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「土用の丑の日」の版間の差分

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→‎土用の丑の日の鰻: 『里のをだまき評』(http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_02132_0003/index.html)には「土用の丑の日に鰻を食べると滋養になる」という記述はありません。「深川の地は陽気にして偏らず、船の通路自由にて、牡蠣店の牡蠣、文蛤(はまぐり)町の文蛤、鰻鱺(うなぎ)は墨江に名高く...」とあるのみです(早稲田大学の古典籍総合データベース「里のをだまき評」pdf p15、原書p28。国会図書館「天狗髑髏鑒定縁起」コマ番号49。)。
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夏の土用の入りは7月19日 - 20日なので、最も早い二の丑は入りが7月19日で丑の日だった場合の[[7月31日]]となり、7月に2回土用の丑の日が来る。[[2009年]]、明治改暦以来初めて(改暦前も[[グレゴリオ暦|新暦]]で計算すれば213年ぶりに)7月の二の丑となった。ただし、7月の二の丑はこれ以降[[21世紀]]の間はそれほど珍しくなく、[[2025年]]・[[2041年]]・[[2057年]]・[[2073年]]・[[2089年]]と16年周期で7月31日が二の丑となり、[[2096年]]には[[7月30日]]が二の丑になると予想される。
夏の土用の入りは7月19日 - 20日なので、最も早い二の丑は入りが7月19日で丑の日だった場合の[[7月31日]]となり、7月に2回土用の丑の日が来る。[[2009年]]、明治改暦以来初めて(改暦前も[[グレゴリオ暦|新暦]]で計算すれば213年ぶりに)7月の二の丑となった。ただし、7月の二の丑はこれ以降[[21世紀]]の間はそれほど珍しくなく、[[2025年]]・[[2041年]]・[[2057年]]・[[2073年]]・[[2089年]]と16年周期で7月31日が二の丑となり、[[2096年]]には[[7月30日]]が二の丑になると予想される。
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== 土用の丑の日の鰻 ==
== 土用の丑の日の鰻 ==
[[日本]]で暑い時期を乗り切るために[[栄養価]]の高い[[ウナギ]]を食べるという習慣は[[万葉集]]にも詠まれている古いものだが、土用の丑の日に食べる習慣となったのは、[[文政]]5年([[1822年]] - [[1823年]])当時の話題を集めた『[[明和誌]]』([[青山白峰]]著)によれば、[[安永]]・[[天明]]の頃([[1772年]] - [[1788年]])よりの風習であるという。
日本で暑い時期を乗り切るために[[栄養価]]の高い[[ウナギ]]を食べるという習慣は[[万葉集]]にも詠まれている古いものだが、土用の丑の日に食べる習慣となったのは、[[文政]]5年([[1822年]] - [[1823年]])当時の話題を集めた『[[明和誌]]』([[青山白峰]]著)によれば、[[安永]]・[[天明]]の頃([[1772年]] - [[1788年]])よりの風習であるという。


