懐炉
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懐炉(かいろ)とは、懐中に入れて暖をとる道具である。
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[編集] 歴史
[編集] 温石の時代
古い時代には、懐中に入れて暖をとるものとして、火鉢等で加熱した滑石等を適度に冷ますか、布に包んで温度を調整して使用していた。これを温石(おんじゃく)という。また塩のみまたは塩と糠を混ぜたものを炒って布に包んだもの(塩温石)も同様に使用されていた。江戸時代くらいまでは一般的だったようである。
[編集] 灰式カイロの登場
江戸時代の元禄期初期には、木炭末に保温力の強いナスの茎などの灰を混ぜたもの(懐炉灰)を通気孔の開いた金属容器に密閉して燃焼させるカイロがあったことが知られている。この木炭末に混ぜる灰としては他に麻殻や桐の灰が使われた。
現在でも現役商品であり、通信販売の他、冬期におけるレンズの結露防止用に用いられるため、カメラ量販店で取り扱っていることがある。
[編集] 白金触媒式カイロの登場
大正末期、的場仁市がイギリスのプラチナ触媒式ライターを参考に、プラチナの触媒作用を利用して気化したベンジンをゆっくりと酸化発熱させる懐炉を独自に発明、1923年に「ハクキンカイロ(白金懐炉)」の商品名で発売した。ベンジンが稀少であった戦前・戦中は、郵便局や軍隊などが利用の中心だったようだが、戦後はハクキンカイロ社以外の製品も登場し、一般にも広く普及した。
70年代に使い捨てカイロが発売されると一時的に衰退したが、2000年代に入りジッポー社がハクキンカイロ社のOEMで参入した事で、若者を中心に知名度が上がり、その長所が徐々に見直されつつある。
[編集] 使い捨てカイロの登場
1975年アメリカ陸軍が使用していたフットウォーマーを元に、旭化成工業が九州でのみ「アッタカサン」を販売。それを原型にして、1978年、ロッテ電子工業が「ホカロン」の商品名で使い捨てカイロを全国発売、これがヒット商品となり一般に普及した。以後このタイプのカイロは急速にシェアを伸ばし、ハクキンカイロに代わって現在主流の方式となっている。シール付きの使い捨てカイロが発売されたのは1989年、現在ではミニサイズ、靴下用、肩用、座布団サイズ、等々色々なバリエーションが発売されている。
これは不織布や紙の袋に空気中で酸化発熱する鉄粉を入れたものが一般的であり、通常触媒として塩及び水なども入れられている。
[編集] 最近の各種懐炉
最近、主流の使い捨てカイロ以外にも各種の懐炉が登場している。
- 中にゲル状の保温材が封入されており使用時は電子レンジで加熱して使う方式のカイロ。日本では専ら湯たんぽ代替として商品化されている。
- 酢酸ナトリウムの物理反応を利用したカイロ。使用後、電子レンジなどで吸熱させることで100回以上の再利用が可能。
- 電池式のカイロ。中国製の電池式ハンドウォーマーの存在が確認されている。日本では、2006年10月31日に三洋電機が充電式カイロ「eneloop kairo」を発表、同年12月1日に発売している[1]。
※なお、この三洋のeneloop kairo(リチウムイオンモデル)のOEM供給を受け、ELPA(朝日電器)が『エコカイロ』として発売している。2007年から確認中。
- 蒸留水と酢酸水溶液を混合した液体とコイン状の金属片を入れたビニールパックの「エコカイロ」。中の液体は常温環境下では過冷却状態となっており、金属片で衝撃を与える事で液体が結晶化し、発熱する。効果は1時間ほどしか持続しないが、結晶化したパックの内容液は熱湯に入れることで再度液体化し、繰り返し使用できる。なお電子レンジの使用は厳禁。
[編集] カイロの種類
本項目では、使い捨てカイロと、ベンジンを燃料とする白金触媒式のカイロについて触れる。
現在は使い捨てカイロが主流だが、灰式カイロや白金触媒式のカイロを使う人もいる。例えば氷点下環境における、小型天体望遠鏡またはカメラなどのレンズ表面の結露防止目的で使われる例など、必要とされる熱量及び使用環境によっては、後者の方がより適当という場合がある。
