ロックフィルダム

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ロックフィルダム(アスワン・ハイ・ダム)
ロックフィルダム(アスワン・ハイ・ダム)

ロックフィルダムはダムの型式の一つで、岩石や土砂を積み上げて建設する型式のダムである。

目次

[編集] 概要

ロックフィルダムの外観。通常岩石が剥き出しの状態であるが、中には芝生で覆われているダムもある。この場合アースダムと外観が似る。右手の通路は監査用であり、通称犬走りと呼ぶ。(黒川ダム。市川 (兵庫県))
ロックフィルダムの外観。通常岩石が剥き出しの状態であるが、中には芝生で覆われているダムもある。この場合アースダムと外観が似る。右手の通路は監査用であり、通称犬走りと呼ぶ。
黒川ダム市川 (兵庫県)
ロックフィルダムの材料。左からコア材・フィルター材・ロック材。土質の違いが分かる。
ロックフィルダムの材料。左からコア材・フィルター材・ロック材。土質の違いが分かる。
工事中のロックフィルダム。中央の茶色がコア材、その両脇にフィルター材、外側にロック材を三層五重に積み上げる。(胆沢ダム。胆沢川・岩手県)
工事中のロックフィルダム。中央の茶色がコア材、その両脇にフィルター材、外側にロック材を三層五重に積み上げる。
胆沢ダム。胆沢川・岩手県

内部は中心部を粘土・その両脇を砂や砂利・外郭部を岩石で覆う三層五重に分かれた構造をもつ。中心部の粘土質はコア材(遮水壁)とも呼ばれ、このコア材が水をせき止める。その両面に砂や砂利からなるフィルター材が積まれコアが崩れないように支え、さらにその外側に岩を敷き詰めたロック材を幅広く積み、コアとフィルターをささえる。水を遮る方式によって幾つかの亜型に分類される。

貯水の浸透を防ぐため、ロードローラーなどの大型工事用機械で十分に締固めながら徐々に盛土を行うのが通常の方法であるが、山上から投石して積み上げる「投石工法」というのもあった。なお、ロックフィルダムの施工法はやがて重力式コンクリートダムの施工法にも応用され、セメントの水分含有量を極力少なくした超固練りコンクリートを薄く層状に打設するRCD工法(Roller Compacted Dam Concreat)として発展し、現在ではその派生である拡張レヤ工法などと共に重力式ダムの主要な工法となっている。

地盤が堅固でなく、コンクリートダムの建設が困難な場合に建設されることが多い。ダム自体の体積が大きいため安定性がありアースダムよりは丈夫であるが、洪水による堤体越水には弱い。従って重力式コンクリートダムなどのように堤体中央部に洪水吐きを設けることができない。このため、左岸・右岸の何れかの山を掘削して洪水吐きを設けるのが一般的である。中にはトンネルを掘ってダム下流に放流するタイプの洪水吐きもある。

世界では比較的早い段階から施工が手掛けられており、戦後においては高さが200メートルを超えるハイダムも数多く建設されるようになった。現在世界で最も高い堤高を有するロックフィルダムは旧ソビエト連邦時代より建設が進められているタジキスタンログンダムであり、ダムの高さが335.0メートルと東京タワーの高さ(333.0メートル)を超える規模のダムである。下流70キロメートル地点には現在世界最高の高さを有するヌレクダム(300.0メートル)もある。このヌレクダムは中心のコア部の体積の中にダムの高さが日本一の黒部ダム富山県黒部川)が完全に入る程の大きさを持っている。このほか世界有数の人造湖を有するアスワン・ハイ・ダムナイル川)やアコソンボダムボルタ川)などもロックフィルダムである。

世界の主なロックフィルダム

国名 ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
完成年 備考
タジキスタン ログンダム 335.0 13,300,000 建設中 堤高世界一
インド テヘリダム 261.0 3,540,000 建設中
メキシコ ティコアセンダム 261.0 1,613,000 1980年
エジプト アスワン・ハイ・ダム 111.0 162,000,000 1970年 総貯水容量世界第三位
ガーナ アコソンボダム 134.0 150,000,000 1965年 総貯水容量世界第四位

日本では戦後に入って本格的なダム建設が進められた。1947年(昭和22年)の石淵ダム岩手県・胆沢川)の建設着手が日本におけるロックフィルダム建設の黎明であり、小渕ダム岐阜県・久々利川)の完成で建設の歴史が始まった。だが当初は洪水処理・設計理論など技術的に安全性(特に地震)への懸念が払拭されていなかったこと、大量の岩石を採取・運搬するノウハウがなかったことなどからあまり高いダムは建設されていなかった。しかし、技術的な進歩やコンクリートダムの建設地点が減少したことなどから1970年代以降盛んに建設されるようになり、日本の全ダムで二番目に高い高瀬ダム(176.0メートル。高瀬川長野県)のような大ダムが数多く建設された。ダム本体の体積においては、上位三ダム全てがロックフィルダムである。現在でも多くの地点で建設が進められている。

