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「半グレ」の版間の差分

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出典+3、溝口敦以前から存在する語であることを加筆
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'''半グレ'''(はんグレ<ref>『[http://www.japantimes.co.jp/news/2013/04/07/national/whats-with-the-police-purge-on-dance-clubs/ What’s with the police purge on dance clubs?]』 [[ジェイク・エーデルスタイン]] 2013年4月7日 [[ジャパンタイムズ]] {{en icon}} ― “{{lang|en|The investigative journalist Atsushi Mizoguchi coined a term for these outlaws: '''hangure'''.}}” ― “ハングレ” ({{lang|en|hangure}})</ref>)とは[[暴力団]]に所属せずに[[犯罪]]を行う集団<ref>『[http://www.nhk.or.jp/gendai-blog/136200.html "半グレ"って知っていますか?]』 2012年10月29日 [[日本放送協会|NHK]]『[[クローズアップ現代]]』</ref>。'''半グレ集団'''ともいう<ref name="kotobank">『[http://kotobank.jp/word/%E5%8D%8A%E3%82%B0%E3%83%AC%E9%9B%86%E5%9B%A3 半グレ集団 とは]』 [[朝日新聞]] 2012年10月22日 [[コトバンク]]</ref>。
'''半グレ'''(はんグレ<ref>『[http://www.japantimes.co.jp/news/2013/04/07/national/whats-with-the-police-purge-on-dance-clubs/ What’s with the police purge on dance clubs?]』 [[ジェイク・エーデルスタイン]] 2013年4月7日 [[ジャパンタイムズ]] {{en icon}} ― “{{lang|en|The investigative journalist Atsushi Mizoguchi coined a term for these outlaws: '''hangure'''.}}” ― “ハングレ” ({{lang|en|hangure}})</ref>)とは[[暴力団]]に所属せずに[[犯罪]]を行う集団<ref>『[http://www.nhk.or.jp/gendai-blog/136200.html "半グレ"って知っていますか?]』 2012年10月29日 [[日本放送協会|NHK]]『[[クローズアップ現代]]』</ref>。'''半グレ集団'''ともいう<ref name="kotobank">『[http://kotobank.jp/word/%E5%8D%8A%E3%82%B0%E3%83%AC%E9%9B%86%E5%9B%A3 半グレ集団 とは]』 [[朝日新聞]] 2012年10月22日 [[コトバンク]]</ref>。