しかし、日本における疲労研究の第一人者である<ref name="hon" /><ref>{{Cite news |title= 日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く |newspaper= [[日刊ゲンダイ]] |date= 2016-06-30 |author= |url= http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/184711 |accessdate=2016-08-05}}</ref><ref>{{Cite news |title= 疲労と睡眠研究の第一人者・梶本修身医師による 健康情報記事一覧 |newspaper= YUMBLE |date= |author= |url= http://www.yumble.com/kajimoto_lineup.html |accessdate=2016-08-05}}</ref>[[大阪市立大学]]大学院特任教授の梶本修身によれば、栄養価の高いものを食することが当たり前になった現代はエネルギーやビタミン等の栄養不足が原因で[[夏バテ]]になることは考えにくく、現代において夏バテ防止のためにうなぎを食べるという行為は医学的根拠に乏しいとされ、効果があまりないとしている<ref name="hon">『[[ホンマでっか!?TV]]』([[フジテレビ]]系列、2016年8月3日放送分)「間違えだらけの夏の習慣 / 夏バテは自律神経の乱れにより脳が疲れて起こる」</ref><ref name="li">{{Cite news |title= 日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く |newspaper= Livedoor News |date= 2016-06-08 |author= 週プレNEWS |url= http://news.livedoor.com/article/detail/11617468/ |accessdate=2016-08-05}}</ref>。
しかし、日本における疲労研究の第一人者である<ref name="hon" /><ref>{{Cite news |title= 日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く |newspaper= [[日刊ゲンダイ]] |date= 2016-06-30 |author= |url= http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/184711 |accessdate=2016-08-05}}</ref><ref>{{Cite news |title= 疲労と睡眠研究の第一人者・梶本修身医師による 健康情報記事一覧 |newspaper= YUMBLE |date= |author= |url= http://www.yumble.com/kajimoto_lineup.html |accessdate=2016-08-05}}</ref>[[大阪市立大学]]大学院特任教授の梶本修身によれば、栄養価の高いものを食することが当たり前になった現代はエネルギーやビタミン等の栄養不足が原因で[[夏バテ]]になることは考えにくく、現代において夏バテ防止のためにうなぎを食べるという行為は医学的根拠に乏しいとされ、効果があまりないとしている<ref name="hon">『[[ホンマでっか!?TV]]』([[フジテレビ]]系列、2016年8月3日放送分)「間違えだらけの夏の習慣 / 夏バテは自律神経の乱れにより脳が疲れて起こる」</ref><ref name="li">{{Cite news |title= 日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く |newspaper= Livedoor News |date= 2016-06-08 |author= 週プレNEWS |url= http://news.livedoor.com/article/detail/11617468/ |accessdate=2016-08-05}}</ref>。
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[[画像:Unagi Kabayaki-2005-08-28.jpg|thumb|200px|鰻の蒲焼(うな重)]]
[[画像:Unagi Kabayaki-2005-08-28.jpg|thumb|200px|鰻の蒲焼(うな重)]]
==== 通説(平賀源内説) ====
==== 通説(平賀源内説) ====
鰻を食べる習慣についての由来には諸説あり、[[讃岐国]]出身の[[平賀源内]]が発案したという説が最もよく知られている。しかし、平賀源内説の出典は不明で、前述の『明和誌』にあると説明するケースもあるが、『明和誌』には記されていない<ref name="石川_2017">石川博編「鰻」(皓星社、2017年)の解説268ページ以下を参照。同解説によれば源内説も南畝説も比較的新しくできた「伝説」と思われる。</ref>。源内説は細かなバリエーション違いがあるが、要約すれば「商売がうまく行かない鰻屋(知り合いの鰻屋というパターンもある)が、夏に売れない鰻を何とか売るため源内の元に相談に赴いた。源内は、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着した」というもの。丑の日と書かれた貼り紙が効力を奏した理由は諸説あり定かではないが、一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、鰻以外には[[瓜]]、[[梅干]]、[[うどん]]、[[うさぎ]]、[[馬肉]](うま)、[[牛肉]](うし)などを食する習慣もあったようだが、今日においては殆ど見られない。
鰻を食べる習慣についての由来には諸説あり、[[讃岐国]]出身の[[平賀源内]]が発案したという説が最もよく知られている<ref>{{Cite journal |和書|title=鰻の蒲焼考 |author=伊藤春夫 |journal=家事と衛生 |volume=12 |issue=6 |pages=82-85 |year=1936 |doi=10.11468/seikatsueisei1925.12.6_82 |url=https://doi.org/10.11468/seikatsueisei1925.12.6_82 |publisher=大阪生活衛生協会}}</ref>。しかし、平賀源内説の出典は不明で、前述の『明和誌』にあると説明するケースもあるが、『明和誌』には記されていない<ref name="石川_2017">石川博編「鰻」(皓星社、2017年)の解説268ページ以下を参照。同解説によれば源内説も南畝説も比較的新しくできた「伝説」と思われる。</ref>。源内説は細かなバリエーション違いがあるが、要約すれば「商売がうまく行かない鰻屋(知り合いの鰻屋というパターンもある)が、夏に売れない鰻を何とか売るため源内の元に相談に赴いた。源内は、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着した」というもの。丑の日と書かれた貼り紙が効力を奏した理由は諸説あり定かではないが、一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、鰻以外には[[瓜]]、[[梅干]]、[[うどん]]、[[うさぎ]]、[[馬肉]](うま)、[[牛肉]](うし)などを食する習慣もあったようだが、今日においては殆ど見られない。