なお、いずれのタイプのカイロも、低温やけどの危険性が伴う。また高気圧酸素治療装置の中など高濃度の酸素を含む空気中では、炎を吹き上げるような激しい反応を起こす恐れが強い。実際に、カイロからの引火が原因とみられる火災事故が過去複数回起きている。
[編集] 使い捨てカイロ
使い捨てカイロは、鉄粉の酸化作用を利用したカイロであり、中には、発熱体である鉄粉、反応触媒作用のある水及び食塩とそれを保持する高分子吸水剤、活性炭、バーミキュライトが混ぜられている。安価で簡便なことなどから現在カイロの主流となっている。
この種のカイロの長所としては、「構造が簡単」「各種原料が安価」「火を用いず通常環境での最高温度が約80℃以下で安全性が高い」「使用方法が簡易」などがあげられる。使用前は真空パックや無酸素包装などで酸素に触れない様に密封されており、使用時にはこれを開封する事で酸化が始まり発熱する。
大きさや用途などにもよるが、貼らないタイプで約18~20時間、貼るタイプで約12~14時間くらいの持続時間をもつ商品が主流である。これら各商品に表示される数値はすべて同一の試験方法によって測定されたもので、JIS規格(JIS S 4100)に項目や測定方法などについての定めがある。
なおJIS表記上は「使い捨てかいろ」であり、「使い捨てカイロと(カタカナで)表記しても良い」とされる。また日本カイロ工業会では、「使い切りタイプのかいろ」という表記をしている。
使い捨てカイロの由来については、米軍の携帯保温器が原型ともされるが、基本特許が明治時代に成立していた古いものということもあり、はっきりしない。1906年より、宇那原美喜三の宇那原支店が「火も湯もいらぬ」「不思議のあんか」「一名徳用こたつ」と銘打った製品広告を新聞各紙[2]に出した。広告では「火を用ひざれば火災の患ひなく夜中に消え又は蒲團の損じると更に無し」「熱度は御好み次第百五十度位迄は御随意なり」「一度入れば四ヶ月熱す」などと謳っていた。定価は並一円、中一円二十銭、上一円四十銭、特製一円七十銭、送料いずれも三十銭。『滑稽新聞』155号(1908年1月20日号)によれば、本製品を取り寄せたという記事がある。製法は「鐵粉に何かを混ぜそれに水分を加へて温氣を發せしめるもの」で、使い捨てカイロそのものだが、記者によれば「幾分の熱度は放散するがそれも直に冷却して再び用を作さない、しかも一種の悪臭を放つなど、衛生上にもよからぬもので、經濟上一圓五十錢ばかり損をした」という[3]。
現行の使い捨てカイロが登場したのは1978年にロッテ電子工業(現ロッテ健康産業)から「ホカロン」が発売されて以降である。これは日本パイオニクスが菓子用の脱酸素剤を研究する過程で発熱効果を発見したことから製品化に至ったもので、「ヒヤロン」の製造も同社が行っている。現在使い捨てカイロは、様々なメーカーから数多くの種類の製品が発売され、一般に普及している。
使い捨てカイロは主に以下のブランドが発売しており、販売ルートの関係から、ロッテ以外のメーカーでは、殺虫剤・芳香剤などの家庭用衛生薬品メーカーに関与しているところが多い。また、秋から春に掛けては生活雑貨を取り扱う小売店やコンビニエンスストアのほとんどで販売されている。
- 桐灰はる(桐灰化学、小林製薬の子会社)
- ホカ王、ホカロン(ロッテ健康産業、製造:日本パイオニクス)
- どんと(大日本除虫菊)
- ホッカイロ(白元、製造:テクノン)
- オンパックス(マイコール、エステーと販売業務提携)
- 快温くん(オカモト)
- ミスターホット(フマキラー)
- あったカイロ、ぬくっ子(アイリスオーヤマ)
など
[編集] 白金触媒式カイロ
ハクキンカイロに代表される白金触媒式のカイロとは、ベンジンを主な燃料とするカイロの一種である。大正年間に的場仁市の手で発明され、1923年(大正12年)に世界で初めて発売された。[4]
ベンジンなど炭化水素の燃料をプラチナの触媒作用によって通常、300℃~400℃の比較的低温かつ穏やかに二酸化炭素と水とに酸化分解させ、その過程で反応熱を取り出す。炭化水素を燃料とするが、比較的低温での反応のため窒素酸化物を生じない。
