ファルコンヘビー

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ファルコンヘビー
ファルコン9 (左) と ファルコンヘビー (右)
ファルコン9 (左) と ファルコンヘビー (右)
機能 宇宙船打ち上げ機
製造 SpaceX
開発国 アメリカ合衆国
打ち上げコスト (2015) $80-125M
大きさ
全高 69.2 m (227 ft)
直径 3.66 m (12.0 ft)
重量 1,400,000 kg (3,100,000 lb)
段数 2+
積載量
LEOへのペイロード 53,000 kg (120,000 lb)
ペイロード
GTO
19,000 kg (42,000 lb)
打ち上げ実績
状態 開発中
射場 ヴァンデンバーグ空軍基地 SLC-4E英語版
ケープカナベラル空軍基地SLC-40
総打ち上げ回数 0
成功 0
失敗 0
初打ち上げ 2013
補助ロケット (Stage 0)
補助ロケット数 2
エンジン 9 マーリン1D
推力 5,600 kN (1,260,000 lbf)(sl)
比推力 海面: 275 秒 (2.6 kN/kg)
真空: 304 秒 (3.0 kN/kg)
燃焼時間 不明
燃料 LOX/RP-1
第1段
エンジン 9 マーリン1D
推力 5,600 kN (1,260,000 lbf)(sl)
比推力 海面: 275 秒 (2.6 kN/kg)
真空: 304 秒 (3.0 kN/kg)
燃焼時間 170 秒間[1]
燃料 LOX/RP-1
第2段
エンジン 1 マーリン・バキューム
推力 445 kN (100,000 lbf)
比推力 真空: 342 秒 (3.45 kN/kg)[2]
燃焼時間 345 秒間
燃料 LOX/RP-1

ファルコンヘビー(英:Falcon Heavy)、以前は「ファルコン9ヘビーFalcon 9 Heavy)」として知られていたこのロケットは、アメリカスペースXが2012年現在開発中の宇宙飛行打ち上げ機である。これに使われているロケットエンジンは、現在進行形で開発及び量産が進められている。全体としては二段式宇宙輸送機をなす一段目・二段目の両機体とも、推進剤LOX/RP-1の組み合わせを使っている。今のところ、このロケットには多種多様な派生型が考案されている。バリエーションの例としては、53,000キログラム (120,000 lb)のペイロード[3]低軌道まで運べるもの、19,000キログラム (42,000 lb)を[4]静止トランスファ軌道まで運べるもの、16,000キログラム (35,000 lb)を月遷移軌道に投入できるもの、14,000キログラム (31,000 lb)を[要出典]火星へ投入できるものなど[5]が計画段階にある[独自研究?]。このように、大容量の積載能力が有るために、ファルコンヘビーは超大型重量貨物打ち上げ機(Super heavy lifter)に分類されている[要出典]。このロケットの打ち上げ能力は、アポロ計画で使われたサターン Vロケットの半分に丁度足りないくらいである。

設計[編集]

ファルコン9 (左) と ファルコンヘビー (右)

ファルコンヘビーの機体構成は標準的なファルコン9に、ファルコン9第1段目を2本追加して、これらが液体ロケットブースター(横付け補助ロケット)として働くように構成されている[6]。ちょうど、これはモジュラーロケットと呼ばれるものであり、基本的な概念を同一にしている。他の同じ考え方で作られたロケットを挙げるなら、デルタIVヘビーや、未だ提案型のままになっているアトラスV HLVといったEELVロシアアンガラ・ロケットのA3、A5、A7がこれに相当する。低軌道に117,000ポンド (53,000 kg)を運べる[7]ファルコンヘビーは、運用中である他のどのようなロケットよりも可用性が有る。ロケットは有人飛行に必要な全ての要求項目を全てにわたって満たすよう設計されている。構造上の安全余裕は飛行加重より40パーセント、他の同種のロケットよりも25パーセント高い値に設定されている[8]

スペースX社はファルコンヘビー・デモンストレーションロケットを2012年カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地に運び込み[5]、2013年に打ちあげようという構想を練っている[7]。ケープカナベラル空軍基地からの初飛行は2013から2014年を目途に計画を立てている。ファルコンヘビーで低軌道に到達するためのコストは、もし1年当り4回の打ち上げを続けられれば、1ポンド当たり1,000 USドルと低コストになる。スペースX社は年間10機づつのファルコンヘビーとファルコン9を打ち上げる計画を立てている[5]

第一段目[編集]

第1段目は、ファルコン9から派生したコア機体3本を束ねている。コア1本当たり9基のマーリン1Dエンジンが備えられている。マーリン1Dエンジンは従来型マーリンエンジンから海面上で620 kN (140,000 lbf)[9] 、真空中で690 kN (155,000 lbf)の推力を出せるように増強し、100パーセントから70パーセントまで推力の絞り調節ができるようにした改良版である[10]

