新聞販売店

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地方では2紙以上の新聞を扱う販売店も多い。また、写真のように旧題字の看板を掲示する販売店も存在する

新聞販売店(しんぶんはんばいてん)とは各世帯と新聞の宅配契約を結び宅配、集金をする店(営業所)のことである。新聞社とは別の会社によるものであり、新聞社との契約によって販売事業を行っている。

概要[編集]

日本の新聞戸別宅配制度を維持するシステムとなっており、日本の高い新聞購読率は新聞販売店が支えている。2007年10月現在、全国に20,424軒の販売店があり[1]、10年前と比較すると2,549軒減少している。

新聞販売店は、特定の新聞社の新聞のみを扱う「専売店」、特定の新聞社の系統に属しながら他紙も扱う「複合店」、その地域の全ての新聞を扱う「合売店」の3種類に分けられる。都市部では専売店が多いが、新興住宅地地方では複合店も多く、人口の少ない地域では合売店が多い。また、専売店は他紙販売店の廃業などにより、他社からの業務委託を受けて複合店に変わることがある。

販売店では店頭などで新聞を一部のみ購入することや、新聞社が刊行している書籍を注文することができる場合もある。さらに販売店によっては食品の販売・宅配など、独自の購読者向けサービスを実施している場合がある。

新聞販売店の愛称[編集]

読売新聞販売店・YC
東大阪市徳庵販売所)
朝日新聞販売店・ASA
大阪市鶴見区・あさひやまもと)
朝日新聞販売店・ASA姪浜
福岡市西区・朝日新聞博多販売)
毎日新聞販売店・毎日ニュースポート
(東大阪市・徳庵販売所)
西日本新聞エリアセンター福重
(福岡市西区)

全国紙[編集]

ブロック紙・地方紙[編集]

収益[編集]

新聞販売店は、新聞社との契約により販売の拡張と購読者の管理および集金業務を行うのが主業務である。新聞購読料と折り込みチラシの売り上げが主な収入源であり、これに付随して本社から支給される様々な補助費も加算される。

全国の販売店合計で年間約1兆7500億円が売り上げて本社へ納められており、この内、合計約6500億円が配達手数料として、更に約1500億円が販売促進費として本社から販売店へ還元される仕組みとなっている。全体から占める販売経費の比率からすれば、販売コストの高い業種でもある[4]

補助金[編集]

販売店と本社の営業担当者との取り決めにより担当地域の世帯数から算出した基数が設定され、これを基にして補助金や奨励金などが決まる。金額は、自販売店の扱う銘柄の購読者が世帯数に占める割合が多いほど高額となる。

補助金の内訳としては他にも従業員の厚生費の補助や新聞拡張団を入れるための補助など非常に多岐に渡る項目があり、販売店の経営者ですら掌握しきれない場合もあるほど分かりづらい構造となっている[5]。また補助金の内訳は本社販売担当者の裁量下にあるため、新聞社としての明確な規定はないとされる[6]

問題点[編集]

拡張団[編集]

新聞宅配契約は販売店が独自にやる場合と「拡張団」または「団」と呼ばれるセールスマンが行う場合がある。拡張団は販売店とは異なる独立した存在で、取り付けた定期購読契約を販売店に買い取ってもらうことで利益を得る。しばしば拡張団の暴力的な勧誘が問題視される(悪質な勧誘の対策については新聞拡張団を参照)。

新聞販売店にとっては、地元に根ざしているために強引な勧誘がやり辛い身内の社員よりもよそから来た拡張団の営業力に頼らざるを得ない面もある。これは後述するノルマ達成と現状維持のためという面が大きく、部数の逼迫した状況では社員よりも遥かに高額のカード料(新聞契約カードと引き替えに拡張団へ支払う報酬)を負担して拡張団に頼る事になる。しかし、そのような状況下で強引に契約を行った購読者は以下の理由により将来的に購読者として定着することは少ない。

  1. 高額な拡材(新聞宅配契約と引き替えに購読者へ渡すサービス品)目当てで契約した。
  2. 強引さに押されて渋々契約した。
  3. 騙されて契約した(いつでも購読を止められる、後からいくらでも拡材を持ってくるなど)。
  4. 拡張団が全額または一部購読料を負担する、無料だからと言われて契約した。