語源は「[[不良行為少年|グレる]]」の“グレ”であり「[[愚連隊]]」の“グレ”であり、また[[黒]]と[[白]]の中間にあたる[[灰色]]の“グレー”、「[[グレーゾーン]]」の“グレ”<ref>『[[暴力団 (書籍)|暴力団]]』 : “暴走族と愚連隊” {{small|(p.33)}} [[溝口敦]] 2011年 [[新潮新書]] ISBN 978-4-10-610434-3</ref>。暴力団に詳しいジャーナリストの[[溝口敦]]による命名とされている<ref name="webronza_2012121700009">『[http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2012121700009.html 暴力団でないアウトロー「半グレ」の実態]』 [[小野登志郎]] 2012年12月19日 [[WEBRONZA]]</ref>。ただし、「半グレ」という言葉自体は溝口以前から見受けられる{{Refnest|group="注"|name="用例"|「半グレ」という語の溝口敦以前の用例は、[[演歌師]]の[[宮島郁芳]](宮島敬二)が1930年に雑誌で発表した文章<ref>{{Cite journal|和書|author=宮島敬二([[宮島郁芳]])|title=演歌師の日記 |journal=文學時代 |volume=2 |issue=11 |year=1930 |publisher=新潮社 |pages=159-165}}([https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11209432/88 オンライン版]、国会図書館デジタルコレクション、館内限定公開)。160頁「''もう一つまちがひの{{Ruby|種|たね}}は、{{Ruby|俺達|おれたち}}の{{Ruby|仲|なか}}{{Ruby|間|ま}}にころげ{{Ruby|込|こ}}んで{{Ruby|來|き}}て{{Ruby|一人前|{{small|●●●}}}}のレベルに{{Ruby|出|で}}られずに{{Ruby|暫|しばら}}くまごついてゐながら{{Ruby|符牒|ふてふ}}と{{Ruby|神農道|しんのうだう}}を{{Ruby|生|なま}}つカジリした{{Ruby|人|ひと}}{{Ruby|々|〲}}の{{Ruby|話|はなし}}である。そんなのを<u>'''{{Ruby|半グレ|{{small|●●●}}}}'''</u>と云ふ。{{Ruby|生|なま}}{{Ruby|物|もの}}{{Ruby|識|し}}り、{{Ruby|生|なま}}{{Ruby|半|はん}}{{Ruby|可|か}}……いやなものサ。''」(振り仮名と傍点強調は原文通り。太字強調とアンダーラインは引用者による。)</ref>や、[[雄琴温泉#風俗街化と低迷|雄琴のソープランド街]]に関する[[広岡敬一]]の1980年の書籍<ref>{{Cite book|和書|author=[[広岡敬一]] |title=ちろりん村顛末記 |publisher=[[朝日新聞社]] |year=1980 |ncid=BN13791968|pages=186-187}}/文庫版:筑摩書房、2016年、{{ISBN|978-4480433534}}。186-187頁/文庫版243頁「''しかし、暴力団の構成員はボーイのなかには、ほとんど見かけられないという。'' {{small|(中略)}} ''月給はせいぜい十五万円、苦労に比べて割りが合わないからだ。もしいたとしても、<u>'''半グレ'''</u>の予備軍にすぎないだろう。''」(太字強調とアンダーラインは引用者による。)</ref>、[[暴力団]]の人材育成に関する北川紘洋の1985年の書籍<ref>{{Cite book|和書|author=北川紘洋 |title=ヤクザは人間をどう育てているのか |publisher=はまの出版 |isbn=4893610139 |year=1985 |pages=22頁、237頁}}22頁「''もっとも、三十代で入ってきたヤツにやらせる仕事はたくさんある。手形のパクリ屋とか事件屋とか。'' {{small|(中略)}} ''うちの場合は、そういうヤツは準構成員として置いとくがな。一般にいう”<u>'''半グレ'''</u>”だ。'' {{small|(中略)}} ''要するにヤクザが好きだけど、ヤクザになりきれず、かといってカタい会社にも勤められないという。これが結構いるから『仕事若い衆』にしておくんだ。バッジはつけさせないで、組に出入りさせる。'' {{small|(中略)}} ''肩書はきちんとしてる。社長とか専務とか。しかし、しょせんは我々の庇護を必要とする”<u>'''半グレ'''</u>”。仕事師とか事件師だね。''」237頁「''<u>'''半グレ'''</u>なんだろうな。刺青した土工くずれみたいなのが、現場監督に言いがかりをつけるわけだ。 {{small|(中略)}} 商店なんかのイヤがらせはひどいよ。 {{small|(中略)}} 一度行ってみたことがあるがひどいもんだ。/そういう時は、お願いがくるよ/行くと、<u>'''半グレ'''</u>だってわかるわけだ。''」(太字強調とアンダーラインは引用者による。)</ref>など。}}。
語源は「[[不良行為少年|グレる]]」の“グレ”であり「[[愚連隊]]」の“グレ”であり、また[[黒]]と[[白]]の中間にあたる[[灰色]]の“グレー”、「[[グレーゾーン]]」の“グレ”<ref>『[[暴力団 (書籍)|暴力団]]』 : “暴走族と愚連隊” {{small|(p.33)}} [[溝口敦]] 2011年 [[新潮新書]] ISBN 978-4-10-610434-3</ref>。暴力団に詳しいジャーナリスト・[[溝口敦]]の命名とされている<ref name="webronza_2012121700009">『[http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2012121700009.html 暴力団でないアウトロー「半グレ」の実態]』 [[小野登志郎]] 2012年12月19日 [[WEBRONZA]]</ref>。