ファルコンヘビーは、液体ロケットブースターから中央コア機体への推進薬クロスフィード方式(propellant cross-feed)を特徴とする、史上初のロケットになるであろうと思われている。推進薬クロスフィード方式を採用すれば、横付け式の液体ロケットブースタを分離後でも、推進剤の大部分を、ペイロードを目標軌道まで運搬するために燃焼中の中央コア機体に残しておくことができる。この方式はファルコンヘビーの打ち上げ能力を3段式ロケットに匹敵するほどまでに向上させるだろう。たとえ、上段が単一のマーリン・エンジンを搭載する方式で、リフト・オフの後に点火が必要であったとしても、信頼性と運搬可能なペイロード重量の両面においてさらなる改良が加えられれば、それは可能であろうとみられている。クロスフィード方式は小さな重量のペイロードを打ち上げるミッションに必要とはされないだろう。そのような打ち上げミッションは簡単にキャンセルされる可能性が有る[11]

3本のコア機体に付いている全エンジンは打ち上げ時に着火される。しかし、第一段目コア機体に流入する推進薬が空になるまでは、中央コア機体は推進剤を全く使わないか、使ったとしてもほんの少しだけである。機体分離は2回に分けて行われる。液体ロケットブースターの分離と中央コア機体の分離である。この手順は3段式ロケットと同様であり、それゆえ、より大きな打ち上げ能力を発揮できるのである[12]。2.5段式ロケットの一種と考えられる他のロケット、例えばデルタIVヘビーがブースター分離前の中央コア機体は出力を絞っているのと比較して、ファルコンヘビーの中央コア機体は最初から全出力で噴射でき、ブースターを分離した後であっても推進剤がコア機体にほぼ全部残っている。

第二段目[編集]

上段ロケットは、真空中での動作に適するよう改造された単一のマーリン・エンジンで駆動される。改良した結果、ノズル膨張比は117:1、計画上の燃焼時間は345秒間だった。再着火能力を与えられたために、このエンジンは自然発火性物質(TEA-TEB)を使った点火器が2基、冗長性を持つように取り付けられている[6]。 スペースX社は、このロケットの1段目・2段目の機体の両方ともを、開発を進められれば、やがては再使用可能なロケットに発展させられるだろうとの希望を述べている[13]

ファルコン9の第1段目と第2段目を繋ぐ段間部は、炭素繊維-アルミニウム・コア複合材を使用している。段間分離は再使用可能な丸軸つかみ締め金具である「コレット」(つかみ輪)と圧縮空気で動作するガス押し機の作用で行われる。ファルコン9のタンク本体の胴板(タンク壁)と鏡板(タンクの上下半球部)を構成する材料はアルミリチウム合金英語版からできている。スペースX社は全ての溶接部を摩擦攪拌接合で繋げたタンクを使用している。これは、現在使用可能な中で一番信頼性の高い、最高クラスの強度をもった溶接法である。ファルコン9の第2段目のタンクは、単に第1段目用のタンクを長手方向に短縮したバージョンに過ぎない。それゆえ、ほぼ同様の工具、材料、製作技法を製造に応用している。このことはロケットの製造段階における単価の低減に役立っている[6]

諸元[編集]

ロケットの名前 ファルコンヘビー
補助ロケット 1機当り9基のマーリン1Dエンジンが備えられた液体燃料ブースター2機[3]
第一段 マーリン1Dエンジン9基[3]
第二段 マーリン1Dエンジン1基
高さ
(max; m)
69.2[3]
直径
(m)
5.2 [3][14]
離床推力
(kN)
17,000[3]
打ち上げ時重量
(トン)
1400[3]
ペイロードフェアリング直径
(外径;単位:m)
5.2[11]
ペイロード
(LEO; kg)
53,000[3]
ペイロード
(GTO; kg)
19,000 [15]
価格
(Mil. USD)
80-125[3]
1キログラムあたり最小価格 (Price/lb)
(LEO; USD)
2200 (1000)[5]
1キログラムあたり最小価格
(GTO; USD)
打ち上げ成功率
(successful/total)

沿革[編集]

スペースXの起工式ヴァンデンバーグ空軍基地SLC-4英語版のファルコンヘビー発射台予定地にて

2004年5月以前の米国上院通商・科学・交通委員会英語版での席上で、イーロン・マスクはこのような証言をした。

"Long term plans call for development of a heavy lift product and even a super-heavy, if there is customer demand. [...] Ultimately, I believe $500 per pound [of payload delivered to orbit] or less is very achievable."
HLVの開発を(もしかしたら超大型打ち上げ機の開発さえも)必要とする長期間にわたる計画が、顧客の必要に応じて可能です。…最終的に、私は(軌道まで運搬するペイロードの価格重量比の目安として)1ポンド当たり500ドル以下にする事はは充分に実現可能と考えています。」[16]