連日に渡り拡張団の営業力に依存して部数を維持しても、それは高いコストを掛けた見かけ上の部数維持にしかならない。しかし、販売店としては部数の低下を防ぐために拡張団に頼り続けるという悪循環になっている。

また、販売店が受け持った地域の購読者が拡張団が提示する好条件の契約に慣れてくると販売店の社員では対応していくのが困難となってしまい、購読者にとっては都合が良くとも販売店にとっては経営維持が苦しい状況となる。

ノルマ達成と押し紙[編集]

新聞社は販売部数拡大と発行部数に比例して広告収入が決定されるため、広告費収入の維持・増益を目的として、しばしば「目標数○○万部」などと契約上の優越的地位を利用して過大なノルマを販売店に課すことがある[7]。販売しなければならない新聞を販売店に押しつけている形になっているため、「押し紙[8]と呼ぶ者もいる。

販売店は新聞社に対して従属的な立場にあり要求を拒めば販売店契約の解除を暗にほのめかされるなど不利な状況に追い込まれるため、「押し紙」を受け入れざるを得ない。新聞社は販売店に「押し付けた」時点で利益を計上することができるが、販売店は売れ残った新聞の代金も新聞社に一方的に支払い続けなければならない[7]

こういった行為は独占禁止法に抵触する。

発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。
 一 販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む。)。
 二 販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。

新聞業における特定の不公正な取引方法(平成十一年七月二十一日公正取引委員会告示第九号

全国の日刊紙で発行部数の2割程度、約1000万部が日々廃棄されているという。ただし新聞配達業務には、輸送やチラシの折り込み作業で破れる、配達時に落とす、雨に濡れるなどのトラブルはつきものであり、多少の予備も必要になる。

月刊誌『財界にっぽん』によれば、元販売店と新聞社との民事訴訟で実売2000部に対し押し紙が3000部だったケースも報告されている。2007年秋に総部数2010部となっているところ、実際に読者に配達していたのは1013部と997部、実に半分もの新聞が押し紙となっている例もあるという[9]。新聞各社は押し紙の存在を否定するが、ネットなどでは良くその存在が既成事実として語られる[10][11]

「押し紙」の存在は販売店にとって大きな経済的負担になっており、経営に行き詰った元販売店が新聞社を相手取って実際に訴訟をおこすケースもある。2009年3月には、押し紙をめぐる裁判でフリー記者の黒藪哲哉が読売新聞に勝訴した[12]

新聞社は広告主に対し公称部数を元に広告枠を販売している[7]ため、「押し紙」を差し引いた実売部数が明らかになれば「押し紙」分だけ新聞社の広告費収入や販売店の貴重な収入源であるチラシ収入が減少する[13]

販売店の経営状態[編集]

主に新聞の販売益と新聞に折り込まれる折込チラシの手数料収入が経営を支えている。新聞販売店の原価率は極めて高く、粗利は低い。配達員の給与も時間的特殊性から高く、営業(訪問セールス)に支払われる対価も決して小さくはない。そのため人件費のウエイトが非常に大きい。特にチラシの多い都市部ほどチラシの収入から営業活動やいわゆる押し紙の経費を捻出している割合が高い。このような経営体系のため、チラシの指数と実際の新聞の扱い部数が乖離し、配布されることのない余分なチラシに対しても手数料を徴収していた事例が過去には非常に多く見られたが、最近では新聞雑誌部数公査機構であるABCAudit Bureau of Circulation)の店別指数公表もあって以前よりは改善され、さらにインターネットの普及によりチラシ自体が減少傾向にあるために、その経営環境はますます厳しくなっている。

また、表向きは再販制度及び新聞特殊指定により「全国同一価格」が謳われているが実際は新規契約に際して「3ヶ月間無料」といった条件が提示されるなど同じ新聞の販売店でも月極で800円前後の価格差が存在し事実上の値下げが行われ、「全国同一価格」が部分的に守られていないことが知られるようになってきている[14]

販売店に勤める労働者[編集]

