は、和歌山県紀の川市貴志川町神戸(こうど)にある、和歌山電鐵貴志川線。同線の終点である。駅番号14

当駅の売店の飼いたま」が同社より正式に駅長に任命されたことで話題を呼んだ[1]

歴史[編集]

  • 1933年昭和8年)8月18日:伊太祁曽駅(現・伊太祈曽駅) - 当駅間の延伸に際し、和歌山鉄道の駅として、那賀郡貴志川町神戸にて貴志駅が開業
  • 1957年(昭和32年)11月1日和歌山電気軌道が和歌山鉄道を吸収合併し、同社の駅となる。
  • 1961年(昭和36年)11月1日:南海電気鉄道が和歌山電気軌道を吸収合併し、同社の駅となる。
  • 2006年平成18年)4月1日:南海電気鉄道が貴志川線を和歌山電鐵事業譲渡し同社の駅となる。同時に無人駅化。出札窓口は閉鎖され、待合室に設置されていた自動券売機も撤去された。
  • 2007年(平成19年)1月5日:駅の売店「小山商店」の飼い猫「たま」が駅長に就任[2]。同居する「ちび」・「ミーコ」も助役に就任。
  • 2008年(平成20年)
    • 1月5日:客招きの功績により、たまが「貴志駅駅長たま」から課長職の「貴志駅スーパー駅長たま」へ昇格[3]
    • 月日未確認:たま駅長が、県より「和歌山県勲功爵わかやまでナイト」の称号を受ける[4][5]
    • 4月20日:出札窓口跡を改装し、たま用駅長室を設置。
  • 2010年(平成22年)
    • 2月:初代駅舎を解体。
    • 2月下旬:2代目駅舎の建設着工[6]
    • 8月4日:2代目駅舎「たまミュージアム貴志駅 駅舎」が竣工、使用開始。
  • 2012年(平成24年)1月5日:三毛猫の「ニタマ」が駅長代理に就任[3]
  • 2014年(平成26年)1月5日:貴志駅スーパー駅長たまが、貴志川線14駅の総駅長職「ウルトラ駅長」に昇格[3]
  • 2015年(平成27年)
  • 2018年(平成30年)1月5日:貴志駅駅長たま2世(ニタマ)が部長職にあたる「マネージャー駅長」に就任[3]。三毛猫の「よんたま」が伊太祈曽駅長に就任し[3]、水曜・木曜限定で貴志駅駅長代行にも就任[3][9]
  • 2021年令和3年)8月21日:たま2世(ニタマ)が、県より「和歌山県勲功爵わかやまでナイト」の称号を受ける[5]

駅構造[編集]

貴志川線の終着駅単式ホーム1面1線と1線の保線用留置線を持つ地上駅である。線路は駅を過ぎても続いており、踏切を越えた先に2両分の引上線がある(保線用留置線も同じ位置まで伸びている。下の「改修後のホーム」画像参照)。夜間滞泊設定駅である。無人駅であるので、当駅に到着後は車内で精算する。一方、当駅では整理券は発行しないため、乗車の際は全てのドアを利用できる。なお、平日朝・夕や行楽期には和歌山電鐵の職員が出張し駅で改札することもある。

駅舎は長らく開業以来の瓦葺木造平屋建駅舎であったが、老朽化したため、観光拠点としてふさわしいよう2010年(平成22年)に解体され、建て替えられた。2代目駅舎のデザインは、「エコでネコロジー」をテーマに、猫の顔をモチーフとしたもので、2270系「いちご電車・おもちゃ電車・たま電車」のリニューアルデザインを手がけた水戸岡鋭治とそのデザイン事務所が担当した[6][10]。建設設計と施工は南海電気鉄道グループ南海辰村建設が担当。和歌山県産の木材を多く用いた木造平屋建の建物に檜皮葺屋根を載せたものとして完成した[11][12][注釈 2]。新駅舎には「たまミュージアム貴志駅 駅舎」という名称が付けられた。

駅舎内は、正面より見て左側にたま駅長グッズを扱う「たま商店」[注釈 3]とたま駅長の「駅長室」が、右手側には地元特産の果物のジュースやジェラートを販売する「たまカフェ」(毎月第3水曜日休業)が設けられている。右手側外には別棟で男女別および車椅子対応のトイレ、およびホームへの車椅子用のスロープが設置されている。

ホームには「いちご神社」・「おもちゃ神社」・「ねこ神社」という3つのが2015年に建立されており、いちご神社は電車果物を始めとする農作物を、おもちゃ神社は電車と玩具遊具を、ねこ神社は電車と猫や動物全般を祀っている。ねこ神社は、たま駅長の死に伴い、2015年(平成27年)8月10日神葬祭を経てその御霊を「たま大明神[3][4]」として迎え祀ったうえで「たま神社」へと社名を改めた[13]

