干しいも

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干しいも

干しいも(ほしいも、干し芋)はサツマイモを蒸して乾燥させた食品である。日本においては全国各地で作られているが、産業としては8割以上が茨城県で生産されている。正式名は「甘藷蒸切干」だが[1]、「乾燥芋(かんそういも、かんそいも)」「きっぽし」「いもかち」などと呼ばれることもある。

概要[編集]

大きさはサツマイモによって様々だが、一般的に店頭で販売されているものは一片が長さ10~15cm、幅5cm程度の細長く薄い板状をしている(平干し)。薄切りにしないまま干した「丸干しいも」と呼ばれる長さ10cm、直径2~3cm程度の棒状のものもあるほか、近年は食べやすいように角棒状に細切りにした商品も出回っている。表面が白い粉で覆われている場合があるが、これは芋の自己分解で生まれた糖分が表面に出て結晶化したもので、カビではない。

適度な水分を含むため、粘度のある噛み応えとサツマイモらしい甘味が特徴的である。そのまま生で食べてもよいが、火であぶると柔らかくなり甘味も増し、また表面を軽く焦がすことにより香ばしさが生まれる。

栄養面でも優れている。コレステロールは含まれず、整腸作用のある食物繊維を多く含む。ビタミンB1ビタミンCカリウムにも富んでいる[2]アルカリ性食品に分類されることも、健康に良い根拠として挙がる場合がある[1]

後述するように複雑な製法ではないが、時間と手間がかかるため、価格は1袋500gで1000円程度するものもある。また製造時の端切れを集めたものを「切甲(せっこう)」「しろた」と言い[3]、通常品の半値程度で販売されている。形が整っていないために二級品扱いで安価ではあるが、味は変わらない。家庭でも作ることができるが、美味しく仕上げるには蒸し方にある程度のコツが必要となる。

歴史[編集]

蒸してから干す現在の製法が確立されたのは、文政年間の頃、現在の御前崎市にあたる地域であると言われる。その後、保存食として全国各地に広まった。日露戦争野戦食としても活用され、軍人いもと呼ばれた。

1908年から、茨城県那珂湊(現在のひたちなか市)での生産が始まり、農閑期の副業として定着した。導入経過は2説あり、一説にはせんべい屋の湯浅藤七という人物が導入し、宮崎利七が静岡からの技術支援を受けて、那珂湊の水産干物加工設備を流用して企業化した[4]。異説としては、小池誠司(吉兵衛)・大内地山兄弟が、茨城県知事森正隆に献策して、静岡からの技術者2名の派遣を受けて製造を始めたとする。ただし、後者の小池らの事業はごく小規模に個人レベルで行っただけと見られる。その後、原料のサツマイモに適した土壌だったことや、冬の乾燥した気候が生産に適していたことから[2]、現在は茨城県が圧倒的なシェアを誇るまでになっている。

製法[編集]

薄切りにした芋をビニールハウスで天日干ししている様子
原料になる玉豊種のサツマイモ

収穫後のサツマイモを水で洗って、皮をつけたまま1~2時間ほどかけて蒸し上げる。蒸し器から出した後、皮をむき、すだれに広げ冬場の寒風を利用して天日で1週間程度干す[2]。そのまま干されることもあるが、ピアノ線などを使って1cm程度の厚さに切ってから干されることが多い。切らずにそのまま干した「丸干しいも」の場合、20日間ほどのより長期の乾燥が必要になる。良く乾燥させた方が保存性は高くなるが、食感は固くなる。

サツマイモの甘味を増やすため、サツマイモを収穫後に寒気にあて糖化させるなどの工夫もしている。

近年は、衛生確保のためビニールハウスを張って乾燥させていることが多い。また近年は雨量が増えて天日乾燥が難しくなったため、機械乾燥で生産されるものもある。蒸すのではなく、茹でたものを干す場合もあるが、この場合デンプン糊化しないので蒸したものより固くなる。

原料となるサツマイモの品種は玉豊種(タマユタカ、農林22号)が主で、いずみ種(泉13号)も使用される。2005年頃からは、新品種の玉乙女種も使用されている。ベニマサリや紅はるかを使ったものもある。主力の玉豊種は今では干しいもの専用品種に近いサツマイモで、1961年から使用されるようになった。他の品種と比べて大型で、外皮、肉色とも白く、食感はホクホクではなくネットリしている。生では白いのに、干すと飴色に変わる[5]

サツマイモの収穫後に製造されるため、必然的に干しいもの製造は冬季から初春に行われるが、冷凍保存されたものが一年を通じて流通している。

産地[編集]

県別の生産高では茨城県(ひたちなか市東海村)が全国第1位となっているほか、冬のからっ風が強い群馬県明治時代に産業化が始められた静岡県長崎県などで生産が多い[6]。最近では茨城県の業者による技術指導の下、中国産も出回っているが、国産に比べ甘味や食感に差異がある。

保存方法[編集]

室温保存も可能であるが、保存料等は使われておらず、さらに最近のものは食感を良くするため乾燥しすぎないようにしているのでカビが発生しやすい。このため冷蔵庫での保存が好ましい。冷凍にすれば長期保存が可能である。なお、適切な保存がされずにカビが生えてしまい、クレームを招くことの多い商品の一つであるが、前述の結晶化した糖分がカビと見間違えられただけのケースもある[7]

店頭販売用の干しいもは、密封性の高いフィルムで作られた包装袋に脱酸素剤と同封することで、日持ちを向上させている。

参考資料[編集]

  • 先﨑千尋 『ほしいも百年百話』 茨城新聞社〈いばらきBOOKS〉、2010年ISBN 978-4872732504
  • 『ほしいも学校』 有限責任事業組合ほしいも学校、株式会社佐藤卓デザイン事務所、2010年10月23日

脚注[編集]

関連項目[編集]