パーカー・ソーラー・プローブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
パーカー・ソーラー・プローブ
Solar Probe.jpg
パーカー・ソーラー・プローブの想像図(NASA)
所属 NASA / JHUAPL英語版
任務 離心率の大きい軌道により極端に対象に接近する軌道をとる、周回探査
接近通過 金星 (V7)
周回対象 太陽
打上げ日時 2018年8月12日
03:31 (EDT)
打上げ機 デルタ IV ヘビー/スター48BV[1]
打上げ場所 ケープカナベラル空軍基地 SLC-37
任務期間 6年321日(計画値)
公式サイト solarprobe.jhuapl.edu
質量 685 kg (1,510 lb)(打上時)[2]
555 kg (1,220 lb)(乾燥質量)
50 kg (110 lb)(ペイロード)
寸法 1.0 m × 3.0 m × 2.3 m
(3.3 ft × 9.8 ft × 7.5 ft)
消費電力 343 W (最接近時)
軌道要素
軌道傾斜角 3.4°
高度 ~5900000km
遠点高度 0.73 AU
近点高度 9.86 RS
軌道周期 88 日
搭載機器
主要搭載機器
応答装置
応答装置 Kaバンド
Xバンド
脚注: [4]

パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)は太陽の外部コロナの観測を計画している宇宙探査機[5]。太陽表面から8.86太陽半径(0.04天文単位、590万km)への到達が計画されている[5]。この計画は2009年度財政予算案に新規計画として追加・公表された。2008年5月1日、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所は2015年の打ち上げを目指して本機の設計と製造をおこなうと発表した[6]。その後、打上げ目標は2018年に延期され、8月12日午前3時31分(EDT)にケープ・カナベラルよりデルタ IV ヘビー10号機で打ち上げられた[7]

この計画は2017年までソーラー・プローブ・プラス (Solar Probe Plus) と呼ばれていたが、同年5月に宇宙物理学者ユージン・ニューマン・パーカーを称えて現在の名前に改称された[8]

軌道と計画[編集]

ソーラープローブミッションと呼ばれていた初期の概念設計では木星を使った減速スイングバイを行う計画だったが、軌道変更方法をよりシンプルにすることになり、パーカー・ソーラー・プローブでは金星で複数回の減速スイングバイを行って軌道の近点を減少させていき、ほぼ8.5太陽半径の軌道(600万km)で複数回の接近が行えるように設計された[9]

本機は、その探査目的から太陽にかなり接近する必要があり、稼動環境は極めて苛酷なものとなる。探査軌道における太陽光の入射強度は地球軌道のおおよそ520倍強く、防護のため耐熱シールドを備えている。この炭素繊維強化炭素複合材料製の耐熱シールドは探査機の正面に設置され、摂氏約1400度[10]に耐えられる。探査機システムおよび観測機器は太陽光の直射を受けないように耐熱シールドの影になる箇所に設置される。電源には二組一対の太陽電池アレイが使われる。第1太陽電池アレイは太陽から0.25 AU以遠で使われ、その間は第2太陽電池アレイは耐熱シールドの後ろに格納されている。第2太陽電池アレイは太陽への近接時に使われ、光入射強度が強いことからサイズは小さく抑えられている。また、ポンプで冷却用の流体を流すことで運用温度を維持するようになっている[11]

探査機が太陽に最接近する際の速度は200km/sに達する。これは人類の作った物体が到達した速度として最速となり、現時点で最速のヘリオス2号の約3倍に達する[12]

科学的目標[編集]

  • 太陽風の元となる磁場の構造と変遷の測定
  • コロナを熱するエネルギーの流れと太陽風の加速の追跡
  • エネルギー性粒子の加速と運搬の仕組みの測定
  • 太陽周辺の多粒子プラズマ、その太陽風への影響、活発な粒子形成の探査

工程表[編集]