この、1ポンド当たり500米ドルで軌道に打ち上げるという目標価格は、隣接する一番近い位置に居る競争相手であるゼニットローンチ・ヴィークルが、いまのところ達成できそうなコストのおよそ半分の金額である[17]

2011年4月5日、ワシントンDCにあるナショナル・プレス・クラブの記者会見の場で、イーロン・マスクはこのように明言した。

“Falcon Heavy will carry more payload to orbit or escape velocity than any vehicle in history, apart from the Saturn V moon rocket, which was decommissioned after the Apollo program. This opens a new world of capability for both government and commercial space missions.”
「ファルコンヘビーは宇宙開発の歴史にある数々のロケットより重量のあるペイロードを打ち上げるでしょう。地球周回軌道に載せる場合や地球離脱速度のこともあるでしょう。アポロ計画の終了後に退役させられたサターンV型月ロケットは別としてですが。このロケットで、政府/民間用の両ミッションにおいて運用可能性における新しい世界が拡がるはずです。」 [18]

このようにも発言している。

"Falcon Heavy will arrive at our Vandenberg, California, launch complex by the end of next year, with liftoff to follow soon thereafter. First launch from our Cape Canaveral launch complex is planned for late 2013 or 2014.”
「ファルコンヘビーは、カリフォルニア州ヴァンデンバーグにある私たちの複合発射施設にやってくるでしょう。それも来年です。打ち上げの瞬間とその後直ぐに始まる追跡管制も当地でします。ケープカナベラルの複合発射施設からの初打ち上げは2013年末頃から2014年にかかる時期になるでしょうね。」[18]

レッド・ドラゴンの火星ミッション[編集]

2011年07現在, NASA エイムズ研究センターは、ファルコンヘビーを使った低コスト火星探査を構想中である。計画内では、このロケットを、打ち上げ機および火星遷移軌道投入用として利用し、ドラゴン宇宙船火星の大気への大気圏突入に使おうと考えられている。コンセプトデザインは2012、2013年のNASAディスカバリーミッションとして、2018年に打ち上がり、その半年後に火星表面に到着するだろうと提案されるだろう。このミッションの科学的目標は、生命の存在する証拠となる化学物質を探すことである。「過去に生命が存在した、あるいは現在でも存在している証拠になる分子、例えばDNAや過塩素酸塩還元酵素のような分子を探し出すことで、生体物質から生命の兆候を見出すこと」が今回のミッションの目標とするところである。レッドドラゴンは3.3フィート (1.0 m)以上の深度まで地表を掘削することも予定に入れている。その目的は、赤茶けた土埃の下、火星の地下水英語版がたまっている地層が凍りついて永久凍土のようになったところで冬眠状態で保存されているであろうと考えられている火星の生命を標本採取することである。ミッションコストは打ち上げ費用を含まないで4 25,00 0,000 USDになるだろうと推測されている[19]

打上げ[編集]

ファルコンヘビーの初打上げは、2014年3月の時点までは、ヴァンデンバーグから行われる予定であったが、2014年4月14日に、ケネディ宇宙センター第39複合発射施設の39A発射台(LC-39A)をNASAから20年間リースすることで合意された [20]ため、ファルコンヘビーは、この39A射点から2015年始めに打ち上げることに方針転換された[21]

以下は旧情報。

No 日付 / 時間 (UTC) ペイロード 顧客 結果 摘要欄
1 2013[22] ファルコンヘビー・デモ飛行1回目
Falcon Heavy Demo Flight 1
スペースX 計画中 ロケットの構成部品は、2012年末頃をめどにヴァンデンバーグAFBへ搬入予定[23]
2013年末から2014年にかけて[18] 公式発表無し 公式発表無し 予定中 ケープカナベラルからのファルコンヘビーの初打ち上げ[18]