[編集] 分類

ロックフィルダムには、以下の亜型がある。ただし、この分類は主に日本国内で呼称されているものである。世界的にはロックフィルダムとアースダムの基準があいまいである(材料を混成して建設される場合があるため)ことから厳密な区別はされておらず、一括してフィルダムもしくはフィルタイプダム、あるいはエンバンクメントダムと呼ばれる。日本においても、近年ではゾーン型フィルダムと呼ばれる場合が多々ある(詳細はフィルダムの項目を参照)。

[編集] 土質遮水壁型ロックフィルダム

ロックフィルダムの基本形とも言える型式。世界的に見てもロックフィルダムの大多数はこの型式で施工されている。主に粘土質で形成されるコア材の位置によって更に分類される。一つはコア部が基礎岩盤より垂直に建設されている型式で、中央土質遮水壁型ロックフィルダム(またはセンターコア型フィルダム)と呼ばれる。ロックフィルダムの中では安定性に優れており、地震降水量の多い日本のロックフィルダムの大部分はこの方式である。もう一つはコア部が基礎岩盤より斜めに建設されている型式で、傾斜土質遮水壁型ロックフィルダム(または傾斜コア型フィルダム)と呼ばれる。この場合コア材が表面を遮水する役割を果たし、後述するコンクリート・アスファルトフェイシングフィルダムに似通った構造となる。安定性を保つため下流部におけるフィルター材・ロック材の分量を多くしてコア材を支える。地形的理由などで選択されるケースが多いが、建設されたケースはあまり多くない。

[編集] 主なダム

[編集] 中央土質遮水壁型ロックフィルダム
中央土質遮水壁型ロックフィルダム徳山ダム(揖斐川・岐阜県)
中央土質遮水壁型ロックフィルダム
徳山ダム揖斐川岐阜県
所在地 水系名 一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
管理主体 備考
長野県 信濃川 犀川 高瀬川 高瀬ダム 176.0 76,200 東京電力
岐阜県 木曽川 揖斐川 徳山ダム 161.0 660,000 水資源機構 建設中
群馬県 利根川 楢俣川 奈良俣ダム 158.0 90,000 水資源機構
石川県 手取川 手取川 手取川ダム 153.0 231,000 国土交通省
電源開発
石川県
滋賀県 淀川 姉川 高時川 丹生ダム 145.0 150,000 水資源機構 凍結検討中
長野県 木曽川 木曽川 味噌川ダム 140.0 61,000 水資源機構
岩手県 北上川 胆沢川 胆沢ダム 132.0 143,000 国土交通省 建設中
群馬県 利根川 薄根川 発知川 玉原ダム 116.0 14,800 東京電力
高知県 奈半利川 奈半利川 魚梁瀬ダム 115.0 104,625 電源開発
北海道 石狩川 石狩川 大雪ダム 86.5 66,000 国土交通省

[編集] 傾斜土質遮水壁型ロックフィルダム
傾斜土質遮水壁型ロックフィルダム岩屋ダム(馬瀬川・岐阜県)
傾斜土質遮水壁型ロックフィルダム
岩屋ダム(馬瀬川・岐阜県
所在地 水系名 一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
管理主体 備考
岐阜県 庄川 庄川 御母衣ダム 131.0 370,000 電源開発
福井県 九頭竜川 九頭竜川 九頭竜ダム 128.0 353,000 国土交通省
電源開発
岐阜県 木曽川 飛騨川 馬瀬川 岩屋ダム 127.5 173,500 水資源機構
中部電力
岩手県 北上川 丹藤川 岩洞ダム 40.0 65,600 農林水産省
富山県 小矢部川 子撫川 子撫川ダム 45.0 6,600 富山県

[編集] アスファルトフェイシングフィルダム

アスファルトフェイシングフィルダム多々良木ダム(多々良木川・兵庫県)
アスファルトフェイシングフィルダム
多々良木ダム(多々良木川・兵庫県

アスファルトフェイシングフィルダムは、厚く舗装したアスファルト(アスファルトコンクリート)で上流部表面を覆い、遮水する型式。アスファルト表面遮水壁型ロックフィルダムとも呼ばれる。

ロックフィルダムの一型式だが、ダム関連の書籍等では独立して記載されている。岩石を台形状に積み上げたダムの上流面に厚さ数十センチメートルにもなる緻密なアスファルト舗装を施し、これで水をせき止める。付近で良質の粘土質が満足に取れない場合などに用いられる型式である。近年の純揚水発電用ダムでよく用いられる型式である。

世界的にはほとんど施工例が無く、日本での施工が大半を占める。その中で八汐ダムがこの型式では世界一の堤高を誇る。山中に池を掘りアスファルトで舗装するタイプのダム(沼原ダム等)も多く、その場合は河道外に建設される場合がほとんどである。

所在地 水系名 一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
管理主体 備考
栃木県 那珂川 箒川 蛇尾川 鍋有沢川 八汐ダム 90.5 11,900 東京電力 堤高世界一
栃木県 那珂川 那珂川 深山ダム 75.5 25,800 栃木県 農林省施工
兵庫県 円山川 多々良木川 多々良木ダム 64.5 19,440 関西電力
北海道 尻別川 ペーペナイ川 双葉ダム 61.1 10,450 北海道開発局 農林水産省管理
福島県 阿賀野川 只見川 大津岐川 大津岐ダム 52.0 1,825 電源開発
栃木県 那珂川 (河道外) 沼原ダム 38.0 4,336 電源開発

