ヨーネ病

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ヨーネ病牛
ヨーネ病発症牛。痩せて肋骨の形が見えます。被毛の状態もとても悪いです。

ヨーネ病(Johne's disease−paratuberculosis)は、マイコバクテリウム属ヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)の感染によって起こる慢性肉芽腫性腸炎で動物の感染症であるが、人への感染も報告されている。欧米では臨床発症している感染をJohne's disease とよび、不顕性感染なども含めてヨーネ菌感染をparatuberculosisと記載する場合もあるが、現在ではparatuberculosisの表記が普通である。かつてはパラ結核とも記載されたことがあるが[1]使用すべきでない。培養ヨーネ菌を殺滅する抗生剤はあるが、感染動物に対する治療は行っても、体内の細胞に潜むヨーネ菌をすべて殺すことはできず、抗生剤投与を中止すると再び、菌の増殖が起こってしまうため、診断を行い陽性と判断された場合には、家畜伝染病予防法で定められたように、屠殺される。

「ヨーネ病」の名前は、この細菌を発見したドイツ人の病理学者で獣医の Heinrich A. Johne に由来する。

ヒトヨーネ病学会のホームページ
米国のヒトヨーネ病学会のホームページ。多くの患者さんと医師、研究者らが活動しています。

しかし、ヨーネ菌による人への健康被害として人間の自己免疫病であるクローン病や、多発性硬化症など自己免疫疾患の原因になっていることを疑う研究報告は非常に増加してきており、国際的に研究が積み重ねられてきた。アメリカにはクローン病や多発性硬化症などとヨーネ菌の関連を疑う研究者や患者らが人ヨーネ病財団(Huan paratuberculosis fundation)を作り、学会や研究活動を行っている。

解説[編集]

ヨーネ病は、ヨーネ菌を病原体とする腸の病気で、BSE(狂牛病)と同じく「リストB」に分類されている家畜伝染病の一つである。感染後長期の潜伏期間を経て、慢性的な下痢症状を起こすほか、乳牛では乳量が低下し、痩せ細って最終的には衰弱死する。発症時にはヨーネ菌が腸粘膜のマクロファージ(異物や菌を食べて処理する免疫細胞)の中で猛烈に増殖するため、肉芽腫という病変がつくられて腸の粘膜が分厚くなり、栄養が吸収できなくなることが要因だ。ただ、こうして発症するのは感染牛の10%で、無症状のまま経過して菌だけ排出するものも多い。

1971年に家畜法定伝染病に指定された。感受性動物は山羊などの反芻類[2]。キツネ、アナグマ、野ウサギ等の野生動物のヨーネ菌感染が疫学的問題として取り上げられている[3]。感染から発症までに数年間を要し数年間は明確な症状を呈さない不顕感染状態で推移する。発症すると、頑固で慢性的な下痢、削痩、泌乳量の低下を呈し、発症数ヶ月から1年以内に衰弱して死亡する。家畜伝染病予防法における法定伝染病。搾乳牛および種畜を対象に5年ごとのELISAによる検査が義務付けられている。

感染様式[編集]

感染様式は経口感染。感染母牛から子牛への感染が伝播経路として重要で、発症前から病原体が排出される。感染動物からの糞便やまれに乳も感染源となる[4]。また、母牛から胎子子牛への胎盤経由の感染があるとの報告もある[5]

診断方法[編集]

細菌学的診断方法[編集]

  • 直接鏡検法:抗酸菌染色(チールネルゼン染色)でフクシン色素の赤色に染まる短い桿菌として観察される。
  • 培養方法 (6〜15週間、3ヶ月間は必要)
    • 培養に用いる固形培地としてはマイコバクチン添加Middlebrook7H10寒天培地かMiddlebrook7H10卵黄寒天培地が適する。
    • マイコバクチンは鉄獲得能が微弱なヨーネ菌を人工培地上で増殖させるために必須の鉄キレート。(キレート
    • 同じ培地でマイコバクチンを添加した場合だけ増殖してくるコロニーはヨーネ菌である可能性が高い。

遺伝子検出法(分子生物学的診断法)[編集]

