悪魔のいけにえ
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悪魔のいけにえ | |
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The Texas Chain Saw Massacre | |
監督 | トビー・フーパー |
脚本 | キム・ヘンケル トビー・フーパー |
製作 | トビー・フーパー ルー・ペレイノ |
製作総指揮 | ジェイ・パースレイ |
音楽 | ウェイン・ベル トビー・フーパー |
撮影 | ダニエル・パール |
編集 | ラリー・キャロル サリー・リチャードソン |
配給 | ![]() ![]() |
公開 | ![]() ![]() |
上映時間 | 83分 |
製作国 | ![]() |
言語 | 英語 |
製作費 | $83,000 |
興行収入 | $30,859,000[1] ![]() ![]() |
次作 | 悪魔のいけにえ2 |
『悪魔のいけにえ』(あくまのいけにえ、The Texas Chain Saw Massacre)は、1974年のアメリカ映画。アメリカでの公開は1974年10月4日、日本での公開は1975年2月。R指定作品。日本においても2015年のリバイバル上映よりR-15指定作品となっている。
目次
概要[編集]
米国テキサス州に帰郷した5人の男女が、近隣に住む人皮によって創られた仮面を被った大男「レザーフェイス」に襲われ殺害されていく様子が描かれたホラー作品。真に迫った殺人の描写やそのプロットは後に数多くのフォロワーを生み、マスターフィルムがその描写の芸術性のためにニューヨーク近代美術館に永久保存されることとなった。
初公開当時の配給会社(日本ヘラルド映画株式会社、現角川ヘラルド・ピクチャーズ)の判断により原題とは無関係な邦題が付けられている。原題を直訳した場合『テキサスチェーンソー大虐殺』という意味になる。チェーンソーは劇中で殺人鬼・レザーフェイスが殺人にあたっての武器として使っている。なお、パロディ映画などでホラー映画『13日の金曜日』の殺人鬼であるジェイソンがチェーンソーを武器として用いる描写がなされることがあるが、実際にチェーンソーが武器として用られるのは本作であり『13日の金曜日』シリーズでチェーンソーが使われたことはない。
あらすじ[編集]
墓荒らしが頻発しているテキサス州に、5人の男女が帰郷がてら墓の無事を確かめるために訪れた。一行はその道中で一人のヒッチハイカーを拾うが、ナイフで自傷行為に及び、切りかかるなどの異常な行動を起こす。その後、一行はガソリンを分けてもらうために近隣の家を訪れるが、そこには先ほどのヒッチハイカーやその弟である殺人鬼・レザーフェイスが住んでおり、一人また一人とレザーフェイスにより殺されていく。墓荒らしの犯人はレザーフェイス一家(ソーヤー家)であった。
登場人物[編集]
- サリー・ハーデスティ
- この物語の主人公でフランクリンの妹でジェリーの彼女。墓荒らしが頻発しているテキサス州に墓の無事を確かめるために訪れていた。道中でヒッチハイカーを拾うが、ナイフで自傷行為、フランクリンに切りかかるなどの異常な行動、仲間達がレザーフェイスに殺され一人ドレイトンの営むガソリンスタンドへ逃げ込むものの、ソーヤー邸に連れていかれる。ソーヤー一家の異常な光景を目撃し、ハンマーで殴られるなど悲惨な目に合うが、辛うじて家の窓から飛び出し脱出した。レザーフェイスとヒッチハイカーに追われながらもたまたま通りかかったトラックの運転手に救われ、更に通りかかった車に乗りながら血塗れの姿でレザーフェイスを嘲笑いした。生き残った彼女はテキサス州で起こったソーヤー一家の事件を警察に報告するが、仲間達の遺体、ソーヤー一家の失踪で事件は1か月に及ぶ捜査にも関わらず、何の成果も得られなかった。
- フランクリン・ハーデスティ
- サリーの兄。事故(あるいは病気)の影響で車椅子を乗っている。情緒不安定な性格で、ヒッチハイカーがつけた血の跡を辿ろうとしたり、サリー達が廃墟へ入った際、一人だけ置いてけぼりにされて機嫌を損ねたり、仲間達を探す際に懐中電灯を手放さず、サリーと言い争いをした。サリーと共に仲間達を捜索している最中、レザーフェイスに見つかり殺害される。『悪魔のいけにえ2』ではミイラ化した姿で登場した。
