ゲイ・プライド

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LGBTプライド英語: LGBT pride) またはゲイ・プライド(英語: gay pride)はレズビアンゲイバイセクシャルトランスジェンダーLGBT)の人々が自己の性的指向性自認に誇りを持つべきとする概念を表す言葉である[1][2]

言葉の概念[編集]

レインボーフラッグを纏うGay Pride New York の参加者。2008年

この言葉には、人々の性的指向や性自認に誇りを持つ必要性、多様性は特別なものであるという考え、性的指向や性自認は生まれつきのもので意図的に変えられるものではないもの、という3つの考えと結びつきがある。[3]。「LGBTプライド」やそれらの省略形である「プライド」は、様々なLGBTコミュニティに属する全ての個人を包括した表現として広がりつつある。

この言葉における「プライド」(pride)は「羞恥」(shame)と対比する意味を持っている。羞恥という言葉は歴史を通じてLGBTの人々への支配や抑圧のために使われてきた。「プライド」は総じて個人の自己評価やコミュニティーの肯定を表している[要出典]

歴史[編集]

現代の「プライド」ムーブメントは1969年に発生したニューヨークのゲイバーにて警官の捜査に対して居合わせたゲイの人々は反撃を行った事件「ストーンウォールの反乱」の後に始まったとされる。暴力的な出来事ではあったが、この事件は今日知られているなかでサブカルチャー・コミュニティが集団で自己の尊厳を訴えた運動初期における大きな出来事となった。ストーンウォールの反乱を毎年記念して行われるパレードは、ます全国的な草の根の運動から始まり、今日では世界中の国々でLGBTプライドの祝典が行われている。プライド・ムーブメントはやがてロビー活動、有権者登録、LGBTコミュニティの意義に関する啓発などのLGBTの社会運動を引き起こした。LGBTプライドの支持者はLGBTの人々の権利の平等や様々な恩恵のための活動をおこなっている[4][5][6]

古代-中世[編集]

黒像式古代ギリシア陶器に描かれた同性愛の描写。 紀元前525年-520年頃。ルーヴル美術館蔵。

LGBTプライドの一部であるゲイ・プライドの賛同者は、これまで歴史を通じて同性愛に対しての許容と抑圧のせめぎ合いがあったことを指摘している[7]古代ギリシアにおいては今日の西洋文化のように性的指向を社会的な識別とする着想がなかった。 ギリシア社会は性的衝動やその行為を社会的な性で区別することがなかったが、それらの衝動や行為に関する許容の範囲は社会規範に委ねられていた[8]レズビアンの語は著名な女性詩人のサッポーが滞在したレスボス島の名前を起源にしており[9][10]、彼女は女性の恋人に宛てた愛の詩を残している[11]ローマ帝国において同性愛は広く存在したと見られているが、その容認は複雑な社会システムや地域共同体によって取り決められていた[12]

中世にかけては教会の天国地獄の教えが広まったことにより性的な行動は概ね抑圧され始めていた[13]。また技術の後退によって、清潔な流水や汚水の管理といった基本的な衛生管理さも過去の物となっていった。これは環境の悪化や病気を引き起こし、人々は神の怒りを恐れて不道徳への批難を始めた[14]。やがて同性愛のいかなる行動も羞恥の対象だけでなく、死を以て罰するようになった[15]。西暦390年にローマで同性愛を禁じる法が制定され、罰則に死刑が規定された[16]

19世紀-20世紀前半[編集]

ドイツ[編集]

ドイツでは、今日のゲイ・プライドに続くような初期の同性愛者権利運動が行われていた。マグヌス・ヒルシュフェルトによって、公的な啓発の模索や1871年5月に施行された男性間の性行動を犯罪とする刑法175条の撤廃に向けた動きがなされた。

