鬼龍院花子の生涯
文学 |
---|
ポータル |
各国の文学 記事総覧 出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『鬼龍院花子の生涯』(きりゅういんはなこのしょうがい)は、宮尾登美子の著した中編小説である。『別冊文藝春秋』145号から149号に連載された。大正、昭和の高知を舞台に、侠客鬼龍院政五郎(通称・鬼政)とその娘花子の波乱万丈の生涯を、12歳で鬼政のもとへ養女に出され、約50年にわたりその興亡を見守った松恵の目線から描いた作品。
あらすじ
幼い松恵が鬼政の家族へ養女として迎えられるくだりから物語は始まる。やはり少年時代に関西へ移り無職渡世の門をくぐった恒吉(鬼政)は故郷に戻り乾物商の看板を掲げながら興行を成功させ世間の耳目を引く一方、小林佐兵衛の薫陶を受けたところから米騒動や労働争議の調停にも顔を出し売り出していく。高知の紳商財閥として川崎と覇を争う宇田の殿様(宇田友四郎)を背景としてまさに華やぐ日々を送る鬼政だが、妾のつるとの間に待望の実子の花子を得たあたりから陽が傾いていく。
一匹狼のやくざ者である荒磯との抗争が原因で一家の多くが収監されたことを期に、その人生は急速な下降線を辿る。鬼政とつるの急死、そして鬼龍院一家の二代目すなわち花子の新婿となった権藤の死によって、花子もまた極道と人生の荒波に翻弄されることとなる。極道の養女となった自らの運命を早くに達観した松恵は、その鬼龍院一家の興亡に自身もまた翻弄されつつ、その最期を見送るのであった。
登場人物
- 林田(白井)松恵
- 本作の語り手。12歳の時鬼龍院政五郎の養女となる。鬼政の後援する労働活動家・安芸盛との縁談を鬼政自身の手によって裂かれ、また教師・田辺恭介との恋愛も恭介の両親の反対によって困難を極める。戦後服飾学校の教員となり、花子の菩提を弔う。
- 鬼龍院政五郎(林田恒吉)
- 本作の最初の主人公。高知の宇佐に生まれる。幼くして出奔した後、阪神で渡世に入り明石屋万吉の子分となり、のち高知に戻り鬼龍院一家を興す。四国の興行界を握った実在の人物、鬼頭良之助こと森田良吉がモデル。
- 鬼龍院花子
- 鬼政が妾・つるとの間にもうけた実子であり、本作もうひとりの主人公。幼いころから何不自由せず成長したため、のちの動乱に翻弄されることとなる。
映画
鬼龍院花子の生涯 | |
---|---|
監督 | 五社英雄 |
脚本 | 高田宏治 |
原作 | 宮尾登美子 |
製作 | 奈村協・遠藤武志 |
製作総指揮 | 佐藤正之・日下部五朗 |
出演者 |
仲代達矢 夏目雅子 |
音楽 | 菅野光亮 |
撮影 | 森田富士郎 |
編集 | 市田勇 |
製作会社 | 東映・俳優座映画放送 |
配給 | 東映 |
公開 | 1982年6月5日 |
上映時間 | 146分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | \1,100,000,000[1] |
1982年(昭和57年)6月5日に封切り公開。製作は東映。松恵(夏目雅子)の「なめたらいかんぜよ!」が当時の流行語となり、夏目のヌードも話題となった。彼女は第25回(1982年度)ブルーリボン賞で主演女優賞を獲得し、11億円の配給収入を上げた[1]。尚、当初「松恵」役は大竹しのぶの予定であった。
キャスト
- 鬼龍院政五郎:仲代達矢
- 松恵:夏目雅子
- 歌:岩下志麻
- 少女時代の松恵:仙道敦子
- つる:佳那晃子
- 花子:高杉かほり
- 牡丹:中村晃子
- 笑若:新藤恵美
- 相良:室田日出男
- 兼松:夏木勲
- 六蔵:佐藤金造
- 丁次:アゴ勇
- 精:益岡徹
- 冬喜:松野健一
- 熊:古今亭朝次
- 辰吉:淡九郎
- 太市:広瀬義宣
- 太刀山:大川ひろし
- 天神文吉:宮川珠季