反応の結果は燃焼に酷似[5]する。触媒となるプラチナはマット状のガラス繊維に粒子として付着しており、反応が効率的に進められる。ベンジン1cc当り約11,500カロリーと、使い捨てカイロの約13倍の熱量をもちながら、機種により差はあるが大体燃料1ccで表面温度60℃の状態を約1~2時間保持できる。反応を始めるためには触媒を130℃以上にすることが必要で、炎または電熱線を用いて加熱するのが一般的である。
なおベンジンは航空機内に持ち込めないため、この種のベンジンを使うカイロも未使用品などを除いて航空機内に持ち込めない。一説によると、使用済み品でもカイロ内の脱脂綿を抜いて内部を洗浄・乾燥させてベンジン臭がしないようにすると航空機内に持ち込めるともいうが、実際に持ち込もうという人は予め出発前に搭乗予定の航空会社に問い合わせのこと。また、この場合、使用に際しては脱脂綿は別に新品を用意し、燃料は到着以降に現地調達する必要がある。
現在、日本の国内メーカーが発売する、ベンジンを燃料とした白金触媒式カイロは、ハクキンカイロ株式会社が販売する「ハクキンカイロ」、マルカイが販売するジッポーブランドの「ハンディウォーマー」[6]及びマルカイオリジナルブランドの「ハンディウォーマーミニ」[7]であるが、ジッポーブランドのものはハクキン社のOEM品のため部品に互換性がある。そのためどちらでも燃料にベンジンをはじめジッポーオイルやホワイトガソリンが使用できる。但しハクキンのものはベンジン以外、ジッポーのものはジッポーオイル以外公式には使用が認められていないため自己責任で使用する必要がある。2006年からはハクキン製とは別に、東京都荒川区に本拠を構える川崎精機製作所が「KAWASAKIポケットウォーマー」の名称で白金触媒式カイロに新規参入している。[7]
最近では、亜細亜貿易工業[8]が輸入・販売する中国製など海外製の類似品の存在も国内のホームセンターなどで確認されている。このカイロの燃費は公称で20cc約13時間となっている。また、2006年に入って、台湾製の「i-HOT」なるオイルカイロも国内で確認されている。
上記の一連の白金触媒式カイロは、本体が真鍮製かそれ以外の材料か[9]の差違がある程度で、基本構造及び本体形状は元祖たるハクキンカイロにほぼ準じている。
なお、ハクキンカイロには現在以下の種類がある。
- ハクキンカイロPEACOCK(3R)
- ハクキンカイロPEACOCK PLATINUM(3Rプラチナム)
- ハクキンカイロこはる
- 小型。専用カップ1杯の燃料(約8cc)で約15時間持続。現在は販売終了。火口は公式サイトで入手可能。
- ハクキンカイロBM
- ライター機能付きで、点火用器具を別途用意しなくて済む。付属のフリース袋は巾着のような紐留め。専用カップ一杯の燃料で約18時間持続。公式サイト通販のみの取り扱い。販売終了モデル。
- PEACOCK pocket warmer #S
- 厳寒地用高温タイプ。3Rと同じ大きさだが、蓋の刻印、空気孔及び火口の刻印などに違いがあった。上記のとおり現在は3Rの方が#Sと同仕様になっている。
- PEACOCK pocket warmer #G
- 厳寒地用高温タイプの輸出用。専用カップ4杯の燃料で約30時間持続。2006年10月現在、公式サイト通販でも購入可。
- PEACOCK mini
- 販売終了のBMに代わり、国内投入された小型モデル。専用カップ1杯半の燃料で約18時間持続。2007年12月発売。
- ハクキンカイロ点火芯付A
- 3R登場以前に主流であったモデル。オイルライターの芯に似た「点火芯」が設けられており、この芯に点火する事で触媒加熱行程を容易にしている。その他の機能は当時の通常モデル(ハクキンカイロA)とほぼ大差は無い。現在は販売終了。点火芯専用火口は既に製造されておらず、補修する場合は点火芯を除去した上で、3R用火口で代用する事となる。