実際にも鰻には[[ビタミンA]]・[[ビタミンB|B群]]が豊富に含まれているため、[[夏バテ]]、食欲減退防止の効果が期待できるとされているが、前述の通り、栄養価の高い食品で溢れる現代においてはあまり効果は期待できないとされる<ref name="hon" /><ref name="li" />。そもそも、鰻の旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期であり、夏のものは味が落ちるとされる。
実際にも鰻には[[ビタミンA]]・[[ビタミンB|B群]]が豊富に含まれているため、[[夏バテ]]、食欲減退防止の効果が期待できるとされているが、前述の通り、栄養価の高い食品で溢れる現代においてはあまり効果は期待できないとされる<ref name="hon" /><ref name="li" />。そもそも、鰻の旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期であり、夏のものは味が落ちるとされる。


==== その他の説 ====
==== その他の説 ====
*春木屋善兵衛説 - 同じ文政年間([[1818年]] - [[1831年]])の『[[江戸買物独案内]]』によると、土用に大量の[[蒲焼]]の注文を受けた鰻屋、春木屋善兵衛が、子の日、丑の日、寅の日の3日間で作って土甕に入れて保存しておいたところ、丑の日に作った物だけが悪くなっていなかったからという説。但し、この説は前述の『江戸買物独案内』には記されていない。
* 春木屋善兵衛説 - 同じ文政年間([[1818年]] - [[1831年]])の『[[江戸買物独案内]]』によると、土用に大量の[[蒲焼]]の注文を受けた鰻屋、春木屋善兵衛が、子の日、丑の日、寅の日の3日間で作って土甕に入れて保存しておいたところ、丑の日に作った物だけが悪くなっていなかったからという説。但し、この説は前述の『江戸買物独案内』には記されていない。
*蜀山人説 - 鰻屋に相談をもちかけられた蜀山人こと[[大田南畝]]が、「丑の日に鰻を食べると薬になる」という内容の[[狂歌]]をキャッチコピーとして考え出したという話が[[天保]]10年([[1839年]] - [[1840年]])の『天保佳話』(劉会山大辺甫篇の狂詩集)に載せられている、と説明するケースがあるが、同書にそのような記載はいっさいない 。また、天保8年に刊行された同名の随筆集『天保佳話』を出典にあげることもあるが、同書にも大田南畝と土用丑の日を結びつける記述は一切ない。ただし、大田南畝の作品を集めた『紅梅集』(全集第二巻所収)には、土用丑の日とは関連付けていないが、鰻屋の「高橋」を讃えた狂歌と狂詩が掲載されている{{R|石川_2017}}。
* 蜀山人説 - 鰻屋に相談をもちかけられた蜀山人こと[[大田南畝]]が、「丑の日に鰻を食べると薬になる」という内容の[[狂歌]]をキャッチコピーとして考え出したという話が[[天保]]10年([[1839年]] - [[1840年]])の『天保佳話』(劉会山大辺甫篇の狂詩集)に載せられている、と説明するケースがあるが、同書にそのような記載はいっさいない。また、天保8年に刊行された同名の随筆集『天保佳話』を出典にあげることもあるが、同書にも大田南畝と土用丑の日を結びつける記述は一切ない。ただし、大田南畝の作品を集めた『紅梅集』(全集第二巻所収)には、土用丑の日とは関連付けていないが、鰻屋の「高橋」を讃えた狂歌と狂詩が掲載されている{{R|石川_2017}}。
*丑=鰻二匹説 - 平仮名で墨汁を使って毛筆で書いた「うし」と言う文字が、まるで2匹の鰻のように見えたからと言う説。
* 丑=鰻二匹説 - 平仮名で墨汁を使って毛筆で書いた「うし」と言う文字が、まるで2匹の鰻のように見えたからと言う説。