- 秋本要造:林彰太郎
- ちょろ松:勝野賢三
- 山村建彦:岩下浩
- 権藤哲男:誠直也
- 山根勝:梅宮辰夫
- 駒田重蔵:岩尾正隆
- 辻原徳平:成田三樹夫
- 梅田貫吉:内田稔
- 田辺源一郎:小沢栄太郎
- 白井善七:谷村昌彦
- きよ:清水郁子
- 近藤:役所広司
- 宮崎:笹木俊志
- 加藤医師:浜田寅彦
- 島田刑事:宮城幸生
- きわ:富永佳代子
- 龍松一家の刺客:福本清三
- 末長平蔵:内田良平
- 秋尾:夏木マリ
- 田辺恭介:山本圭
- 須田宇市:丹波哲郎
- 三日月次郎:綿引洪
スタッフ
テレビドラマ(1984年)
ドラマ |
1984年(昭和59年)7月17日~8月21日まで毎日放送制作・TBS系列にて放映。放映時間は毎週火曜日21:00~21:54。全6話。
キャスト
スタッフ
主題歌
- 池上季実子「流されて」(ビクター、SV-7402)
サブタイトル
- 逃げたらいかんぜよ(7月17日)
- 惚れたらいかんぜよ(7月24日)
- 死んだらいかんぜよ(7月31日)
- 負けたらいかんぜよ(8月7日)
- 泣いたらいかんぜよ(8月14日)
- なめたらいかんぜよ(8月21日)
テレビドラマ(2010年)
2010年(平成22年)6月6日にテレビ朝日系にてスペシャルドラマとして放映。主演は観月ありさ。視聴率13.9%。
メインの観月と岡田浩暉はフジテレビ系ドラマで映画化もされた『ナースのお仕事』でも共演していた。また“御前”こと須田役の夏八木は、映画版(当時は「夏木勲」名義)では兼松を演じていた。
ストーリー
貧しい家に生まれた主人公・松恵は6歳のとき、跡継ぎにと望まれた兄の"おまけ"として、子どものいない鬼龍院政五郎の養女に入る。成長した松恵は政五郎の反対を押し切って進学し小学校教師として働きはじめるが、やがて初めての恋を経験。しかし、その恋に訪れたのは、酷く、悲しい結末だった...。"おまけの子"である自分にとって、この家での居場所はどこにもない...そう感じていたはずの松恵。だが、大きな悲しみの中で、次第に血のつながらない妹・花子、義理の母・歌、そして義父・政五郎への愛を見出し、自分が"鬼龍院の娘"であることを痛感していく。
キャスト
- 林田松恵(鬼龍院松恵):観月ありさ(幼少期:北村沙羅)
- 田辺恭介:岡田浩暉
- 林田花子(鬼龍院花子):宮本真希
- つる:芳本美代子
- 笑若:高橋由美子
- 兼松:今井雅之
- 辻原誠(市川嵐):川岡大次郎
- 田辺聡子(恭介の妹):小島可奈子
- 冬喜:斉藤慶太
- 田辺英介(恭介の父):山本紀彦
- 魚徳:若林哲行
- 遠山一郎(医者):藤田宗久
- 権藤哲夫:石倉英彦
- 市川嵐蔵:山内としお
- 夕子:北村沙羅(二役)
- 精(鬼政の子分):木下通博
- 熊(鬼政の子分:杉山幸晴
- 荒磯:名高達男
- 須田保次郎:夏八木勲
- 林田歌(鬼龍院歌):多岐川裕美
- 鬼龍院政五郎(林田恒吉):高橋英樹
- その他:峰蘭太郎、入江毅、いわすとおる、山口幸晴、前川恵美子、田井克幸、窪田弘和、宮本宏司、藤原ひろみ、木谷邦臣、矢部義章、内藤和也、松島紫代、野々村仁、山根誠示、西村龍弥 ほか
スタッフ
- 原作:宮尾登美子(中公文庫)
- 脚本:橋本綾
- 監督:猪原達三
- 音楽:西村由紀江
- 衣装協力:東京衣裳
- プロダクション協力:東映太秦映画村
- チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
- プロデューサー:田中芳之(テレビ朝日)、島田薫(東映)
- 制作:テレビ朝日 、東映
遅れネット局
脚注
- ^ a b “1982年(1月~12月)” (日本語). 過去配給収入上位作品(配給収入10億円以上番組). 一般社団法人日本映画製作者連盟. 2011年12月12日閲覧。