「トリトン (衛星)」の版間の差分

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{{翻訳直後|[[:en:Triton (moon)]]|date=2018年12月}}
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| 幅 = 350px
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| 和名 = トリトン
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| 英名 = Triton
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| 画像サイズ = 280px
| 画像説明 = 衛星トリトン、ボイジャー2号撮影
| 画像説明 = [[ボイジャー2号]]が撮影したトリトンの片半球<!-- sub-neptunian hemishpre の訳語が不明なので暫定的に-->の集成写真{{R|group="注"|注1}}
| 仮符号・別名 = '''Neptune I'''
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| 発見日 = [[1846年]][[10月10日]]{{R|discovery}}
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| 色 = 衛星
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| 元期 =
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| title = Neptunian Satellite Fact Sheet
| publisher = NASA
| author = David R. Williams
| date = 23 November 2006
| url = http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/neptuniansatfact.html
| accessdate = 2008-01-18
}}</ref>
| 公転周期 = 5.877 日<br />([[順行・逆行|逆行]])
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| 軌道傾斜角 = 156.834°
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}}
}}
{{天体 物理
{{天体 物理
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| 色 = 衛星
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| 赤道直径 = 2706.8 km
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| 半径 = 1,353.4 ± 0.9 km{{R|JPL_Physical}}
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| 最小表面温度 =
| 平均表面温度 = 34.5 K
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| 大気圧 = 1.4 - 1.9 [[パスカル (単位)|Pa]]{{R|EncycSolSys-Triton}}<br><small>(地球上の気圧の70,000分の1)</small>{{R|solarsystemexploration}}
| 大気 = {{天体 項目|窒素|99.9%}}{{天体 項目|メタン|0.01%}}
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{{天体 終了
{{天体 終了
| 色 = 衛星
| 色 = 衛星
}}
}}
'''トリトン'''({{Lang-en|Triton}}, Neptune I)は、[[海王星]]最大の自然[[衛星]]で、海王星で発見された初めての衛星である。1848年10月10日に[[イギリス]]の[[天文学者]]である[[ウィリアム・ラッセル (天文学者)|ウィリアム・ラッセル]]によって発見された。[[太陽系]]内の大型衛星の中では唯一、主惑星の[[自転]]方向に対して逆方向に[[公転]]する[[順行・逆行|逆行軌道]]を持つ{{R|NYT-20141105-DO|natgeo}}<ref>{{cite news|last=Chang|first=Kenneth|title=Dark Spots in Our Knowledge of Neptune|url=https://www.nytimes.com/2014/08/19/science/dark-spots-in-our-knowledge-of-neptune.html |date=2014-10-18|work=New York Times|accessdate=2018-12-27}}</ref>。直径は2,710 [[キロメートル|km]]で{{R|JPL_Physical}}、[[太陽系の衛星の一覧|太陽系の衛星]]の中では7番目に大きい。その逆行軌道と、[[冥王星]]に似た組成であることから、トリトンは[[エッジワース・カイパーベルト|カイパーベルト]]から捕らえられた[[準惑星]]規模の天体であったと考えられている{{R|Agnor06}}。トリトンは、凍った[[窒素]]の表面と、主に[[水]]の[[氷]]から成る[[地殻]]、氷の[[マントル]]{{R|Prockter05}}、[[岩石]]から構成された実質上の[[核 (天体)|核]]、そして[[金属]]を持つ。核は総質量の約3分の2を占めている。平均[[密度]]は2.059[[グラム毎立方センチメートル|g/cm<sup>3</sup>]]{{R|JPL_Physical}}で、これは組成の約15~35%が氷であることを反映している{{R|EncycSolSys-Triton}}。


トリトンは地質学的に活動していることが知られている数少ない天体の一つである(他には[[木星]]の[[イオ (衛星)|イオ]]や[[エウロパ (衛星)|エウロパ]]、[[土星]]の[[エンケラドゥス (衛星)|エンケラドゥス]]や[[タイタン (衛星)|タイタン]]がある)。その結果、表面は比較的若く、明確な[[衝突クレーター]]はほとんど見られない。複雑な地質学的変遷は、[[氷の火山]]や[[テクトニクス]]といった地形の存在を示唆している。その表面の一部は、[[昇華]]した窒素ガスを噴出する[[間欠泉]]を有しており、表面をまとう気圧が地球の海面上の70,000分の1の薄い窒素の大気に関与している{{R|EncycSolSys-Triton}}。主惑星との相対的な大きさでは、地球の[[月]]に次いで2番目に大きい。
'''トリトン'''(Triton, Neptune I)は、[[海王星]]の第1[[衛星]]かつ海王星最大の衛星。[[太陽系]]全体でも7番目の大きさである。海王星の発見からわずか17日後に[[ウィリアム・ラッセル (天文学者)|ウィリアム・ラッセル]]によって発見された。名前の由来は[[ギリシャ神話]]、[[ポセイドーン]]の息子[[トリートーン]]から。


== 軌道 ==
== 発見と命名 ==
[[ファイル:Triton orbit & Neptune.png|thumb|left|300px|赤がトリトンの軌道。緑は一般的な衛星の軌道。]]
[[File:William Lassell.jpg|thumb|left|upright|トリトンの発見者ウィリアム・ラッセル]]
トリトンは1846年10月10日にイギリスの天文学者[[ウィリアム・ラッセル (天文学者)|ウィリアム・ラッセル]]によって発見され{{R|LassellDiscovery}}、これは[[海王星の発見]]から17日後のことであった。彼は自身が製作した口径61cmの[[望遠鏡]]を用いてトリトンを発見した。


1820年にラッセルは、彼のアマチュア望遠鏡の鏡の製作を始めた。[[ジョン・ハーシェル]]が海王星発見の知らせを受けた時、ラッセルに存在する可能性のある衛星を探索するよう手紙を書いて提案した。ラッセルはそれに応じ、その8日後にトリトンを発見した{{R|LassellDiscovery}}<ref>{{cite journal|title=Discovery of Supposed Ring and Satellite of Neptune|author=Lassell, William|year=1846|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=7|issue=9|page=157|bibcode=1846MNRAS...7..157L|doi=10.1093/mnras/7.9.154}}<br>{{cite journal|title=Physical observations on Neptune|author=Lassell, William|year=1846|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=7|issue=10|pages=167–168|doi=10.1093/mnras/7.10.165a|bibcode=1847MNRAS...7..297L}}<br>{{cite journal|title=Observations of Neptune and his satellite|author=Lassell, William|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|year=1847|volume=7|issue=17|pages=307–308|bibcode=1847MNRAS...7..307L|doi=10.1002/asna.18530360703}}</ref>。ラッセルは[[海王星の環|環]]も発見したと主張しており、後にその存在は確認されたが、環はとても微かで暗いため、ラッセルが実際に観測したかどうかは疑わしい<ref>{{cite journal|last=Smith|first=R. W.|last2=Baum|first2=R.|title=William Lassell and the Ring of Neptune: A Case Study in Instrumental Failure|journal=Journal for the History of Astronomy|volume=15|issue=42|pages=1–17|year=1984|bibcode=1984JHA....15....1S}}</ref>。
太陽系にある直径2000km以上の衛星では唯一の逆行回転[[公転|公転軌道]]を持つ衛星であり、トリトン以外にも逆行軌道を持つ衛星は発見されているが、トリトンはその中でも飛びぬけて大きい。この逆向き軌道のために海王星との[[潮汐力]]の作用でトリトンの[[公転]]にブレーキがかかり、軌道が低くなって、最終的には海王星に墜落するとみられている。今から36億年後には海王星の[[ロッシュ限界]]まで軌道が下がり、トリトンは引き裂かれる運命にある<ref>Chyba, C. F.; Jankowski, D. G.; Nicholson, P. D. (July 1989). "Tidal evolution in the Neptune-Triton system". ''Astronomy and Astrophysics''. '''219''' (1–2): L23–L26. Bibcode:[[bibcode:1989A&A...219L..23C|1989A&A...219L..23C]].</ref>。破片は海王星の大気に突入するか、輪になる可能性もある。


トリトンは[[ポセイドーン]]([[ローマ神話]]では[[ネプトゥーヌス]]に相当する[[ギリシャ神話]]の神)の息子である、[[海]]の神[[トリートーン]](''Τρίτων'')に因んで命名されている{{R|natgeo}}。この名称は[[カミーユ・フラマリオン]]によって1880年に出版された''Astronomie Populaire''で初めて提案され<ref>{{cite web|author=Flammarion, Camille|title=Astronomie populaire|page=591|year=1880|url=http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k94887w/f610.table|accessdate=2018-12-27|archiveurl=https://www.webcitation.org/62D2n5iBH?url=http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k94887w/f610.table|archivedate=2011-10-05|deadurl=yes}}</ref>、数十年後に正式に採択された<ref>{{cite book|last=Moore|first=Patrick|title=The planet Neptune: an historical survey before Voyager|publisher=John Wiley & Sons|series=Wiley-Praxis Series in Astronomy and Astrophysics|edition=2nd|year=1996|pages=150 (see p. 68)|url=https://www.google.com/books?id=RZruAAAAMAAJ&q=H.+N.+Russell#search_anchor|isbn=978-0-471-96015-7|oclc=33103787}}</ref>。1949年に第2衛星[[ネレイド (衛星)|ネレイド]]が発見されるまで、トリトンは一般的に「海王星の衛星」と呼ばれていた。ラッセルは自分自身が発見した衛星に名称をつけず、後に彼が発見した土星の第8衛星の名称として、以前にジョン・ハーシェルが選んだ[[ヒペリオン (衛星)|ヒペリオン]]を使用することを成功裏に提案した<ref>{{cite web|title=Planet and Satellite Names and their Discoverers|work=[[国際天文学連合|International Astronomical Union]]|url=http://www.indwes.edu/Faculty/bcupp/solarsys/Names.htm|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080212065751/http://www.indwes.edu/Faculty/bcupp/solarsys/Names.htm|archivedate=2008-02-12|accessdate=2018-12-27}}</ref>。
同じ海王星の衛星[[ネレイド (衛星)|ネレイド]]とともに奇妙な軌道を持つ。このような軌道で衛星が形成されることは考えにくいことから、もともとの海王星の衛星ではなく[[冥王星]]のような[[エッジワース・カイパーベルト天体]]が海王星の[[重力]]に捉えられたものだと考えられているが、離心率0.000 016<ref>軌道傾斜角は赤道面から約20度傾いている。海王星の衛星の多くは、離心率1万~10万分の1ほどと観測されていたが、21世紀以降に発見された非常に小さな衛星はその限りではない。</ref>というほぼ完全な円軌道での公転は捕獲された衛星としては異常であり、謎を残している。なお直径は冥王星より一回り大きい。


== 軌道と自転 ==
また、トリトンの自転軸は海王星の自転軸より157度傾いている。その結果、[[太陽]]に対する[[天王星]]のように、極地域と赤道地域が交互に太陽に面している。このため、トリトンには激しい季節変化がおきていると考えられている。
[[ファイル:Triton orbit & Neptune.png|thumb|left|300px|トリトンの軌道(赤線)は海王星の赤道面を公転する典型的な衛星の軌道(緑線)と比べて、公転方向が逆で[[軌道傾斜角|-23度傾いている]]。]]
{{Clearleft}}
トリトンは、太陽系にある全ての大型衛星の中で唯一[[順行・逆行|逆行軌道]](すなわち、主惑星の自転方向と逆向きに公転している)で公転している。[[木星]]や[[土星]]の外側を公転するほとんどの[[不規則衛星]]、[[天王星]]の外側を公転するいくつかの衛星も逆行軌道を持つ。しかし、これらの衛星は主惑星からはるか遠くに離れており、大きさも小さい。その中で最大のもの([[フェーベ (衛星)|フェーベ]]){{R|group="注"|注7}}でも、トリトンの直径のわずか8%(質量だと0.03%)しかない。


