デジタルトランスフォーメーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる [1] 。ビジネス用語としては定義・解釈が多義的ではあるものの、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」[2]という意味合いで用いられる。

定義[編集]

エリック・ストルターマン氏による定義[編集]

デジタルトランスフォーメーションの用語の初出は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した。彼は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義し、下記の特徴を提示している[1]

  • デジタルトランスフォーメーションにより、情報技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる。
  • デジタルオブジェクトが物理的現実の基本的な素材になる。例えば、設計されたオブジェクトが、人間が自分の環境や行動の変化についてネットワークを介して知らせる能力を持つ。
  • 固有の課題として、今日の情報システム研究者が、社会的に有益な立場でないより本質的な情報技術研究のためのアプローチ、方法、技術を開発する必要がある。

なお、教授の提唱する概念を示した論文は「本論文は、よりよい生活のために技術を批判的に調べることができる研究の出発点として適切な研究ポジションを確立する試みである」とあることから、研究へのアプローチ・方法論を述べた内容となっている。

IDC Japan社による定義[編集]

2016年にIT専門調査会社のIDC Japanは、ITプラットフォームの概念を用いてデジタルトランスフォーメーションを定義している[3]

IDC Japanはデジタルトランスフォーメーションを「企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。そして、これに投資することは2017年以降5年間のIT市場における成長の大部分を占め、ITサプライヤーの優先事項になると予測している。

ガートナー社による定義[編集]

ガートナー社は「デジタルビジネス」という概念を用いる。

ガートナー社によれば、企業内のIT利用は三段階ある。

  1. 業務プロセスの変革
  2. ビジネスと企業、人を結び付けて統合する
  3. 人とモノと企業もしくはビジネスの結び付きが相互作用をもたらす

ガートナーはこの第3段階の状態をデジタルビジネスと呼び、「仮想世界と物理的世界が融合され、モノのインターネット(IoT)を通じてプロセスや業界の動きを変革する新しいビジネスデザイン」(2014 年) と定義している[4]

また、このデジタルビジネスへの改革プロセスを「デジタルビジネストランスフォーメーション」と定義している[5]

デジタルトランスフォーメーション研究所による定義[編集]

株式会社デジタルトランスフォーメーション研究所によると、

  1. デジタルテクノロジーの進展で劇的に変化する産業構造と新しい競争原理を予測
  2. 自社のコアコンピタンスを活用して他社より早く到達可能なポジションと戦略の策定
  3. 戦略実現のための新しい価値とサービスの創造、事業と組織の変革、意識と制度の改革、を経営視点で遂行すること

と定義されている[6]

背景[編集]

ITプラットフォーム基盤の変化[編集]

2011年の講演にてGartner社はクラウド・情報・ソーシャル・モバイルの4つのプラットフォームが独立の進化を遂げつつ、数年の調査でこれらが収束しており、既存のアーキテクチャが時代遅れになっていると警告している。これを2012年にNexus of Forcesとして新しいIT基盤として提唱した[7]

同様の概念はIDC社の第3のプラットフォーム「クラウド、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術、モビリティー」 [3]やIBM社のSMAC「Social、Mobile、Analytics、Cloud」[8]にも挙げられる。

これらのIT基盤の活用により市場の優位性を獲得する一環として、デジタルトランスフォーメーションが注目されることとなった。

デジタル・ディスラプション[編集]

デジタル・ディスラプションとは、新しいデジタル・テクノロジーやビジネスモデルによって、既存製品・サービスの価値が変化する現象を指す[9]。既存の市場をディスラプション(破壊)するようなビジネスモデルを展開する新規参入者が登場してきたことで、各企業は、競争力維持・強化をスピーディーに進めていくことが求められている[10]

課題[編集]

  • PoCを繰り返す等、ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革には繋がっていないというのが多くの企業の現状[10]
  • これまでの既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、€'新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまうといった問題[10]
  • 既存システムを放置した場合、・今後、ますます維持・保守コストが高騰する(技術的負債の増大)とともに、・既存システムを維持・保守できる人材が枯渇し、セキュリティ上のリスクも高まる[10]
  • デジタルトランスフォーメーションでの課題として最も多く挙がったのが、「適切な技術スキルの獲得」だった。自社の社員をスキルアップできない理由として幹部があげたものとしては、「時間不足」「トレーニングのための構造がない」「組織に知識がない」がトップ3だった[11]

方法論[編集]

DX推進システムガイドライン[編集]