[編集] コンクリートフェイシングフィルダム

コンクリートフェイシングフィルダム野反ダム(中津川・群馬県)
コンクリートフェイシングフィルダム
野反ダム(中津川・群馬県

コンクリートフェイシングフィルダムは、岩石を台形状に積み上げたダムの上流面にコンクリートセメントコンクリート)を打設し、これで水をせき止める。コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダムとも呼ばれる。

ロックフィルダムの一型式だが、アスファルトフェイシングフィルダムと同様にダム関連の書籍などでは独立した型式として記載されている。ロックフィルダムとしては建設の歴史が古く1940年代後半~1950年代前半に集中しており、日本で最初に着手された石淵ダムや日本で最初に完成した小渕ダムはこの型式である。戦後の物資難でセメントが著しく不足していた時代、コンクリートダムから型式を切り替えて建設した経緯がある。

だが遮水壁の陥没やひび割れ(クラック)といった問題があり、これらへの技術的問題が解決できず近年は徳山ダム揖斐川)の上流部二次仮締切堤(ダム本体工事中に河水が流入しないために、バイパスである仮排水路(転流工)へ河水を導くための締め切り堤防)で施工されている他は、ダム単体での施工は現在行われていない。世界的にも施工例はアスファルトフェイシングダム同様、極めて少ない。

所在地 水系名 一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
管理主体 備考
秋田県 雄物川 皆瀬川 皆瀬ダム 66.5 31,600 秋田県 建設省施工
岩手県 北上川 胆沢川 石淵ダム 53.0 16,150 国土交通省 再開発中
群馬県 信濃川 中津川 野反ダム 44.0 28,700 東京電力 野反湖
岐阜県 木曽川 可児川 久々利川 小渕ダム 18.4 552 岐阜県

[編集] コンクリートコアフィルダム

コンクリートコアフィルダム武利ダム(武利川・北海道)
コンクリートコアフィルダム
武利ダム(武利川・北海道

コンクリート中央遮水壁型ロックフィルダムなどとも呼ばれ、コア部が土質材料ではなくコンクリートやアスファルトで形成されたロックフィルダム。同様のものにコンクリートコアアースダムなどがあるが、極めてまれな型式である。特殊なものとして、コンクリートダムの下流側面に土を盛り立てた「コンクリート・土石混成堤」がある。

所在地 水系名 一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
管理主体 備考
北海道 湧別川 武利川 武利ダム 15.5 820 北海道電力
香川県 別当川 別当川 内海ダム 21.0 140 香川県 コンクリート・土石混成堤[1]

[編集] グラベルフィルダム

グラベルフィルダム日野川ダム(日野川・滋賀県)
グラベルフィルダム
日野川ダム(日野川滋賀県

「グラベル」とはラリー用語で「未舗装の」という意味であるが、この場合は少し意味合いが異なる。ロックフィルダムは通常付近の山からコア材の原料となる粘土質やロック材の原料となる岩石・土塊を採取する。だが、この型式の場合はコア材は同様の手法で採取するがロック材に関しては、ダムを建設する河川の川底に堆積している砂礫(グラベル)を主原料として堤体へ盛り土する。成書によっては単なるロックフィルダムもしくはアースダムとして扱われている場合もある。世界的には、韓国にある昭陽湖ダムが規模が大きく、高さ123.0メートル、総貯水容量が約29億トンを有する。

所在地 水系名 一次
支川名
(本川)
二次
支川名
三次
支川名
ダム名 堤高
(m)
総貯水
容量
(千m³)
管理主体 備考
滋賀県 淀川 日野川 日野川ダム 25.0 10,380 滋賀県 [2]

[編集] 脚注

  1. ^ 出典は香川県小豆総合事務所開発課内海ダム再開発建設事務所「内海ダム再開発ホームページ」。日本ダム協会ダム便覧 2007』では「重力式コンクリート・フィル複合」(「内海ダム(元)」より引用)、すなわちコンバインダムとして掲載されている。
  2. ^ 日本ダム協会『ダム便覧 2007』では「ロックフィルダム」(「日野川ダム」より引用)として掲載されている。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 財団法人日本ダム協会 「ダム便覧」:2007年
  • 建設省河川局監修・全国河川総合開発促進期成同盟会編 「日本の多目的ダム」1963年版:山海堂 1963年
  • 建設省河川局監修・全国河川総合開発促進期成同盟会編 「日本の多目的ダム」1972年版:山海堂 1972年
  • 建設省河川局監修・全国河川総合開発促進期成同盟会編 「日本の多目的ダム 直轄編」1980年版:山海堂 1980年
  • 建設省河川局監修・全国河川総合開発促進期成同盟会編 「日本の多目的ダム 補助編」1980年版:山海堂 1980年