また、2020年11月時点での半グレの人数とグループ数は、警察が把握しただけで約4,000人(約60グループ)もいると推定されており、[[2019年]]末時点の[[山口組|6代目山口組]]の構成員数に匹敵する<ref>{{Cite news|author=尾島 正洋|title=【暴力団幹部が語る】令和の不良の行き着く先「半グレ」を現役ヤクザはどう見ているのか?|newspaper=[[週刊文春|文春]]オンライン|pages=1|language=日本語|date=2020-11-15|url=https://bunshun.jp/articles/-/41581|accessdate=2021-03-28}}</ref>。
また、2020年11月時点での半グレの人数とグループ数は、警察が把握しただけで約4,000人(約60グループ)もいると推定されており、[[2019年]]末時点の[[山口組|6代目山口組]]の構成員数に匹敵する<ref>{{Cite news|author=尾島 正洋|title=【暴力団幹部が語る】令和の不良の行き着く先「半グレ」を現役ヤクザはどう見ているのか?|newspaper=[[週刊文春|文春]]オンライン|pages=1|language=日本語|date=2020-11-15|url=https://bunshun.jp/articles/-/41581|accessdate=2021-03-28}}</ref>。


== 種類 ==
== 種類 ==
半グレという語の初出は[[溝口敦]]著『ヤクザ崩壊』(2011年・[[講談社]])である<ref>『[http://www.japantimes.co.jp/news/2012/12/09/national/new-breed-of-criminal-elements-emerging-from-the-shadows/ New breed of ‘criminal elements’ emerging from the shadows]』 [[マーク・シュライバー]] 2012年12月9日 [[ジャパンタイムズ]] {{en icon}}</ref>。
半グレという語の初出は[[溝口敦]]著『ヤクザ崩壊』(2011年・[[講談社]])である<ref>『[http://www.japantimes.co.jp/news/2012/12/09/national/new-breed-of-criminal-elements-emerging-from-the-shadows/ New breed of ‘criminal elements’ emerging from the shadows]』 [[マーク・シュライバー]] 2012年12月9日 [[ジャパンタイムズ]] {{en icon}}</ref>とされる(ただし、実際の用例は溝口以前から存在する<ref group="注" name="用例" />)


