羽田空港アクセス線

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羽田空港アクセス線(はねだくうこうアクセスせん)(仮称)とは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が提案している東海道本線田町駅東京臨海高速鉄道りんかい線大井町駅および東京テレポート駅東京国際空港(羽田空港)との間を結ぶ計画の鉄道路線である。

概要[編集]

※便宜上、終点の「羽田空港新駅」を先に記述する。

JR東日本では、羽田空港の国内線第1ターミナルと第2ターミナルの間に設ける「羽田空港新駅」から東京貨物ターミナル付近まで約5.0kmの「アクセス新線」を建設[1]、そこから一部既存線を活用しつつ、田町駅への「東山手ルート」、大井町駅への「西山手ルート」、東京テレポート駅への「臨海部ルート」の3ルートを建設するとしている[2]。将来的には羽田空港新駅から国際線ターミナルへの延伸も検討する。

総事業費は3200億円[3]、完成までは10年程度を見込んでいる[4]。羽田空港新駅付近や既存線との接続は難工事が予想されることから、東京オリンピックに間に合わせるため、3ルートのうち既存施設が活用できる臨海部ルートに絞り、空港島内に暫定駅を作り、そこからターミナルまでバス連絡という案[4]もあったが、2015年時点で暫定開業は断念している[5]。JR東日本は、このうち東山手ルートとアクセス新線について2019年5月 - 6月頃に環境アセスメントの手続きを開始、約3年間で取りまとめるとし、工事の施工に約7年を要すると想定して、早ければ2029年に開業するとしている[6][7]

終日輸送人員は空港旅客のみで7万8000人、ピーク1時間の輸送量は約2万1000人(現行:東京モノレール1万1000人、京急空港線1万4000人)を想定[3]

東山手ルート[編集]

2019年5月30日に公表された[8]「羽田空港アクセス線(仮称)整備事業」環境影響評価調査計画書から以下の計画が明らかになった。

東海道線接続部
田町駅北方の山手線引き上げ線を撤去し、山手線・京浜東北線・東海道線上り線の線路を移設することで、東海道線の上下線の間に単線の接続線を設ける。
単線シールドトンネルで東海道線下り線・東海道新幹線の下をくぐり、田町駅南側で地上に出たのち、複線となり高浜西運河付近で大汐線改修区間に接続する。
大汐線改修区間
東海道新幹線回送線と並行する大汐線を複線で復旧させ使用する。
救援センター踏切付近は、改修前は地平区間であるが、改良後は高架となる。
東京貨物ターミナル内改良区間
東京貨物ターミナル内には、留置線等の施設を整備する。
アクセス新線区間
東京貨物ターミナルから羽田空港新駅までの約5kmは新設の複線トンネルとなる。
羽田空港新駅(仮称)は第1・第2ターミナル下に開削トンネルで1面2線の構造となる。
運転計画
15両編成まで対応し、運転本数は8本/時・144本/日を計画している。

西山手ルート[編集]

  • 羽田空港 - 東京貨物ターミナル - 大井町駅 - 大崎駅 - 新宿駅[2]
    東京貨物ターミナルから「東品川短絡線」を建設、品川シーサイド駅・大井町駅間でりんかい線に合流。大崎駅からは山手貨物線に乗り入れる。既にりんかい線との相互直通運転を行っている埼京線への直通を想定。
  • 所要時間:羽田空港 - 新宿駅間約23分(現行:東京モノレール経由46分、京急空港線経由41分)[3]

臨海部ルート[編集]

  • 羽田空港 - 東京貨物ターミナル - 東京テレポート駅 - 新木場駅[2]
    東京貨物ターミナルからは、隣接するりんかい線・東臨運輸区(八潮車両基地)への回送線を複線化。品川埠頭分岐点(東京テレポート駅構内)でりんかい線に合流する。りんかい線と線路がつながっている京葉線への直通を想定。
  • 所要時間:羽田空港 - 新木場駅間約20分(現行:東京モノレール経由41分)[3]

沿革[編集]

2000年、運輸省(現国土交通省運輸政策審議会答申第18号(第18号答申)において、「東京臨海高速鉄道臨海副都心線(現りんかい線)の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の新設」として、東京テレポート駅から東京貨物ターミナル駅を経て羽田空港に向かう路線がB路線(今後整備について検討すべき路線)として取り上げられた[9]。なお、この答申では、「大崎方面からの直通ルートについても併せ検討する」としている。さらに、同答申では、同じくB路線として「東海道貨物支線の旅客線化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設」が取り上げられ、品川駅および東京テレポート駅から浜川崎駅に向かう途中に羽田空港口駅を設け、羽田空港への連絡を図ることも盛り込まれていた。しかし、2002年にJR東日本が東京モノレールを子会社化したこともあり、これらの計画については目立った進捗はなかった。

2013年10月29日、JR東日本が発表した「グループ経営構想V(ファイブ)「今後の重点取組み事項」について」[10]に「今後の羽田空港の利用客増加を見据えた、空港アクセス改善策の検討」が盛り込まれ、11月9日、JR東日本が田町駅から休止中の東海道貨物線を活用して羽田空港へ向かう鉄道路線について整備の検討に入ったとNHKが報じた[11][12]

2014年8月19日、国土交通省交通政策審議会の東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会で、JR東日本が計画を明らかにした。また、この計画に関連して、東京都が保有している東京臨海高速鉄道の株式をJR東日本が買収する意向であることが明らかになった[13]

