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=== 超電導メモリスタ部品 ===
=== 超電導メモリスタ部品 ===
Paul Penfield博士は、1974年のMIT技術報告書<ref name="penfield1974">{{cite report|title=V. Microwave and Millimeter Wave Techniques|author=Paul L. Penfield Jr.|date=1974|url=https://dspace.mit.edu/bitstream/handle/1721.1/56460/RLE_QPR_113_V.pdf|id=QPR No. 113|pages=31–32|contribution=1. Frequency-Power Formulas for Josephson Junctions}}</ref>の中で、[[ジョセフソン効果|ジョセフソン接合]]に関連してメモリスタについて言及している。これは回路デバイスの文脈における「メモリスタ」という単語の初期の使用例であった。

ジョセフソン接合を通る電流の項の1つは次の式のように表され: <math display="block">\begin{align}
i_M(v) &= \epsilon\cos(\phi_0)v \\
&=W(\phi_0)v
\end{align}</math> <math display="inline">\epsilon</math>には物理的な超電導材料に基づく定数が、<math display="inline">v</math>には接合部両端間の電圧が、<math display="inline">i_M</math>には接合部を流れる電流が当て嵌まる。

20世紀後半を通じて、このジョセフソン接合における位相依存コンダクタンスに関する研究が行われた<ref name="langenberg74">{{Citation|title=Physical Interpretation of the <math>\cos\phi</math> term and implications for detectors|last=Langenberg|first=D. N.|date=1974|url=https://hal.archives-ouvertes.fr/jpa-00243770/file/ajp-rphysap_1974_9_1_35_0.pdf|journal=Revue de Physique Appliquée|volume=9|pages=35–40|doi=10.1051/rphysap:019740090103500}}</ref><ref name="pedersen1972">{{Citation|title=Magnetic field dependence and Q of the Josephson plasma resonance|last=Pedersen|first=N.F.|date=1972|url=https://backend.orbit.dtu.dk/ws/files/3534398/NF.pdf|journal=Physical Review B|volume=11|issue=6|pages=4151–4159|doi=10.1103/PhysRevB.6.4151|bibcode=1972PhRvB...6.4151P|display-authors=et. al.}}</ref><ref name="pedersen1974">{{cite book |last1=Pedersen |first1=N. F. |last2=Finnegan |first2=T. F. |last3=Langenberg |first3=D. N. |title=Low Temperature Physics-LT 13 |chapter=Evidence for the Existence of the Josephson Quasiparticle-Pair Interference Current |publisher=Springer US |publication-place=Boston, MA |date=1974 |doi=10.1007/978-1-4684-2688-5_52 |pages=268–271 |isbn=978-1-4684-2690-8}}</ref><ref name="thompson1973">{{Citation|title=Power flow for Josephson Elements|last=Thompson|first=E.D.|date=1973|journal=IEEE Trans. Electron Devices|volume=20|issue=8|pages=680–683|doi=10.1109/T-ED.1973.17728|bibcode=1973ITED...20..680T}}</ref>。この位相依存コンダクタンスを推論するためのより包括的なアプローチが、2014年にPeottaとDiVentraの独創的な論文で登場した<ref name="peottaDiVentra2014">{{Citation|title=Superconducting Memristors|last1=Peotta|first1=A.|last2=Di Ventra|first2=M.|date=2014|journal=Physical Review Applied|volume=2|issue=3|pages=034011-1-034011-10|arxiv=1311.2975|doi=10.1103/PhysRevApplied.2.034011|bibcode=2014PhRvP...2c4011P|s2cid=119020953}}</ref>。


=== メモリスタ回路 ===
=== メモリスタ回路 ===

2024年4月13日 (土) 14:52時点における版

メモリスタ
発明 蔡少棠 (Leon O. Chua, 1971)
電気用図記号
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メモリスタ (またはメモリスター。英語: memristor, [ˈmɛmrɪstər]; メモリ抵抗器かばん語) は、電荷磁束鎖交英語版に関係する非線形2端子英語版電気部品である。通過した電荷を記憶し、それに伴って抵抗が変化する受動素子である。過去に流れた電流記憶する抵抗器であることからメモリスタ (memristor) と名づけられた。