{{SquoteH}}“暴力団の陰で新興の組織犯罪集団が勃興している。彼らに対する公的な呼称はまだなく、本書では「半グレ集団」と呼ぶことにする。「半グレ」とは彼らが堅気とヤクザとの中間的な存在であること、また「グレ」はぐれている、愚連隊のグレであり、黒でも白でもない中間的な灰色のグレーでもあり、グレーゾーンのグレーでもある。”<div style="text-align:right;"><small>―――[[溝口敦]](2011年・『ヤクザ崩壊{{small| 侵食される六代目山口組}}』)</small><ref>『[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37371 ハード・ノンフィクションの巨匠、溝口敦著 『溶けていく暴力団』 第三章「飛んでる半グレ集団」全文公開!(1/8)]』 [[溝口敦]] 2013年11月4日 [[現代ビジネス]]</ref></div>{{SquoteF}}ノンフィクションライターの[[小野登志郎]]は、[[1991年]]の[[暴力団対策法]]施行ならびにその後の[[暴力団排除条例]]施行が“半グレ集団”勃興の誘因であったものと推測する<ref name="webronza_2012121700009" />。[[日本]]の各地にその例が見られ、様々な局面において暴力団と対峙する勢力となり、時に暴力団を圧倒してきた<ref>『[[暴力団 (書籍)|暴力団]]』 : “暴力団が怖れる集団” {{small|(p.172)}} [[溝口敦]] 2011年 [[新潮新書]] ISBN 978-4-10-610434-3</ref>。[[東京]]の「[[関東連合]]」がそうした“半グレ集団”の典型とされている<ref>『[http://www.news-postseven.com/archives/20120117_78433.html 関東連合が典型の「半グレ集団」ITに疎い暴力団に魅力感じず]』 [[溝口敦]] 2012年1月17日 [[NEWSポストセブン]]</ref>。ほか、中国残留孤児の2世ならびに3世を中核構成員とする「[[怒羅権]]」や、[[大阪]]の繁華街・[[ミナミ]]で傷害事件などを繰り返しているアマチュア格闘技団体(「[[強者|強者<small> つわもの</small>]]」<ref>『[https://web.archive.org/web/20130310040458/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130129/crm13012920010024-n1.htm 半グレ「強者」また逮捕 ミナミで警察官に公務執行妨害]』 2013年1月29日 [[MSN産経ニュース]]</ref>)などが“半グレ集団”の例に挙げられてきた<ref>『[https://web.archive.org/web/20130623022704/http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130307/waf13030711580015-n1.htm 半グレは「準暴力団」 警察庁、組織や資金源の実態解明へ]』 2013年3月7日 [[MSN産経ニュース]]</ref>。
{{SquoteH}}“暴力団の陰で新興の組織犯罪集団が勃興している。彼らに対する公的な呼称はまだなく、本書では「半グレ集団」と呼ぶことにする。「半グレ」とは彼らが堅気とヤクザとの中間的な存在であること、また「グレ」はぐれている、愚連隊のグレであり、黒でも白でもない中間的な灰色のグレーでもあり、グレーゾーンのグレーでもある。”<div style="text-align:right;"><small>―――[[溝口敦]](2011年・『ヤクザ崩壊{{small| 侵食される六代目山口組}}』)</small><ref>『[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37371 ハード・ノンフィクションの巨匠、溝口敦著 『溶けていく暴力団』 第三章「飛んでる半グレ集団」全文公開!(1/8)]』 [[溝口敦]] 2013年11月4日 [[現代ビジネス]]</ref></div>{{SquoteF}}ノンフィクションライターの[[小野登志郎]]は、[[1991年]]の[[暴力団対策法]]施行ならびにその後の[[暴力団排除条例]]施行が“半グレ集団”勃興の誘因であったものと推測する<ref name="webronza_2012121700009" />。[[日本]]の各地にその例が見られ、様々な局面において暴力団と対峙する勢力となり、時に暴力団を圧倒してきた<ref>『[[暴力団 (書籍)|暴力団]]』 : “暴力団が怖れる集団” {{small|(p.172)}} [[溝口敦]] 2011年 [[新潮新書]] ISBN 978-4-10-610434-3</ref>。[[東京]]の「[[関東連合]]」がそうした“半グレ集団”の典型とされている<ref>『[http://www.news-postseven.com/archives/20120117_78433.html 関東連合が典型の「半グレ集団」ITに疎い暴力団に魅力感じず]』 [[溝口敦]] 2012年1月17日 [[NEWSポストセブン]]</ref>。ほか、中国残留孤児の2世ならびに3世を中核構成員とする「[[怒羅権]]」や、[[大阪]]の繁華街・[[ミナミ]]で傷害事件などを繰り返しているアマチュア格闘技団体(「[[強者|強者<small> つわもの</small>]]」<ref>『[https://web.archive.org/web/20130310040458/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130129/crm13012920010024-n1.htm 半グレ「強者」また逮捕 ミナミで警察官に公務執行妨害]』 2013年1月29日 [[MSN産経ニュース]]</ref>)などが“半グレ集団”の例に挙げられてきた<ref>『[https://web.archive.org/web/20130623022704/http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130307/waf13030711580015-n1.htm 半グレは「準暴力団」 警察庁、組織や資金源の実態解明へ]』 2013年3月7日 [[MSN産経ニュース]]</ref>。
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2017年から2018年にかけて、大阪府警は半グレ集団アビスが経営していた[[ガールズバー]]の経営者ら55人を傷害や恐喝未遂などの疑いで逮捕・送検、もしくは書類送検・家裁送致とし、組織を解散に追い込んだ<ref>{{Cite web |date=2018-12-13 |url= https://www.asahi.com/articles/ASLDD535NLDDPTIL018.html|title=「指示背けば集団リンチ」ミナミの半グレ集団55人摘発 |publisher= 朝日新聞デジタル|accessdate=2019-01-03}}</ref>。
2017年から2018年にかけて、大阪府警は半グレ集団アビスが経営していた[[ガールズバー]]の経営者ら55人を傷害や恐喝未遂などの疑いで逮捕・送検、もしくは書類送検・家裁送致とし、組織を解散に追い込んだ<ref>{{Cite web |date=2018-12-13 |url= https://www.asahi.com/articles/ASLDD535NLDDPTIL018.html|title=「指示背けば集団リンチ」ミナミの半グレ集団55人摘発 |publisher= 朝日新聞デジタル|accessdate=2019-01-03}}</ref>。