2015年3月6日、東京都は「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討の中間まとめ≫」[14]を公表。その中で、当路線は整備効果が高いとして「整備について優先的に検討すべき路線」5路線[注 1]のひとつに選ばれており、7月10日に公表された「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」[15]でも「羽田空港へのアクセスに特に効果が期待できる」として踏襲されている[注 2]。 同報告書では、当路線と競合する計画となる新空港線「蒲蒲線」矢口渡駅 - 蒲田駅 - 京急蒲田駅 - 大鳥居駅)は都が求める目標への寄与度が低いとして当路線より1ランク落ちる「整備について検討すべき路線」[注 3]都心直結線押上駅 - 新東京駅 - 泉岳寺駅)については費用便益比が1.0を下回るとして検討すべき路線からも外れた。

2016年4月7日、東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会がまとめた交通政策審議会答申第198号[16]では、当路線は京葉線・りんかい線相互直通運転化と合わせて「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」に位置付けられ、4月20日に国土交通大臣に答申を行った。答申自体には優先順位は示されていないが、課題の項目に「他の空港アクセス路線との補完関係を考慮しつつ、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において事業計画の検討の深度化を図るべき」[17]と記載され、事業化に前向きな表現となっている。

東京都では、2018年度予算案において、東京メトロ株式の配当を原資とした「鉄道新線建設等準備基金」を創設し、当線を含む6路線[注 4]の事業化を検討するとしている[18]

2018年7月3日、JR東日本は「グループ経営ビジョン「変革2027」」[19]を発表。「羽田空港アクセス線構想の推進」が盛り込まれた。

2019年3月、JR東日本は、近く「羽田空港アクセス線」の環境影響評価に着手する方針を固めた。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 当路線以外の4路線は、東京メトロ有楽町線豊洲駅 - 住吉駅間延伸、都営地下鉄大江戸線光が丘駅 - 大泉学園町までの延伸、多摩都市モノレール線上北台駅 - 箱根ケ崎駅間および多摩センター駅 - 町田駅間延伸。
  2. ^ 「整備について優先的に検討すべき路線」は(1)目標への寄与度(A評価は全路線の上位1/2以内)、(2)収支採算性(A評価は累積収支が40年以内で黒字化)、(3)費用便益比(A評価は1.0以上)がすべてA評価の第18号答申路線で、答申外で入ったのは羽田空港アクセス線のみ。
  3. ^ 「整備について検討すべき路線」は(1)がB評価(全路線の上位3/4以内)以上で第18号答申路線、もしくは(2)(3)がA評価の路線を条件とした。
  4. ^ 2015年の「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」で「整備について優先的に検討すべき路線」とした5路線に加え、新空港線「蒲蒲線」の蒲田駅 - 京急蒲田駅間が含まれている。

出典[編集]

  1. ^ 羽田空港アクセス線(仮称)の環境影響評価手続きの実施について (PDF)”. 東日本旅客鉄道 (2019年2月15日). 2019年2月21日閲覧。
  2. ^ a b c d 大野雅人 (2014年8月20日). “羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌(1/3)”. 日経コンストラクション. 日経BP. 2016年4月9日閲覧。
  3. ^ a b c d e 大野雅人 (2014年8月20日). “羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌(2/3)”. 日経コンストラクション. 日経BP. 2016年4月12日閲覧。
  4. ^ a b 大野雅人 (2014年8月20日). “羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌(3/3)”. 日経コンストラクション. 日経BP. 2016年4月12日閲覧。
  5. ^ 杉山淳一 (2015年12月18日). “蒲蒲線に羽田空港アクセス線に首都高も! 地上ネットワークの勝者は? - 東京2020に向け変わる羽田”. マイナビニュース. 2016年4月9日閲覧。
  6. ^ JR東の「羽田空港アクセス線」計画、ついに始動 5〜6月に環境影響評価着手、開業は10年後”. 東洋経済オンライン (2019年2月15日). 2019年2月16日閲覧。
  7. ^ JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業”. 日本経済新聞 (2019年2月15日). 2019年2月16日閲覧。
  8. ^ 羽田空港アクセス線、区間ごとの建設方式が明らかに 東京都が環境調査の計画書を公表” (2019年5月30日). 2019年5月30日閲覧。
  9. ^ 具体的路線 (PDF)”. 東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(答申). 国土交通省 (2000年1月27日). 2016年4月9日閲覧。
  10. ^ グループ経営構想V(ファイブ)「今後の重点取組み事項」について”. 東日本旅客鉄道 (2013年10月29日). 2016年4月9日閲覧。
  11. ^ JR 都心と羽田結ぶ新路線整備検討”. NHKニュース (2013年11月9日). 2013年11月9日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。
  12. ^ “羽田空港へ新鉄道路線、JR東日本が検討 休止中の貨物線を軸に”. ハフィントンポスト. (2013年11月9日). http://www.huffingtonpost.jp/2013/11/09/haneda-shinsen_n_4245565.html 2016年4月9日閲覧。 
  13. ^ りんかい線株売却「慎重に見る必要」”. TOKYO MX NEWS. 東京メトロポリタンテレビジョン (2015年8月22日). 2016年4月9日閲覧。
  14. ^ 広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討の中間まとめ≫ (PDF)”. 東京都 (2015年3月6日). 2016年5月9日閲覧。
  15. ^ 広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫ (PDF)”. 東京都 (2015年7月10日). 2016年4月9日閲覧。
  16. ^ 東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案) (PDF)”. 国土交通省 (2016年4月7日). 2016年4月9日閲覧。
  17. ^ 東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(答申) (PDF)”. 交通政策審議会. p. 26 (2016年4月20日). 2018年2月13日閲覧。
  18. ^ “都予算案、鉄道新設へ基金 財政需要25年で15兆円増”. 日本経済新聞電子版. (2018年1月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26185890W8A120C1EA4000/ 2018年2月13日閲覧。 
  19. ^ グループ経営ビジョン「変革2027」について (PDF)”. 東日本旅客鉄道 (2018年7月3日). 2018年7月4日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]