トリトンの軌道には、海王星の軌道に対する海王星の[[赤道傾斜角|自転軸の傾き]]30度と、海王星の自転に対するトリトンの[[軌道傾斜角]]157度(90度を超えていれば逆行軌道であることを示す)の2つの傾斜が関われっている。トリトンの軌道は、678地球年(4.1海王星年)ごとに海王星の自転によって、海王星に向かって接近しており{{R|JPL_Orbital|Jacobson09}}、海王星の軌道に対する相対的な軌道の傾きは127度から180度まで変化し、過去には173度に達したこともあった。現在は130度になっている。トリトンの軌道は現在、海王星との同一平面上の最大距離に近づいている。
== 物理的性質 ==
[[ファイル:Voyager 2 Triton 14bg r90ccw.jpg|thumb|left|200px|トリトン南極付近の表面の様子]]


トリトンの[[自転]]は[[自転と公転の同期|公転と同期]]するように[[潮汐固定]]されており、常に片面を海王星に向けている。トリトンの赤道はその軌道面とほぼ一致している<ref>{{cite journal|last1=Davies|first1=M.|first2=P.|last2=Rogers|first3=T.|last3=Colvin|year=1991|title=A Control Network of Triton|journal=J. Geophys. Res.|volume=96(E1)|pages=15675–15681|url=https://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/notes/2009/N3425.pdf|bibcode=1991JGR....9615675D|doi=10.1029/91JE00976}}</ref>。トリトンの自転軸は海王星の軌道面から約40度傾いているため、海王星が軌道上のある地点にいる間、トリトンの両極はかなり太陽の方向を面するようになり、天王星の極とほぼ同じようになる。海王星が軌道を公転するにつれて、トリトンの極地は太陽の方向を向くようになり、片方の極ではそれによって[[季節変化]]が生じ、もう片方の極には太陽光が差すようになる。このような変化は、2010年に観測された<ref>{{cite web|url=http://www.space.com/8162-seasons-discovered-neptunes-moon-triton.html|title=Seasons Discovered on Neptune's Moon Triton|work=Space.com|date=2010-04-07|accessdate=2018-12-27}}</ref>。
トリトンは-235度の極寒の世界で、冥王星より約10度低く、[[セドナ (小惑星)|セドナ]]等を除く太陽系の主要な天体ではもっとも温度が低い。これは[[アルベド|反射能]]の高さによるものと考えられる。大気は微量のメタンを含んだ窒素であるが、[[気圧]]は僅か0.01[[ヘクトパスカル]]にすぎない。表面の大半は[[窒素]]と[[メタン]]の氷に覆われ、特に南極冠付近はピンク色の[[霜]]で覆われている。また、[[クレーター]]はほとんどなく、[[山脈]]と[[峡谷]]が複雑な模様を描いているため表面は比較的若く地球のように更新され続けていると考えられる。星の構成物質は水が1/4で残りが窒素化合物、メタン、そして岩石からなるコアでできている。[[火山]]が存在しており、[[液体窒素]]と液体メタンの[[溶岩]]を噴出している。火山と言っても、噴出している物体が0度を遥かに下回るもののため、[[氷の火山|氷火山]]と呼ばれている。実際に[[ボイジャー2号]]によって上空8km、風下140kmの噴煙が撮影されている。[[噴火]]のエネルギー源は海王星から受ける潮汐力以外に、季節による太陽エネルギーの変化が原動力との説がある。氷火山で最大のものは、噴出物の巨大な黒い模様から「{{仮リンク|ナマズ火山|fr|Namazu Macula}}」と名づけられている。


海王星の周りにおけるトリトンの回転運動はほぼ完全に円形であり、[[離心率]]はゼロに近い。潮汐による[[粘弾性]]の減衰だけでは、海王星系の形成時からトリトンの軌道を円形化することはできないと考えられており、[[順行・逆行|順行]]する{{仮リンク|塵円盤|en|Debris disk}}からの[[抗力|ガス抗力]]が重要な役割を果たしているとされている{{R|Jacobson09}}。[[潮汐力]]の作用はまた、トリトンの公転にブレーキをかけ、地球から徐々に遠ざかっている[[月]]よりも近い位置にあるトリトンを海王星に接近させてもいる{{R|Chyba89}}。予測では、今から36億年後にはトリトンは海王星の[[ロッシュ限界]]より内側を通るようになる。これにより、トリトンは海王星の大気に落下するか、あるいは粉砕されて[[土星の環]]に似た新たな[[環 (天体)|環]]が形成されるだろう{{R|Chyba89}}。
その後の[[ハッブル宇宙望遠鏡]]の観測によって{{いつ範囲|最近|date=2015年1月}}温暖化(+2度)していること、気圧が倍増していることが確認された。
{{Clearleft}}


== 注釈 ==
== 捕獲 ==
[[File:Outersolarsystem objectpositions labels comp.png|thumb|left|トリトンの起源と考えられている、太陽系外縁部にある[[エッジワース・カイパーベルト|カイパーベルト]](緑)]]
<references/>
逆行軌道の衛星は、その衛星が公転する主惑星の周りで形成された塵円盤から形成されることはないので、トリトンは他の領域から捕獲された天体であるとされている。太陽から約50[[天文単位|au]]離れた位置にある、小さな氷の天体からなるリング状の領域[[エッジワース・カイパーベルト]](カイパーベルト)がトリトンの起源かもしれない{{R|Agnor06}}。地球で観測される[[短周期彗星]]の大部分の起源であるカイパーベルトには、[[冥王星]]を含む惑星サイズの天体がいくつか存在している。これらは現在、カイパーベルトの中で最も大きな天体([[冥王星族]])であると認識されており、海王星と[[軌道共鳴]]の状態にある。トリトンは冥王星よりもわずかに大きいだけで、組成もほぼ同じであるため、両者が同じ起源を共有しているという仮説が導かれている{{R|Cruikshank04}}。

提示されているトリトンの捕獲は、海王星の衛星ネレイドの極端な楕円軌道や、海王星が他の[[巨大ガス惑星]]よりも衛星の数が少ないことを含む、海王星系のいくつかの特徴を説明できるかもしれない。初期のトリトンの楕円軌道は、不規則衛星の軌道を横断し、より小さな規則衛星の軌道を混乱させ、[[重力]]の相互作用によってそれらを分散させただろう{{R|Jacobson09}}。

捕獲されたトリトンの楕円軌道はまた、内部に[[潮汐加熱]]を引き起こし、10億年間に渡ってトリトンの内部に流体を存在させることができた。この推論はトリトンの内部に生じている差異の証拠によって裏付けられている。この内部熱源は潮汐固定と軌道の円形化に伴って消滅したとされている<ref>{{cite journal|title=The coupled orbital and thermal evolution of Triton|author=Ross, M. N.|author2=Schubert, G.|journal=Geophysical Research Letters|year=1990|volume=17|issue=10|pages=1749–1752|doi=10.1029/GL017i010p01749|bibcode=1990GeoRL..17.1749R}}</ref>。

トリトンの捕獲については2種類のメカニズムが提案されている。惑星の重力によって捕らえられるには、通過する天体は離脱するのに必要な速度よりも減速するのに十分なエネルギーを失わなければいけない。初期の理論ではトリトンは他の天体と衝突したことによって減速したとされ、その天体は海王星を通過する天体、もしくは海王星の周りを公転する衛星や原始の衛星(この方が現実的)であったとされている{{R|EncycSolSys-Triton}}。最近の仮説では、トリトンは捕獲される前、連星([[二重惑星]]・[[二重小惑星]])の一部であったことが示唆されている。この連星が海王星に接近した際、連星の片方は弾き飛ばされて2つは分離し、もう片方のトリトンは海王星に捕らえられるように相互作用を及ぼした。この現象はもう片方の天体の質量が大きいとより発生しうる{{R|Agnor06}}。[[火星の衛星]]の捕獲についても同様のメカニズムが提案されている<ref>[https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/20020038729.pdf "Origin of Martian Moons from Binary Asteroid Dissociation"], AAAS – 57725, American Association for Advancement of Science Annual Meeting 2002</ref>。この仮説は、大きなカイパーベルト天体は一般的に連星を成していることを含むいくつかの証拠によって裏付けられている<ref>{{cite journal|author=Scott S. Sheppard|authorlink=スコット・S・シェパード|author2=David Jewitt|url=http://iopscience.iop.org/1538-3881/127/5/3023/fulltext|title=Extreme Kuiper Belt Object 2001 QG<sub>298</sub> and the Fraction of Contact Binaries|journal=[[アストロノミカルジャーナル|The Astronomical Journal]]|year=2004|volume=127|issue=5|pages=3023-3033|doi=10.1086/383558}}</ref><ref>{{cite web|author=David Jewitt|title=Binary Kuiper Belt Objects|url=http://www2.ess.ucla.edu/~jewitt/kb/binaries.html|work=[[ハワイ大学|University of Hawaii]]|year=2005|accessdate=2018-12-27}}</ref>。この現象は短期間で穏和に発生したため、トリトンの衝突や崩壊を防いだとされている。この現象は、海王星の形成時や、その後の[[太陽系の形成と進化#惑星の軌道の移動|外側への移動]]が起きていた間は一般的に起きていたかもしれない{{R|Agnor06}}。

しかし2017年に行われたシミュレーションでは、トリトンが捕獲された後、軌道離心率が小さくなる前に少なくとも1個の他の衛星と衝突し、他の衛星同士の衝突を引き起こしたことが示された<ref>{{cite arxiv|author1=Raluca Rufu|author2=Robin M. Canup|year=2017|title=Triton's evolution with a primordial Neptunian satellite system|eprint=1711.01581|version=v1|class=astro-ph.EP|doi=10.3847/1538-3881/aa9184|bibcode=2017AJ....154..208R}}</ref><ref>{{cite web|title=Triton crashed into Neptune’s moons|work=New Scientist|url=https://www.newscientist.com/article/mg23631521-900-neptunes-other-moons-were-normal-until-triton-crashed-the-party|date=2017-11-15|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

== 物理的特徴 ==
{{multiple image
| direction = vertical
| align = right
| width = 238
| image1 = Masa_de_triton.svg
| image2 = Triton, Earth & Moon size comparison.jpg
| caption1 = トリトンは海王星の衛星系の中でも卓越しており、全質量の99.5%を占めている。この不均衡性は、トリトンが捕獲された後に元々海王星を公転していた衛星の多くを排除したことを反映しているかもしれない{{R|JPL_Orbital|Jacobson09}}。
| caption2 = トリトン(左下)と月(左上)、地球(右)の大きさの比較
}}
トリトンは、太陽系で7番目に大きな衛星で、天体全体でも[[大きさ順の太陽系天体の一覧|16番目に大きく]]、[[準惑星]]の[[冥王星]]や[[エリス (準惑星)|エリス]]よりもわずかに大きい。海王星の環とその他の13個の衛星を含む、海王星の周回軌道上にある物体の全質量の99.5%以上を占めており{{R|group="注"|注8}}、太陽系内で知られているトリトンより小さな衛星の全質量よりも大きい{{R|group="注"|注9}}。また、直径は海王星の5.5%で、巨大ガス惑星の衛星の中ではその主惑星に対する大きさは最も大きい。<!--although Titan is bigger relative to Saturn in terms of mass. -->冥王星に似た半径、密度(2.059 g/cm<sup>3</sup>)、温度そして化学組成を持つ{{R|voyager}}。