  • PCR診断法 ヨーネ菌が有する特異的な遺伝子配列の存在を増幅して検出する方法。
  • 特異性や感度が最も高い検出法であるが、陽性結果で生菌と死菌の区別をすることはできないが、糞便や組織などでわずかでも検出された場合にはヨーネ菌感染を疑う必要がある。
  • 二本鎖DNAが増殖すると蛍光を発するサイバーグリーンという色素を反応系に加えてDNAの量を定量的に測定する定量PCR法が主流。
  • リアルタイムPCR法は定量PCRの一種であるが、ほぼ同じ意味で使われることもある。定量PCRでは電気泳動法により観察できる目的のDNAのバンドを直接測定することもできる。

免疫学的診断方法[編集]

ELISA法
血清中のヨーネ菌に対する抗体を検出するヨーネ病の診断法。企業が生産販売しているキットを購入して実施する。
市販の牛ヨーネ病診断用エライザキットを使用する。使用方法は製品添付の説明書に従う。
市販のELISAキットはヨーネ菌以外の抗酸菌に対する抗体も非特異的に検出する場合があることが知られているので要注意である。
ヨーニン検査
皮内反応によりヨーネ菌感染個体の細胞性免疫反応を検出するヨーネ病の診断法。人や牛の結核病診断に用いるツベルクリン反応と同じ原理である。
ヨーニン皮内反応用抗原を使用して検査する。使用方法は製品添付の説明書に従う。

インターフェロンγ遊離試験

  ひとの結核感染の診断としてはすでに実用化されている。感染により生じる細胞性免疫反応を特異的に検出する技術で、血液や白血球にヨーネ菌抗原を加えて培養すると、細胞性免疫記憶のあるリンパ球やマクロファージがインターフェロンγを培地中に出し、その濃度をELISA方などで測定する。

早期診断法として研究が進められているが、現在までに多くの論文が報告されており、国内特許も公開されているが、現在のところヨーネ菌感染用のキットなど完成されたものは販売されていない。

  抗牛インターロイキン10抗体を用いた牛ヨーネ病のインターフェロンガンマELISA診断法の高感度化技術が動物衛生研究所で開発されている。

 (国内特許情報)(US特許情報)(フランス語特許情報) 

ヨーニンPPDを用いたインターフェロンガンマ診断法 

  Veterinary Immunology and Immunopathology 148(1-2):48-54 · May 2011 with 86 Reads DOI: 10.1016/j.vetimm.2011.05.010

ヨーネ病回腸初見
ヨーネ病発症牛の回腸の肉眼初見。粘膜が著しく厚くなっている。この皺壁はわらじ状とか、大脳回転様などと言われる。

病理学的検査方法[編集]

肉眼的な観察[編集]

病理解剖に際しては空腸回腸・回盲部粘膜の肥厚、顕著な雛壁の形成の有無を確認する。

腸粘膜の肥厚や皺壁形成が目立たないステージの感染病変もしばしば観察されるので、丁寧に観察する。

腸間膜リンパ節の髄様腫脹があることもあるので注意が必要。


病理組織学的検査

粘膜固有層、粘膜下識及び腸リンパ節における類上皮細胞の「び慢性増殖」とラングハンス巨細胞の出現が特徴所見である。

このような修飾されたマクロファージ(類上皮細胞)の集塊状増殖を肉芽腫と呼ぶ。抗酸菌感染を疑う病変であるが、他の菌や異物の刺激によっても形成される場合があるので、抗酸菌染色の併用をすることが望ましい。

山羊やめん羊のヨーネ菌感染では結核に見られるような乾酪性の肉芽腫が見られることがあるが、牛の場合にはほとんど見られない。

  • 肉眼観察後に以下の各部位を病理組織検査用として採材する。
  1. 回腸末端部 回盲部より10cm位上、2. 回盲部から30cm上、3. 回盲部から50cm上、4. 回盲部から1m上、5. 回盲リンパ節、6. 回腸部腸間膜リンパ節、7. 空腸部腸間膜リンパ節、8. 雌の場合には乳房上リンパ節

腸管の採取、固定方法[編集]