- ジェリー
- サリーの彼氏で、眼鏡をかけている。ドライブでは運転手を務めていた。カークとパムが帰って来ない事に気づきソーヤー邸へ入った所、レザーフェイスに殺害される。
- カーク
- パムの彼氏。車椅子を乗っているフランクリンの世話をしている。車のガソリンが無くなり、ソーヤー邸まで行きガソリンを分けてもらおうとするが、レザーフェイスにハンマーで撲殺され、最初の犠牲者となる。その後遺体は、パムの目の前で八つ裂きにされた。
- パム
- カークの彼女。占い好きで占星術ができる。彼女の占星術は後に起きる災厄を予感していた。カークが、ソーヤー邸の中に入った際にレザーフェイスが作った不気味な家具などを目撃してしまう。カークを探そうとした所でレザーフェイスに見つかり、フックでかけられた後に冷蔵庫の中に閉じ込められ死亡した。
- レザーフェイス
- 本名はババ・ソーヤー。ソーヤー一家の四男。先天性の皮膚病と梅毒を患っている。人間の顔を剥いで作った人皮を被った大男。惨殺した人間やその他の生き物を解剖して家具にし、売りさばいている。チェーンソーやハンマーで家に訪れた人間をその場で殺害する。しかし、発達障害を患っているため精神年齢は8歳児程度しかなく、家のドアをチェーンソーで破壊して父コックに怒られた時は踞っていた。サリーの友人を次々と殺害し、終盤逃げ出したサリーをチェーンソーで追いかけるが、たまたま通りがかったトラックの運転手に反撃され、脚をチェーンソーで切り刻んでしまう。最後は朝焼けに照らされながらチェーンソーを振り回していた。
- ヒッチハイカー
- 本名はナビンズ・ソーヤー。ソーヤー一家の三男で『悪魔のいけにえ2』に登場するチョップトップの双子の弟。ヒッチハイクで通り掛かりのサリー達の車に乗せてもらうが、フランクリンが愛用しているナイフで自身の手を切り刻んだり、フランクリンに向けて撮った写真を車内で燃やす等の異常な行為をしたため、耐えられなくなった一行は彼を車から無理矢理降ろした。一行の車が発進する際、車体に自分の血でメッセージを残していった。物語終盤、サリーを追いかけた際に偶然通りがかったトラックに跳ねられ死亡した。『2』ではミイラ化した姿で登場し、ババやチョップトップにパペットの様な扱いをされる。
- コック
- 本名はドレイトン・ソーヤー。ソーヤー一家の長男。普段は小さなガソリンスタンドを経営している。レザーフェイスがチェーンソーで家の扉を切ってしまい説教をした。サリーがレザーフェイスに追われた際ガソリンスタンドへ駆けつけたもののコックにほうきで叩かれ気絶され、ソーヤー邸まで連れていかれる。
- グランパ(じい様)
- ソーヤー一家の祖父。一見死んでいるように見えるが、実は生きており口も聞ける。しかし自力では全く動けず、移動の際はソーヤー兄弟に椅子ごと運ばれている。
- グランマ
- ソーヤー一家の祖母。すでに亡くなっており、ミイラ化している。
- カウボーイ
- 冒頭に登場したカウボーイ。サリーに保安官を紹介した。
- トラックの運転手
- 終盤に登場した黒人男性。たまたま通りかかった所でヒッチハイカーを引き殺し、レザーフェイスに追われていたサリーを助け、レザーフェイスにレンチを投げつけた。トラックから降りて逃げ出し、辛うじて生き延びたと思われる。
キャスト[編集]
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | ||
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東京12チャンネル版 | BD新録版 | |||
サリー・ハーデスティ | マリリン・バーンズ | 泉晶子 | 坂井恭子 | |
ジェリー | アレン・ダンジガー | 石丸博也 | 中林俊史 | |
フランクリン | ポール・A・パーテイン | 秋元羊介 | 駒谷昌男 | |
カーク | ウィリアム・ヴェイル | 田中秀幸 | 小松史法 | |
パム | テリー・マクミン | 高橋ひろ子 | 森夏姫 | |
ヒッチハイカー[2] | エドウィン・ニール | 青野武 | 青山穣 | |
老人(コック)[3] | ジム・シードウ | 坂口芳貞 | 池田ヒトシ | |
レザーフェイス | ガンナー・ハンセン | 福士秀樹 | 中林俊史 | |
グランパ(じい様) | ジョン・デュガン | 小野丈夫 | 越後屋コースケ | |