トリトンの表面は[[焼なまし]]された固体[[窒素]]の透明な層で覆われている。トリトンの表面の40%のみが観測されて研究が行われているが、その表面が窒素の[[氷]]でできた薄いシートのようなものに覆われている可能性がある。冥王星と同じように、トリトンの地殻の55%は窒素の氷とその他の氷が混ざったものになっている。水の氷は15~35%、凍結した[[二酸化炭素]]([[ドライアイス]])が残りの10~20%を占めているが、0.1%の[[メタン]]や、0.05%の[[一酸化炭素]]を含む氷も少量存在している{{R|EncycSolSys-Triton}}。[[リソスフェア]]に[[アンモニア]]の[[水和物]]の兆候が見られるため、表面にアンモニアの氷が存在する可能性も示されている<ref>{{cite journal|author=Ruiz, Javier|title=Heat flow and depth to a possible internal ocean on Triton|journal=Icarus|volume=166|issue=2|pages=436–439|year=2003|doi=10.1016/j.icarus.2003.09.009|bibcode=2003Icar..166..436R}}</ref>。トリトンの平均密度は、組成の約30~45%が氷で、残りは岩石であることを意味している{{R|EncycSolSys-Triton}}。表面積は2,300万km<sup>2</sup>で、地球全体の4.5%、陸地のみに限定するとその15.5%に相当する。トリトンは受ける太陽光の60~95%を反射する、かなり高い[[アルベド]]を持ち、その値は最初の観測からわずかに変化している。これに対して、月はわずか11%しか太陽光を反射しない<ref>{{cite web|title=Lunar Albedo|author=Medkeff, Jeff|work=Sky and Telescope Magazine|year=2002|url=http://jeff.medkeff.com/astro/lunar/obs_tech/albedo.htm|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080523151225/http://jeff.medkeff.com/astro/lunar/obs_tech/albedo.htm|deadurl=yes|archivedate=2008-05-23|accessdate=2018-12-27}}</ref>。トリトンの赤みがかったメタンの氷によるものと考えられており、メタンの氷は[[紫外線]]を受けると[[ソリン (物質)|ソリン]]に変換される{{R|EncycSolSys-Triton}}<ref>{{cite journal|last=Grundy|first=W. M.|last2=Buie|first2=M. W.|last3=Spencer|first3=J. R.|title=Spectroscopy of Pluto and Triton at 3–4 Microns: Possible Evidence for Wide Distribution of Nonvolatile Solids|year=2002|journal=The Astronomical Journal|volume=124|issue=4|pages=2273–2278|doi=10.1086/342933|bibcode=2002AJ....124.2273G}}</ref>。

トリトンの表面の長期間に渡る変遷を示しているため、内部モデルでは、トリトンは地球のように固体の[[核 (天体)|核]]と[[マントル]]、そして[[地殻]]に区別されていると仮定している。岩石と金属から成る核を取り囲んでいるトリトンのマントルは、太陽系で最も存在している[[揮発性物質]]である[[水]]で構成されている。トリトンの内部には今日までにマントルの[[対流]]による[[放射性崩壊]]で形成されただけの十分な岩石があり、また内部の熱は[[エウロパ (衛星)|エウロパ]]の内部に存在すると仮定されているのと同様の、全球規模の地下[[海洋]]を維持するのに十分であるかもしれない{{R|EncycSolSys-Triton|Scientific}}<ref>{{cite journal|last1=Hussmann|first1=Hauke|last2=Sohl|first2=Frank|last3=Spohn|first3=Tilman|year=2006|title=Subsurface oceans and deep interiors of medium-sized outer planet satellites and large trans-neptunian objects|journal=Icarus|volume=185|issue=1|pages=258–273|url=https://www.researchgate.net/profile/Tilman_Spohn/publication/225019299_Subsurface_Oceans_and_Deep_Interiors_of_Medium-Sized_Outer_Planet_Satellites_and_Large_Trans-Neptunian_Objects/links/55018a3a0cf24cee39f7b952.pdf|doi=10.1016/j.icarus.2006.06.005|bibcode=2006Icar..185..258H}}</ref>。排出された黒色の物質には[[有機化合物]]が含まれている可能性があり{{R|Scientific}}、またトリトンに液体の水が存在していれば、[[生命]]にとって居住性があると推定されている{{R|Scientific}}<ref>{{cite journal|last1=Irwin|first1=L. N.|last2=Schulze-Makuch|first2=D.|title=Assessing the Plausibility of Life on Other Worlds|year=2001|journal=Astrobiology|volume=1|issue=2|pages=143–160|doi=10.1089/153110701753198918|bibcode=2001AsBio...1..143|pmid=12467118I}}</ref><ref>{{cite web|author=Doyle, Amanda|url=http://www.space.com/17470-neptune-moon-triton-subsurface-ocean.html|title=Does Neptune's moon Triton have a subsurface ocean?|work=Space.com|date=2012-09-06|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

== 大気 ==
{{Main|トリトンの大気}}
[[ファイル:Triton (artist's impression).jpg|thumb|left|トリトンの想像図。縁に薄い大気が描かれている。]]
トリトンはその表面に微量の[[一酸化炭素]]と少量のメタンを含む薄い[[窒素]]の大気を持つ{{R|Broadfoot89}}<ref>{{cite book|title=The Grand Tour: A Traveler's Guide to the Solar System|author=Miller, Ron|author2=Hartmann, William K.|year=2005|pages=172–173|publisher=Workman Publishing|location=Thailand|edition=3rd|isbn=978-0-7611-3547-0}}</ref><ref>{{cite journal|last=Lellouch|first=E.|last2=de Bergh|first2=C.|last3=Sicardy|first3=B.|last4=Ferron|first4=S.|last5=Käufl|first5=H.-U.|year=2010|title=Detection of CO in Triton's atmosphere and the nature of surface-atmosphere interactions|journal=Astronomy and Astrophysics|arxiv=1003.2866|doi=10.1051/0004-6361/201014339|volume=512|pages=L8|bibcode=2010A&A...512L...8L}}</ref>。冥王星の大気と同様に、トリトンの大気は表面からの窒素の蒸発に起因していると考えられている{{R|Cruikshank04}}。トリトンにある窒素の氷は温度が比較的高い場所に生成される[[結晶構造#結晶格子|六方晶系]]の状態で存在しており、その温度では六方晶系の氷と[[立方晶系]]の氷の間で[[相転移]]が起きるため、表面温度は少なくとも35.6 [[ケルビン|K]](-237.6 [[摂氏|℃]])となる{{R|Duxburyetal93}}。温度の上限は40 K弱で、これはトリトンの大気中の窒素ガスの[[平衡蒸気圧]]から求めることができる<ref>{{cite journal|last1=Tryka|first1=K. A.|last2=Brown|first2=R. H.|last3=Anicich|first3=V.|last4=Cruikshank|first4=D. P.|last5=Owen|first5=T. C.|title=Spectroscopic Determination of the Phase Composition and Temperature of Nitrogen Ice on Triton|year=1993|journal=Science|volume=261|issue=5122|pages=751–754|doi=10.1126/science.261.5122.751|bibcode=1993Sci...261..751T|pmid=17757214}}</ref>。これは冥王星の平均平衡温度44 K(-229 ℃)よりも冷たい。トリトンの表面の大気圧は約1.4~1.9 [[パスカル (単位)|Pa]](0.014~0.019 [[バール (単位)|mbar]])しかない{{R|EncycSolSys-Triton}}。

[[ファイル:Tritoncloud.jpg|thumb|ボイジャー2号によって観測された、煙霧の上に存在しているトリトンの雲]]

トリトンの表面での乱流は[[対流圏]](''weather region'')を生み出しており、その高度は8 kmに達している。間欠泉の噴煙によってトリトンの表面に残された縞模様は、対流圏が1 [[マイクロメートル|&mu;m]]以上の大きさの物質を動かすことが出来る季節的な風によって動いていることを示唆している{{R|SmithSoderblom89}}。他の天体の大気とは異なり、トリトンには[[成層圏]]が存在しておらず、代わりに高度8~950 kmに[[熱圏]]、その外側に[[外気圏]]が存在している。太陽の放射と海王星の[[磁気圏]]から吸収された熱により、トリトンの大気上層部の温度は95 ± 5 Kとなっている{{R|Broadfoot89}}<ref>{{cite journal|last=Stevens|first=M. H.|last2=Strobel|first2=D. F.|last3=Summers|first3=M. E.|last4=Yelle|first4=R. V.|url=http://www.agu.org/pubs/crossref/1992/92GL00651.shtml|title=On the thermal structure of Triton's thermosphere|year=1992|journal=Geophysical Research Letters|volume=19|issue=7|pages=669–672|doi=10.1029/92GL00651|bibcode=1992GeoRL..19..669S}}</ref>。大気中のもやは対流圏の大部分に浸透しており、主にメタンと太陽光の作用によって生じた[[炭化水素]]と[[ニトリル]]から成ると考えられている。トリトンの大気には、高度1~3 kmのところに凝縮した窒素の[[雲]]が存在している{{R|EncycSolSys-Triton}}。

1997年に、地球からトリトンが[[掩蔽|恒星の前を通過した]]際にトリトンの煙霧が観測された。この観測結果から、大気の密度が[[ボイジャー2号]]による探査で推定されたデータよりも大きいことが示唆された{{R|Hubblesite}}。他の観測では、1989年から1998年の間に気温が5%上昇していることが観測されている<ref>{{cite web|title=MIT researcher finds evidence of global warming on Neptune's largest moon |url=http://web.mit.edu/newsoffice/1998/triton.html|work=[[マサチューセッツ工科大学|Massachusetts Institute of Technology]]|date=1998-06-24|accessdate=2018-12-27}}</ref>。これらの観測結果から、トリトンが暖かい夏の季節を迎い始めていることが示されている。この温暖化の理論には、表面の霜のパターンの変化と氷のアルベドの変化が含まれており、これにより、より多くの熱を吸収することができる<ref>{{cite journal|author=MacGrath, Melissa|title=Solar System Satellites and Summary|journal=Hubble's Science Legacy: Future Optical/Ultraviolet Astronomy from Space|year=1998|volume=291|page=93|work=Space Telescope Science Institute|bibcode=2003ASPC..291...93M}}</ref>。別の理論では、温度変化は地質学的プロセスによる暗い赤色の物質が堆積した結果であると主張している。トリトンはボンドアルベドが太陽系内で最も高い天体の1つであるため、[[スペクトル]]アルベドの小さな変動に敏感であるとされている<ref>{{cite journal|title=Does global warming make Triton blush?|url=http://www.bio.indiana.edu/~palmerlab/Journals/170.pdf|author1=Buratti, Bonnie J.|author2=Hicks, Michael D.|author3=Newburn, Ray L. Jr.|journal=Nature|volume=397|issue=6716|year=1999|doi=10.1038/16615|pmid=9930696|bibcode=1999Natur.397..219B|pages=219–220|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070611233151/http://www.bio.indiana.edu/~palmerlab/Journals/170.pdf|archivedate=2007-06-11}}</ref>。