腸管は消化酵素に富む組織であるため死後変化をおこしやすいので、以下のとおりに採材する。

病理検査用の腸管は約10cmの長さで、管状に切り取り、管状のまま開かないで、切り取ったあと、一端をピンセットでつまんだまま腸を静かにホルマリン容器に入れ、ピンセットで固定している開口部から50mlのディスポ注射筒で10-20%中性緩衝ホルマリンを注ぎ込み、掴んだピンセットで腸組織を固定液に静かに沈め少し揺する。さらに2回ホルマリンを流し込み、静かに固定ビンに沈める。

パラフィンブロック作製、染色、鏡検
病理組織を見るための組織の切り出しでは、腸管固定標本からは2-3カ所切り出すことが望ましい。そして通常の方法でパラフィン包埋を作り、ミクロトームにて薄切後、ヘマトキシリン・エオジン染色、必要に応じてチール・ネルゼン染色を行い鏡検する。腸の粘膜組織や腸間膜リンパ節において最も高頻度に肉芽腫病変が認められる。

国内における発生状況[編集]

1930年昭和5年)、イギリスから輸入された牛により国内へ侵入した。牛のヨーネ病は、年間約500~1000頭が発見されるなど、法定伝染病の中で最も発生が多く、経済的被害も大きい。1970年代からわずかに発生していたが、80年代、90年代と増加している。

年度別摘発数
我が国における年次ヨーネ病摘発頭数の推移

 これは97年にELISA法という抗体の検査方法を導入し、感染牛を発見できるようになったことがおもな要因だ。年間40万~50万頭を検査して陽性が出るのが600~1000頭だった。頭数でいえば2%程度だが、汚染農場の割合では0.2%と非常に低かった。98年からは5年に1度、全頭検査をするようになり、感染牛が見つかった農場では、3カ月間隔などのくり返し検査をして、陽性が出なくなるまでくり返してきた。

ELISA検査の時点で陰性が出ても、時間がたてば感染が進み陽性になる可能性がある。くり返し検査をすることで、日本のヨーネ病汚染はかなり解決していった。こうした検査をしてきたのは世界中で日本だけだ。

2007年(平成19年)10月26日、日本ミルクコミュニティが10月24日から25日にかけて製造した牛乳の中に、ヨーネ病の疑いのある牛から採ったものが入っている可能性があるとして、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、静岡、長野に出荷された計62万1088本の自主回収が行われた[6]

海外における発生状況[編集]

あまり報道されていないが、アメリカやヨーロッパの牧場のヨーネ菌の汚染状況は極めて深刻である。

USDA汚染レポート
USDAの調査による米国酪農農場のヨーネ病の汚染状況。大農場ほど汚染が重度である。


アメリカの農場のヨーネ病汚染状況

たとえばアメリカでは酪農場の大半が汚染している。ヨーネ菌は潜伏期間が長いのが特徴だが、アメリカではヨーネ病の診断がなされても生産性の低下した重症の牛を淘汰するのみなので蔓延が拡大し、次から次に重症化した牛があらわれる状況だ。検査すらされていない農場も多い。アメリカ合衆国農務省(USDA)の調査結果をみると、小農場で63.1%、中農場は75.1%、大農場では95.0%が汚染されている。米国農務省が95.0%と発表するということは、ほぼ100%といっているようなものだ。最新の農務省のホームページでは、「調査をしていないが、現在はこれより悪くなっているだろう」と書いている。

アメリカでは日本の家畜伝染予防法のようにヨーネ病に感染した家畜を定期検査で発見して殺処分させる法律がないため、下痢をしている牛からも乳を搾っており、症状がひどくなるとと畜場に回して食肉にしている。日本と同様の検査をして感染牛を殺処分すると、アメリカ国内に牛が1頭もいなくなる可能性があるといっても過言ではない。