== 出典 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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2021年6月6日 (日) 01:28時点における版

半グレ(はんグレ[1])とは暴力団に所属せずに犯罪を行う集団[2]半グレ集団ともいう[3]

語源は「グレる」の“グレ”であり「愚連隊」の“グレ”であり、またの中間にあたる灰色の“グレー”、「グレーゾーン」の“グレ”[4]。暴力団に詳しいジャーナリストの溝口敦による命名とされている[5]。ただし、「半グレ」という言葉自体は溝口以前から見受けられる[注 1]

また、2020年11月時点での半グレの人数とグループ数は、警察が把握しただけで約4,000人(約60グループ)もいると推定されており、2019年末時点の6代目山口組の構成員数に匹敵する[9]

種類

半グレという語の初出は溝口敦著『ヤクザ崩壊』(2011年・講談社)である[10]とされる(ただし、実際の用例は溝口以前から存在する[注 1])。


“暴力団の陰で新興の組織犯罪集団が勃興している。彼らに対する公的な呼称はまだなく、本書では「半グレ集団」と呼ぶことにする。「半グレ」とは彼らが堅気とヤクザとの中間的な存在であること、また「グレ」はぐれている、愚連隊のグレであり、黒でも白でもない中間的な灰色のグレーでもあり、グレーゾーンのグレーでもある。”
―――溝口敦(2011年・『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』)[11]

ノンフィクションライターの小野登志郎は、1991年暴力団対策法施行ならびにその後の暴力団排除条例施行が“半グレ集団”勃興の誘因であったものと推測する[5]日本の各地にその例が見られ、様々な局面において暴力団と対峙する勢力となり、時に暴力団を圧倒してきた[12]東京の「関東連合」がそうした“半グレ集団”の典型とされている[13]。ほか、中国残留孤児の2世ならびに3世を中核構成員とする「怒羅権」や、大阪の繁華街・ミナミで傷害事件などを繰り返しているアマチュア格闘技団体(「強者 つわもの[14])などが“半グレ集団”の例に挙げられてきた[15]

犯罪社会学者の廣末登は、暴力団離脱者の研究や福岡県更生保護就労支援事業所の所長の経験などから、溝口が紹介した当時の半グレの姿から時代の流れとともに変化していることを指摘している[16]。廣末によると半グレのパターンは、①旧関東連合怒羅権に代表される筋金入りの半グレ(現在は30代から40代の年齢で溝口敦のいう「半グレ」) ②オレオレ詐欺の実行犯 ③正業を持つ半グレグループ ④元暴アウトロー といった4パターンに分けられるという。

組織

メンバーには1980年代をルーツとする暴走族上がりの者が多く、振り込め詐欺闇金融などといった独自のビジネスを展開する集団もあると見られているものの、実態は定かとなっておらず、社会問題化するに至った[3]。「暴走族の元メンバーやその知人らが離合集散しながら緩やかなネットワークで行動を共にするグループ」(2013年・朝日新聞[17]。振り込め詐欺や闇金融のほか、貧困ビジネス解体工事産廃の運搬業、クラブ芸能プロダクションの経営、ならびに出会い系サイトの運営などが大抵のメンバーのいわゆる「シノギ」(資金獲得活動)となっている[18]。また半グレが振り込め詐欺や、屋根リフォーム詐欺・屋根破壊などで得た資金を、暴力団に上納しているのではないかとの疑惑も根強く存在する。