== 表面の特徴 ==
[[ファイル:Geology of Triton.jpg|thumb|350px|トリトンの[[地形学]]的解釈図]]
トリトンの表面に関する詳細な情報は、全て1989年にボイジャー2号が40,000 kmの距離にまで接近した際に得られた<ref>{{cite journal|author=Gray, D|title=Voyager 2 Neptune navigation results.|journal=Astrodynamics Conference|year=1989|pages=108|doi=10.2514/6.1990-2876}}</ref>。トリトンの表面の40%がボイジャー2号によって撮影されており、むらのある[[露頭]]や[[尾根]]、[[谷]]、[[溝]]、[[盆地]]、[[高原]]、凍った[[平野]]、いくつかの[[衝突クレーター]]といった地形が存在していることが明らかになった。表面は比較的平らであり、観測されている範囲内の地形では高さが1 kmを超えて変化することはない。衝突クレーターは比較的少ない。最近のクレーターの密度と分布の分析では、地質学的に見るとトリトンの表面は非常に若いことが示唆されており、地域によってその推定年齢は600万年から5000万年と様々である{{R|Schenk07}}。トリトンの表面の55%が凍った窒素で覆われており、水の氷が15~35%、ドライアイス(凍った二酸化炭素)が残りの10~20%を占めている<ref>{{cite news|last=Williams|first=Matt|url=https://www.universetoday.com/56042/triton/|title=Neptune’s Moon Triton|work=Universe Today|date=2015-07-28|accessdate=2018-12-27}}</ref>。表面には、[[生命の起源]]への先駆的な化学物質になるかもしれない有機化合物である[[ソリン (物質)|ソリン]]の堆積物が見られる<ref>{{cite conference|last=Oleson|first=Steven R.|last2=Landis|first2=Geoffrey|title=Triton Hopper: Exploring Neptune’s Captured Kuiper Belt Object|url=https://www.hou.usra.edu/meetings/V2050/pdf/8145.pdf|conference=Planetary Science Vision 2050 Workshop 2017}}</ref>。

=== 氷の火山 ===
{{Main|氷の火山}}
[[ファイル:Voyager 2 Triton 14bg r90ccw colorized.jpg|thumb|窒素の間欠泉の噴火によって残された塵の堆積物であると考えられている、トリトンの南極の極冠を横切る暗い縞模様]]
トリトンは地質学的には活動的で表面は若く、衝突クレーターの数が比較的少ない。トリトンの地殻は様々な氷で構成されているが、その地下で起きているプロセスは地球上で[[火山]]や[[地溝帯]]を形成するものと似ている。しかし、トリトンではそのプロセスにおいて液体の岩石ではなく水と[[アンモニア]]が用いられる{{R|EncycSolSys-Triton}}。トリトンは表面全体に複雑な谷や尾根が存在しているが、これらはおそらく[[テクトニクス]]と[[火山活動]]によるものであるとされている。トリトンの表面における特徴の大部分は、[[天体衝突]]などの外因的な要因ではなく、内部の地質学的なプロセスによって形成された内因的なものである{{R|EncycSolSys-Triton}}。

探査機ボイジャー2号は1989年に、トリトンの表面で窒素を噴出する少数の[[間欠泉]]と、それに同伴する表面から8 kmの高さにまで達する砂煙の柱を観測した{{R|voyager|Soderblom90|natgeo}}。このことから、トリトンは、地球、[[イオ (衛星)|イオ]]および[[エンケラドゥス (衛星)|エンケラドゥス]]と共に、ある種の活発な噴火活動が観測されている太陽系内でも数少ない天体の1つであるとされている<ref>{{cite journal|first=J. S.|last=Kargel|title=Cryovolcanism on the icy satellites|journal=Earth, Moon, and Planets|year=1994|volume=67|issue=1–3|doi=10.1007/BF00613296|pages=101–113|bibcode=1995EM&P...67..101K}}</ref>。最も良く観測された煙の柱はヒリ(Hili)とマヒラニ(Mahilani)と命名されている(それぞれ{{仮リンク|ズールー神話|en|Zulu mythology}}の水の精と[[トンガ]]に伝わる水の精霊の名に因む)<ref>{{cite web|url=https://planetarynames.wr.usgs.gov/Feature/2504;jsessionid=CACE683AAA9FD950CC0D1DE0BE9B9E08|title=Hili|work=USGS Astrogeology -esearch Program: Gazetteer of Planetary Nomenclature|publisher=International Astronomical Union|accessdate=2018-12-27}}</ref><ref>{{cite web|url=https://planetarynames.wr.usgs.gov/Feature/3590;jsessionid=472D9363301051624BF051A8A56BA088|title=Mahilani|work=USGS Astrogeology -esearch Program: Gazetteer of Planetary Nomenclature|publisher=International Astronomical Union|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

観測されている全ての間欠泉は、トリトンの[[太陽直下点]]に近い南緯50度から57度の領域内に存在している。これはトリトンが太陽から大きく離れているため、とても微弱ではあるが太陽からの熱が極めて重要であることを示している。トリトンの表面はおそらく暗い基質の上に半透明の凍った窒素の層から成り、一種の「固体の[[温室効果]]」を生み出すと考えられている。太陽からの放射は表面の薄い氷床を通過し、地上から噴出するのに十分なガス圧が蓄積するまで表面下の窒素を徐々に加熱して蒸発させている{{R|EncycSolSys-Triton|SmithSoderblom89}}。そして、周囲の表面温度37 Kよりも温度が4 K上回ると、観測された高さまで噴出する可能性があるとされている{{R|Soderblom90}}。一般的にこうした地質活動は[[氷の火山]]と呼ばれているが、この窒素のプルーム活動は、天体の内部熱に動かされるトリトンの大規模な氷の火山の噴火や、議論が行われている他の天体の火山活動とは異なる。これと同様に[[火星の生命#火星の間欠泉|火星の二酸化炭素の間欠泉]]は、季節が春になる度に噴出すると考えられている<ref>{{cite web|last=Burnham |first=Robert|url=http://www.asu.edu/news/stories/200608/20060818_marsplumes.htm|title=Gas jet plumes unveil mystery of 'spiders' on Mars|work=[[アリゾナ州立大学|Arizona State University]]|date=2006-08-16|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

トリトンの間欠泉は噴火している間に、約1億 [[立方キロメートル|km<sup>3</sup>]]もの窒素の氷が[[昇華]]し、その期間は1年以上に達することもある。同伴された塵や埃は、肉眼で観望できる縞模様としては風下に150 kmの長さにまで堆積する可能性があり、より拡散した堆積物だとさらに遠くまで堆積する可能性がある{{R|Soderblom90}}。ボイジャー2号によって撮影された南半球の画像では、こうした濃い色の縞模様が多数みられる<ref>{{cite book|first=R. L.|last=Kirk|year=1990|chapter=Thermal Models of Insolation-Driven Nitrogen Geysers on Triton|title=Lunar and Planetary Science Conference XXI|pages=633–634|work=Lunar and Planetary Institute|bibcode=1990LPI....21..633K}}</ref>。1977年からボイジャー2号が接近した1989年までの間に、トリトンは冥王星に似た赤みがかった色からはるかに薄い色合いに変化しており、軽い窒素の霜がより古い赤みを帯びた物質を覆ったことが示唆された{{R|EncycSolSys-Triton}}。トリトンの赤道からの、揮発性物質の噴出とそれらの極への堆積は、[[極移動]]を引き起こすのに十分な質量を10,000年の間に再分布するかもしれない<ref>{{cite journal|first=David Parry|last=Rubincam|title=Polar wander on Triton and Pluto due to volatile migration|journal=Icarus|year=2002|volume=163|issue=2|pages=63–71|doi=10.1016/S0019-1035(03)00080-0|bibcode=2003Icar..163..469R}}</ref>。

=== 極冠、平野および尾根 ===
[[ファイル:Triton (moon).jpg|thumb|カンタロープ地形の領域上にあるトリトンの南極の明るい極冠]]
トリトンの南極は、衝突クレーターと間欠泉の噴出口が散在しており、凍った窒素とメタンから成る反射率の高い[[極冠]]で覆われている{{R|natgeo}}。北極については、ボイジャー2号が接近した時は夜であったため、ほとんど知られていないが、北極にもこうした極冠があるだろうと考えられている{{R|Duxburyetal93}}。

ジパンゴ高原(Cipango Planum)のようなトリトンの東半球に見られる高い平野は古い地形を覆い隠しているので、氷の溶岩がそれ以前の地形を一掃した結果である。平野にはリヴァイアサン(Leviathan Patera)といった窪みが点在している。トリトンの溶岩はアンモニアと水の混合物であることが疑われているが、その組成は知られていない{{R|EncycSolSys-Triton}}。

トリトンには4つのほぼ円形な「壁のある平野(Walled plains)」が確認されている。これらはこれまで観測されている中で最も平坦な領域で、高度の変動は200 m未満になっている。この領域は凍った溶岩の噴火から形成されたと考えられている{{R|EncycSolSys-Triton}}。トリトンの東側の縁近くにある平野には、黒い斑点(黒斑)が点在している。いくつかの黒斑は広がった境界線を持つ単純なものであり、また、はっきりとした境界線を持ち、中央の暗い斑点の周りを白いハロー(halo)が囲んでいるものもある。典型的な黒斑の直径は約100 kmで、幅20~30 kmのハローを有する{{R|EncycSolSys-Triton}}。

トリトンの表面には複雑な尾根や谷が存在しており、これらはおそらく凍結と[[融解]]のサイクルによる結果だとされている<ref>{{cite journal|last1=Elliot|first1=J. L.|last2=Hammel|first2=H. B.|last3=Wasserman|first3=L. H.|last4=Franz|first4=O. G.|last5=McDonald|first5=S. W.|last6=Person|first6=M. J.|last7=Olkin|first7=C. B.|last8=Dunham|first8=E. W.|last9=Spencer|first9=J. R.|last10=Stansberry|first10=J. A.|last11=Buie|first11=M. W.|last12=Pasachoff|first12=J. M.|last13=Babcock|first13=B. A.|last14=McConnochie|first14=T. H.|title=Global warming on Triton|journal=Nature|year=1998|volume=393|issue=6687|pages=765–767|doi=10.1038/31651|bibcode=1998Natur.393..765E}}</ref>。その多くはまた、本質的に地殻活動で出現したとされており、伸長または[[断層#横ずれ断層|走向移動断層]]運動に起因している可能性がある{{R|Geoffrey94}}。中央部には[[エウロパ (衛星)|エウロパの線紋地形]](規模はこちらの方が大きい{{R|Prockter05}})と強い類似性を持つ長い二重の尾根があり、同様の起源を持つかもしれない{{R|EncycSolSys-Triton}}。この地形はトリトンの軌道が完全に円形化する前に起きた潮汐の圧力によって引き起こされた断層に沿った運動で形成された可能性がある{{R|Prockter05}}。これらの平行な尾根を持つ断層は、赤道地域を横断する複雑な地形の谷の内部から放出したものとされている。尾根や谷、そして[[ヤス溝]](Yasu Sulci)やホ溝(Ho Sulci)、ロ溝(Lo Sulci)のような溝はトリトンの地質学的歴史で見ると中期に形成されたものと考えらており、多くは同時期に形成されたとされている<ref>{{cite journal|author=Aksnes, K.|author2=Brahic, A.|author3=Fulchignoni, M.|author4=Marov, M. Ya|title=Working Group for Planetary System Nomenclature|url=https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19940014368_1994014368.pdf|journal=Reports on Astronomy|year=1990|volume=21A|pages=613–619|place=[[ニューヨーク州立大学|State University of New York]]|id=1991IAUTA..21..613A}}</ref>。それらの地形は「グループ」や「パケット」としてまとめられる傾向がある{{R|Geoffrey94}}。

=== カンタロープ地形 ===
[[ファイル:PIA01537 Triton Faults.jpg|thumb|200px|ボイジャー2号が130,000 kmの距離から観測した、エウロパに似た尾根が2つ横切っているカンタロープ地形。スリドル溝(Slidr Sulci、画像では垂直になっている方)とタノ溝(Tano Sulci)が「X」の字を形成している。]]
トリトンの西半球は、[[カンタロープ]]メロンの皮の模様に似ていることから「カンタロープ地形」と呼ばれる、奇妙な一連の裂け目と窪みで構成されている{{R|natgeo}}。クレーターは少ないが、これはトリトンで最も古い地形であると考えられており{{R|Joseph93}}、トリトンの西半球の大部分を覆っている{{R|EncycSolSys-Triton}}。

