台風の上陸

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日本に上陸する台風 (令和元年台風第19号)

台風の上陸(たいふうのじょうりく)とは、台風の中心が北海道本州四国九州の海岸に達することをいう[1]。「台風の接近」あるいは「台風の通過」とは意味が異なる。

概要

日本の気象庁は、台風の上陸接近通過について、それぞれ次のように定義している[2]

上陸 台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合を言う[2]。ただし、陸地を約10km以上進まなければ通過に分類される[3]
接近 ある地点への台風の接近:台風の中心が、その地点を中心とする半径300km以内の域内に入ること[2]
ある広がりをもった地域(地方予報区など)への台風の接近:台風が、その地域の地理的な境界線(海岸線、県境など)から半径300km以内の域内に入ること[2]
通過 台風の中心が、小さい島や小さい半島を横切って、短時間で再び海上に出る場合を言う[2]

日本を本土(本州・北海道・九州・四国)とそれ以外に分けると、台風の接近・通過・上陸は次のように起こりうる[4]

接近 通過 上陸
日本 本土 ○(接近→通過) ○(接近→上陸、上陸と通過の両方を記録する場合もあり)
本土以外 ○(接近→通過) ×

したがって、台風の中心が北海道・本州・四国・九州以外の島の海岸に至っても上陸とは言わないため、沖縄県に台風が上陸することはない[5]。日本本土への接近と言う場合は、北海道・本州・四国・九州のいずれかへの接近を指す[2]

気象庁では、上陸・通過した時刻については、1時間を正時及び15分、30分、45分を中心とした15分間に4分割して、それぞれ「時頃」、「時過ぎ」、「時半頃」、「時前」と表現し、最も適した時間帯を用いることとしている[2]

日本には、平均して、毎年11個前後の台風が接近し、そのうち平均3個くらいが本土に上陸する。しかし、日本に上陸する台風の数は年によって異なる。2004年には異例となる10個もの台風が上陸し、上陸数の記録を更新した(2004年の台風集中上陸)。その一方で1984年1986年2000年2008年2020年のように台風が全く上陸しなかった年もある。

台風の年間日本上陸数
上陸数が多い年 上陸数が少ない年
順位 上陸数 順位 上陸数
1 2004年 10 1 2020年 2008年 2000年
1986年 1984年
0
2 2016年 1993年 1990年 6 6 2023年 2009年 1995年 1987年 1980年
1977年 1973年 1957年
1
5 2019年 2018年 1989年 1966年
1965年 1962年 1954年
5

台風が日本本土に上陸するのは多くが7月から9月であり、年間平均上陸数は8月が最も多く、9月がこれに次ぐ。8月は、太平洋高気圧が日本付近を覆い、台風が接近しにくい状況ではあるが、台風発生数も最も多く、また高気圧の勢力には強弱の周期があるため、弱まって退いた時に台風が日本に接近・上陸することが多い。無論、西に進んでフィリピン台湾中国に上陸したり朝鮮半島方面に進んだりするものも少なくない。6月や10月にも数年に1度程度上陸することがある。最も早い例では1956年4月25日台風3号が鹿児島県に上陸したことがあり、最も遅いものとしては、1990年11月30日に台風28号が紀伊半島に上陸した例がある。