=== 最近の動き ===
=== 最近の動き ===
*鰻の[[養殖]]業者らが中心となって、夏以外の土用の丑の日にも鰻を食べる習慣を普及させようという動きがある。[[スーパーマーケット]]や[[コンビニエンスストア]]でもこの動きが見られる。土用は季節の変わり目でもあるため、栄養価の高いウナギを食べて精を付けようという趣旨に一応の妥当性はある。
* 鰻の[[養殖]]業者らが中心となって、夏以外の土用の丑の日にも鰻を食べる習慣を普及させようという動きがある。[[スーパーマーケット]]や[[コンビニエンスストア]]でもこの動きが見られる。土用は季節の変わり目でもあるため、栄養価の高いウナギを食べて精を付けようという趣旨に一応の妥当性はある。
*鰻の産地である[[長野県]][[岡谷市]]の岡谷商工会議所が冬の土用の丑の日を[[寒の土用の丑の日]]として商標登録(出願番号:商願平11-39161号、登録番号:登録商標第4525842号)したほか、[[1998年]]には「うなぎのまち岡谷の会」が日本記念日協会に記念日として登録した。
* 鰻の産地である[[長野県]][[岡谷市]]の岡谷商工会議所が冬の土用の丑の日を[[寒の土用の丑の日]]として商標登録(出願番号:商願平11-39161号、登録番号:登録商標第4525842号)したほか、[[1998年]]には「うなぎのまち岡谷の会」が日本記念日協会に記念日として登録した。


== その他の風習 ==
== その他の風習 ==
* [[平安時代|平安]]から[[室町時代]]にかけては、疫病除けに「めぐり」と呼ばれる[[杉原紙]]を混ぜ込んだ[[すいとん]]を食べる習慣や、[[アズキ]]や[[ニンニク]]を飲む習慣があった<ref>鈴木晋一 『たべもの噺』 平凡社、1986年、pp88-93</ref>。
* [[平安時代|平安]]から[[室町時代]]にかけては、疫病除けに「めぐり」と呼ばれる[[杉原紙]]を混ぜ込んだ[[すいとん]]を食べる習慣や、[[アズキ]]や[[ニンニク]]を飲む習慣があった<ref>鈴木晋一 『たべもの噺』 平凡社、1986年、pp88-93</ref>。
*[[石田散薬]]:[[土方歳三]]の生家が製造、販売していた薬。土用の丑の日限定で薬草を刈り取り。
* [[石田散薬]]:[[土方歳三]]の生家が製造、販売していた薬。土用の丑の日限定で薬草を刈り取り。
*[[湯田上温泉]]
* [[湯田上温泉]]
*[[きゅうり加持]]
* [[きゅうり加持]]
*土用の丑の日に、寺院において、素焼きの皿([[焙烙]])に[[灸]]を置いたものを頭に据える「焙烙灸」という修法があり、頭痛などに験があるとされる<ref>角川学芸出版編『角川俳句大歳時記 夏』 角川書店、2006年、pp148</ref>。
* 土用の丑の日に、寺院において、素焼きの皿([[焙烙]])に[[灸]]を置いたものを頭に据える「焙烙灸」という修法があり、頭痛などに験があるとされる<ref>角川学芸出版編『角川俳句大歳時記 夏』 角川書店、2006年、pp148</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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* [http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7379 土用の丑の日はいらない、ウナギ密輸の実態を暴く] - [[WEDGE Infinity]]
* [http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7379 土用の丑の日はいらない、ウナギ密輸の実態を暴く] - [[WEDGE Infinity]]
* [https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180719/k10011538401000.html News Up うなぎ撲滅キャンペーン!? NHKニュース] - [[NHKオンライン]]([[日本放送協会]])
* [https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180719/k10011538401000.html News Up うなぎ撲滅キャンペーン!? NHKニュース] - [[NHKオンライン]]([[日本放送協会]])
* [https://www.huffingtonpost.jp/2018/07/19/doyou-no-ushinohi_a_23485161/ 「土用の丑の日」は、もうやめよう。絶滅危機のウナギを考える] ハフポスト 2018年07月20日