カンタロープ地形はほとんどが汚れた水の氷から成り、トリトンにしか存在していない。直径30~40 kmの窪みがあり{{R|Joseph93}}、同じ大きさで滑らかな曲線になっているため、おそらくクレーターではないとされている。これらの地形の形成の主な仮説として{{仮リンク|ダイアピル|label=ダイアピリズム|en|Diapir}}説があり、より密度の高い物質の層を通過する、より密度の低い物質の「しこり」が上昇したことで形成とする仮説である{{R|EncycSolSys-Triton}}<ref>{{cite journal|athor=Schenk, P.|author2=Jackson, M. P. A.|title=Diapirism on Triton: A record of crustal layering and instability|journal=Geology|year=1993|volume=21|issue=4|pages=299–302|doi=10.1130/0091-7613(1993)021<0299:DOTARO>2.3.CO;2|bibcode=1993Geo....21..299S}}</ref>。代替の仮説として、崩壊による形成された説や、氷の火山の活動で発生した洪水によって形成されたという説も含まれている{{R|Joseph93}}。

=== 衝突クレーター ===
[[ファイル:PIA01538 Complex Geologic History of Triton.jpg|thumb|200x200px|ツオネラ平原(Tuonela Planitia、左)とルーア平原(Ruach Planitia、中央)は、氷の火山の活動で形成されたトリトンの「壁のある平野」 のうちの2つである。クレーターが少ないことは広範囲で比較的最近に地質学的活動があることを示す証拠である。]]
継続的な地質学的活動による地形の一掃と変化のため、トリトンの表面上において[[クレーター]]は稀である。ボイジャー2号が撮影したトリトンの画像の調査から発見されたクレーターは179個であった。一方で、表面積がトリトンのわずか3%しかない[[天王星]]の衛星[[ミランダ (衛星)|ミランダ]]には835個ものクレーターが観測されている{{R|Robert90}}。トリトンで観測された、衝突によって生じたと考えられている最大のクレーターはマゾムバ(Mazomba)と呼ばれるクレーターで、直径は27 kmである{{R|Robert90}}<ref>{{cite journal|author=Ingersoll, Andrew P.|author2=Tryka, Kimberly A.|title=Triton's Plumes: The Dust Devil Hypothesis|journal=Science|year=1990|volume=250|pages=435–437|issue=4979|doi=10.1126/science.250.4979.435|bibcode=1990Sci...250..435I|pmid=17793022}}</ref>。より大きなクレーターも観測されているが、一般的にこれらは火山性のクレーターであると考えられている{{R|Robert90}}。

トリトンの衝突クレーターのほとんどは、主に軌道の運動方向に対して先行している方の半球に存在しており、その大部分が経度30度から70度の赤道付近に集中している{{R|Robert90}}。これは海王星の周りの軌道上から掃き寄せられた物質に起因するものであるとされている{{R|Schenk07}}。トリトンは片面を恒久的に海王星に向けているため、天文学者達は先行する半球にはより頻繁で激しい衝突が起きるので、後方の半球の衝突は少なくなるはずだと予想しているが{{R|Robert90}}、ボイジャー2号はトリトンの表面の40%しか撮影していないため、この考えは不確実なままとなっている。

== 観測と探査 ==
[[ファイル:Voyager 2 Neptune and Triton.jpg|thumb|200px|ボイジャー2号がフライバイした3日後に撮影した海王星(上)とトリトン(中央)]]
タイタンの軌道の特性は19世紀にはすでに高精度で求められており、海王星の軌道面に対して非常に傾いていて、逆行軌道を持つことが判明していた。トリトンの詳細な観測は1930年まで行われておらず、1989年にボイジャー2号が接近するまでは、トリトンについてほとんど知られていなかった{{R|EncycSolSys-Triton}}。

ボイジャー2号がフライバイを行う前は、天文学者はトリトンに[[液体窒素]]の海と、地球の30%もの密度を持つ窒素とメタンから成る大気が存在するかもしれないと考えていた。しかし、[[火星]]の大気の過大評価と同様に、この考えは不適切であったことが判明した。火星と同様に、初期の頃はより濃い大気の存在が想定されていた<ref>{{cite journal|title=A massive early atmosphere on Triton|author=Lunine, Jonathan I.|author2=Nolan, Michael C.|journal=Icarus|year=1992|volume=100|issue=1|pages=221–234|doi=10.1016/0019-1035(92)90031-2|bibcode=1992Icar..100..221L}}</ref>。

トリトンの直径を測定する最初の試みは1954年に[[ジェラルド・カイパー]]によってなされ、彼はトリトンの直径について3,800 kmという値を得た。その後に行われた測定によって、トリトンの直径の値の範囲は2,500~6,000 kmとされ、これは[[月]](3,474.2 km)よりやや小さい大きさから地球の約半分の大きさにまで匹敵する<ref>{{cite journal|last1=Cruikshank|first1=D. P.|last2=Stockton|first2=A.|last3=Dyck|first3=H. M.|last4=Becklin|first4=E. E.|last5=Macy|first5=W.|title=The diameter and reflectance of Triton|journal=Icarus|year=1979|volume=40|pages=104–114|doi=10.1016/0019-1035(79)90057-5|bibcode=1979Icar...40..104C}}</ref>。1989年8月25日にボイジャー2号が海王星に接近した際のデータから、トリトンの正確な直径の推定値(2,706 km)が得られた<ref>{{cite journal|author=Stone, E. C.|author2=Miner, E. D.|title=The Voyager 2 Encounter with the Neptunian System|journal=Science|year=1989|volume=246|pages=1417–1421|issue=4936|doi=10.1126/science.246.4936.1417|bibcode=1989Sci...246.1417S|pmid=17755996}} And the following 12 articles pp. 1422–1501.</ref>。

1990年代には、近くの恒星の[[掩蔽]]を用いて地球からトリトンの周縁を調べる様々な観測が行われ、そしてトリトンに大気とエキゾチックな表面が存在していることが判明した。1997年後半の観測では、トリトンの温度が上昇しており、ボイジャー2号が1989年に接近した際よりも大気の密度が著しく大きくなっていることが示唆された{{R|Hubblesite}}。

2008年10月16日、冥王星探査のために打ち上げられた探査機[[ニュー・ホライズンズ]]が、約37億5,000万 km離れた位置から海王星とトリトンの画像を撮影した<ref>{{cite web|url=https://www.astroarts.co.jp/news/2009/03/13new_horizons/index-j.shtml|title=衛星トリトンをとらえた、ニューホライズンズ|work=AstroArts|date=2009-03-13|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

2010年代に行われる[[ネプチューン・オービター|海王星系の探査ミッションの新たな概念]]は過去数十年に渡って、何度も[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]の科学者によって提案されてきた。彼らはトリトンを主な観測対象としており、それらの提案には[[タイタン (衛星)|タイタン]]の[[ホイヘンス・プローブ]]のような着陸機をトリトンに送る計画が含まれることも頻繁にあった。しかし、海王星とトリトンの探査計画は提案の段階を超えておらず、また、外太陽系の探査ミッションに対するNASAの資金の用途は現在、[[木星]]と[[土星]]の探査に集中している<ref>{{cite web|url=http://www.nasa.gov/pdf/428154main_Planetary_Science.pdf|title=USA.gov: The U.S. Government's Official Web Portal|work=NASA.gov|date=2013-09-27|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

トリトンへの着陸を行うミッションとして提案されている''Triton Hopper''と呼ばれる計画では、トリトンの表面から窒素の氷を採掘し、小さなロケット推進剤として使用するように処理して、トリトンの表面からの飛行あるいは表面を「跳ねて」渡っていくことが計画されている<ref>{{cite web|author=Becky Ferreira|url=http://motherboard.vice.com/read/neptune-or-bust|title=Why We Should Use This Jumping Robot to Explore Neptune|work=Motherboard|date=2015-08-28|accessdate=2018-12-27}}</ref><ref>{{cite web|author=Steven Oleson|url=https://www.nasa.gov/feature/triton-hopper-exploring-neptunes-captured-kuiper-belt-object/|title=Triton Hopper: Exploring Neptune's Captured Kuiper Belt Object|work=NASA Glenn Research Center|date=2015-05-07|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

2017年10月5日に、トリトンによる恒星UCAC4 410-143659の掩蔽が発生した<ref>{{cite web|url=http://www.asteroidoccultation.com/observations/NA/2017Oct05_Triton%20(I).gif|title=Occultation of UCAC4 410-143659|work=Asteroidoccultation.com|accessdate=2018-12-27}}</ref>。

== 地図 ==
{|
|-
|{{Annotated image
| image = PIA18668 Map of Triton.jpg
| image-width = 400
| height = 204
| float = none
| caption = 色を強調した地図、画像右側が先行する半球}}
|{{Annotated image
| image = Triton polar maps.jpg
| image-width = 400
| height = 196
| float = none
| caption = 色を強調した極座標地図、右が南側}}
|}

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注"|refs=
<ref name="注1">トリトンの片半球の集成画像。明るくややピンクがかった南極の[[極冠]]は窒素とメタンの氷から構成されており、窒素ガスの間欠泉によって形成された塵の堆積物によって縞模様になっている。その上に見える暗い地域のほとんどには、トリトンの「カンタロープ地形」や氷の火山、テクトニクス構造が含まれている。画像右下の近くには、いくつかの暗い黒斑(Strange Spots)が見られる。</ref>
<ref name="注2"><math>4 \pi r^2</math>(<math>r</math>は半径)より計算。</ref>
<ref name="注3">体積 <math>v</math> は <math>v=\frac{4}{3}\pi r^3</math>(<math>r</math>は半径) より計算。</ref>
<ref name="注4">質量 <math>m</math> は <math>m=dv</math>(<math>d</math>は密度、<math>v</math>は体積) より計算。</ref>
<ref name="注5"><math>\frac{Gm}{r^2}</math>(<math>m</math>は質量、<math>r</math>は半径、<math>G</math>は[[万有引力定数]])より計算。</ref>
<ref name="注6"><math>\sqrt\frac{2Gm}{r}</math>(<math>m</math>は質量、<math>r</math>は半径、<math>G</math>は万有引力定数)より計算。</ref>
<ref name="注7">特に大きな不規則衛星には、土星のフェーベ(210 km)、天王星の[[シコラクス (衛星)|シコラクス]](150 km)、および木星の[[ヒマリア (衛星)|ヒマリア]](85 km)がある。</ref>
<ref name="注8">トリトンの質量は2.14{{e|22}}kg。知られているその他の12個の海王星の衛星の合計質量は7.53{{e|19}}kgで、トリトンの0.35%に相当する。環の質量はごくわずかである。</ref>
<ref name="注9">その他の球状になっている衛星の質量(単位はkg)は、[[チタニア (衛星)|チタニア]] - 3.5{{e|21}}、[[オベロン (衛星)|オベロン]] - 3.0{{e|21}}、[[レア (衛星)|レア]] - 2.3{{e|21}}、[[イアペトゥス (衛星)|イアペトゥス]] - 1.8{{e|21}}、[[カロン (衛星)|カロン]] - 1.5{{e|21}}、[[アリエル (衛星)|アリエル]] - 1.3{{e|21}}、[[ウンブリエル]] - 1.2{{e|21}}、[[ディオネ (衛星)|ディオネ]] - 1.0{{e|21}}、[[テティス (衛星)|テティス]] - 0.6{{e|21}}、[[エンケラドゥス (衛星)|エンケラドゥス]] - 0.12{{e|21}}、[[ミランダ (衛星)|ミランダ]] - 0.06{{e|21}}、[[プロテウス (衛星)|プロテウス]] - 0.05{{e|21}}、[[ミマス (衛星)|ミマス]] - 0.04{{e|21}}となっている。その他の衛星の全質量は約0.09{{e|21}}。したがって、トリトンより小さな衛星の全質量は約1.65{{e|22}}となる。</ref>
}}