カウボーイ[4] | ジェリー・グリーン | 郷里大輔 | ||
アナウンサー | 蟹江栄司 | |||
ナレーター | ジョン・ラロケット | 青山穣 |
- 東京12チャンネル版吹き替え - 初回放送1979年7月24日『火曜映画劇場』
- 2007年7月13日発売の「悪魔のいけにえ スペシャルエディション・コンプリートBOX」(DVD)のディスク3に収録。
- BD新録版吹き替え
- 2015年11月4日発売の「悪魔のいけにえ 公開40周年記念版」(Blu-ray Disc)に収録。
スタッフ[編集]
- 監督・製作・脚本 - トビー・フーパー
- 脚本 - キム・ヘンケル
- 撮影 - ダニエル・パール(『テキサス・チェーンソー』でも撮影を担当)
- 音楽 - ウェイン・ベル、トビー・フーパー
作品解説[編集]
監督・脚本・制作のトビー・フーパーはこの作品により全米及び英国への進出を果たす。
製作費は約4000万円。公開後から2006年9月現在まで、世界中で総額60億円以上の配給収入を上げている。なお配給元のブライアンストン社はこのフィルムと上映権利を約1億円で購入した[5]。
エド・ゲイン事件[編集]
この作品は、1957年にウィスコンシン州プレインフィールドで実際に発生したエド・ゲインによる猟奇殺人事件をモデル[6]にしたということが通説になっているが、フーパー本人はこの事件については記憶が曖昧だとしており、ある評論家がエド・ゲイン事件に似通っている部分があると評したのがこのような説の流れた端緒である。映画冒頭部分のテロップ「これは真実の物語」は少しでも観客の恐怖を煽ろうと後づけで追加した演出であり、上記事件との関連はなかったが、別段否定もせず傍観していたところ、通説のほうが流布してしまい以降その通説が定着することになったという[7]。
撮影[編集]

作品独特の粗い画像が物語全体の雰囲気を醸し出しているが、これは演出効果や技術的なものではなく、製作予算が低かったため[9]に通常の映画撮影に使われる35mmフィルムではなく、購入も現像も安価で済むサイズが一回り小さい16mmフィルムで撮影したものをスクリーンに合わせて映像のサイズを拡大したためであった。
結果的にこれがフーパーの手法と相まってプラスに働き印象に残る映像となる。ただ本人にとっては本意ではなかったようで、撮影に映画用のフィルムが使えなかったことに加え、マスターフィルムの形式から(コメント当時は)高画質版のリリースが物理的に不可能な点を残念がっていた。
公開[編集]
公開当初はその残酷性の高さゆえに「決して観てはいけない」と学校などで告知される事態が発生し、全米各州で上映禁止処分が下った。さらに、ドイツなど一部の国では殺人・喰人シーンなど残酷な場面をカットしたバージョンしか鑑賞が許されなかった時期があった。
DVD・Blu-rayソフト[編集]
日本では1998年中期から2007年初頭までの間権利関係の問題からDVDが発売できず、それ以前に発売されたDVD(1997年、ビーム・エンターテイメント・現ハピネット・ピクチャーズより発売)にはプレミア価値が付いていた。
2004年9月にワーナーブラザーズがDVDを再発売させようとしたが権利の取得に失敗し断念。しかしデックスエンタテインメントから2007年6月8日に再発売が決定。通常盤のDVDは予定通り発売されたが、テレビ放送時の音源を用いた短縮日本語吹替版の収録に関し制作のキム・ヘンケルから異議が唱えられるトラブルがあったために、当該吹替版を収録する予定であった豪華盤「コレクターズBOX」の発売は7月13日に遅れることとなった。なお当該「コレクターズBOX」においては短縮版ではなく音声の一部に吹替音源を充てた劇場公開版が収録された。
なお、DVDの再発を記念し、渋谷の映画館シアターN.渋谷[10]にて2007年3月17日から4週間、本作がレイトショーにて再公開された[11]。
2008年8月22日にはコレクターズBOXに以前カプコンからセットで販売されたドキュメンタリー『ファミリー・ポートレイト』と『ショッキング・トゥルース』が収録された「プレミアム・コレクションDVD-BOX」が発売。ポストカードや復刻版のパンフレットが封入された。
2009年には日本版Blu-rayが発売された。