ヨーロッパ諸国のヨーネ病汚染状況

国際的汚染状況
国際的なヨーネ病の農場レベルでの汚染状況。全頭検査を行っているのは日本だけで、海外のデータは限られた地区などの者を引用。

ヨーロッパはEUになってから、共通した対策ができておらずヨーネ病の汚染状況が悪化した。EU域内には、2010年の段階で8億6600万頭の牛がおり、20万1027戸の農家が存在する。しかし、ヨーネ病の防疫対策は全頭検査や殺処分などの強制力をともなわない「任意のコントロール・プログラム」が実施されている国や地域はまともな方である。国境をこえて牛が行き来することも感染を広げる要因になっている。各国の農場規模や管理条件もさまざまで、それぞれ法律も行政機構も違うことが、防疫努力とプログラムの多様さと弱さを生み出す原因となっている。EUとして統一された防疫の基準はなく、汚染状況は深刻である。EU各国の状況は以下のようである。

 スウェーデンには約150万頭の牛がいるが、1年間に輸入される成牛はごくわずかであり、ヨーロッパの国のなかで唯一ヨーネ病の清浄化達成を公言している。1952年からヨーネ病が届け出伝染病に指定されていることもあり、有病率は実際に非常に低いという。

 ノルウェーには約90万頭の牛がおり、汚染農場は全体の10%と報告されている。ヨーネ病の国家サーベイランスと防疫プログラムが1996年に確立され、すべての牛乳生産農場と肉牛農場が州政府の支援を受けている。ヨーネ病牛であると確認されると、多くの場合、州政府による汚染群の淘汰と補償がなされてきたそうだ。ただ国をあげてではなく地方自治体が主体だ。

 オーストリアには約200万頭の牛がおり、ヨーネ病汚染農場は1994~97年の6.97%から、2002~3年には19.5%に増加している。2006年以降、ヒツジ、ヤギ、家畜化されているシカのヨーネ病について届け出が必要になったが、今どの程度になっているのかは明らかでない。

 オランダには2010年の時点で約400万頭の牛がおり、54%の牛群が陽性農場だ。2006年にヨーネ病防疫のために新たな「任意の対策プログラム」がつくられたが、乳質改善と乳業会社に出荷されるミルク中のヨーネ菌量を減少させることに焦点を合わせたもので、ヨーネ病の防疫にはあまり効果がある内容ではない。汚染牛由来の牛乳が農場のバルクタンクに混ざると菌量が増えるので、それを減らすという辻褄合わせのような対応だ。

 デンマークは有名な酪農国でチーズがおいしいイメージがあるが、総頭数約150万頭のうち、肉牛農場の55%、酪農農場の85%がヨーネ病の陽性農場という信じがたいほどの汚染状況だ。任意の防疫プログラムがあるが費用は自腹のため、2009年時点で参加しているのは全酪農家の29%に過ぎないという。

 ドイツには1270万頭の牛がおり(2010年)、地方によって異なるものの、ある地域では酪農農場の84.7%が抗体検査で陽性だったと報告されている。早期発見が困難なELISA(エライサ)法による抗体検査でこれほどの感染牛が発見されるということは、ヨーネ病汚染が激しく広がっているということになる。牛のヨーネ病が発生した場合には州に報告しなければならず、州当局によって登録されるが、殺処分命令や農場への防疫対策の介入といった行政対応はなされておらず、事実上対策はないに等しい。

治療と予防[編集]

感染予防に効果のあるワクチンは無く、発症動物のロスを少しでも軽くする目的で汚染のひどい地域で使われている。ワクチンを使用すると自然感染との区別がつかなくなるという問題もあり、日本のように防疫の進んだ国では使用することは無い。

また、治療方法は無いため、感染動物は屠殺される[2]

科学的な感染防止・治療方法が無いため、徹底的な衛生管理を行い感染機会を減らす為の施策が中心となる。農水省による牛のヨーネ病防疫対策要領によれば[7]「適切な飼養衛生管理」として下記7項の実施が求められている。

適切な飼養衛生管理(抜粋)

