中央競馬クラシック三冠
中央競馬クラシック三冠（ちゅうおうけいばクラシックさんかん）とは中央競馬で行われる皐月賞・東京優駿（日本ダービー）・菊花賞の3競走を指す。単に三冠競走とも称する[1]。
また、牝馬限定の桜花賞・優駿牝馬（オークス）・秋華賞の牝馬三冠についても記述する。
概要
イギリスのクラシック三冠戦を範として誕生した、現在も中央競馬で3歳牡馬・牝馬により行われる競走である。このうち牝馬のみ出走が可能なのが桜花賞、優駿牝馬、秋華賞であり、この3競走が牝馬三冠と呼ばれる。
（牝馬含めた）三冠のうち、秋華賞のみがクラシック競走に含まれていない（イギリスクラシックに相当する競走が無い）。1996年に秋華賞が創設されるまで、エリザベス女王杯（1976年～、現在は古馬にも解放）、ビクトリアカップ（1970～1975年）が牝馬三冠競走の一環として行われており、それ以前の日本に現在の牝馬三冠目にあたる競走は存在しなかった。
以下、模範となったイギリスのクラシック各競走と、日本でクラシック三冠または牝馬三冠全てに優勝した競走馬（三冠馬）を記す（三冠馬以外のクラシック競走勝利馬については「中央競馬クラシック競走優勝馬一覧」を参照）。
クラシック三冠
| 開催順 | 競走名 | イギリスクラシックで相当する競走 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 1 | 皐月賞 | 2000ギニー | [2] |
| 2 | 東京優駿（日本ダービー） | ダービーステークス | [3] |
| 3 | 菊花賞 | セントレジャーステークス | [4] |
| 達成順 | 年度 | 馬名 | 騎手 | 出典・備考 | 達成時の成績 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 皐月賞 | ダービー | 菊花賞 | |||||
| 1 | 1941年（昭和16年） | セントライト | 小西喜蔵 | [5][注 1]GI（級）勝利はクラシックのみ、かつクラシックを最後に現役を引退。 | 12戦9勝 | ||
| 第3回 | 第10回 | 第4回 | |||||
| 2 | 1964年（昭和39年） | シンザン | 栗田勝 | [6]日本中央競馬会となってからは初制覇。 | 11戦8勝 | ||
| 第24回 | 第31回 | 第25回 | |||||
| 3 | 1983年（昭和58年） | ミスターシービー | 吉永正人 | [7]父内国産馬としては初制覇。 | 9戦7勝 | ||
| 第43回 | 第50回 | 第44回 | |||||
| 4 | 1984年（昭和59年） | シンボリルドルフ | 岡部幸雄 | [8][9]初の無敗三冠 | 8戦8勝 | ||
| 第44回 | 第51回 | 第45回 | |||||
| 5 | 1994年（平成6年） | ナリタブライアン | 南井克巳 | [10]当時唯一の2歳GIである朝日杯3歳ステークス優勝馬の牡馬三冠は史上初。 | 13戦9勝 | ||
| 第54回 | 第61回 | 第55回 | |||||
| 6 | 2005年（平成17年） | ディープインパクト | 武豊 | [11]無敗三冠、2020年達成のコントレイルの父。 | 7戦7勝 | ||
| 第65回 | 第72回 | 第66回 | |||||
| 7 | 2011年（平成23年） | オルフェーヴル | 池添謙一 | [12]父・母・母父すべてが内国産馬としては初制覇。 | 10戦6勝 | ||
| 第71回 | 第78回 | 第72回 | |||||
| 8 | 2020年（令和2年） | コントレイル | 福永祐一 | [13]世界初の父子2世代での無敗三冠[14][注 2]。
GI昇格後のホープフルステークス優勝馬として初の牡馬三冠達成。 |
7戦7勝 | ||
| 第80回 | 第87回 | 第81回 | |||||
牝馬三冠
| 開催順 | 競走名 | イギリスクラシックで相当する競走 | 出典・備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 桜花賞 | 1000ギニー | [15] |