第二次世界大戦においてドイツのナチズムは支配地域に住む多くのヨーロッパの人々が捕らえられ、強制収容所へと送られた。ホロコーストにおいて男性同性愛者はピンク色の三角形のマークを、女性同性愛者は反社会的行動を表す黒の三角形をそれぞれ付されていた[17]

20世紀前半までの著名人の活動[編集]

イングランドの作家で口承文学家のクエンティン・クリスプはそのウィットに富んだ話やクローゼットの否定を長く貫く生き方で知られた人物である。

ゲイ・プライドのムーブメントにおいて、過去のごく一部のLGBT著名人は侮辱をものともせずに開放的な生き方を行ったり、クローゼットとされていた人物がカミングアウトを行ったことが挙げられる。彼らはゲイの権利や自身のありのままの生き方を求める活動のために身を投じた。オスカー・ワイルドは彼らのなかでもよく知られた人物で、「the love that dare not speak its name」(敢えて名を明かさぬ愛:古典的な同性愛の婉曲表現)によって投獄された。クエンティン・クリスプen)もまた逮捕の恐れなしに愛とともに生きるために社会規範と戦った。『The Naked Civil Servant』(裸の公務員)の著者であった彼は、LGBTコミュニティにおけるキャンプな著名人として、また多くのゲイ・プライドのシンボルとしてアイコンとなった。


1960年代-1970年代[編集]

ストーンウォールの反乱[編集]

ストーンウォールの反乱の現場となった The Stonewall Inn。

1969年の7月、ニューヨークゲイバーStonewall Inn」での警察の手入れに対してLGBTの人々は集団で反乱を起こした。抗議活動や暴動は数夜に渡って続いた。この事件はLGBTの権利獲得運動の転換点となる。

ストーンウォールの反乱以前に遡る1964年には、サンフランシスコの同性愛団体「Council on Religion and the Homosexual」(CRH)を代表したゲイの活動家やプロテスタントの牧師らが出席した大統領選挙の資金集めパーティーにて乱闘が発生し、イベントの関係者と3人の男性同性愛者の弁護士が拘束された。これが警察官による捜査に端を発したLGBT活動家達による最初の事件として記録されている。その後の法廷尋問では同性愛者の被告側に有利な判断が出された。この時の被告の一人 Herb Donaldson は後にサンフランシスコ市裁判所の裁判官になっている[18][19][20][21]

また1966年8月には、サンフランシスコのテンダーロイン地区でコンプトンズ・カフェテリアの反乱と呼ばれるLGBTの若者による事件が発生している[22][23]

最初のゲイ・マーチの経緯[編集]

1969年11月にクレイグ・ロッドウェルen)はフィラデルフィアで行われた「East Coast Homophile Organizations」(ERCHO、同性愛者団体の東地域会議)のミーティングにてニューヨークで最初のゲイ・プライド・パレードを行うことを仲間のフレッド・サージェントらと共に提案した。提案に際してそれまで行われてきたピケアニューアル・リマインダー」(en)よりも意義深く、より参加人数を増やし、時間と場所が反乱との関係がより深くなるよう選び、基本的な人権を求めるアイデアが盛り込まれ、「Christopher Street Liberation Day」(クリストファー・ストリート開放記念日)として毎年7月最後の土曜日にニューヨークでデモを行う提案となった。クリストファー・ストリートは事件の現場となった通りの名前に由来し、このデモには服装の規定や年齢制限は設けられませんでした。国中の同性愛者運動団体に連絡を取り、同日に各地で並行してデモ開催の働きかけを行い全国規模の支持表明を得る提案もなされた[24][25][26][27]

