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'''古モンゴロイド'''(こモンゴロイド、'''旧モンゴロイド'''、{{lang-en-short|proto-Mongoloid}})は、W・W・ハウエルズによる[[モンゴロイド]]の[[分類]]。[[日本]]では[[埴原和郎]]や[[尾本恵市]]らが用いている<ref>下中直人編 『世界大百科事典 21』 [[平凡社]]、447-448頁。</ref>。[[アジア]]の[[モンゴロイド]]を形質的特長から新・古に分けた概念である。[[進化]]の程度が新・古という意味ではなく[[寒冷地]]適応を経ているか否かの違いを表した分類である。
'''古モンゴロイド'''(こモンゴロイド、'''旧モンゴロイド'''、{{lang-en-short|proto-Mongoloid}})は、W・W・ハウエルズによる[[モンゴロイド]]の[[分類]]。[[日本]]では[[埴原和郎]]や[[尾本恵市]]らが用いている<ref>下中直人編 『世界大百科事典 21』 [[平凡社]]、447-448頁。</ref>。[[アジア]]の[[モンゴロイド]]を形質的特長から新・古に分けた概念である。[[進化]]の程度が新・古という意味ではなく[[寒冷地]]適応を経ているか否かの違いを表した分類である。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[氷期]]の北アジアで寒冷適応した結果、凹凸の少ない顔立ち、一重[[まぶた]]にみられる[[内眼角贅皮|蒙古ひだ]]などの体質的特徴を有する[[新モンゴロイド]]に比べると、一般には彫りが深く、比較的小柄で、二重のまぶたや、厚い[[唇]]、湿った[[耳垢]]、多毛などの特徴を持っているとされた。
[[氷期]]の北アジアで寒冷適応した結果、凹凸の少ない顔立ち、一重[[まぶた]]にみられる[[内眼角贅皮|蒙古ひだ]]などの体質的特徴を有する[[新モンゴロイド]]に比べると、一般には彫りが深く、比較的小柄で、二重のまぶたや、厚い[[唇]]、湿った[[耳垢]]、多毛などの特徴を持っているとされた。


[[日本]]においては、[[縄文時代]]の住民([[縄文人]])は主に古モンゴロイド系であったと言われるが、その後に[[中国]]および北東アジアから渡来した新モンゴロイドと混血をした結果、現在の日本人の新モンゴロイドと古モンゴロイドの特徴が混在する形質が形成されたとする混血説や、[[弥生人|弥生時代頃の渡来民]]が、それまで日本列島に住んでいた縄文時代人をほとんど絶滅させたか、あるいは辺境の地へ追いやってしまい、代わりに自分たちが日本列島の大部分を占めるようになったとする置換説などがある。<ref>{{Cite web|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/ase1993/102/5/102_5_489/_pdf|title=「混血説」と「二 」, て今 日本 人 |accessdate=2021年12月30日}}</ref>だが現在は埴原和郎の二重構造説の登場以降、混血説が最もポピュラーである。
[[日本]]においては、[[縄文時代]]の住民([[縄文人]])は主に古モンゴロイド系であったと言われるが、その後に[[中国]]および北東アジアから渡来した新モンゴロイドと混血をした結果、現在の日本人の新モンゴロイドと古モンゴロイドの特徴が混在する形質が形成されたとする混血説や、[[弥生人|弥生時代頃の渡来民]]が、それまで日本列島に住んでいた縄文時代人をほとんど絶滅させたか、あるいは辺境の地へ追いやってしまい、代わりに自分たちが日本列島の大部分を占めるようになったとする置換説などがある。<ref>{{Cite journal|和書|author=溝口優司 |url=https://doi.org/10.1537/ase.102.489 |title=「混血説」と「二重構造モデル」,そして今後の日本人形成論 |journal=Anthropological science |ISSN=09187960 |publisher=日本類学会 |year=1994 |month=dec |volume=102 |issue=5 |pages=489-496 |naid=10006684928 |doi=10.1537/ase.102.489 |accessdate=2022-02-27}}</ref>だが現在は埴原和郎の二重構造説の登場以降、混血説が最もポピュラーである。