=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name=JPL_Physical>{{cite web|url=http://ssd.jpl.nasa.gov/?sat_phys_par|title=Planetary Satellite Physical Parameters|work=Solar System Dynamics|publisher=[[ジェット推進研究所|JPL]]|accessdate=2018-12-27}}</ref>

<ref name=discovery>{{cite web|url=https://planetarynames.wr.usgs.gov/Page/Planets|title=Planet and Satellite Names and Discoverers|work=Working Group for Planetary System Nomenclature|publisher=[[国際天文学連合|International Astronomical Union]]|accessdate=2018-12-27}}</ref>

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<ref name=natgeo>[[#natgeo|日経ナショナル ジオグラフィック、3.小惑星帯を越えて、pp.174-175 トリトン]]</ref>

<ref name=fact>{{cite web|author=David R. Williams|url=http://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/neptuniansatfact.html|title=Neptunian Satellite Fact Sheet|work=[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]|date=2006-11-23|accessdate=2018-12-27}}</ref>

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<ref name=Jacobson09>{{cite journal|doi=10.1088/0004-6256/137/5/4322|last=Jacobson|first=R. A.|year=2009|title=The Orbits of the Neptunian Satellites and the Orientation of the Pole of Neptune|journal=The Astronomical Journal|volume=137|issue=5|pages=4322–4329|pmid=|pmc=|bibcode=2009AJ....137.4322J}}</ref>
</ref>

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<ref name=Chyba89>{{cite journal|last=Chyba|first=C. F.|last2=Jankowski|first2=D. G.|last3=Nicholson|first3=P. D.|title=Tidal evolution in the Neptune-Triton system|journal=[[アストロノミー・アンド・アストロフィジックス|Astronomy and Astrophysics]]|year=1989|volume=219|issue=1–2|pages=L23–L26|bibcode=1989A&A...219L..23C}}</ref>

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<ref name=Schenk07>{{cite journal|author=Schenk, Paul M.|author2=Zahnle, Kevinl|title=On the negligible surface age of Triton|year=2007|journal=Icarus|volume=192|issue=1|pages=135–149|doi=10.1016/j.icarus.2007.07.004|bibcode=2007Icar..192..135S}}</ref>

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<ref name=Geoffrey94>{{cite journal|title=Triton's Lineaments: Complex Morphology and Stress Patterns|first=Geoffrey|last=Collins|first2=Paul|last2=Schenk|location=Houston, TX|journal=Abstracts of the 25th Lunar and Planetary Science Conference|conference=Abstracts of the 25th Lunar and Planetary Science Conference|year=1994|volume=25|page=277|bibcode=1994LPI....25..277C}}</ref>

<ref name=Joseph93>{{cite journal|author=Boyce, Joseph M.|title=A structural origin for the cantaloupe terrain of Triton|journal=In Lunar and Planetary Inst., Twenty-fourth Lunar and Planetary Science Conference. Part 1: A-F (SEE N94-12015 01-91)|year=1993|volume=24|pages=165–66|bibcode=1993LPI....24..165B}}</ref>

<ref name=Robert90>{{cite journal|author=Strom, Robert G.|author2=Croft, Steven K.|author3=Boyce, Joseph M.|title=The Impact Cratering Record on Triton|year=1990|journal=Science|volume=250|pages=437–439|pmid=17793023|issue=4979|doi=10.1126/science.250.4979.437|bibcode=1990Sci...250..437S}}</ref>
}}

== 関連文献 ==
* {{cite book|和書|author=監修: 渡辺潤一|year=2013|title=ビジュアル宇宙大図鑑 太陽系から130億光年の果てまで|publisher=日経[[ナショナルジオグラフィック]]社|isbn=978-4-86313-143-9|ref=natgeo}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[太陽系の衛星の一覧]]
* [[海王星の衛星]]
* [[トリトンの大気]]
* [[トリトンの地形一覧]]

== 外部リンク ==
{{commons|Category:Triton (moon)}}
{{commons|Category:Triton (moon)}}
* [https://web.archive.org/web/20161012075648/http://solarsystem.nasa.gov/planets/triton Triton profile] at NASA's Solar System Exploration site
*[[海王星の衛星と環]]
* {{YouTube|h82GNysAH_w|''Voyager 2 Encounters Neptune and Triton'' (1989)}}
*[[トリトンの大気]]
* [http://nineplanets.org/triton.html Triton page] at ''The Nine Planets''
*[[トリトンの地形一覧]]
* [http://solarviews.com/eng/triton.htm Triton page] (including [http://www.solarviews.com/eng/trimap.htm labelled Triton map]) at ''Views of the Solar System''
* [http://www.lpi.usra.edu/icy_moons/neptune/triton/ Triton map] from Paul Schenk, Lunar and Planetary Institute
* [http://photojournal.jpl.nasa.gov/target/Triton Triton images] from the NASA/JPL Photojournal
* [http://planetarynames.wr.usgs.gov/Page/TRITON/target Triton nomenclature] from the USGS Planetary Nomenclature website


{{トリトン (衛星)}}
{{トリトン (衛星)}}

2018年12月27日 (木) 09:47時点における版

トリトン
Triton
ボイジャー2号が撮影したトリトンの片半球の集成写真[注 1]
ボイジャー2号が撮影したトリトンの片半球の集成写真[注 1]
仮符号・別名 Neptune I
見かけの等級 (mv) 13.54[1]
分類 海王星の衛星不規則衛星
発見
発見日 1846年10月10日[2]
発見者 ウィリアム・ラッセル[2]
発見方法 イギリスの旗 イギリス
リヴァプール[2]
軌道要素と性質
軌道の種類 逆行軌道
軌道長半径 (a) 354,759 km[3][4]
離心率 (e) 0.000016[5]
公転周期 (P) 5.87654 [5][6]
平均軌道速度 4.39 km/s
軌道傾斜角 (i) 129.812°黄道面に対して)
156.8650°[4]
(海王星の赤道に対して)
129.608°(海王星の軌道面に対して)
近点引数 (ω) 66.142°[3]
昇交点黄経 (Ω) 177.6075°[4]
平均近点角 (M) 352.257°[3]
海王星の衛星
物理的性質
赤道面での直径 2706.8 km
半径 1,353.4 ± 0.9 km[1]
表面積 2.3018×107 km2[注 2]
体積 1.0384×1010 km3[注 3]
質量 2.14×1022 kg[注 4]
平均密度 2.059 ± 0.005 g/cm3[1]
表面重力 0.779 m/s2
(0.0795 g[注 5]
脱出速度 1.455 km/s[注 6]
自転周期 5日21時間2分53秒
公転と同期[7]
絶対等級 (H) -1.2[8]
アルベド(反射能) 0.719[1]
赤道傾斜角
表面温度 38 K[7]
(-235.2
大気の性質
大気圧 1.4 - 1.9 Pa[7]
(地球上の気圧の70,000分の1)[10]
大気組成 窒素メタンが少量[9]
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トリトン英語: Triton, Neptune I)は、海王星最大の自然衛星で、海王星で発見された初めての衛星である。1848年10月10日にイギリス天文学者であるウィリアム・ラッセルによって発見された。太陽系内の大型衛星の中では唯一、主惑星の自転方向に対して逆方向に公転する逆行軌道を持つ[6][11][12]。直径は2,710 km[1]太陽系の衛星の中では7番目に大きい。その逆行軌道と、冥王星に似た組成であることから、トリトンはカイパーベルトから捕らえられた準惑星規模の天体であったと考えられている[13]。トリトンは、凍った窒素の表面と、主にから成る地殻、氷のマントル[14]岩石から構成された実質上の、そして金属を持つ。核は総質量の約3分の2を占めている。平均密度は2.059g/cm3[1]で、これは組成の約15~35%が氷であることを反映している[7]

トリトンは地質学的に活動していることが知られている数少ない天体の一つである(他には木星イオエウロパ土星エンケラドゥスタイタンがある)。その結果、表面は比較的若く、明確な衝突クレーターはほとんど見られない。複雑な地質学的変遷は、氷の火山テクトニクスといった地形の存在を示唆している。その表面の一部は、昇華した窒素ガスを噴出する間欠泉を有しており、表面をまとう気圧が地球の海面上の70,000分の1の薄い窒素の大気に関与している[7]。主惑星との相対的な大きさでは、地球のに次いで2番目に大きい。

発見と命名

トリトンの発見者ウィリアム・ラッセル

トリトンは1846年10月10日にイギリスの天文学者ウィリアム・ラッセルによって発見され[15]、これは海王星の発見から17日後のことであった。彼は自身が製作した口径61cmの望遠鏡を用いてトリトンを発見した。

1820年にラッセルは、彼のアマチュア望遠鏡の鏡の製作を始めた。ジョン・ハーシェルが海王星発見の知らせを受けた時、ラッセルに存在する可能性のある衛星を探索するよう手紙を書いて提案した。ラッセルはそれに応じ、その8日後にトリトンを発見した[15][16]。ラッセルはも発見したと主張しており、後にその存在は確認されたが、環はとても微かで暗いため、ラッセルが実際に観測したかどうかは疑わしい[17]

トリトンはポセイドーンローマ神話ではネプトゥーヌスに相当するギリシャ神話の神)の息子である、の神トリートーンΤρίτων)に因んで命名されている[11]。この名称はカミーユ・フラマリオンによって1880年に出版されたAstronomie Populaireで初めて提案され[18]、数十年後に正式に採択された[19]。1949年に第2衛星ネレイドが発見されるまで、トリトンは一般的に「海王星の衛星」と呼ばれていた。ラッセルは自分自身が発見した衛星に名称をつけず、後に彼が発見した土星の第8衛星の名称として、以前にジョン・ハーシェルが選んだヒペリオンを使用することを成功裏に提案した[20]

軌道と自転

トリトンの軌道(赤線)は海王星の赤道面を公転する典型的な衛星の軌道(緑線)と比べて、公転方向が逆で-23度傾いている

トリトンは、太陽系にある全ての大型衛星の中で唯一逆行軌道(すなわち、主惑星の自転方向と逆向きに公転している)で公転している。木星土星の外側を公転するほとんどの不規則衛星天王星の外側を公転するいくつかの衛星も逆行軌道を持つ。しかし、これらの衛星は主惑星からはるか遠くに離れており、大きさも小さい。その中で最大のもの(フェーベ[注 7]でも、トリトンの直径のわずか8%(質量だと0.03%)しかない。

トリトンの軌道には、海王星の軌道に対する海王星の自転軸の傾き30度と、海王星の自転に対するトリトンの軌道傾斜角157度(90度を超えていれば逆行軌道であることを示す)の2つの傾斜が関われっている。トリトンの軌道は、678地球年(4.1海王星年)ごとに海王星の自転によって、海王星に向かって接近しており[3][4]、海王星の軌道に対する相対的な軌道の傾きは127度から180度まで変化し、過去には173度に達したこともあった。現在は130度になっている。トリトンの軌道は現在、海王星との同一平面上の最大距離に近づいている。