牛の所有者は、適切な飼養衛生管理を行うため、次の(1)から(7)までに掲げる事項を行うものとする。

  1. 子牛は可能な限り早期に成牛(母牛を含む。)群から離して飼養すること。
  2. 子牛への初乳給与に当たっては、清浄確認が行われており、かつ、第3に掲げる発生予防対策を講じている農場の牛の初乳又は代用初乳を摂取させること。
  3. 分娩牛房は清潔に保つこと。
  4. 牛の排せつ物及び排せつ物を含む敷料については、草地等への直接還元は避け、切り返し等を十分に行い、完全に熟成(堆肥化)させること。
  5. 牛舎内、特に牛床、飼槽及びウォーターカップについては、常に清潔に保つよう、定期的に清掃し、その後、洗浄及び消毒を実施すること。
  6. 農場入口への消毒薬の散布、牛舎入口での専用作業靴への交換、踏込消毒槽の設置等による入場車両、作業靴の消毒等の必要な措置を講ずること。
  7. 日頃から飼養牛の健康状態を観察し、本病を疑う症状が確認された場合には速やかに獣医師又は都道府県に連絡し、必要な検査を受けること。

「十分に発酵が進んでいないサイレージはヨーネ菌の感染源になる可能性がある」と報告されている[8]

人の自己免疫疾患などとの関連[編集]

クローン病患者数
我が国のクローン病の患者数は人口10万人あたり27人程度、米国が200人程度ですので、欧米の約10分の1です。

クローン病

 ヨーネ菌と人のクローン病との関係は、古くから医師や研究者のなかで疑いを持たれてきた。クローン医師(1884~1983年)が、「クローン病は牛のヨーネ病によく似ており、ヨーネ菌によって起こっているのだろう」とする仮説を発表したのが最初だ。

 ヒトのクローン病は厚生労働省指定の特定難病疾患だ。ちょうど働き始める20歳前後の若年齢で発症し、腹痛や下痢、体重減少が起きるため、多くの患者は働くことが大変な深刻な状況に置かれる。腸壁が肥厚して潰瘍ができたり、手術を要する腸閉塞がくり返して起こることも問題である。炎症を抑える薬での治療もおこなわれ、とても効果のある患者さんもいるが、効果が弱かったり、効かなくなるという例もある。根治療法がなく、腸閉塞に対しては肥厚した腸を手術で切除するほかない病気だ。患者のなかには五回、六回と手術をくり返し、腸が一㍍もないという人もいる。そのため、精神的なフォローアップが必要な患者さんも少なくないと消化器内科の医師は言う。

患者数は30年ほどのあいだに約250倍と、大幅に増加している。アメリカの患者数は日本の10倍である。初診時の年齢を見ると、もっとも多いのが21~25歳という一番働き盛りの人だ。

ヨーネ菌との関連が疑われている疾患
クローン病、多発性硬化症、1型糖尿病、橋本病の発症とヨーネ菌の関連が論文により示されて手織り、それ以外にも関連性が疑われていることはまだまだ知られていない。

小児期発症炎症性腸疾患

しかし、近年その年齢が下がりつつあり、10代、幼児、さらにゼロ歳児での発症も報告されるようになってきた。近年、生まれて数週間の乳幼児が下痢症状を起こすケースが増えているということも世界的に小児科医のあいだで問題になっている。子どもの場合、小児炎症性腸疾患(IBD)と呼んでいるが、その中身は潰瘍性大腸炎とクローン病だ。生まれて間もなく難病にかかった子どもたちは、成長も著しく阻害され、人生の長いあいだを病気とつきあっていかなければならない。さらに乳幼児に発生する超早期発症型炎症性腸疾患(VEO-IBD)の発生もあり、国際的にも注目を浴びている。発症に関わる食品などの環境要因の悪化が示唆される。

多発性硬化症

中枢性脱髄疾患の一つで、神経ミエリン鞘が破壊され脊髄視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患で、日本では特定疾患に認定されている。この神経難病とヨーネ菌との関連を2011年に始めて報告したのはイタリアサルジニアのササリー大学のSechi教授らのグループである。その後数多くの研究論文が出され、分子生物学レベル、免疫学レベルで明らかにされてきている。我が国では順天堂大学脳神経内科のグループがヨーネ菌と多発性硬化症の関連について、特に食品に存在するヨーネ菌死菌の経口摂取との関連を含め先進的な成果を上げている。

1型糖尿病

自己免疫病の一種である1型糖尿病とヨーネ菌の関連も報告されている。

ヨーネ菌の死菌抗原を用いた実験モデル[編集]