1971年に蔡少棠英語版によって言及と命名がなされ、これにより、抵抗器コンデンサインダクタも含む基本的な電気部品の理論上のカルテットが完成した[1]抵抗器キャパシタインダクタに次ぐ新たな受動素子であるので、“第4の回路素子” と呼ばれる。

英語版英語版朝鮮語版は後にこの概念をメモリスティブ体系に一般化した[2]。理想的なメモリスタ部品の主要な特性を複数の在来型の部品からなる回路で模倣するようなシステムも、一般にメモリスタと呼ばれる。 このようなメモリスタ・システム技術はいくつか開発されており、特にReRAMがその1例である。

電子デバイスのメモリスティブ特性の特定は論争を呼んでいる。実験的には、理想的なメモリスタはまだ実証されていない[3][4]

基本的な電気部品として

蔡は1971年の論文で、非線形抵抗器 (電圧対電流)、非線形コンデンサ (電圧対電荷)、および非線形インダクタ (磁束鎖交対電流) の間に理論上の対称性を特定した。この対称性から、彼は磁束と電荷を結び付ける第四の基礎的非線形回路要素の特性を推測し、これをメモリスタと呼んだ。線形 (または非線形) 抵抗器とは対照的に、メモリスタは過去の電圧または電流の記憶を含め、電流と電圧の間にダイナミックな関係を持っている。他の科学者は、バーナード・ウィドロー英語版メミスター英語版のようなダイナミックメモリ抵抗器を提案していたが、蔡は数理的普遍性を導入した。

抵抗器、キャパシタ、インダクタ&メモリスタの概念の対称図

由来と特性

メモリスタは、通過した電荷と端子間の磁束鎖交が非線形関数関係であるような素子と定義される。すなわち、

と表わされる[5]。磁束鎖交は、インダクタの回路特性から一般化される。ここでは磁場を表すものではなく、その物理的意味については以下で説明する。 記号はすなわち、電圧の時間積分と見なすことができる[6]


の関係において、一方の他方に対する導関数は、一方または他方の値に依存する。そしてそれゆえ、それぞれの導関数は電荷を伴なう磁束の変化の電荷依存率を述べるメモリスタンス関数によって特徴づけられる。

磁束を電圧の時間積分として、電荷を電流の時間積分として代入すると、より便利な形式が得られる:
メモリスタを抵抗、キャパシタ、インダクタに関連付けるには、デバイスを特徴付ける項を分離し、常微分方程式として記述すると便利。

素子 特徴的性質英語版 (単位) 常微分方程式
抵抗器(R) 抵抗 (V / A, or Ω)
キャパシタ(C) 静電容量 (C / V, or ファラド)
インダクタ(L) インダクタンス (Wb / A, or ヘンリー)
メモリスタ(M) メモリスタンス (Wb / C, or Ω)

上記の表は、およびの微分の有意義な比率を全てカバーする。の導関数であり、またの積分であるため、に、またはに関連付けることができるデバイスはない。このことから、メモリスタは電荷に依存する抵抗であると推測できる。もしが定数の場合、オームの法則が得られる。ただし、が自明でない場合、は時間とともに変化する可能性があるため、方程式は同等ではない。時間の関数として電圧を解くと、

が得られる。この方程式はが電荷によって変化しない限り、メモリスタが電流と電圧の間で線形関係を定義することを示している。非ゼロ電流は時間変化する電荷を意味する。交流電流は(しかしながら)、の最大変化によって大きな英語版変化を引き起こさない限り — 正味の電荷の移動を伴わずに測定可能な電圧を誘導することにより回路動作の線形依存性を明らかにすることができる。


さらに、電流が印加されない場合、メモリスタは静的である。 の場合、であり、は定数であることがわかる。これはメモリー効果の本質である。

同様に、をメンダクタンスとして定義できる[7]

電力消費特性、これは抵抗器の式を思い出させる。
がほとんど変化しない限り(交流下など)、メモリスタは定抵抗器のように見える。もしもが敏速に増加すると(しかしながら)電流と電力消費は急速に停止する。