利用状況[編集]

2020年(令和2年)度の1日平均乗降人員653人である。和歌山電鐵の駅では利用者が和歌山駅に次いで2番目に多い。

年度 1日平均
乗降人員[14]
2000年 1,744
2001年 1,704
2002年 1,483
2003年 1,480
2004年 1,397
2005年 1,358
2006年 1,008
2007年 1,011
2008年 1,349
2009年 1,341
2010年 1,342
2011年 1,345
2012年 1,340
2013年 1,427
2014年 1,415
2015年 1,507
2016年 1,425
2017年 1,397
2018年 1,342
2019年 1,276
2020年 653

駅周辺[編集]

駅前にはタクシー乗り場・バス停(路線バスの項参照)がある。駐車場はない[注釈 4]のに加えて貴志川線の利用を促進させるため、和歌山電鐵では乗用車でたま駅長に会いに訪れる際には伊太祈曽駅または和歌山駅周辺の駐車場に停めて、貴志川線を利用して訪れるよう案内している[15]

貴志川町イチゴの産地であり、和歌山電鐵のシンボル車両である2270系「いちご電車」はこれにちなんだものである。早春にはイチゴ狩りに訪れる観光客も多く、紀の川市貴志川庁舎(旧貴志川町役場)横の特売場ではイチゴも販売されている。なお、当駅到着前と当駅発車直後の車内放送ではイチゴにちなみビートルズの楽曲『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』をアレンジしたチャイムが流れる[注釈 5]

駅近くの店舗でレンタサイクル「いちご自転車」の貸し出しが行われている(要予約)。

当駅出入口から南へ100メートルほどの所に『工房レトロ貴志川ギャラリー』というオリジナルの猫グッズ・原画ショップがある。たま駅長や和歌山電鐵とは直接の関係はないが、店内は個性的な猫絵グッズであふれており、当駅周辺で猫グッズを取り扱っているのは小山商店以外ではこの店のみである。

駅から徒歩数分の場所には路線名の由来ともなった貴志川が流れている。そこに架かる諸井橋付近の国主峡一帯は大池貴志川県立自然公園にも指定されていて、休日にはバーベキューを楽しむ家族連れで一帯の公園が賑う。ここではホタル養殖が行われており、夏季には屋形船も営業される。お盆には毎年花火大会が開催され、夏の風物詩となっている。

少し上流の海南市との市境にホタル養殖場があり、毎年6月上旬に公開され見学することができる。この期間限定で貴志川線の車両には地元の和歌山県立貴志川高等学校の生徒が制作したヘッドマークが先頭車の前面に装着される。

駅から北へ4キロメートルほど行くとJR西日本和歌山線船戸駅に至る。

バス路線[編集]

駅前に「貴志駅」・「貴志駅前」停留所があり、紀の川市地域巡回バスの路線が乗り入れる。なお、紀の川コミュニティバスの路線は駅付近を通る和歌山県道10号線沿いにある「貴志駅下」停留所を経由する。

紀の川市地域巡回バス(「貴志駅」停留所)
紀の川市地域巡回バス(「貴志駅前」停留所)
紀の川コミュニティバス(「貴志駅下」停留所)
  • 東(右回り)コース
  • 西(左回り)コース
※「紀の川市貴志川支所」を基点とする循環路線。船戸駅岩出駅打田駅西方面へ向かう。

かつては和歌山バスが当駅近くの「貴志駅筋」停留所から旧・野上町(現・紀美野町)の動木方面への路線を有していたが、1993年(平成5年)頃に廃止となった。

猫の駅長[編集]

南海電気鉄道時代の貴志駅は有人駅で、駅舎の隣には倉庫が建っていた。しかし、2006年(平成18年)4月1日貴志川線和歌山電鐵への移管に伴い、駅は無人化された。

無人化された当時、駅と倉庫の間には地域猫の「たま」達を住まわせる猫小屋が設けられていたのであるが、敷地が紀の川市公有地に換わったこの機会を捉えて、市から撤去するよう求められた。これを受けて、たま達の“飼い主(地域猫の一応の管理者)”は「猫達を駅の中に住まわせてもらえないか」と和歌山電鐵の小嶋光信社長に願い出たところ、「たまを駅長に就任させる」というアイデアが社長の側から打ち出され、かくして、2007年(平成19年)1月5日、猫の駅長「たま」が誕生した[2]

たまは、貴志駅の駅長に就任してから、改札台の上に乗ることを好み、改札口を通過する乗降客を“出迎える”という状況が、平日の昼間には多く見られるようになった。

1周年記念日の2008年(平成20年)1月5日には、客招きの功績により、たまは「貴志駅駅長たま」から課長職の「貴志駅スーパー駅長たま」に昇格した[3]。また、これを機に、同年4月20日には出札窓口の跡を利用して、水戸岡鋭治デザインの猫用「駅長室」が設置された。加えて同年に、たまは和歌山県より「和歌山県勲功爵(わかやまでナイト)」の称号を受けた[4][16]。さらに2014年(平成26年)1月5日には、「スーパー駅長たま」は貴志川線14駅の総駅長職である「ウルトラ駅長」に昇格した[3]