ヨーネ菌死菌抗原を用いて人のクローン病によく似たマウスのクローン病モデルができたことが報告されている。また、同様に、人の多発性硬化症の実験モデルであるマウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)をヨーネ菌死菌抗原を用いて作ることができ、病変は従来の結核菌死菌を使用したEAEの場合よりも重度であることが報告されている。

ヨーネ菌の経口的ばく露とアレルギーの関連[編集]

日本人の成人の血清の調査研究によりヨーネ菌に対するIgG抗体、IgG4抗体を有することが報告された。これは乳製品などに混入しているヨーネ菌死菌の繰り返し摂取により生じたものと考察された。日本人が摂取している乳製品の多くはヨーネ病汚染の激しい欧米産の原料で作られたものが多く、ヨーネ菌に暴露されている事実が示された。

また、花粉症などのアレルギーを有する成人にヨーネ菌に対するIgE抗体がより高く存在することも明らかにされ、増加する自己免疫病だけでなく、アレルギー疾患の発生にもヨーネ菌が関与していることが示されてきた。ヨーネ病の世界的蔓延による食品の汚染が関与するという仮説の検証も必要であろう。

ヨーネ病汚染国からの国内乳製品製造原料の輸入状況[編集]

乳製品の輸入量
毎年大量の乳製品がヨーネ病の防疫の不十分な汚染国から輸入されている。赤ちゃんの粉ミルクの原料はほぼ100%が輸入品である。

ヨーネ病感染牛は糞便中ばかりでなく乳汁中にもヨーネ菌を排出することが知られている。

このことは欧米のヨーネ病汚染国から輸入される脱脂粉乳などにはヨーネ菌の死菌が含まれる事を意味している。さらに、自己免疫病患者やそうでない健常者やアレルギーを持つ人にヨーネ菌抗体がある事実は、日本人が乳製品を介してヨーネ菌抗原に被ばくしている事を示している。日本ではヨーネ病汚染国から大量の乳製品を輸入していることも要注意である。

国際ヨーネ病学会[編集]

ヨーネ病や関連する抗酸菌、そして人の自己免疫疾患との関連を研究する国際的な組織が1989年に開設された国際ヨーネ病学会。3年に一回各国で国際学会が開催されて活発な情報交換がなされている。関心のある人であれば誰でも参加することができる。

日本ヨーネ病学会[編集]

9ICP つくば
つくば市で開催された第9回ヨーネ病国際学会の傘下メンバー。

国際ヨーネ病傘下で国際学会を日本で開催するために2004年に動物衛生研究所のヨーネ病研究グループが中心に発足した専門学会。

2007年にはつくば市で国際会議場にて第9回ヨーネ病国際学会を主催しました。

脚注[編集]

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  1. ^ 横溝祐一、「牛ヨーネ病に関する最新知見と防疫戦略」 山口県獣医学会 The Yamaguchi journal of veterinary medicine. (26), 1-26, 1999-12, NAID 40004086776
  2. ^ a b ヨーネ病(Johne's disease-paratuberculosis) 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
  3. ^ 横溝祐一、牛ヨーネ病の清浄化推進に期待される疫学的研究 『獣医疫学雑誌』 Vol.5 (2001) No.1 P.1-13, doi:10.2743/jve.5.1
  4. ^ ヨーネ病 JRA
  5. ^ 矢島りさ、曽地雄一郎、西清志、[1] 日本獣医師会雑誌 Vol.68 (2015) No.3 p.167-172, doi:10.12935/jvma.68.167
  6. ^ ヨーネ病対策 農林水産省 (PDF)
  7. ^ 牛のヨーネ病防疫対策要領 (平成25年4月1日24消安第5999号) (PDF)
  8. ^ 片山信也、田山ちぐさ、藤田巧 ほか、サイレージ発酵がヨーネ菌(Mycobacterium avium sub sp. paratuberculosis)の生残に及ぼす影響 日本草地学会誌 Vol.46 (2000) No.3-4 p.282-288, doi:10.14941/grass.46.282_1

出典[編集]

  • ヨーネ病 JRA
  • ヨーネ病 独立行政法人 北海道立総合研究機構 畜産試験場
  • 国内統計資料(乳製品等)農畜産業振興機構

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]