は、のすべての値に対して正になるように物理的に制限される (デバイスが受動的であり、ある超伝導状態にならないと仮定する)。 負の値は、交流で動作するときにエネルギーを永続的に供給することを意味する。

モデル化と検証

メモリスタ機能の性質を理解するためには、デバイスのモデル化英語版の概念から始めて、基本的な回路理論の概念についてある程度の知識があると役に立つ[8]

エンジニアや科学者が物理システムを元の形で分析することはめったにない。代わりに、彼らはシステムの挙動を近似するモデルを構築する。モデルの挙動を解析することで、彼らは実際のシステムの挙動を予測することを望んでいる。モデルを構築する主な理由は、通常、物理システムが複雑すぎて実際の分析に対応できないからである。

20世紀には、研究は研究者がメモリスティブ特性を認識していないデバイスで行われた。このため、そのようなデバイスはメモリスタとして認識されるべきであるという提案が提起された[8]。PershinとDi Ventra[9]は、理想的なメモリスタが実際に存在するのか、それとも純粋に数学的な概念であるのかについての長年の論争の解決に役立つテストを提案した。

2008年以降の研究の大部分はこの分野に集中しているため、この記事の残りの部分では主にReRAMデバイスに関連するメモリスタについて説明する。

超電導メモリスタ部品

Paul Penfield博士は、1974年のMIT技術報告書[10]の中で、ジョセフソン接合に関連してメモリスタについて言及している。これは回路デバイスの文脈における「メモリスタ」という単語の初期の使用例であった。

ジョセフソン接合を通る電流の項の1つは次の式のように表され:

には物理的な超電導材料に基づく定数が、には接合部両端間の電圧が、には接合部を流れる電流が当て嵌まる。

20世紀後半を通じて、このジョセフソン接合における位相依存コンダクタンスに関する研究が行われた[11][12][13][14]。この位相依存コンダクタンスを推論するためのより包括的なアプローチが、2014年にPeottaとDiVentraの独創的な論文で登場した[15]

メモリスタ回路

批評

画像外部リンク
HP研にて専用に製作され、原子間力顕微鏡によって撮像された17列酸素欠乏二酸化チタンメモリスタ。配線幅は約50nm、つまり原子150個分[16]。メモリスタを流れる電流は酸素空孔をシフトさせ、抵抗の段階的かつ持続的な変化を引き起こす[17]

実験的試験

理論

スイッチとしての動作

メモリスティブ体系

ピンチ化ヒステリシス

メモリスティブ・ネットワークと回路相互作用の数学モデル

拡張された(理論)体系

ヒステリック(ヒステリシス的な)電流-電圧メモリスタの実装

二酸化チタンメモリスタ

二酸化ケイ素メモリスタ

高分子メモリスタ

積層メモリスタ

原子抵抗器

強誘電体メモリスタ

カーボン・ナノチューブ・メモリスタ

生体分子メモリスタ

スピン・メモリスティブ体系

スピントロニクス・メモリスタ

磁気トンネル接合におけるメモリスタンス

外部的メカニズム
本質的メカニズム

スピン・メモリスティブ体系

自律志向型チャネル・メモリスタ

ヒステリック(ヒステリシス的な)磁束-電荷メモリスタの実装

時間積分化・成形フリー・メモリスタ

潜在的な用途

派生デバイス

メミスターとメモトランジスタ

メモキャパシタとメミンダクタ

メモフラクタンスとメモフラクタ、2次と3次のメモリスタ、メモキャパシタとメミンダクタ

歴史

メモリスタの存在は1971年に蔡少棠英語版の論文で指摘されていたが、対応する物理現象が発見されず、メモリスタは長い間実現されることはなかった。しかし、2008年に米ヒューレット・パッカード(HP)研究所英語版により二酸化チタンの薄膜を用いたメモリスタが開発され、第4の回路素子として注目を集めることとなった。

