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サオ (衛星)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サオ
Sao
VLTに搭載されている観測装置FORS1によって2002年9月3日に撮影された動画。水色の印の間にある淡い光がサオ。
VLTに搭載されている観測装置FORS1によって2002年9月3日に撮影された動画。水色の印の間にある淡い光がサオ。
仮符号・別名 S/2002 N 2
Neptune XI
分類 海王星の衛星
不規則衛星
軌道の種類 サオ群[1]
発見
発見日 2002年8月14日[2][3]
発見者 M・J・ホルマン
J・J・カヴェラーズ
Tommy Grav、
Wesley C. Fraser、
Dan Milisavljevic[2]
軌道要素と性質
元期:TDB 2,451,544.5(2000年1月1.0日[4]
固有軌道長半径 (ap) 22,239,300 km[4]
近海点距離 (q) 18,947,900 km
遠海点距離 (Q) 25,530,700 km
固有離心率 (ep) 0.148[4]
固有公転周期 (Pp) 2918.70 [4](7.99
固有軌道傾斜角 (ip) 53.3°[4]
固有近点引数 (ωp) 65.2°[4]
固有昇交点黄経 (Ωp) 60.2°[4]
固有平均近点角 (Mp) 194.5°[4]
海王星の衛星
物理的性質
平均直径 44 km(アルベドを0.04と仮定)[5]
絶対等級 (H) 11.1[6]
アルベド(反射能) 0.04(仮定値)[5]
Template (ノート 解説) ■Project

サオ[7][8] (Neptune XI Sao) は、海王星の第11衛星である。

発見と命名

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サオは、2002年8月14日にマシュー・J・ホルマンが率いる観測グループによって、セロ・トロロ汎米天文台の 4 m 望遠鏡およびマウナ・ケア山カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡を用いた観測で発見された[9][10][11]。発見は、ハリメデラオメデイアの発見と合わせて、翌2003年1月13日に国際天文学連合のサーキュラーおよび小惑星センターのサーキュラーで公表され、S/ 2002 N 2 という仮符号が与えられた[9][10][11]

海王星に新たに衛星が発見されるのは1989年に探査機ボイジャー2号が海王星をフライバイした時以来であり、また地上観測による海王星の新衛星の発見は、1949年ジェラルド・カイパーネレイドを発見して以来のことであった[11][注 1]。非常に暗く遠方を公転している衛星であるため、ボイジャー2号のフライバイの際には観測できなかったと考えられている[2]

その後2007年2月3日に、ギリシア神話における海の女神であるネレイデスの一人サオーに因んで命名され、Neptune XI という確定番号が与えられた[15][16]。サオは航海に関係しており、「救出者」や「安全」を意味している。

特徴

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海王星の不規則衛星の軌道要素を表した図。半径方向の軸は軌道長半径、角度方向は軌道傾斜角を表しており、横軸の上にあるものは順行軌道、下にあるものは逆行軌道で公転していることを示している。青い数値は、海王星のヒル球の半径に対する軌道半径の割合を表している。黄線は近点から遠点までを示しており、この長さが軌道離心率の大きさに対応している。また、点の大きさは各衛星のサイズを表している。図の中心にあるネレイドの右上に位置しているのがサオである。

サオは海王星の周囲を順行軌道で公転している不規則衛星であり[1]、同時に発見されたラオメデイア、および2024年に発見された S/2002 N 5 と似た軌道要素を持っていることが知られている[17]木星土星の不規則衛星は、似た軌道長半径や軌道傾斜角を持ったいくつかのグループに分けられる。同じグループに属する衛星は似た表面の特徴を持っているため、より大きい母天体の破片であることが示唆されている。サオとラオメデイアも軌道要素が似ているため、海王星の不規則衛星にもこのようなグループが存在している可能性が示されていたが[18]、この3つの衛星も軌道要素が似ているため、太陽系内の多くの衛星を発見しているスコット・S・シェパードはこの3つの衛星を「サオ群 (Sao group)」というグループにまとめている[1]

サオの直径は、アルベドを0.04と仮定すると 44 km と推定される[5]。他の巨大惑星の不規則衛星と同様に、大きな衛星小惑星彗星の衝突の後に形成されたと考えられている[2]。ただし、太陽系年齢の間のハリメデとネレイドの衝突確率が 41% と高いのに対し、サオとネレイドの衝突確率は 1.6% と小さく、また他の不規則衛星との衝突確率は無視できるほど小さいと推定されている[18]