上陸日時が(一年の中で)早い台風
順位 名称 国際名 上陸日時 上陸地点
1 第03号/昭和31年台風第3号 Thelma 1956年4月25日 7時30分 46鹿児島県/大隅半島南部
2 第06号/昭和40年台風第6号 Amy 1965年5月27日 12時 12千葉県/房総半島
3 第04号/平成15年台風第4号 Linfa 2003年5月31日 6時30分 38愛媛県宇和島市付近
4 第02号/ジュディ台風(昭和28年台風第2号) Judy 1953年6月7日 9時 43熊本県八代市付近
5 第04号/平成16年台風第4号 Conson 2004年6月11日 16時 39高知県室戸市付近
6 第03号/昭和38年台風第3号 Rose 1963年6月13日 22時 39高知県宿毛市付近
7 第04号/平成24年台風第4号 Guchol 2012年6月19日 17時 30和歌山県南部
8 第07号/平成9年台風第7号 Opal 1997年6月20日 11時30分 23愛知県豊橋市付近
9 第03号/昭和53年台風第3号 Polly 1978年6月20日 18時 42長崎県/西彼杵半島
10 第06号/平成16年台風第6号 Dianmu 2004年6月21日 9時30分 39高知県室戸市付近
上陸日時が(一年の中で)遅い台風
順位 名称 国際名 上陸日時 上陸地点
1 第28号/平成2年台風第28号 Page 1990年11月30日 14時 30和歌山県白浜町
2 第34号/昭和42年台風第34号 Dinah 1967年10月28日 3時30分 23愛知県南部
3 第21号/平成29年台風第21号 Lan 2017年10月23日 3時 22静岡県掛川市付近
4 第23号/平成16年台風第23号 Tokage 2004年10月20日 13時 39高知県土佐清水市付近
5 第26号/昭和30年台風第26号 Opal 1955年10月20日 12時 30和歌山県田辺市付近
6 第20号/昭和54年台風第20号 Tip 1979年10月19日 9時30分 30和歌山県白浜町付近
7 第10号/平成10年台風第10号 Zeb 1998年10月17日 16時30分 46鹿児島県枕崎市付近
8 第19号/昭和62年台風第19号 Kelly 1987年10月17日 0時 39高知県室戸市付近
9 第15号/ルース台風
(昭和26年台風第15号)
Ruth 1951年10月14日 19時 46鹿児島県いちき串木野市(現)付近
10 第19号/平成26年台風第19号 Vongfong 2014年10月13日 8時30分 46鹿児島県枕崎市付近

九州四国紀伊半島などは、日本でも特に台風の上陸が多く、毎年のように暴風雨に襲われる。1951年から2020年までの統計で、台風の上陸数が最も多い都道府県鹿児島県であり、高知県がこれに次ぐ[6]。なお、1951年から2007年までの統計で、台風の接近数が多い都道府県と数は、沖縄県が422個、東京都伊豆諸島小笠原諸島を含む)が319個、鹿児島県が274個である。Template:上陸台風が多い都道府県 台風は、上陸する直前までは勢力を保ったままのことも多いが、上陸した後は急速に勢力が衰えることが多い。この原因として、陸地に入って海面からの水蒸気の補給が途絶えることや、陸地との空気の摩擦が増大すること、山地などの影響で台風の構造そのものが崩れること、などが挙げられる。速度が速い台風や大きな台風が陸地の上を少しだけ進む場合には、あまり勢力が衰えないこともある。また、台風が温帯低気圧に変化しつつある場合は、エネルギーの供給源が海面からの水蒸気ではなくなっているため、上陸しても勢力が衰えない場合もある[4]

また、台風が上陸しないからといって、台風の影響を受けないわけではない。上陸しなくとも、台風が陸地のすぐ近くまで接近すれば、大雨や暴風をもたらして被害をもたらすことはしばしば見られる[4]

脚注

  1. ^ 小項目事典, ブリタニカ国際大百科事典. “台風の上陸(たいふうのじょうりく)とは”. コトバンク. 2021年4月22日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 気象庁|予報用語 台風に関する用語”. www.jma.go.jp. 気象庁(一部改変). 2021年4月22日閲覧。
  3. ^ 日本経済新聞:台風の「上陸」と「通過」の違いは
  4. ^ a b c デジタル台風:台風の上陸・接近・通過の定義”. agora.ex.nii.ac.jp. 2021年4月22日閲覧。
  5. ^ 台風の上陸とは? |お天気.com”. お天気.com. 2021年8月18日閲覧。
  6. ^ 気象庁|上陸数”. www.data.jma.go.jp. 2020年6月26日閲覧。

外部リンク