トリトンの自転公転と同期するように潮汐固定されており、常に片面を海王星に向けている。トリトンの赤道はその軌道面とほぼ一致している[21]。トリトンの自転軸は海王星の軌道面から約40度傾いているため、海王星が軌道上のある地点にいる間、トリトンの両極はかなり太陽の方向を面するようになり、天王星の極とほぼ同じようになる。海王星が軌道を公転するにつれて、トリトンの極地は太陽の方向を向くようになり、片方の極ではそれによって季節変化が生じ、もう片方の極には太陽光が差すようになる。このような変化は、2010年に観測された[22]

海王星の周りにおけるトリトンの回転運動はほぼ完全に円形であり、離心率はゼロに近い。潮汐による粘弾性の減衰だけでは、海王星系の形成時からトリトンの軌道を円形化することはできないと考えられており、順行する塵円盤からのガス抗力が重要な役割を果たしているとされている[4]潮汐力の作用はまた、トリトンの公転にブレーキをかけ、地球から徐々に遠ざかっているよりも近い位置にあるトリトンを海王星に接近させてもいる[23]。予測では、今から36億年後にはトリトンは海王星のロッシュ限界より内側を通るようになる。これにより、トリトンは海王星の大気に落下するか、あるいは粉砕されて土星の環に似た新たなが形成されるだろう[23]

捕獲

トリトンの起源と考えられている、太陽系外縁部にあるカイパーベルト(緑)

逆行軌道の衛星は、その衛星が公転する主惑星の周りで形成された塵円盤から形成されることはないので、トリトンは他の領域から捕獲された天体であるとされている。太陽から約50au離れた位置にある、小さな氷の天体からなるリング状の領域エッジワース・カイパーベルト(カイパーベルト)がトリトンの起源かもしれない[13]。地球で観測される短周期彗星の大部分の起源であるカイパーベルトには、冥王星を含む惑星サイズの天体がいくつか存在している。これらは現在、カイパーベルトの中で最も大きな天体(冥王星族)であると認識されており、海王星と軌道共鳴の状態にある。トリトンは冥王星よりもわずかに大きいだけで、組成もほぼ同じであるため、両者が同じ起源を共有しているという仮説が導かれている[24]

提示されているトリトンの捕獲は、海王星の衛星ネレイドの極端な楕円軌道や、海王星が他の巨大ガス惑星よりも衛星の数が少ないことを含む、海王星系のいくつかの特徴を説明できるかもしれない。初期のトリトンの楕円軌道は、不規則衛星の軌道を横断し、より小さな規則衛星の軌道を混乱させ、重力の相互作用によってそれらを分散させただろう[4]

捕獲されたトリトンの楕円軌道はまた、内部に潮汐加熱を引き起こし、10億年間に渡ってトリトンの内部に流体を存在させることができた。この推論はトリトンの内部に生じている差異の証拠によって裏付けられている。この内部熱源は潮汐固定と軌道の円形化に伴って消滅したとされている[25]

トリトンの捕獲については2種類のメカニズムが提案されている。惑星の重力によって捕らえられるには、通過する天体は離脱するのに必要な速度よりも減速するのに十分なエネルギーを失わなければいけない。初期の理論ではトリトンは他の天体と衝突したことによって減速したとされ、その天体は海王星を通過する天体、もしくは海王星の周りを公転する衛星や原始の衛星(この方が現実的)であったとされている[7]。最近の仮説では、トリトンは捕獲される前、連星(二重惑星二重小惑星)の一部であったことが示唆されている。この連星が海王星に接近した際、連星の片方は弾き飛ばされて2つは分離し、もう片方のトリトンは海王星に捕らえられるように相互作用を及ぼした。この現象はもう片方の天体の質量が大きいとより発生しうる[13]火星の衛星の捕獲についても同様のメカニズムが提案されている[26]。この仮説は、大きなカイパーベルト天体は一般的に連星を成していることを含むいくつかの証拠によって裏付けられている[27][28]。この現象は短期間で穏和に発生したため、トリトンの衝突や崩壊を防いだとされている。この現象は、海王星の形成時や、その後の外側への移動が起きていた間は一般的に起きていたかもしれない[13]

しかし2017年に行われたシミュレーションでは、トリトンが捕獲された後、軌道離心率が小さくなる前に少なくとも1個の他の衛星と衝突し、他の衛星同士の衝突を引き起こしたことが示された[29][30]

物理的特徴

トリトンは海王星の衛星系の中でも卓越しており、全質量の99.5%を占めている。この不均衡性は、トリトンが捕獲された後に元々海王星を公転していた衛星の多くを排除したことを反映しているかもしれない[3][4]
トリトン(左下)と月(左上)、地球(右)の大きさの比較

トリトンは、太陽系で7番目に大きな衛星で、天体全体でも16番目に大きく準惑星冥王星エリスよりもわずかに大きい。海王星の環とその他の13個の衛星を含む、海王星の周回軌道上にある物体の全質量の99.5%以上を占めており[注 8]、太陽系内で知られているトリトンより小さな衛星の全質量よりも大きい[注 9]。また、直径は海王星の5.5%で、巨大ガス惑星の衛星の中ではその主惑星に対する大きさは最も大きい。冥王星に似た半径、密度(2.059 g/cm3)、温度そして化学組成を持つ[31]

トリトンの表面は焼なましされた固体窒素の透明な層で覆われている。トリトンの表面の40%のみが観測されて研究が行われているが、その表面が窒素のでできた薄いシートのようなものに覆われている可能性がある。冥王星と同じように、トリトンの地殻の55%は窒素の氷とその他の氷が混ざったものになっている。水の氷は15~35%、凍結した二酸化炭素ドライアイス)が残りの10~20%を占めているが、0.1%のメタンや、0.05%の一酸化炭素を含む氷も少量存在している[7]リソスフェアアンモニア水和物の兆候が見られるため、表面にアンモニアの氷が存在する可能性も示されている[32]。トリトンの平均密度は、組成の約30~45%が氷で、残りは岩石であることを意味している[7]。表面積は2,300万km2で、地球全体の4.5%、陸地のみに限定するとその15.5%に相当する。トリトンは受ける太陽光の60~95%を反射する、かなり高いアルベドを持ち、その値は最初の観測からわずかに変化している。これに対して、月はわずか11%しか太陽光を反射しない[33]。トリトンの赤みがかったメタンの氷によるものと考えられており、メタンの氷は紫外線を受けるとソリンに変換される[7][34]

トリトンの表面の長期間に渡る変遷を示しているため、内部モデルでは、トリトンは地球のように固体のマントル、そして地殻に区別されていると仮定している。岩石と金属から成る核を取り囲んでいるトリトンのマントルは、太陽系で最も存在している揮発性物質であるで構成されている。トリトンの内部には今日までにマントルの対流による放射性崩壊で形成されただけの十分な岩石があり、また内部の熱はエウロパの内部に存在すると仮定されているのと同様の、全球規模の地下海洋を維持するのに十分であるかもしれない[7][35][36]。排出された黒色の物質には有機化合物が含まれている可能性があり[35]、またトリトンに液体の水が存在していれば、生命にとって居住性があると推定されている[35][37][38]

大気

トリトンの想像図。縁に薄い大気が描かれている。

トリトンはその表面に微量の一酸化炭素と少量のメタンを含む薄い窒素の大気を持つ[9][39][40]。冥王星の大気と同様に、トリトンの大気は表面からの窒素の蒸発に起因していると考えられている[24]。トリトンにある窒素の氷は温度が比較的高い場所に生成される六方晶系の状態で存在しており、その温度では六方晶系の氷と立方晶系の氷の間で相転移が起きるため、表面温度は少なくとも35.6 K(-237.6 )となる[41]。温度の上限は40 K弱で、これはトリトンの大気中の窒素ガスの平衡蒸気圧から求めることができる[42]。これは冥王星の平均平衡温度44 K(-229 ℃)よりも冷たい。トリトンの表面の大気圧は約1.4~1.9 Pa(0.014~0.019 mbar)しかない[7]

ボイジャー2号によって観測された、煙霧の上に存在しているトリトンの雲

トリトンの表面での乱流は対流圏weather region)を生み出しており、その高度は8 kmに達している。間欠泉の噴煙によってトリトンの表面に残された縞模様は、対流圏が1 μm以上の大きさの物質を動かすことが出来る季節的な風によって動いていることを示唆している[43]。他の天体の大気とは異なり、トリトンには成層圏が存在しておらず、代わりに高度8~950 kmに熱圏、その外側に外気圏が存在している。太陽の放射と海王星の磁気圏から吸収された熱により、トリトンの大気上層部の温度は95 ± 5 Kとなっている[9][44]。大気中のもやは対流圏の大部分に浸透しており、主にメタンと太陽光の作用によって生じた炭化水素ニトリルから成ると考えられている。トリトンの大気には、高度1~3 kmのところに凝縮した窒素のが存在している[7]

1997年に、地球からトリトンが恒星の前を通過した際にトリトンの煙霧が観測された。この観測結果から、大気の密度がボイジャー2号による探査で推定されたデータよりも大きいことが示唆された[45]。他の観測では、1989年から1998年の間に気温が5%上昇していることが観測されている[46]。これらの観測結果から、トリトンが暖かい夏の季節を迎い始めていることが示されている。この温暖化の理論には、表面の霜のパターンの変化と氷のアルベドの変化が含まれており、これにより、より多くの熱を吸収することができる[47]。別の理論では、温度変化は地質学的プロセスによる暗い赤色の物質が堆積した結果であると主張している。トリトンはボンドアルベドが太陽系内で最も高い天体の1つであるため、スペクトルアルベドの小さな変動に敏感であるとされている[48]

表面の特徴

トリトンの地形学的解釈図

トリトンの表面に関する詳細な情報は、全て1989年にボイジャー2号が40,000 kmの距離にまで接近した際に得られた[49]。トリトンの表面の40%がボイジャー2号によって撮影されており、むらのある露頭尾根盆地高原、凍った平野、いくつかの衝突クレーターといった地形が存在していることが明らかになった。表面は比較的平らであり、観測されている範囲内の地形では高さが1 kmを超えて変化することはない。衝突クレーターは比較的少ない。最近のクレーターの密度と分布の分析では、地質学的に見るとトリトンの表面は非常に若いことが示唆されており、地域によってその推定年齢は600万年から5000万年と様々である[50]。トリトンの表面の55%が凍った窒素で覆われており、水の氷が15~35%、ドライアイス(凍った二酸化炭素)が残りの10~20%を占めている[51]。表面には、生命の起源への先駆的な化学物質になるかもしれない有機化合物であるソリンの堆積物が見られる[52]

氷の火山

窒素の間欠泉の噴火によって残された塵の堆積物であると考えられている、トリトンの南極の極冠を横切る暗い縞模様

トリトンは地質学的には活動的で表面は若く、衝突クレーターの数が比較的少ない。トリトンの地殻は様々な氷で構成されているが、その地下で起きているプロセスは地球上で火山地溝帯を形成するものと似ている。しかし、トリトンではそのプロセスにおいて液体の岩石ではなく水とアンモニアが用いられる[7]。トリトンは表面全体に複雑な谷や尾根が存在しているが、これらはおそらくテクトニクス火山活動によるものであるとされている。トリトンの表面における特徴の大部分は、天体衝突などの外因的な要因ではなく、内部の地質学的なプロセスによって形成された内因的なものである[7]

探査機ボイジャー2号は1989年に、トリトンの表面で窒素を噴出する少数の間欠泉と、それに同伴する表面から8 kmの高さにまで達する砂煙の柱を観測した[31][53][11]。このことから、トリトンは、地球、イオおよびエンケラドゥスと共に、ある種の活発な噴火活動が観測されている太陽系内でも数少ない天体の1つであるとされている[54]。最も良く観測された煙の柱はヒリ(Hili)とマヒラニ(Mahilani)と命名されている(それぞれズールー神話英語版の水の精とトンガに伝わる水の精霊の名に因む)[55][56]