関連項目[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ Falcon 9 User's Guide”. SpaceX. 2010年6月12日閲覧。
  2. ^ “SpaceX Falcon 9 Upper Stage Engine Successfully Completes Full Mission Duration Firing” (プレスリリース), SpaceX, (2009年3月10日), http://www.spacex.com/press.php?page=20090310 
  3. ^ a b c d e f g h i SpaceX enters the realm of heavy-lift rocketry, w:Spaceflightnow.com, April 5, 2011, accessed 2011-04-04.
  4. ^ SpaceX Brochure”. 2011年6月14日閲覧。
  5. ^ a b c d SpaceX Press Conference”. SpaceX. 2011年4月16日閲覧。
  6. ^ a b c “Falcon 9 Overview”. SpaceX. (2010年5月8日). http://www.spacex.com/falcon9.php 
  7. ^ a b US co. SpaceX to build heavy-lift, low-cost rocket”. Reuters (2011年4月5日). 2011年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月5日閲覧。
  8. ^ SpaceX Announces Launch Date for the World's Most Powerful Rocket”. Spaceref.com. 2011年4月10日閲覧。
  9. ^ Harwood, William (2011年4月5日). “World's biggest private space rocket planned”. CBS. 2011年4月5日閲覧。
  10. ^ “SpaceX Unveils Plans To Be World’s Top Rocket Maker”. Aviation Week and Space Technology. (2011年8月11日). http://www.aviationweek.com/publication/awst/loggedin/AvnowStoryDisplay.do?fromChannel=awst&pubKey=awst&channel=awst&issueDate=2011-08-08&story=xml/awst_xml/2011/08/08/AW_08_08_2011_p27-354586.xml&headline=SpaceX+Unveils+Plans+To+Be+World%26rsquo%3Bs+Top+Rocket+Maker 2011-08-07 (print edition is out prior to publication date)閲覧. "Revealing several new details of the 1D, Tom Mueller, propulsion engineering vice president, says the engine is designed to produce 155,000 lb. vacuum thrust and have a chamber pressure at “the sweet spot” of roughly 1,410 psia. “We’ve also increased the nozzle expansion ratio to 16 [compared with 14.5 on the Merlin 1C],” says Mueller, who adds that the initial engine “is doing better than we hoped.” The engine is designed for an Isp (specific impulse) of 310 sec. and has a thrust-to-weight ratio of 160:1. “We took structure off the engine to make it lighter. The engine we shipped [for test] to Texas was a development engine and hopefully the production engines will be even better.”" 
  11. ^ a b Space Exploration Technologies Corporation - Falcon Heavy”. SpaceX (2011年12月3日). 2011年12月3日閲覧。
  12. ^ SpaceX Announces Launch Date for the World's Most Powerful Rocket”. SpaceX (2011年4月5日). 2011年4月5日閲覧。
  13. ^ Musk ambition: SpaceX aim for fully reusable Falcon 9, w:NASAspaceflight.com, 2009-01-12, accessed 2010-06-03
  14. ^ SpaceX hopes to supply ISS with new Falcon 9 heavy launcher, w:Flight International, September 13, 2005, accessed 2010-06-03.
  15. ^ SpaceX Brochure”. 2011年4月16日閲覧。
  16. ^ Testimony of Elon Musk (2004年5月5日). “Space Shuttle and the Future of Space Launch Vehicles”. U.S. Senate. 2012年5月23日閲覧。
  17. ^ http://www.spaceref.com/news/viewnews.html?id=301
  18. ^ a b c d SpaceX announces launch date for FH” (2011-04=05). 2011年8月25日閲覧。 “First launch from our Cape Canaveral launch complex is planned for late 2013 or 2014.
  19. ^ Wall, Mike (2011年7月31日). “'Red Dragon' Mission Mulled as Cheap Search for Mars Life”. SPACE.com. http://www.space.com/12489-nasa-mars-life-private-spaceship-red-dragon.html 2011年7月31日閲覧. "This so-called "Red Dragon" mission, which could be ready to launch by 2018, would carry a cost of about $400 million or less. ... developing the Red Dragon concept as a potential NASA Discovery mission, a category that stresses exploration on the relative cheap. ... NASA will make another call for Discovery proposals in 18 months or so... If Red Dragon is selected in that round, it could launch toward Mars in 2018. ... Assuming that $425 million cap [for NASA Discovery missions] is still in place, Red Dragon could come in significantly under the bar. We'd have money left over to do some science." 
  20. ^ “NASA Signs Agreement with SpaceX for Use of Historic Launch Pad”. NASA. (2014年4月15日). http://www.nasa.gov/press/2014/april/nasa-signs-agreement-with-spacex-for-use-of-historic-launch-pad/ 2014年4月22日閲覧。 
  21. ^ “SpaceX's mega-rocket to debut next year at pad 39A”. Spaceflightnow.com. (2014年4月15日). http://www.spaceflightnow.com/news/n1404/15pad39a/ 2014年4月22日閲覧。 
  22. ^ F9/Dragon: Preparing for the ISS”. SpaceX (2011年8月15日). 2011年9月3日閲覧。 “We are targeting late 2012 to bring Falcon Heavy to Vandenberg for vehicle to pad integration tests and 2013 for liftoff.”
  23. ^ Launch Manifest”. SpaceX. 2011年4月26日閲覧。

外部リンク[編集]