暴力団との顕著な違いとして、暴力団に籍を置いていないがゆえに暴力団対策法の適用を受けないこと、活動の匿名性や隠密性、メンバーの年齢層の若さ(年長でも40歳代まで)、ならびに、人員供給の拡大傾向が挙げられる[19]。少数ながら暴力団系のグループも存在してはいるものの、大半は暴力団と距離を置いているため、暴力団対策法の規制を受ける暴力団とは違い、有効な法規制を受けない状況となっている[20]

資金源

振り込め詐欺

半グレが関わっている詐欺行為で最も悪質なものは振り込め詐欺である[3]。2012年の時点の振り込め詐欺グループのトップにいた半グレ実業家は、関東連合OBや五菱会メンバー(初期は彼らも下積みにいたことから「第二世代」と呼ばれる)がオーナーをしていた時代に下積みをして成り上がり、自らもオーナーとなった「第三世代」であり、その下にいるのは「番頭格」と呼ばれる企業の中間管理職に相当する幹部がいて、振り込め詐欺を実際に行う「プレーヤー」、被害者や銀行から金を受け取る「出し子(取り子とも)」を行うアルバイトの不良少年やワーキングプアといった者達を統括していたと言われる[21]

屋根リフォーム詐欺

振り込め詐欺に匹敵する悪質性を帯びているのが、「屋根リフォーム詐欺」と、それに伴う器物損壊である。写真週刊誌FRIDAYが初めて明らかにしたその実態は、オーナーが半グレの屋根リフォーム詐欺業者は、屋根の無料点検と称して屋根に昇り、屋根に破損個所がない場合は、金づちで破壊(器物損壊罪)してしまうのである[22]。契約が成立した場合、被害者に請求する金額は、一般の業者の相場の約「2倍」である[23]。例えば、家屋面積20坪で相場50万円台のところ、半グレ業者は「100万円」以上を請求する。もし無料診断の後、家主が契約を拒否しても、”屋根の破壊”という半グレの社会への報復という目的は、達成されることになる。半グレ業者のセールスマンは半年程度で辞めてしまうが、応募者は後を絶たずすぐに補充できる。なぜなら、半グレのオーナーがインスタグラムに「芸能人との写真をアップ」しているからである[24]。この悪徳業者は業界団体がHPで注意を喚起している事例[25]よりも、はるかに悪質であり当局の摘発が待たれるところである。また床下診断の悪徳商法も以前から存在するが、半グレとの関係も疑われている。

マスク買い占め

FRIDAY2020年5月22日号は、半グレや暴力団が「マスクの買い占め」を行ったと報道した[26]。報道によれば、半グレらは新型コロナウイルスの流行が報じられた2020年1月には、早くもマスクの大量買い占めに乗り出していた。半グレたちは買い占めたマスクを高額で売りさばき、在庫が無くなりそうになると海外現地のマフィアに買い占めを依頼したという。

スカウト業務

京都では半グレ起業家らが違法なスカウト行為で逮捕された。同起業家らは有名大学の男子学生に若い女性をナンパさせた上、経営しているぼったくりバーに連れて行くというデート商法を行い、多額の借金を抱えた女性らに対し風俗店で働くよう要求。紹介料として女性への給与の一部を受け取っていた。実行役の学生向けに作ったマニュアルには、「日本の大学はぬるま湯。それに甘んじて損をするのはあなた達」などとベンチャー企業のような文句が並び、男子学生たちは「自分はただの学生とは違う」という意識で業務に精を出していたという[27]

またこのような悪質な手口は関西だけでなく、東京など関東でも行われていたと、ある私大イベントサークルOBは指摘している[28]