記憶素子としてはフラッシュメモリより高速・低消費電力であり[18]DRAMより安価で省電力であるという性質を持っていると言われ、両方を置き換える可能性がある。面積あたりの記憶容量もフラッシュメモリと比べて2倍にでき、また放射線による影響も受けないというメリットがある[18]

2010年4月には、メモリスタが論理演算装置としても使用できることを確認したとHPが発表。演算装置と記憶素子を単一のデバイスに統合できるため、より小型でエネルギー効率の良いデバイスを開発できる可能性が示された[18]

HPは2020年までの完全な形での商品化を目指している。

先達

理論的説明

21世紀

関連項目

脚注

  1. ^ Chua, L. (1971). “Memristor-The missing circuit element”. IEEE Transactions on Circuit Theory 18 (5): 507–519. doi:10.1109/TCT.1971.1083337. 
  2. ^ Chua, L. O.; Kang, S. M. (1 January 1976), “Memristive devices and systems”, Proceedings of the IEEE 64 (2): 209–223, doi:10.1109/PROC.1976.10092 
  3. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Pershin_2018」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  4. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Kim_2019」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  5. ^ Chua, L. (1971). “Memristor-The missing circuit element”. IEEE Transactions on Circuit Theory 18 (5): 507–519. doi:10.1109/TCT.1971.1083337. 
  6. ^ Knoepfel, H. (1970), Pulsed high magnetic fields, New York: North-Holland, p. 37, Eq. (2.80) 
  7. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「chua714」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  8. ^ a b Muthuswamy, Bharathwaj; Banerjee, Santo (2019). Introduction to Nonlinear Circuits and Networks. Springer International. ISBN 978-3-319-67325-7 
  9. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Pershin_20182」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  10. ^ Paul L. Penfield Jr. (1974). "1. Frequency-Power Formulas for Josephson Junctions". V. Microwave and Millimeter Wave Techniques (PDF) (Report). pp. 31–32. QPR No. 113。
  11. ^ Langenberg, D. N. (1974), “Physical Interpretation of the term and implications for detectors”, Revue de Physique Appliquée 9: 35–40, doi:10.1051/rphysap:019740090103500, https://hal.archives-ouvertes.fr/jpa-00243770/file/ajp-rphysap_1974_9_1_35_0.pdf 
  12. ^ Pedersen, N.F. (1972), “Magnetic field dependence and Q of the Josephson plasma resonance”, Physical Review B 11 (6): 4151–4159, Bibcode1972PhRvB...6.4151P, doi:10.1103/PhysRevB.6.4151, https://backend.orbit.dtu.dk/ws/files/3534398/NF.pdf 
  13. ^ Pedersen, N. F.; Finnegan, T. F.; Langenberg, D. N. (1974). “Evidence for the Existence of the Josephson Quasiparticle-Pair Interference Current”. Low Temperature Physics-LT 13. Boston, MA: Springer US. pp. 268–271. doi:10.1007/978-1-4684-2688-5_52. ISBN 978-1-4684-2690-8 
  14. ^ Thompson, E.D. (1973), “Power flow for Josephson Elements”, IEEE Trans. Electron Devices 20 (8): 680–683, Bibcode1973ITED...20..680T, doi:10.1109/T-ED.1973.17728 
  15. ^ Peotta, A.; Di Ventra, M. (2014), “Superconducting Memristors”, Physical Review Applied 2 (3): 034011-1-034011-10, arXiv:1311.2975, Bibcode2014PhRvP...2c4011P, doi:10.1103/PhysRevApplied.2.034011 
  16. ^ Bush, S. (2 May 2008), “HP nano device implements memristor”, Electronics Weekly, http://www.electronicsweekly.com/Articles/2008/05/02/43658/hp-nano-device-implements-memristor.htm 
  17. ^ Kanellos, M. (30 April 2008), “HP makes memory from a once theoretical circuit”, CNET News, http://news.cnet.com/8301-10784_3-9932054-7.html 2008年4月30日閲覧。 
  18. ^ a b c HPが新発見――「memristor」で演算機能とメモリ機能を統合 2010年4月9日”. RBB TODAY. 2014年11月19日閲覧。

参考文献

外部リンク