縄文人(北方系古モンゴロイド)と[[南東アジア]]人(南方系古モンゴロイド)の関係性については、ホアビン文化のDNAと近いことからラオスやマレーシアにルーツがあるとする説<ref>{{Cite web|title=最先端技術を用いた古人骨全ゲノム解析から東南アジアと日本列島における人類集団の起源の詳細を解明 {{!}} 金沢大学|url=https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/58540|accessdate=2021-12-30|language=ja}}</ref>や、これまで考えられていたより古い時代に他の東アジア人集団から孤立し、独自の進化をとげた集団であるとする説<ref>{{Cite web|title=RESEARCH 縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く|url=https://www.brh.co.jp/publication/journal/087/research/1|website=JT生命誌研究館|accessdate=2021-12-30|language=ja}}</ref>など諸説ある。
縄文人(北方系古モンゴロイド)と[[南東アジア]]人(南方系古モンゴロイド)の関係性については、ホアビン文化のDNAと近いことからラオスやマレーシアにルーツがあるとする説<ref>{{Cite web|title=最先端技術を用いた古人骨全ゲノム解析から東南アジアと日本列島における人類集団の起源の詳細を解明 {{!}} 金沢大学|url=https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/58540|accessdate=2021-12-30|language=ja}}</ref>や、これまで考えられていたより古い時代に他の東アジア人集団から孤立し、独自の進化をとげた集団であるとする説<ref>{{Cite web|title=RESEARCH 縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く|url=https://www.brh.co.jp/publication/journal/087/research/1|website=JT生命誌研究館|accessdate=2021-12-30|language=ja}}</ref>など諸説ある。
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==区分==
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*北方系
*北方系
**[[アイヌ|アイノイド]]:[[日本列島]]([[縄文人]]の系統)。角張った顔付きで目がくぼみ、彫りが非常に深い。皮膚の色は淡褐色。全体に毛深く、特に眉毛が濃い。[[アイヌ]]は典型的なアイノイドだが[[オホーツク文化|オホーツク文化人]]経由で[[新モンゴロイド]](旧アジア人種)の影響が認められ、[[琉球民族|琉球人]]はアイノイドと新モンゴロイドの3:7の混血<ref>{{Cite web|url=https://www.city.shimoda.shizuoka.jp/file/%E6%96%8E%E8%97%A4%E6%88%90%E4%B9%9F%E5%85%88%E7%94%9F%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB.pdf|title=遺伝子DNAから日本人の源流を探る~伊豆南部地域調査の意義~|accessdate=2021年12月30日}}</ref>である。[[大和民族]]・[[和人]]はアイノイドと新モンゴロイドの1:9(縄文人ゲノム約15%)の混血<ref>{{Cite web|url=https://www.arcgeo.jp/arcgeo/20160906.pdf|title=2016 長月の夢 3,000 年前の縄文人遺伝子 15%を受継ぐ現代日本人|accessdate=2021年12月30日}}</ref>である。なおこの割合は、北海道縄文人ゲノムの割合であり、琉球人の場合南九州縄文人ゲノムの割合は高くなると予想される。
**[[アイヌ|アイノイド]]:[[日本列島]]([[縄文人]]の系統)。角張った顔付きで目がくぼみ、彫りが非常に深い。皮膚の色は淡褐色。全体に毛深く、特に眉毛が濃い。[[アイヌ]]は典型的なアイノイドだが[[オホーツク文化|オホーツク文化人]]経由で[[新モンゴロイド]](旧アジア人種)の影響が認められ、[[琉球民族|琉球人]]はアイノイドと新モンゴロイドの3:7の混血<ref>{{Cite web|url=https://www.city.shimoda.shizuoka.jp/file/%E6%96%8E%E8%97%A4%E6%88%90%E4%B9%9F%E5%85%88%E7%94%9F%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB.pdf|title=遺伝子DNAから日本人の源流を探る~伊豆南部地域調査の意義~|accessdate=2021年12月30日}}</ref>である。[[大和民族]]・[[和人]]はアイノイドと新モンゴロイドの1:9(縄文人ゲノム約15%)の混血<ref>{{Cite web|url=https://www.arcgeo.jp/arcgeo/20160906.pdf|title=2016 長月の夢 3,000年前の縄文人遺伝子 15%を受継ぐ現代日本人|accessdate=2021年12月30日}}</ref>である。なおこの割合は、北海道縄文人ゲノムの割合であり、琉球人の場合南九州縄文人ゲノムの割合は高くなると予想される。
*南方系
*南方系
**[[インドシナ人種]]:[[中国]]南部~[[インドシナ半島]]などに分布する。丸顔で顔の幅が広く、鼻が低い。唇が厚い。皮膚の色は淡褐色〜濃褐色で比較的小柄な者が多い。[[タイ人]]([[小タイ族|シャム人]])、[[クメール人]]、[[モン族 (Mon)|モン人]]、[[チャム族|チャム人]]などが代表的。
**[[インドシナ人種]]:[[中国]]南部~[[インドシナ半島]]などに分布する。丸顔で顔の幅が広く、鼻が低い。唇が厚い。皮膚の色は淡褐色〜濃褐色で比較的小柄な者が多い。[[タイ人]]([[小タイ族|シャム人]])、[[クメール人]]、[[モン族 (Mon)|モン人]]、[[チャム族|チャム人]]などが代表的。
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| date = 2012-11-1
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* 下中直人編 『世界大百科事典 21』 [[平凡社]]
* 下中直人編 『世界大百科事典 21』 [[平凡社]]


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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*[[モンゴロイド]]
* [[モンゴロイド]]
*[[新モンゴロイド]]
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*[[ハプログループD (Y染色体)]]
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*[[ハプログループD1a2a (Y染色体)]]
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2022年3月5日 (土) 01:04時点における版

北方系古モンゴロイドのアイヌ

古モンゴロイド(こモンゴロイド、旧モンゴロイド: proto-Mongoloid)は、W・W・ハウエルズによるモンゴロイド分類日本では埴原和郎尾本恵市らが用いている[1]アジアモンゴロイドを形質的特長から新・古に分けた概念である。進化の程度が新・古という意味ではなく寒冷地適応を経ているか否かの違いを表した分類である。