ERCHOの会議に参加した団体は棄権した一つを除き、マーチの実施の評決に賛成票を入れた[24]。マーチ実行の会議は翌年1月の初旬から始まったが、「GAA」のようなニューヨークの有力組織との調整は難航した。ロッドウェルと仲間のグループはイベントのコアグループ「CSLD Umbrella Committee」(CSLDUC)を作り上げた。最初の財源として、全国の同性愛者団体やスポンサーから寄付を集めたり、ロッドウェルが設立したオスカー・ワイルド書店(en)の顧客簿を通じて寄付を募ったり、「GLF」から財政支援受けたりした[28][29]。多くの支援により、CSLDUCは1970年7月最後の日曜日である28日に最初のマーチの開催を決めた[30]。1970年4月にはそれまでマーチに反対を唱えていた同性愛者団体「Mattachine」の代表が交代し、この団体の反対は無くなった[31]。この最初のマーチがLGBTプライドのイベントとして規模が広がり、今日では世界中でみられるようになった。ニューヨークとアトランタで毎年開催されるストーンウォールの反乱記念のイベントは「Gay Liberation Day」と名付けられ、サンフランシスコロサンジェルスでは「Gay Freedom Day」と呼ばれている。後年になり様々な都市でイベントが開かれるようになり、両方の名前が広まっている。

1980年代以降[編集]

イスラエルハイファで行われた HBT rally。

1980年代にはストーンウォールの記念行事がメジャー文化へと変化した。それまでの大雑把で草の根運動的な傾向のあったパレードがより組織化され、また以前にみられたゲイ・コミュニティの過激的な側面は殆どなくなった。マーチはコミュニティの保守的な人々の圧力の静まりとともに「Liberation」(解放)や「Freedom」(自由)といった面が名前とともに外され、「Gay Pride」(ゲイ・プライド)の視点に置き換わった[要出典]。しかしながら、よりリベラルなサンフランシスコのゲイ・パレードと記念祝典の名称は1994年まで「Gay Freedom Day Parade」のままであったが、この年に「Gay Pride Day Parade」に名前が変わった。

2000年に、当時のアメリカ合衆国大統領であるビル・クリントンは6月をアメリカ国内の「Gay and Lesbian Pride Month」(ゲイ・レズビアンのプライド月間)と宣言し、2009年7月1日にはバラク・オバマ大統領がPGBT Pride monthを宣言している[32]

ソフィア スペイン王妃はゲイ・プライドと議会で承認された同性結婚の法律に反対する作家 Pilar Urbano に引き合いに出された。王妃と王室はこれを否定している[33]

シンボルとの関連性[編集]

LGBTプライドのシンボルにはレインボーフラッグ、蝶、「λ」(ギリシャ語のラムダ)、ナチ強制収容所のバッジを起源とするピンクブラックのトライアングルなどがある[34]。「λ」(ギリシャ語のラムダ)とピンク・トライアングルゲイ解放運動の革命的シンボルとして使われていたが、今日ではより急進的なコミュニティにおけるシンボルとして、ゲイ・プライドやプライド・ムーブメントに取り込まれている。ピンクトライアングルは、アムステルダムにある同性愛者を理由に迫害された人々の追悼碑「ホモモニュメント」の建立に影響を与えた。

脚注[編集]