この衛星は古在共鳴を起こしている。そのため軌道離心率と軌道傾斜角が対になっており、軌道傾斜角が減少すると軌道離心率が増加し、逆に軌道傾斜角が増加すると軌道離心率が減少する[18]

脚注

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注釈

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  1. ^ 海王星の衛星ラリッサ1981年に地上からの掩蔽観測で1回だけ検出されているが[12][13]、衛星であることが確定したのはボイジャー2号によって再発見された後である[14]

出典

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  1. ^ a b c Sheppard, Scott S.. “Moons of Neptune”. Earth and Planets Laboratory. Carnegie Institution for Science. 2024年3月1日閲覧。
  2. ^ a b c d In Depth | Sao – Solar System Exploration: NASA Science”. NASA (2017年12月5日). 2019年1月24日閲覧。
  3. ^ Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. International Astroomical Union. 2015年1月11日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. Jet Propulsion Laboratory. 2018年12月25日閲覧。
  5. ^ a b c Sheppard, Scott S.; Jewitt, David C.; Kleyna, Jan (2006). “A Survey for "Normal" Irregular Satellites around Neptune: Limits to Completeness”. The Astronomical Journal 132: 171–176. arXiv:astro-ph/0604552. Bibcode2006AJ....132..171S. doi:10.1086/504799. 
  6. ^ Natural Satellites Ephemeris Service”. Minor Planet Center. 2024年2月29日閲覧。(「Selection of Objects」にて「All Neptunian outer irregular satellites」と「I require Orbital Elements」にチェックを入れて「Get Information」と表示されると海王星の全ての不規則衛星の軌道要素が表示されるが、ここに表記されているのは他の天体からの摂動の影響を除外していない特定の日時を元期とした軌道要素であることに留意)
  7. ^ 衛星日本語表記索引”. 日本惑星協会. 2019年3月9日閲覧。
  8. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  9. ^ a b Daniel W. E. Green (2003年1月13日). “IAUC 8047: Sats OF NEPTUNE; N IN NGC 185; 2003H”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2019年1月23日閲覧。
  10. ^ a b Brian G. Marsden (2003年1月13日). “MPEC 2003-A75 : S/2002 N 1, 2002 N 2, 2002 N3”. Minor Planet Center. 2019年1月24日閲覧。
  11. ^ a b c 木星と海王星に新衛星発見”. 国立天文台・天文ニュース. 国立天文台 (2003年1月16日). 2019年1月24日閲覧。
  12. ^ Brian G. Marsden (1981年5月29日). “IAUC 3608: 1981 N 1; Sats OF SATURN; 1980l”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. International Astronomical Union. 2019年1月22日閲覧。
  13. ^ Reitsema, H. J.; Hubbard, W. B.; Lebofsky, L. A.; Tholen, D. J. (1982). “Occultation by a Possible Third Satellite of Neptune”. Science 215 (4530): 289–291. Bibcode1982Sci...215..289R. doi:10.1126/science.215.4530.289. PMID 17784355. 
  14. ^ Brian G. Marsden (1989年8月2日). “IAUC 4867: NEPTUNE; JUPITER”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. International Astronomical Union. 2019年1月22日閲覧。
  15. ^ Daniel W. E. Green (2007年2月3日). “IAUC 8802: P/2006 XG_16; Sats OF NEPTUNE; C/2006 P1”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. International Astronomical Union. 2019年1月24日閲覧。
  16. ^ No.271: 海王星の衛星に新しい名前 | 国立天文台(NAOJ)”. 国立天文台 アストロ・トピックス. 国立天文台 (2007年2月9日). 2019年1月24日閲覧。
  17. ^ New Uranus and Neptune Moons”. Earth and Planetary Laboratory. Carnegie Institution for Science (2024年2月23日). 2024年3月1日閲覧。
  18. ^ a b c Holman, Matthew J.; Kavelaars, J. J.; Grav, Tommy; Gladman, Brett J.; Fraser, Wesley C.; Milisavljevic, Dan; Nicholson, Philip D.; Burns, Joseph A. et al. (2004). “Discovery of five irregular moons of Neptune”. Nature 430 (7002): 865–867. doi:10.1038/nature02832. ISSN 0028-0836. 

関連項目

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