その他

半グレによる強盗も確認されている。大阪・ミナミの歓楽街にあるクラブにて暴行されて複数の男女が金品を奪われる強盗致傷事件が発生し、男女8人から成る半グレ集団「軍団立石」のメンバーらが逮捕された[29]。それ以外にも、元組員からの情報を得た半グレが複数の暴力団組長の邸宅を襲撃して金品を奪うという事件を起こしたり[30]、お笑い芸人宮迫博之との交際が報じられた金塊強盗事件の首謀者が「半グレのリーダー」と称されたりという事例がある[31]

また、違法とは言えないが反社会的な行為である脱法ドラッグの売買にも関わっていたとされている。2010年代前半、人工カンナビノイドを使用した、いわゆる「合法ハーブ」の販売をヤミ金出身の半グレが行っていた。しかし警察の取締が本格的になり、半グレは「合法ハーブ」販売業から次々と撤退したとされている[32]

また、半グレが合法的なビジネスを行う、もしくは表向きの肩書にするというケースも見られる。関東連合OBの柴田大輔は芸能プロダクションやIT系広告代理店を営んでおり、また松嶋クロスアダルトビデオ業界で働いていた[33]

ツイッターやインスタグラムも 精力的に活用し、カリスマ性やユニークさで フォロワーを集めて犯罪行為に加担させたり 女性を性風俗店に斡旋するなど インターネットの世界にも多くの半グレが 参入している。 SNSを活用する半グレは大抵 顔出しをしたりあるいは羽振りのいい様子などを投稿し人気を集める事が多い。

暴力団との関係

大半のメンバーが暴力団組織に所属しない特徴のある半グレであるが、シノギなどにおいては組織として暴力団と共存関係を築き、上納金を収める場合もある。大阪を地盤としていた半グレ集団アビスの場合では、任侠山口組系組織に月30-50万円を上納していたほか、同じ半グレ集団O7(アウトセブン)との対立時には暴力団による仲裁で沈静化が図られている。このため半グレ集団への警察の対応は、暴力団捜査を担当する大阪府警捜査4課が実施。2018年9月以降、多数の関係者が逮捕された結果、アビス、O7ともに2018年中に解散に至っている[34]

また、暴力団の側も近年は新人や下部メンバーを組員として登録せず、傘下の半グレ集団の一員として活動させているとも言われる[35]

2016年、大阪から沖縄県石垣島へ半グレ集団が進出、強引な客引きやボッタクリに近い請求をする店が現れた。この進出に当たっては、山口組幹部が石垣島を縄張りにしていた地場の暴力団に口利きをしたとされる。この半グレ集団は沖縄県警察に徹底的にマークされ、2020年11月には解散宣言を出した[36]

対策

2013年には「関東連合」や「怒羅権」などの“半グレ集団”が警察庁によって新たに“準暴力団”と規定され、その実態解明を企図した取り組みが同庁の号令のもとで始動するに至っている[37]。定義は「暴力団と同程度の明確な組織性はないものの、構成メンバーが集団で常習的に暴力的な不法行為をしているグループ」[38]。先立つ2012年に東京で発生した関東連合関係事案「六本木クラブ殺人事件」がそのきっかけであったという[39]

準暴力団に指定されている団体は、東京の8団体と2017年に大阪府警が指定した2団体の計10団体が準暴力団と見なされている[40][41][42]

2017年から2018年にかけて、大阪府警は半グレ集団アビスが経営していたガールズバーの経営者ら55人を傷害や恐喝未遂などの疑いで逮捕・送検、もしくは書類送検・家裁送致とし、組織を解散に追い込んだ[43]

脚注

注釈

  1. ^ a b 「半グレ」という語の溝口敦以前の用例は、演歌師宮島郁芳(宮島敬二)が1930年に雑誌で発表した文章[6]や、雄琴のソープランド街に関する広岡敬一の1980年の書籍[7]暴力団の人材育成に関する北川紘洋の1985年の書籍[8]など。