おおむね以下のような待遇となっている。

給与
一般業種と比較し拘束時間が事実上長く、不規則な勤務時間となるために未経験者にも比較的高めの給与が設定されている。
金銭的補助
雇用の際に住居の提供や引っ越し代の負担、更に生活費の貸し出しを行っている販売店が多い。
積立金
一定期間、給与から所定金額が積み立てられ期間満了時に積み立てた金額へ更に新聞販売店と本社からの援助金額が加算された金額が支払われる。これは積立金制度と呼ばれている。
雇用
基本作業となる配達に関して言えば特殊な技能は不要で、一般業種と比較して雇用者の望むハードルは低めに設定されている。

近年、本社営業部門の方針もあり業界全体のクリーン化が進められているが、長年にわたり定着してきたイメージはなかなか変化していない。また、このようなクリーン化の方針を長年在籍していた中堅以上の社員に対してどのように指導していくかも難しい課題となっている。

都市部では奨学金を提供する代わりに一定年数の労働に従事する新聞奨学生も存在する。

職場環境[編集]

全国的な購読数落ち込みにより環境の良くない販売店は次第に淘汰されており、環境改善への取り組みは強まってはいる。しかし、下に挙げるような職場環境の販売店は現在も無くなっていない。

離職率が高い
理由として気軽に就ける職場であり若干のノウハウを会得していれば他の販売店でも応用できる業務であること、また積み立てを終えてまとまった金銭を得られたら退職など最初から期間限定で就業する従業員がいることなどがある。これに加えて強引な営業を続けて担当地域に居辛くなったり、集金した金を横領して発覚前に逃走する例も少なくない[15]
事業所周辺での評判が悪い
早朝から新聞の荷下ろしが行われ、また配達用の自動車や原付などの騒音と排気ガス、従業員同士の大声での会話、路上でのそれら車両の駐車が邪魔など、または容姿の悪い新聞拡張員がたむろして怖いなどがある。大抵は直接の苦情や本社クレームとなるが、甚だしい場合は警察へ通報される場合もある[16]

その他の問題点[編集]

新聞を宅配契約していて長期間旅行などで留守にする場合、販売店に宅配を止めてもらうことができる。2004年にはこの制度を悪用し、留守宅に空き巣に入るという事件が発生した。

脚注[編集]

  1. ^ 新聞協会経営業務部調べ[要出典]
  2. ^ 読売のYCは元々東京本社中部本社(現・中部支社)西部本社の管轄地域では「YSC」(Yomiuri Service Center=読売サービスセンター)、大阪本社の管轄地域では「読売IC」(Information&Communication=情報とふれあい)と呼んでいたが2000年4月の創刊125周年を機に全国規模名称で統一した。
  3. ^ 毎日ニュースポートは現在余り使用されていない。
  4. ^ 電通総研編『報メディア白書2006』2005年ISBN 4-478-02312-3
  5. ^ 河内孝『新聞社―破綻したビジネスモデル』新潮社、2007年ISBN 978-4106102059
  6. ^ ダイヤモンド社 週刊ダイヤモンド2007年9月22日号 「新聞没落」より
  7. ^ a b c “新聞業界の苦悩 自らの首を絞める「押し紙」問題”. MONEYzine. (2009年3月29日). http://moneyzine.jp/article/detail/140293 2011年2月15日閲覧。 
  8. ^ 押し紙の写真が実際に見られるサイト
  9. ^ 新聞の20%以上は配達されない「押し紙」という新聞社の「暗部」”. J-CAST (2009年1月2日). 2009年1月2日閲覧。
  10. ^ 毎日新聞「押し紙」の決定的証拠 大阪の販売店主が調停申し立て 損害6,300万円返還求め
  11. ^ 劇画「ミナミの帝王」でも題材にされ、また「週刊新潮」2009年6月4日発売号でも記事を載せている。
  12. ^ 「押し紙裁判」フリー記者が読売に勝訴
  13. ^ 真村久三・江上武幸『新聞販売の闇と戦う―販売店の逆襲』花伝社、2009年、ISBN 4-763-40538-1
  14. ^ WiLL 2006年7月号
  15. ^ 林ケ谷昭太郎『日本の新聞報道』1990年ISBN 4-262-14671-5
  16. ^ 日本新聞協会「新聞販売の労務管理 知っておきたい労務の知識」2006年、ISBNなし(業界紙)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]