吉四六
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吉四六(きっちょむ)は実在する歴史上の人物。豊後国野津院の生まれ(現在の大分県臼杵市野津町)。本名を廣田吉右衛門といい、名字帯刀を許された地方の庄屋であった。吉四六は一休、彦一と並んで特に知られるとんち者であり、児童文学などで盛んに題材に採り上げられている。
彼は出世してからも権力を嫌い、弱者や貧しい人に味方をしたことから、義雄扱いもされている。特に地元大分県では、焼酎の銘柄や吉四六漬など、商品名にも採用されていることからも愛着心が窺える。もっとも、吉四六と吉右衛門のつながりは伝承の域を出ず、厳密には不明確であるが、初代廣田吉右衛門(1715年(正徳5年)12月27日死去とされる)であるとの見方が有力である。
吉四六にまつわるとんち話を吉四六話という。これは、明治時代に地方から伝承を寄せ集めて編纂したものである。後に地方紙が読み物としての連載を始めたことで、県民にあまねく広まった。全国区となったのは、昭和50年代の一休さんのアニメ化によって巻き起こったとんちブームと呼べる現象と、まんが日本昔ばなしのヒットによって起きた昔話ブームであり、出版各社がこぞって児童文学の中にとんち話や昔話を題材に採り入れたことが大きい。吉四六は、彦一とともにその中で開拓された人物である。そして、光村図書版の国語科教科書にも採用されたこともあって、世間でもよく知られる存在となった。
[編集] 主な説話
説話の数は優に200を超えるが、その中でも代表的なものを採り上げた。他地域のとんち者のエピソードと内容が重なるものも多い。また、子供向けには適さない色話も存在する。
- 柿の見張り番
- 代表的な説話の一つで、吉四六が子供の頃のエピソードである。ある日、吉四六の家の柿がたわわに実った。親は盗まれないように、吉四六に柿の木を見ているように言った。しかし、自分自身も食べたくてしょうがない。おまけに村の友人がやってきて、柿を食べようと吉四六をけしかける。そこで、吉四六は頓智を働かせ、友人と一緒に全部柿を平らげてしまった。畑仕事から戻ってきた親は吉四六をしかりつけるが、吉四六はこう言った。「柿の実は友達がもいで行ってしまったけど、柿の木はずっと見ていた」と。親は呆れて開いた口が塞がらなかった。
- 烏売り
- 吉四六の家には毎日のように烏が飛んでくる。この烏を何とか売れないかと吉四六はあれこれ考えた結果、彼は一羽のキジを籠の上に止まらせて、籠の中にありったけの烏を詰めて行商に出た。彼は売り文句に「烏はいらんかね」というが、客は籠の上に載っているキジを見て、吉四六が烏とキジの区別も付けられないで売っているのだと思いこむ。値打ちは雲泥の差であり、欲の深い客はこのキジを烏の値段で買って大もうけを企むが、吉四六は言葉通り烏を客に渡す。客が文句を言うが「キジは看板だから売らない。わしは烏はいらんかねといったが、キジを売るとは一言も言ってない」と言ってのけ、結局彼は烏を一羽も残らず売ってしまった。
- 甕の値段
- 吉四六が家内に頼まれ、甕を買いに行った。初めは小さい甕を30文で買って家に帰ったが、小さすぎるといわれた。そこで大きい60文の甕を持って行こうとするが、店主にお金を貰ってないと言われる。しかし、吉四六は「30文払って、30文の甕を買った。その30文の甕を返したのを合わせて60文だから、お金は払う必要ない」といってそのまま帰ってしまう。他のとんち者の説話にも登場するほか、「壺算」という題で落語にもなっており、またドラえもんにも全く同じシチュエーションが登場する(てんとう虫コミックス9巻『世の中うそだらけ』、ドラえもんの道具 (きあ-きも)#ギシンアンキ参照)。
- 天昇り
- 怠け者の吉四六は田の代掻きを楽に行う方法は無いかと考え、田の真ん中に高いハシゴを立てる。そして町の衆に「天に昇ってくる」と言い回る。天昇り当日、吉四六がはしごを登りだすと、集まった町の衆は「危ない危ない」と言いながら田んぼの中で右往左往する。吉四六もはしごの上でふらついてみせる。しばらくすると「皆がそんなに危ないというなら天昇りはやめじゃ」とはしごを降りてくる。町の衆が右往左往してくれたおかげで田んぼはほどよく代掻きが行われていた。
- 首のおかわり
- 吉四六の近所には人の話を聞くのが三度の飯より好きな男が居た。しかし、その男は悪い癖があり、自分に納得できない話には「まさかそげんなこと」といちゃもんをつける。ある時、その男が吉四六に何か話はないかと尋ねてくるが、吉四六は「まさかとは言うな。言ったら米一俵もらう」と約束をする。そこで吉四六は話を始めた。殿様が外を歩いていると持っていた扇子に鳶の糞がぺたっと落ちた。家来はすぐに「へい、扇子のお代わり」と言って代わりを持ってくる。それからしばらくすると、偶然にも殿様が持っていた刀にも鳶の糞が。すぐさま家来が「刀のお代わり」と言って持ってくる。この時点でも何か言いたげな男であったが、何とか堪えた。しかし、話はその後…鳶が気になった殿様が空を見上げようとすると、何と今度は殿様の首に糞を落とした。そして家来が「へい、首のお代わり!」。さすがに男は「まさかそげんなこと…」と言わざるを得なかったが、約束は約束なので男は吉四六にまるまる米一俵持って行かれたのだった。
- 川のどじょう
- 吉四六が川でどじょうを掬っていた。しかし、そこには魚採り禁止と書かれており、それを見付けた隣村の役人が吉四六に注意をする。しかし吉四六は「このどじょうは儂がうっかり逃がしたものだ」と言う。そして、前を大きなどじょうが通ると「こいつ、今までどこに行ってた。早くわしの所に戻ってこい」とか言い、小さなどじょうだと「こいつ、隣村から紛れ込んできたな。はよ帰れ」などと言って逃がしてしまう。結局茫然と立ち尽くす役人を後目に、適当にうまいことを言って、大きいどじょうだけを魚籠いっぱいに掬ってしまったのだった。
- 川の渡し
- 米一俵
- 小便酒
- 薪買い
- どじょう鍋
- ねずみの名作
ほか
[編集] オペラ化
昭和48年に大分県民オペラが吉四六昇天をオペラ化(作曲:清水脩)して主に大分県内で上演。後に九州を中心に全国各地で上演され、さらにテレビで全国放送も行われた。 主演の吉四六を大分県出身の故・立川清登が演じた。