  1. ^ A critical introduction to queer theory Nikki Sullivan, NYU Press, 2003. ISBN 0-8147-9841-1, 9780814798416.
  2. ^ Sexual orientation and human rights: Point/Counterpoins, Philosophers Debate Contemporary Issues Laurence Thomas, Michael E. Levin, Rowman & Littlefield, 1999, ISBN 0-8476-8770-8, 9780847687701.
  3. ^ Gay and Lesbian History Month (PDF)”. www.bates.ctc.edu. 2007年7月31日閲覧。
  4. ^ Pride celebrated worldwide”. www.pridesource.com. 2007年7月31日閲覧。
  5. ^ GAY PRIDE IN EUROPE LOOKS GLOBALLY”. direland.typepad.com. 2007年7月31日閲覧。
  6. ^ Lesbian Gay Bisexual Transgender Equality -an Issue for us All”. www.ucu.org.uk. 2007年7月31日閲覧。
  7. ^ People with a History”. Paul Halsall. 2007年7月30日閲覧。
  8. ^ Oxford Classical Dictionary
  9. ^ Lesbian Life”. lesbianlife.about.com. 2007年8月1日閲覧。
  10. ^ Sappho Goes to Law School: Fragments in Lesbian Legal Theory By Ruthann Robson. www.nyls.edu. http://books.google.com/books?id=qyYcQz6znjEC&pg=PA2008&lpg=PA2008&dq=is+the+term+lesbian+derived+from+the+greek+island+of+lasbos&source=web&ots=htcp-ic-Bh&sig=bQQvoRKkI2CdMzt0yJUZHEh0sKY#PPA2008,M1 2007年7月30日閲覧。. 
  11. ^ Love, Sex, and Tragedy, Simon Goldhill, pg. 76
  12. ^ Craig Williams: Roman Homosexuality, Ideologies of Masculinity in Classical Antiquity. in: Oxford University Press (Editor): Ideologies of Desire. Oxford 1999.
  13. ^ Mediaeval Sexual Behaviour”. www.ourcivilisation.com. 2007年7月31日閲覧。
  14. ^ Medical Misconceptions by Bryon Grigsby”. www.the-orb.net. 2007年7月31日閲覧。
  15. ^ The Catholic Church and Homosexuality”. www.tanbooks.com. 2007年7月31日閲覧。
  16. ^ M. Hyamson, ed. and tr., Mosaicarum et romanarum legum collatio , London 1913 (reprint Buffalo, 1997), pp. Hyamson, ed and tr, Mosaicarum et romanarum legum collatio, London 1913 (reprint Buffalo, 1997), pp. 82–83. (Coll. leg. mos. et rom. 5.3.1–2) (Coll. leg mos. Et Roman 5.3.1–2)
  17. ^ Zimmerman, Bonnie (2000). Lesbian Histories and Cultures. Taylor & Francis. p. 748. ISBN 0815319207, 9780815319207. http://books.google.com/books?id=0EUoCrFolGcC 2008年8月5日閲覧。. 
  18. ^ Duberman, pg. 99–100
  19. ^ http://www.lgbtran.org/Exhibits/CRH/Exhibit.aspx
  20. ^ Loughrey, pg. 286–287
  21. ^ Alwood, pg. 75
  22. ^ Carter, pg 109–110, 258
  23. ^ Duberman, pg. 110–111
  24. ^ a b Carter, pg. 230
  25. ^ Marotta, pg. 164–165
  26. ^ Teal, pg. 322–323
  27. ^ Duberman, pg. 255, 262, 270–280
  28. ^ Carter, pg. 247
  29. ^ Teal, pg. 323
  30. ^ Duberman, pg. 272
  31. ^ Duberman, pg. 314 n93
  32. ^ http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Presidential-Proclamation-LGBT-Pride-Month/
  33. ^ Pilar Urbano attribute to Queen Sofía polemic comments La Vanguardia.
  34. ^ Symbols of the Gay, Lesbian, Bisexual, and Transgender Movements”. www.lambda.org. 2007年7月30日閲覧。

関連項目[編集]

関連書籍[編集]

  • Alwood, Edward (1996). Straight News: Gays, Lesbians, and the News Media Columbia University Press, New York. ISBN 0-231-08436-6.
  • Carter, David (2004). Stonewall: The Riots That Sparked The Gay Revolution. St. Martin's Press. ISBN 031234269.
  • Duberman, Martin (1993). Stonewall Dutton, New York. ISBN 0-452-27206-8.
  • Loughery, John (1998). The Other Side of Silence – Men's Lives and Gay Identities: A Twentieth-Century History. New York, Henry Holt and Company. ISBN 0-8050-3896-5.
  • Marotta, Toby (1981). The Politics of Homosexuality. Boston, Houghton Mifflin Company. ISBN 0-395-31338-4.
  • Teal, Donn (1971). The Gay Militants. New York, Stein and Day. ISBN 0-8128-1373-1.

外部リンク[編集]