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2020年5月29日 (金) 00:59時点における版

土用の丑の日(どようのうしのひ)は、土用の間のうち十二支である。

「土用」とは五行思想に基づく季節の変わり目を意味する雑節(ざっせつ)で、四季の四立(立春、立夏、立秋、立冬)の直前の約18日間を指す。この期間中の丑の日は年に平均6.09日あることになる。一般には夏の土用の丑の日のことを言うことが多い。夏の土用には丑の日が年に1日か2日(平均1.57日)あり、2日ある場合はそれぞれ一の丑二の丑という。以下、夏の土用の丑の日のことを単に土用の丑の日と呼ぶこととする。平気法では土用の定義が異なる(ただし丑の定義は同じ)ため土用の丑の日が異なる年もあるが、ここでは太陰暦以来普及している定気法での土用を使う。

日付

一の丑 二の丑
2001年 7月25日 8月6日
2002年 7月20日 8月1日
2003年 7月27日 なし
2004年 7月21日 8月2日
2005年 7月28日 なし
2006年 7月23日 8月4日
2007年 7月30日 なし
2008年 7月24日 8月5日
2009年 7月19日 7月31日
2010年 7月26日 なし
2011年 7月21日 8月2日
2012年 7月27日 なし
2013年 7月22日 8月3日
2014年 7月29日 なし
2015年 7月24日 8月5日
2016年 7月30日 なし
2017年 7月25日 8月6日
2018年 7月20日 8月1日
2019年 7月27日 なし
2020年 7月21日 8月2日

土用の丑の日になることがある日は、夏の土用になることがある7月19日 - 8月7日である。毎年夏の土用となる7月19日 - 8月7日はいずれも等しく12年に1回の割合(12年間隔という意味ではない)で土用の丑の日となる。

1900年 - 2099年の間は土用の日付が少しずつ前倒しになるため、土用の丑の日になりうる日も変化する。1907年には、明治の改暦から現在までで唯一、8月8日が土用の丑の日(二の丑)となった。2096年には改暦以来初めて、7月18日が土用の丑の日(一の丑)となると予想される。

二の丑

前節でもわかるとおり、土用の丑の日が2回となる場合が多々ある。

夏の土用は太陽黄経が117度から135度(立秋)の前日までと定義され、平均18.82日間(18日:19日=18%:82%)ある。19日の年の場合、土用の入りから7日以内に丑の日があると(すなわち土用入りの日がから丑の間のだと)、土用のうちにもう一度丑の日が巡ってくる。これが二の丑であり、57%の年にある。

夏の土用の入りは7月19日 - 20日なので、最も早い二の丑は入りが7月19日で丑の日だった場合の7月31日となり、7月に2回土用の丑の日が来る。2009年、明治改暦以来初めて(改暦前も新暦で計算すれば213年ぶりに)7月の二の丑となった。ただし、7月の二の丑はこれ以降21世紀の間はそれほど珍しくなく、2025年2041年2057年2073年2089年と16年周期で7月31日が二の丑となり、2096年には7月30日が二の丑になると予想される。

土用の丑の日の鰻

日本で暑い時期を乗り切るために栄養価の高いウナギを食べるという習慣は万葉集にも詠まれている古いものだが、土用の丑の日に食べる習慣となったのは、文政5年(1822年 - 1823年)当時の話題を集めた『明和誌』(青山白峰著)によれば、安永天明の頃(1772年 - 1788年)よりの風習であるという。

しかし、日本における疲労研究の第一人者である[1][2][3]大阪市立大学大学院特任教授の梶本修身によれば、栄養価の高いものを食することが当たり前になった現代はエネルギーやビタミン等の栄養不足が原因で夏バテになることは考えにくく、現代において夏バテ防止のためにうなぎを食べるという行為は医学的根拠に乏しいとされ、効果があまりないとしている[1][4]

由来

鰻の蒲焼(うな重)

通説(平賀源内説)

鰻を食べる習慣についての由来には諸説あり、讃岐国出身の平賀源内が発案したという説が最もよく知られている[5]。しかし、平賀源内説の出典は不明で、前述の『明和誌』にあると説明するケースもあるが、『明和誌』には記されていない[6]。源内説は細かなバリエーション違いがあるが、要約すれば「商売がうまく行かない鰻屋(知り合いの鰻屋というパターンもある)が、夏に売れない鰻を何とか売るため源内の元に相談に赴いた。源内は、「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着した」というもの。丑の日と書かれた貼り紙が効力を奏した理由は諸説あり定かではないが、一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、鰻以外には梅干うどんうさぎ馬肉(うま)、牛肉(うし)などを食する習慣もあったようだが、今日においては殆ど見られない。