これらのハクキン系列以外の形状・構造の白金触媒式カイロとしては、1953年に松下電器産業から発売された「ナショナル黄金カイロ(または「ナショナルカイロ」)」がかつて存在した。黄金カイロは円盤状の本体を持ち、乾電池を利用した専用点火具で点火を行う形式[10]で、女性や子供でも扱いやすく平置きにも支障がない白金触媒式カイロとして長くハクキンカイロとシェアを争い続けていた。ナショナルカイロはハクキンカイロ標準モデルとほぼ同じ燃焼時間の「標準型」の他、本体の厚さを薄くした「うす型」、本体の小型化を行った「ミニ」などのモデルが存在したが、使い捨てカイロ登場に伴う市場の縮小から1993年4月に全てのモデルの販売を終了している。
このナショナルカイロは近年では火口などの純正部品の供給も途絶えていたが、2008年よりコールマンジャパンが、かつてのナショナルカイロ標準型とほぼ同一の形状・構造の白金触媒式カイロを「コールマンポータブルイージーウォーマー」[11]として発売。(両者の関連性は不明ながらも部品互換性が有る為)コールマンカイロの消耗部品をナショナルカイロの補修部品として代用できるようになった。[12]
なおナショナルカイロの販売終了後、松下電器産業アイロン事業部から「ナショナルほっとベルト」及び「ナショナルほっとベスト」なる商品も発売されていた。
単三乾電池2本を電源とする電磁ポンプで、専用カートリッジ内のブタンガスを白金触媒のヒーター部に送り込み酸化発熱させる原理で、メーカーによれば「使い捨てカイロの約20倍のパワー(ほっとベストの場合)」を誇った。またその他にも任意にON・OFFできること、三段階の温度調節、オフタイマー機能及び燃料がガスなのでベンジンのように臭わず、燃料の補充作業もより容易なことなどの長所を持っていた。なお、スタパトロニクスに製品レビューが残っている[13]。
標準小売価格にして19,800~38,000円(税別)と余りに高額だったことと、重量・容積の大きさが普及のネックになったとみられる。
これらの白金触媒式カイロは燃料補給の手間と未反応の燃料の臭気などが原因で、一時期は使い捨てカイロにシェアを大きく奪われたが、近年ではごみ減量などの観点や、ジッポーブランドのハンディウォーマーが発売され好評なことから、見直されつつある。
[編集] 脚注
- ^ 使い捨てない「充電式カイロ」を発売(ニュースリリース@三洋電機HP)
- ^ 『東京朝日新聞』1906年12月25日号(日本図書センター刊「朝日新聞復刻版 明治編 第Ⅲ期 第2回」ISBN 4-8205-4626-0)など。
- ^ 使い捨てカイロの製法で4ヶ月熱が保つことはあり得ず、明らかに誇大広告だったといえる。
- ^ ジッポーライターの登場(1932年)よりも9年先駆けて登場し、富裕層向けのカイロや北支・満州などの寒冷地帯に駐留する兵士への慰問品として広くその名が知られていた。戦中、ハクキンカイロ社はハクキンカイロの原理を応用した航空機エンジン向けの予熱機材の製造にも注力していた為、真鍮材や白金、ベンジンの物資統制の中でも保健用品としてハクキンカイロの製造を許可され、本体材質をステンレスに切り替えながら敗戦直前の大阪大空襲で工場が全焼するまで製造が続けられていた。戦後は1950年代より国外輸出も開始、80年余りの歴史の中で基本構造がほぼ不変のまま現在に至る点など、後にOEM生産という形で提携する事になるジッポーとの共通項は多い。
- ^ この為、ハクキンカイロの輸出仕様の中には紙巻タバコを点火する為の穴が蓋部分に開けられているものが存在する。
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ [3]・旧名アウル・サポート
- ^ 川崎精機の物はアルミニウム製である。なお、ハクキンカイロ社の製品も戦中は真鍮材の供出により1940年から45年まではステンレスで製造されていた。
- ^ この形式はナショナルカイロが初採用。同じ松下グループの松下電池工業が当時大々的に拡販しつつあった高性能マンガン乾電池のブランドイメージも手伝い、モダンな形式として人気を集めた。後にハクキンも電池着火式のカイロを発売してナショナルカイロに対抗している。
- ^ [4]
- ^ [5]
- ^ [6]
[編集] 外部リンク
- 日本カイロ工業会
- ハクキンカイロ株式会社
- マルカイコーポレーション
- ハイマウント/灰式カイロ販売元