公開から40周年にあたる2014年、4Kリマスターが施された『40周年記念版』が制作され、翌2015年には日本でもBlu-rayソフトが発売されるとともにリバイバル上映が行われた。アメリカ公開からちょうど41年にあたる2015年10月4日には新宿ピカデリーにて「轟音上映会」と名付けられた記念イベントが開催され、上映前には高橋ヨシキ・中原昌也による約30分間のトークショーが開かれた。
受賞など[編集]
続編[編集]
続編として『悪魔のいけにえ2』(The Texas Chainsaw Massacre 2, 1986年)、『悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲』(Leatherface: Texas Chainsaw Massacre III, 1990年)、『悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』(The Return of the Texas Chainsaw Massacre, 1994年)が製作された。さらに2004年に製作30周年を記念して『The Texas Chainsaw Massacre 5』と名付けられた5作目の製作がトビー・フーパー監督、製作総指揮の下でスタートされたが、脚本が完成した時点で資金面の理由により断念された。
2013年 には『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』("Texas Chainsaw 3D")のタイトルで新作が公開された。
2015年現在、ジュリアン・モーリー及びアレクサンドル・バスティロ監督による前日譚"LEATHERFACE"が製作中である。
2018年『レザーフェイス -悪魔のいけにえ』が5月12日より日本公開決定。奇しくも本作がトビー・フーパー最後のプロデュース作品となった。
リメイク[編集]
マイケル・ベイの製作会社であるプラチナム・デューンズがリメイク権を獲得し、マーカス・ニスペル監督で『テキサス・チェーンソー』(The Texas Chainsaw Massacre)が2003年に公開された。さらに2006年にはジョナサン・リーベスマン監督による前日譚『テキサス・チェーンソー ビギニング』(The Texas Chainsaw Massacre: The Beginning)が公開された。
脚注[編集]
- ^ “The Texas Chainsaw Massacre (1975)” (英語). Box Office Mojo. 2010年7月1日閲覧。
- ^ 東京12チャンネル版の吹き替えでは「スリム」という名前に変更された。
- ^ 東京12チャンネル版の吹き替えでは「メイソン」という名前に変更された。
- ^ 東京12チャンネル版の吹き替えでは「レッド」という名前に変更された。
- ^ この記述内の金額は全て、物価変動などを考慮した上で現在の日本円に換算したものである。
- ^ アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』も同事件をモデルとしている。
- ^ 映画『テキサス・チェーンソー ビギニング』に寄せたインタービューより。
- ^ Pack, MM (2003年10月23日). “The Killing Fields: A culinary history of 'The Texas Chainsaw Massacre' farmhouse”. The Austin Chronicle. オリジナルの2011年4月4日時点によるアーカイブ。 2011年2月2日閲覧。
- ^ 当時の円換算にして約¥2500万
- ^ http://www.theater-n.com/
- ^ http://blog.livedoor.jp/livefreaky/archives/50777144.html
外部リンク[編集]
- 悪魔のいけにえ - allcinema
- 悪魔のいけにえ - KINENOTE
- The Texas Chain Saw Massacre - AllMovie
- The Texas Chain Saw Massacre - インターネット・ムービー・データベース(英語)
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