駅の待合室の壁には、南海時代に走っていた南海1201形電車を地元の幼稚園児が描いた絵画や、地元の小学生が社会科見学として貴志駅や小山商店を訪れたことへの感謝文を各児童が貼ったものが飾られていた。

ギャラリー[編集]

  1. 先代たま駅長/初代駅舎の改札台の上で“客招き”の業務中。2007年(平成19年)2月12日撮影。
  2. 初代駅舎の出札窓口/2007年3月1日撮影。約1年後にはここに猫用「駅長室」が設置される。
  3. 初代駅舎の改札口(左側)と、2008年(平成20年)4月20日に設置された猫用「駅長室」(右側の建物)。
  4. ニタマ駅長代理(左)と、たま駅長(右)/2012年(平成24年)1月5日撮影。役職は当時。ニタマは、たまが休みの日に「貴志駅長代理」を、それ以外は伊太祈曽駅長を務めた。

隣の駅[編集]

和歌山電鐵
貴志川線
甘露寺前駅 (13) - 貴志駅 (14)
  • ()内は駅番号を示す。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 和歌山電鉄 貴志駅新駅舎 - 施工実績”. 公式ウェブサイト. 南海辰村建設. 2019年8月15日閲覧。■駅舎の画像多数あり。
  2. ^ 当初は2010年3月完成と発表されていたが、着工が遅れた関係で同年8月4日に完成した。
  3. ^ 元は、たま駅長の飼い主が経営していた個人商店(日用品の取り扱いがあった)「小山商店」。時期不明だが小山商店は既に閉店し、現在は「たま商店」となっている。
  4. ^ 道路を挟んだ反対側に駐車場があるが、これは同所にあるたこ焼店のものである。
  5. ^ ただし、題名の「ストロベリー・フィールズ」とはイチゴ畑ではなく、孤児院の名前である。

出典[編集]

  1. ^ 和歌山のネコ駅長「たま」、経済効果は11億円 - AFRB、2008年10月5日
  2. ^ a b 小嶋光信(社長) (2012年1月5日). “たま駅長就任5周年で部下誕生! - 代表メッセージ”. 公式ウェブサイト. 和歌山電鐵株式会社. 2019年8月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 小嶋光信(社長) (2019年1月7日). “「ニタマ駅長」と「よんたま駅長」がダブル昇格! - 代表メッセージ”. 公式ウェブサイト. 和歌山電鐵株式会社. 2019年8月15日閲覧。
  4. ^ a b c d e 小学館『デジタル大辞泉プラス』. “ウルトラ駅長たま”. コトバンク. 2019年8月15日閲覧。
  5. ^ a b ネコ駅長に「勲功爵」の称号 和歌山県、全国PRの功績たたえ”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2021年8月21日). 2022年11月10日閲覧。
  6. ^ a b 小嶋光信(社長) (2010年2月18日). “たまステーションいよいよ着工! - 代表メッセージ”. 公式ウェブサイト. 和歌山電鐵株式会社. 2019年8月15日閲覧。
  7. ^ 小学館『デジタル大辞泉プラス』. “たまII世”. コトバンク. 2019年8月15日閲覧。
  8. ^ 2代目「たま駅長」就任:和歌山電鉄・貴志駅 「吾輩はニタマ」[リンク切れ]
  9. ^ 和歌山電鉄の猫社員「よんたま」、駅長に昇格(読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2018年1月7日)[リンク切れ]
  10. ^ 小嶋光信(社長) (2010年8月4日). “たまミュージアム 貴志駅完成!! - 代表メッセージ”. 公式ウェブサイト. 和歌山電鐵株式会社. 2019年8月15日閲覧。
  11. ^ 南海辰村建設「和歌山電鉄 貴志駅新駅舎」、2010年8月20日(同年8月23日閲覧)。
  12. ^ 小嶋光信(社長) (2009年10月20日). “和歌山電鐵貴志駅リニューアルデザイン発表 - 代表メッセージ”. 公式ウェブサイト. 和歌山電鐵株式会社. 2019年8月15日閲覧。
  13. ^ ねこ神社:たま駅長の御霊鎮座 名前も「たま神社」に[リンク切れ]
  14. ^ 令和2年度和歌山県公共交通機関等資料集 (PDF)
  15. ^ アクセス|和歌山電鐵株式会社[リンク切れ]
  16. ^ 小学館『デジタル大辞泉プラス』. “和歌山県勲功爵”. コトバンク. 2019年8月15日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]