2018年経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会が策定したDX推進のためのガイドライン[10]。正式名称は「DXを 推進するための新たなデジタル技術の活用とレガシーシステム刷新に関するガイドライン」。DXの失敗の典型パターンから、DXを実現すべくITシステムを構築していく上でのアプローチや必要なアクションを示す。

2018年策定の構成案

  1. DX の位置づけ
    1. 経営戦略とDXの関係
    2. 事業のビジネス・モデルや価値創出の具体化
    3. 戦略方針について社内組織との共有
    4. スピーディーな対応を可能とする変革
  2. 体制・仕組み
    1. ITシステムの基本構想の検討体制
    2. 経営トップのコミットメント
    3. 新たなデジタル技術活用におけるマインドセット
    4. 事業部門のオーナーシップ
    5. ユーザ企業自らの選択・判断能力
    6. ユーザ企業自らの要件定義能力
    7. 評価・ガバナンスの仕組み
  3. 実行プロセス
    1. 情報資産の分析・評価
    2. 情報資産の仕分けと移行プランニング
    3. レガシー刷新後のシステム: 変化への追従力
    4. 経営者自らによるプロジェクト管理
    5. DXの取組の継続

ContinuousNext戦略[編集]

2018年11月、ガートナージャパン株式会社は、「ContinuousNext」のアプローチを取り入れることを提唱[12]。 CIOが取り組むべきことは以下の5項目です。

  1. プライバシー - プライバシー管理プログラムを担当する責任 者を配置し、セキュリティ侵害を速やかに検知・報告し、個人が自身のデータをコントロールで きるようにする。
  2. 拡張知能 - 高度なAIに基づくシステム、プロセス、ロボティクスと 協働することで、従業員はより大きな影響力を発揮できること。
  3. 組織文化 ‐ CIOの 46%は、組織文化がデジタル・ビジネスの潜在力の実現を阻む最大の障壁。ただし組織文化の変革を大規模な取り組みとして実施する必要はなく、また改革は必ずしも難しいものではない。
  4. プロダクト管理 - ガートナー の2019年CIOアジェンダ・サーベイにおいて、先進企業がプロジェクト中心ではなくプロダクト 中心のデリバリを実践している可能性は、ほかの企業に比べて2倍高いことが明らかになっ ています。
  5. デジタル・ツイン - デジタル・ツインは、多くの場合、センサやコンピュータ・モデリングを介してジェット・エンジン や風力タービンなどの物理的なモノを管理するために使用されます。

デジタルへの移行は官民とわず既存の運営モデルを破壊しつつある。新しいモデルは、組織にとっても価値あるものとなり、変化に適応できる体制が求められている。

脚注[編集]

  1. ^ a b Eric Stolterman, Anna Croon Fors. “Information Technology and The Good Life”. Umeo University. 2018年11月18日閲覧。
  2. ^ Clint Boulton. “デジタルトランスフォーメーションの核心はディスラプション”. Nikkei Business Publications, Inc.. 2018年11月18日閲覧。
  3. ^ a b Insight for D. “【解説】デジタルトランスフォーメーション”. Yahoo Japan Corporation.. 2018年11月27日閲覧。
  4. ^ Business+IT. “ガートナーが提言するデジタル・ビジネスとは?抜本的な技術革新によりすべてが変わる”. SB Creative. 2018年12月11日閲覧。
  5. ^ https://www.gartner.com/it-glossary/digital-business-transformation
  6. ^ デジタルトランスフォーメーションとは” (英語). デジタルトランスフォーメーション研究所. 2018年11月8日閲覧。
  7. ^ Gartner. “Gartner Says Nexus of Forces Social, Mobile Cloud and Information - Is the Basis of the Technology Platform of the Future”. Gartner. 2018年12月11日閲覧。
  8. ^ IBM. “次世代を見据えたITインフラストラクチャーのアプローチ”. IBM. 2018年12月11日閲覧。
  9. ^ SATORIマーケティングブログ. “デジタル・ディスラプション~定義の再確認とキャリア戦略”. SATORI. 2018年12月11日閲覧。
  10. ^ a b c d e デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会. “デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』”. 経済産業省. 2018年12月11日閲覧。
  11. ^ DZNetJapan. “デジタルトランスフォーメーションの実態は?--PwCが年次調査を発表”. ASAHI INTERACTIVE. 2018年12月11日閲覧。
  12. ^ GartnerJapan. “ガートナー、デジタル・トランスフォーメーションの成功とさらなる進化に向けた 新たなアプローチ「ContinuousNext」を提唱”. Gartner. 2018年12月11日閲覧。