概要

氷期の北アジアで寒冷適応した結果、凹凸の少ない顔立ち、一重まぶたにみられる蒙古ひだなどの体質的特徴を有する新モンゴロイドに比べると、一般には彫りが深く、比較的小柄で、二重のまぶたや、厚い、湿った耳垢、多毛などの特徴を持っているとされた。

日本においては、縄文時代の住民(縄文人)は主に古モンゴロイド系であったと言われるが、その後に中国および北東アジアから渡来した新モンゴロイドと混血をした結果、現在の日本人の新モンゴロイドと古モンゴロイドの特徴が混在する形質が形成されたとする混血説や、弥生時代頃の渡来民が、それまで日本列島に住んでいた縄文時代人をほとんど絶滅させたか、あるいは辺境の地へ追いやってしまい、代わりに自分たちが日本列島の大部分を占めるようになったとする置換説などがある。[2]だが現在は埴原和郎の二重構造説の登場以降、混血説が最もポピュラーである。

縄文人(北方系古モンゴロイド)と南東アジア人(南方系古モンゴロイド)の関係性については、ホアビン文化のDNAと近いことからラオスやマレーシアにルーツがあるとする説[3]や、これまで考えられていたより古い時代に他の東アジア人集団から孤立し、独自の進化をとげた集団であるとする説[4]など諸説ある。

形質

古モンゴロイドは、新モンゴロイドと比較して低めの身長、彫の深い顔、二重瞼、体毛が多いこと、湿った耳垢、波状の頭髪などの形質を持つと考えられている。

古モンゴロイドに属すアイヌは、彫が深い、毛深い、蒙古斑がまれなど和人とは異質の特徴から、かつてはコーカソイドと考えられたこともあったが、これはコーカソイド特有の形質ではなく、新モンゴロイド以外の多くの人種に共通する形質である。

遺伝的には古モンゴロイドは新モンゴロイドに近く、他の人種とは隔たりが大きいとされているが、このように古モンゴロイドの形質が他人種と共通する部分が少なくないのは、コーカソイドオーストラロイドと分岐した直後の状態を長く保持している(新モンゴロイドの固有派生形質を獲得していない)ためである。すなわち多くの人種と古モンゴロイドの共通点は共有原始形質である。

遺伝子

Y染色体で見ると、古モンゴロイドにて最多を占めるハプログループD1a2a系統と、新モンゴロイドにて最多を占めるハプログループO系統テュルク系モンゴル系ツングース系にて最多を占めるハプログループC2系統では分岐から7万年以上もの時を経ている。

古モンゴロイドを特徴付けるハプログループD1a2a系統の祖先であるハプログループDEは、全ユーラシア人の共通祖先であるハプログループCTから早期に分岐したため、E系統以外のユーラシア系とは分岐してから7万年以上の時間を経ている。比較的近縁なE系統とも7万年ほど前に、最も近縁であるD1a2b系統とも5万年以上前に分岐しているため、5万年以内に共通祖先を持つ系統が無く、非常に独立的であると言える。

その一方、新モンゴロイドの主要系統であるハプログループO系統は、コーカソイド系で最多を占めるハプログループR系統とは約4万年程前に分岐したため、これに従うと新モンゴロイドは古モンゴロイドよりコーカソイドのほうが近いということになる。

ただし、人種を反映する形態形質は、父系のY染色体ハプログループのみでなく、母系のミトコンドリアDNAハプログループとも相関性があること(古モンゴロイドに特徴的な母系のハプログループとしては、ハプログループM7aなどがある)、さらに多くのY染色体ハプログループの系統が同一集団として同じ人種を形成した(遺伝子の系統と集団の系統が一致しない)ため、形質とY染色体ハプログループの系統は一致しない場合が多い。

区分

脚注

  1. ^ 下中直人編 『世界大百科事典 21』 平凡社、447-448頁。
  2. ^ 溝口優司「「混血説」と「二重構造モデル」,そして今後の日本人形成論」『Anthropological science』第102巻第5号、日本人類学会、1994年12月、489-496頁、doi:10.1537/ase.102.489ISSN 09187960NAID 100066849282022年2月27日閲覧 
  3. ^ 最先端技術を用いた古人骨全ゲノム解析から東南アジアと日本列島における人類集団の起源の詳細を解明 | 金沢大学”. 2021年12月30日閲覧。
  4. ^ RESEARCH 縄文人の核ゲノムから歴史を読み解く”. JT生命誌研究館. 2021年12月30日閲覧。
  5. ^ 遺伝子DNAから日本人の源流を探る~伊豆南部地域調査の意義~”. 2021年12月30日閲覧。
  6. ^ 2016 長月の夢 3,000年前の縄文人遺伝子 15%を受継ぐ現代日本人”. 2021年12月30日閲覧。

参考文献

  • 下中直人編 『世界大百科事典 21』 平凡社

関連項目