観測されている全ての間欠泉は、トリトンの太陽直下点に近い南緯50度から57度の領域内に存在している。これはトリトンが太陽から大きく離れているため、とても微弱ではあるが太陽からの熱が極めて重要であることを示している。トリトンの表面はおそらく暗い基質の上に半透明の凍った窒素の層から成り、一種の「固体の温室効果」を生み出すと考えられている。太陽からの放射は表面の薄い氷床を通過し、地上から噴出するのに十分なガス圧が蓄積するまで表面下の窒素を徐々に加熱して蒸発させている[7][43]。そして、周囲の表面温度37 Kよりも温度が4 K上回ると、観測された高さまで噴出する可能性があるとされている[53]。一般的にこうした地質活動は氷の火山と呼ばれているが、この窒素のプルーム活動は、天体の内部熱に動かされるトリトンの大規模な氷の火山の噴火や、議論が行われている他の天体の火山活動とは異なる。これと同様に火星の二酸化炭素の間欠泉は、季節が春になる度に噴出すると考えられている[57]

トリトンの間欠泉は噴火している間に、約1億 km3もの窒素の氷が昇華し、その期間は1年以上に達することもある。同伴された塵や埃は、肉眼で観望できる縞模様としては風下に150 kmの長さにまで堆積する可能性があり、より拡散した堆積物だとさらに遠くまで堆積する可能性がある[53]。ボイジャー2号によって撮影された南半球の画像では、こうした濃い色の縞模様が多数みられる[58]。1977年からボイジャー2号が接近した1989年までの間に、トリトンは冥王星に似た赤みがかった色からはるかに薄い色合いに変化しており、軽い窒素の霜がより古い赤みを帯びた物質を覆ったことが示唆された[7]。トリトンの赤道からの、揮発性物質の噴出とそれらの極への堆積は、極移動を引き起こすのに十分な質量を10,000年の間に再分布するかもしれない[59]

極冠、平野および尾根

カンタロープ地形の領域上にあるトリトンの南極の明るい極冠

トリトンの南極は、衝突クレーターと間欠泉の噴出口が散在しており、凍った窒素とメタンから成る反射率の高い極冠で覆われている[11]。北極については、ボイジャー2号が接近した時は夜であったため、ほとんど知られていないが、北極にもこうした極冠があるだろうと考えられている[41]

ジパンゴ高原(Cipango Planum)のようなトリトンの東半球に見られる高い平野は古い地形を覆い隠しているので、氷の溶岩がそれ以前の地形を一掃した結果である。平野にはリヴァイアサン(Leviathan Patera)といった窪みが点在している。トリトンの溶岩はアンモニアと水の混合物であることが疑われているが、その組成は知られていない[7]

トリトンには4つのほぼ円形な「壁のある平野(Walled plains)」が確認されている。これらはこれまで観測されている中で最も平坦な領域で、高度の変動は200 m未満になっている。この領域は凍った溶岩の噴火から形成されたと考えられている[7]。トリトンの東側の縁近くにある平野には、黒い斑点(黒斑)が点在している。いくつかの黒斑は広がった境界線を持つ単純なものであり、また、はっきりとした境界線を持ち、中央の暗い斑点の周りを白いハロー(halo)が囲んでいるものもある。典型的な黒斑の直径は約100 kmで、幅20~30 kmのハローを有する[7]

トリトンの表面には複雑な尾根や谷が存在しており、これらはおそらく凍結と融解のサイクルによる結果だとされている[60]。その多くはまた、本質的に地殻活動で出現したとされており、伸長または走向移動断層運動に起因している可能性がある[61]。中央部にはエウロパの線紋地形(規模はこちらの方が大きい[14])と強い類似性を持つ長い二重の尾根があり、同様の起源を持つかもしれない[7]。この地形はトリトンの軌道が完全に円形化する前に起きた潮汐の圧力によって引き起こされた断層に沿った運動で形成された可能性がある[14]。これらの平行な尾根を持つ断層は、赤道地域を横断する複雑な地形の谷の内部から放出したものとされている。尾根や谷、そしてヤス溝(Yasu Sulci)やホ溝(Ho Sulci)、ロ溝(Lo Sulci)のような溝はトリトンの地質学的歴史で見ると中期に形成されたものと考えらており、多くは同時期に形成されたとされている[62]。それらの地形は「グループ」や「パケット」としてまとめられる傾向がある[61]

カンタロープ地形

ボイジャー2号が130,000 kmの距離から観測した、エウロパに似た尾根が2つ横切っているカンタロープ地形。スリドル溝(Slidr Sulci、画像では垂直になっている方)とタノ溝(Tano Sulci)が「X」の字を形成している。

トリトンの西半球は、カンタロープメロンの皮の模様に似ていることから「カンタロープ地形」と呼ばれる、奇妙な一連の裂け目と窪みで構成されている[11]。クレーターは少ないが、これはトリトンで最も古い地形であると考えられており[63]、トリトンの西半球の大部分を覆っている[7]

カンタロープ地形はほとんどが汚れた水の氷から成り、トリトンにしか存在していない。直径30~40 kmの窪みがあり[63]、同じ大きさで滑らかな曲線になっているため、おそらくクレーターではないとされている。これらの地形の形成の主な仮説としてダイアピリズム英語版説があり、より密度の高い物質の層を通過する、より密度の低い物質の「しこり」が上昇したことで形成とする仮説である[7][64]。代替の仮説として、崩壊による形成された説や、氷の火山の活動で発生した洪水によって形成されたという説も含まれている[63]

衝突クレーター

ツオネラ平原(Tuonela Planitia、左)とルーア平原(Ruach Planitia、中央)は、氷の火山の活動で形成されたトリトンの「壁のある平野」 のうちの2つである。クレーターが少ないことは広範囲で比較的最近に地質学的活動があることを示す証拠である。

継続的な地質学的活動による地形の一掃と変化のため、トリトンの表面上においてクレーターは稀である。ボイジャー2号が撮影したトリトンの画像の調査から発見されたクレーターは179個であった。一方で、表面積がトリトンのわずか3%しかない天王星の衛星ミランダには835個ものクレーターが観測されている[65]。トリトンで観測された、衝突によって生じたと考えられている最大のクレーターはマゾムバ(Mazomba)と呼ばれるクレーターで、直径は27 kmである[65][66]。より大きなクレーターも観測されているが、一般的にこれらは火山性のクレーターであると考えられている[65]

トリトンの衝突クレーターのほとんどは、主に軌道の運動方向に対して先行している方の半球に存在しており、その大部分が経度30度から70度の赤道付近に集中している[65]。これは海王星の周りの軌道上から掃き寄せられた物質に起因するものであるとされている[50]。トリトンは片面を恒久的に海王星に向けているため、天文学者達は先行する半球にはより頻繁で激しい衝突が起きるので、後方の半球の衝突は少なくなるはずだと予想しているが[65]、ボイジャー2号はトリトンの表面の40%しか撮影していないため、この考えは不確実なままとなっている。

観測と探査

ボイジャー2号がフライバイした3日後に撮影した海王星(上)とトリトン(中央)

タイタンの軌道の特性は19世紀にはすでに高精度で求められており、海王星の軌道面に対して非常に傾いていて、逆行軌道を持つことが判明していた。トリトンの詳細な観測は1930年まで行われておらず、1989年にボイジャー2号が接近するまでは、トリトンについてほとんど知られていなかった[7]

ボイジャー2号がフライバイを行う前は、天文学者はトリトンに液体窒素の海と、地球の30%もの密度を持つ窒素とメタンから成る大気が存在するかもしれないと考えていた。しかし、火星の大気の過大評価と同様に、この考えは不適切であったことが判明した。火星と同様に、初期の頃はより濃い大気の存在が想定されていた[67]

トリトンの直径を測定する最初の試みは1954年にジェラルド・カイパーによってなされ、彼はトリトンの直径について3,800 kmという値を得た。その後に行われた測定によって、トリトンの直径の値の範囲は2,500~6,000 kmとされ、これは(3,474.2 km)よりやや小さい大きさから地球の約半分の大きさにまで匹敵する[68]。1989年8月25日にボイジャー2号が海王星に接近した際のデータから、トリトンの正確な直径の推定値(2,706 km)が得られた[69]

1990年代には、近くの恒星の掩蔽を用いて地球からトリトンの周縁を調べる様々な観測が行われ、そしてトリトンに大気とエキゾチックな表面が存在していることが判明した。1997年後半の観測では、トリトンの温度が上昇しており、ボイジャー2号が1989年に接近した際よりも大気の密度が著しく大きくなっていることが示唆された[45]

2008年10月16日、冥王星探査のために打ち上げられた探査機ニュー・ホライズンズが、約37億5,000万 km離れた位置から海王星とトリトンの画像を撮影した[70]

2010年代に行われる海王星系の探査ミッションの新たな概念は過去数十年に渡って、何度もNASAの科学者によって提案されてきた。彼らはトリトンを主な観測対象としており、それらの提案にはタイタンホイヘンス・プローブのような着陸機をトリトンに送る計画が含まれることも頻繁にあった。しかし、海王星とトリトンの探査計画は提案の段階を超えておらず、また、外太陽系の探査ミッションに対するNASAの資金の用途は現在、木星土星の探査に集中している[71]

トリトンへの着陸を行うミッションとして提案されているTriton Hopperと呼ばれる計画では、トリトンの表面から窒素の氷を採掘し、小さなロケット推進剤として使用するように処理して、トリトンの表面からの飛行あるいは表面を「跳ねて」渡っていくことが計画されている[72][73]

2017年10月5日に、トリトンによる恒星UCAC4 410-143659の掩蔽が発生した[74]

地図

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色を強調した地図、画像右側が先行する半球

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色を強調した極座標地図、右が南側

脚注

注釈

  1. ^ トリトンの片半球の集成画像。明るくややピンクがかった南極の極冠は窒素とメタンの氷から構成されており、窒素ガスの間欠泉によって形成された塵の堆積物によって縞模様になっている。その上に見える暗い地域のほとんどには、トリトンの「カンタロープ地形」や氷の火山、テクトニクス構造が含まれている。画像右下の近くには、いくつかの暗い黒斑(Strange Spots)が見られる。
  2. ^ は半径)より計算。
  3. ^ 体積 は半径) より計算。
  4. ^ 質量 は密度、は体積) より計算。
  5. ^ は質量、は半径、万有引力定数)より計算。
  6. ^ は質量、は半径、は万有引力定数)より計算。
  7. ^ 特に大きな不規則衛星には、土星のフェーベ(210 km)、天王星のシコラクス(150 km)、および木星のヒマリア(85 km)がある。
  8. ^ トリトンの質量は2.14×1022kg。知られているその他の12個の海王星の衛星の合計質量は7.53×1019kgで、トリトンの0.35%に相当する。環の質量はごくわずかである。
  9. ^ その他の球状になっている衛星の質量(単位はkg)は、チタニア - 3.5×1021オベロン - 3.0×1021レア - 2.3×1021イアペトゥス - 1.8×1021カロン - 1.5×1021アリエル - 1.3×1021ウンブリエル - 1.2×1021ディオネ - 1.0×1021テティス - 0.6×1021エンケラドゥス - 0.12×1021ミランダ - 0.06×1021プロテウス - 0.05×1021ミマス - 0.04×1021となっている。その他の衛星の全質量は約0.09×1021。したがって、トリトンより小さな衛星の全質量は約1.65×1022となる。

出典

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関連文献

関連項目

外部リンク