出典

  1. ^ What’s with the police purge on dance clubs?ジェイク・エーデルスタイン 2013年4月7日 ジャパンタイムズ (英語) ― “The investigative journalist Atsushi Mizoguchi coined a term for these outlaws: hangure.” ― “ハングレ” (hangure)
  2. ^ "半グレ"って知っていますか?』 2012年10月29日 NHKクローズアップ現代
  3. ^ a b c 半グレ集団 とは朝日新聞 2012年10月22日 コトバンク
  4. ^ 暴力団』 : “暴走族と愚連隊” (p.33) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
  5. ^ a b 暴力団でないアウトロー「半グレ」の実態小野登志郎 2012年12月19日 WEBRONZA
  6. ^ 宮島敬二(宮島郁芳)「演歌師の日記」『文學時代』第2巻第11号、新潮社、1930年、159-165頁。 オンライン版、国会図書館デジタルコレクション、館内限定公開)。160頁「もう一つまちがひのたねは、俺達おれたちなかにころげんで一人前●●●のレベルにられずにしばらくまごついてゐながら符牒ふてふ神農道しんのうだうなまつカジリしたひとはなしである。そんなのを半グレ●●●と云ふ。なまものり、なまはん……いやなものサ。」(振り仮名と傍点強調は原文通り。太字強調とアンダーラインは引用者による。)
  7. ^ 広岡敬一『ちろりん村顛末記』朝日新聞社、1980年、186-187頁。 NCID BN13791968 /文庫版:筑摩書房、2016年、ISBN 978-4480433534。186-187頁/文庫版243頁「しかし、暴力団の構成員はボーイのなかには、ほとんど見かけられないという。 (中略) 月給はせいぜい十五万円、苦労に比べて割りが合わないからだ。もしいたとしても、半グレの予備軍にすぎないだろう。」(太字強調とアンダーラインは引用者による。)
  8. ^ 北川紘洋『ヤクザは人間をどう育てているのか』はまの出版、1985年、22頁、237頁頁。ISBN 4893610139 22頁「もっとも、三十代で入ってきたヤツにやらせる仕事はたくさんある。手形のパクリ屋とか事件屋とか。 (中略) うちの場合は、そういうヤツは準構成員として置いとくがな。一般にいう”半グレ”だ。 (中略) 要するにヤクザが好きだけど、ヤクザになりきれず、かといってカタい会社にも勤められないという。これが結構いるから『仕事若い衆』にしておくんだ。バッジはつけさせないで、組に出入りさせる。 (中略) 肩書はきちんとしてる。社長とか専務とか。しかし、しょせんは我々の庇護を必要とする”半グレ”。仕事師とか事件師だね。」237頁「半グレなんだろうな。刺青した土工くずれみたいなのが、現場監督に言いがかりをつけるわけだ。 (中略) 商店なんかのイヤがらせはひどいよ。 (中略) 一度行ってみたことがあるがひどいもんだ。/そういう時は、お願いがくるよ/行くと、半グレだってわかるわけだ。」(太字強調とアンダーラインは引用者による。)
  9. ^ 尾島 正洋 (2020年11月15日). “【暴力団幹部が語る】令和の不良の行き着く先「半グレ」を現役ヤクザはどう見ているのか?” (日本語). 文春オンライン: pp. 1. https://bunshun.jp/articles/-/41581 2021年3月28日閲覧。 
  10. ^ New breed of ‘criminal elements’ emerging from the shadowsマーク・シュライバー 2012年12月9日 ジャパンタイムズ (英語)
  11. ^ ハード・ノンフィクションの巨匠、溝口敦著 『溶けていく暴力団』 第三章「飛んでる半グレ集団」全文公開!(1/8)溝口敦 2013年11月4日 現代ビジネス
  12. ^ 暴力団』 : “暴力団が怖れる集団” (p.172) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
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  18. ^ 暴力団』 : “半グレ集団とは何なのか?” (p.157) 溝口敦 2011年 新潮新書 ISBN 978-4-10-610434-3
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  29. ^ 【衝撃事件の核心】もう一つの暴力集団「半グレ」、その危険な「シノギ」
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関連項目