-: 近日点 -: フライバイ
工程
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2018年 8月12日
打ち上げ
9月28日
第1回金星フライバイ
(公転周期 150日)
11月1日
近日点到達(1回目)
2019年 3月31日
近日点到達(2回目)
8月28日
近日点到達(3回目)
12月21日
第2回金星フライバイ
(公転周期 130日)
2020 1月24日
近日点到達(4回目)
6月2日
近日点到達(5回目)
9月22日
近日点到達(6回目)
7月6日
第3回金星フライバイ
(公転周期 112.5日)
2021 1月13日
近日点到達(7回目)
4月24日
近日点到達(8回目)
8月5日
近日点到達(9回目)
11月16日
近日点到達(10回目)
2月16日
第4回金星フライバイ
(公転周期 102日)
10月11日
第5回金星フライバイ
(公転周期 96日)
2022 2月21日
近日点到達(11回目)
5月28日
近日点到達(12回目)
9月1日
近日点到達(13回目)
12月6日
近日点到達(14回目)
2023 3月13日
近日点到達(15回目)
6月17日
近日点到達(16回目)
9月23日
近日点到達(17回目)
12月24日
近日点到達(18回目)
8月16日
第6回金星フライバイ
(公転周期 92日)
2024 3月25日
近日点到達(19回目)
6月25日
近日点到達(20回目)
9月25日
近日点到達(21回目)
12月19日
近日点到達(22回目)
太陽への第1回最接近
11月2日
第7回金星フライバイ
(公転周期 88日)
2025 3月18日
近日点到達(23回目)
6月14日
近日点到達(24回目)
9月10日
近日点到達(25回目)
12月7日
近日点到達(26回目)

第1回金星フライバイにより近日点高度を下げ、公転周期 150日(金星の公転周期の2/3)の楕円軌道に入る。第2回金星フライバイで公転周期 130日とし、続いて金星が公転軌道上で最大速度となる198日後の第3回金星フライバイで公転周期が112.5日(金星の1/2)となる。第4回金星フライバイでは公転周期 102日となり、さらに第5回・第6回金星フライバイで順次近日点高度を下げて公転周期をそれぞれ96日(金星の3/7)、92日(金星の2/5)とした後、最後となる第7回金星フライバイで近日点高度 9.86 RS、公転周期 88日の軌道に到達する[13]

ミッションの進捗[編集]

2018年8月12日3:31 EDT(7:31 UTC)にデルタ IV ヘビーロケットで打ち上げられた。打ち上げ後、最初の1週間で高利得アンテナや磁力計ブーム、電界アンテナを展開する。9月初めからミッション機器の動作確認を行い、2018年12月には最初の科学観測を行う予定である[14]

[編集]

  1. ^ Clark, Stephen (2015年3月18日). “Delta 4-Heavy selected for launch of solar probe”. Spaceflight Now. http://spaceflightnow.com/2015/03/18/delta-4-heavy-selected-for-launch-of-solar-probe/ 2015年3月18日閲覧。 
  2. ^ Parker Solar Probe – Extreme Engineering. NASA.
  3. ^ Parker Solar Probe Science Gateway | Parker Solar Probe Science Gateway” (英語). sppgway.jhuapl.edu. 2017年10月9日閲覧。
  4. ^ Applied Physics Laboratory (2008年11月19日) (.PDF). Feasible Mission Designs for Solar Probe Plus to Launch in 2015, 2016, 2017, or 2018. Johns Hopkins University. オリジナルの2016年4月18日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160418160052/http://solarprobe.jhuapl.edu/common/content/SolarProbePlusFactSheet.pdf 2010年2月27日閲覧。. 
  5. ^ a b Tony Phillips. “NASA Plans to Visit the Sun”. NASA. 2010年9月30日閲覧。
  6. ^ M. Buckley (2008年5月1日). “NASA Calls on APL to Send a Probe to the Sun”. Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory. 2010年9月30日閲覧。
  7. ^ “NASA「パーカー・ソーラー・プローブ」打ち上げ、史上最も太陽に接近”. AFPBB News. フランス通信社. (2018年8月12日). http://www.afpbb.com/articles/-/3185833 2018年8月13日閲覧。 
  8. ^ Burgess, Matt. “Nasa's mission to Sun renamed after astrophysicist behind solar wind theory”. https://www.wired.co.uk/article/nasa-sun-mission-parker-solar-probe 2018年1月1日閲覧。 
  9. ^ Solar Probe Plus: A NASA Mission to Touch the Sun:”. JHU/APL (2010年9月4日). 2010年9月30日閲覧。
  10. ^ 訳注: NASAの原文の表現では、華氏2500度(摂氏1377度)とある
  11. ^ G.A. Landis, P. C. Schmitz, J. Kinnison, M. Fraeman, L. Fourbert, S. Vernon and M. Wirzburger, "Solar Power System Design for the Solar Probe Mission," AIAA Paper-2008-5712, International Energy Conversion Engineering Conference, Cleveland OH, 28-30 July 2008.
  12. ^ Kerri Beisser (2011年2月10日). “Solar Probe Plus: Mission Overview”. JHU/APL. 2011年2月10日閲覧。
  13. ^ Solar Probe Plus: The Mission”. Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory (2017年). 2017年6月17日閲覧。
  14. ^ Parker Solar Probe Launches on Historic Journey to Touch the Sun. NASA News. 12 August 2018.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]