実際にも鰻にはビタミンAB群が豊富に含まれているため、夏バテ、食欲減退防止の効果が期待できるとされているが、前述の通り、栄養価の高い食品で溢れる現代においてはあまり効果は期待できないとされる[1][4]。そもそも、鰻の旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期であり、夏のものは味が落ちるとされる。

その他の説

  • 春木屋善兵衛説 - 同じ文政年間(1818年 - 1831年)の『江戸買物独案内』によると、土用に大量の蒲焼の注文を受けた鰻屋、春木屋善兵衛が、子の日、丑の日、寅の日の3日間で作って土甕に入れて保存しておいたところ、丑の日に作った物だけが悪くなっていなかったからという説。但し、この説は前述の『江戸買物独案内』には記されていない。
  • 蜀山人説 - 鰻屋に相談をもちかけられた蜀山人こと大田南畝が、「丑の日に鰻を食べると薬になる」という内容の狂歌をキャッチコピーとして考え出したという話が天保10年(1839年 - 1840年)の『天保佳話』(劉会山大辺甫篇の狂詩集)に載せられている、と説明するケースがあるが、同書にそのような記載はいっさいない。また、天保8年に刊行された同名の随筆集『天保佳話』を出典にあげることもあるが、同書にも大田南畝と土用丑の日を結びつける記述は一切ない。ただし、大田南畝の作品を集めた『紅梅集』(全集第二巻所収)には、土用丑の日とは関連付けていないが、鰻屋の「高橋」を讃えた狂歌と狂詩が掲載されている[6]
  • 丑=鰻二匹説 - 平仮名で墨汁を使って毛筆で書いた「うし」と言う文字が、まるで2匹の鰻のように見えたからと言う説。

最近の動き

  • 鰻の養殖業者らが中心となって、夏以外の土用の丑の日にも鰻を食べる習慣を普及させようという動きがある。スーパーマーケットコンビニエンスストアでもこの動きが見られる。土用は季節の変わり目でもあるため、栄養価の高いウナギを食べて精を付けようという趣旨に一応の妥当性はある。
  • 鰻の産地である長野県岡谷市の岡谷商工会議所が冬の土用の丑の日を寒の土用の丑の日として商標登録(出願番号:商願平11-39161号、登録番号:登録商標第4525842号)したほか、1998年には「うなぎのまち岡谷の会」が日本記念日協会に記念日として登録した。

その他の風習

脚注

  1. ^ a b c ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系列、2016年8月3日放送分)「間違えだらけの夏の習慣 / 夏バテは自律神経の乱れにより脳が疲れて起こる」
  2. ^ “日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く”. 日刊ゲンダイ. (2016年6月30日). http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/184711 2016年8月5日閲覧。 
  3. ^ “疲労と睡眠研究の第一人者・梶本修身医師による 健康情報記事一覧”. YUMBLE. http://www.yumble.com/kajimoto_lineup.html 2016年8月5日閲覧。 
  4. ^ a b 週プレNEWS (2016年6月8日). “日常の疲れは「いびき」が原因 回復には鶏肉が効く”. Livedoor News. http://news.livedoor.com/article/detail/11617468/ 2016年8月5日閲覧。 
  5. ^ 伊藤春夫「鰻の蒲焼考」『家事と衛生』第12巻第6号、大阪生活衛生協会、1936年、82-85頁、doi:10.11468/seikatsueisei1925.12.6_82 
  6. ^ a b 石川博編「鰻」(皓星社、2017年)の解説268ページ以下を参照。同解説によれば源内説も南畝説も比較的新しくできた「伝説」と思われる。
  7. ^ 鈴木晋一 『たべもの噺』 平凡社、1986年、pp88-93
  8. ^ 角川学芸出版編『角川俳句大歳時記 夏』 角川書店、2006年、pp148

外部リンク