| 2 | 優駿牝馬 （オークス） |
オークス | [3] |
| 3 | 秋華賞 | なし | 1996年創設[16] |
| エリザベス女王杯 /ビクトリアカップ |
1995年まで[17] |
| 達成順 | 年度 | 馬名 | 騎手 | 出典・備考 | 達成時の成績 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 桜花賞 | オークス | 秋華賞 | エリザベス女王杯 | |||||
| 1 | 1986年（昭和61年） | メジロラモーヌ | 河内洋 | 3冠目はエリザベス女王杯[18] | 11戦9勝 | |||
| 第46回 | 第47回 | - | 第24回 | |||||
| 2 | 2003年（平成15年） | スティルインラブ | 幸英明 | [19] | 7戦5勝 | |||
| 第63回 | 第64回 | 第8回 | - | |||||
| 3 | 2010年（平成22年） | アパパネ | 蛯名正義 | [20]優駿牝馬はサンテミリオン（横山典弘騎乗）と同着[21]
2歳牝馬唯一のGI阪神ジュベナイルフィリーズの優勝馬の牝馬三冠は史上初 |
9戦6勝 | |||
| 第70回 | 第71回 | 第15回 | - | |||||
| 4 | 2012年（平成24年） | ジェンティルドンナ | 岩田康誠 川田将雅 |
[22]優駿牝馬のみ川田将雅が騎乗 乗り代わり有りでは唯一の三冠達成 |
8戦6勝 | |||
| 第72回 | 第73回 | 第17回 | - | |||||
| 5 | 2018年（平成30年） | アーモンドアイ | C.ルメール | [23] | 6戦5勝 | |||
| 第78回 | 第79回 | 第23回 | - | |||||
| 6 | 2020年（令和2年） | デアリングタクト | 松山弘平 | 史上初となる無敗での牝馬三冠[24] | 5戦5勝 | |||
| 第80回 | 第81回 | 第25回 | - | |||||
主な記録
変則三冠
連続した年の三冠達成記録
- 年を連続しての三冠の達成はこれまでに2度あり、1度目はミスターシービーとシンボリルドルフが2年連続で達成し、2度目はアパパネ→オルフェーヴル→ジェンティルドンナが3年連続で達成した事例がある。また、2020年にはデアリングタクトとコントレイルが共に無敗で三冠を達成し、同一年での牡牝三冠の初めての事例となった。なお、コントレイルはジェンティルドンナ以来二例目の父子三冠達成であり、父子二代での無敗三冠達成は初めての事例となった。
三冠馬同士の対決
中央競馬での三冠馬同士の直接対決は過去に3例・5レースある。特に第40回ジャパンカップでは、世界初となる3頭の三冠馬による対決が実現した[27][28][29]。
- 第4回ジャパンカップ（1984年）：シンボリルドルフ-3着/ミスターシービー-10着（勝ち馬：カツラギエース）
- 第29回有馬記念（1984年）：シンボリルドルフ-1着/ミスターシービー-3着
- 第91回天皇賞・春（1985年）：シンボリルドルフ-1着/ミスターシービー-5着
- 第32回ジャパンカップ（2012年）：ジェンティルドンナ-1着/オルフェーヴル-2着
- 第40回ジャパンカップ（2020年）：アーモンドアイ-1着/コントレイル-2着/デアリングタクト-3着
なお、世界的には三冠馬同士が対決すること自体が極めて少なく、下記の3例のみである。
- 1960年ブラジル大賞（ブラジル）：ファーウェル（サンパウロ地区三冠馬）-1着/エスコリアル（リオデジャネイロ地区三冠馬）-2着
- 1978年マールボロカップ（アメリカ）：シアトルスルー（1977年三冠馬)-1着/アファームド（1978年三冠馬）-2着
- 1978年ジョッキークラブゴールドカップステークス（アメリカ）：シアトルスルー-2着/アファームド-5着（勝ち馬：エクセラー）
脚注
- ^ 当時のレース名は皐月賞が横濱農林省賞典四歳呼馬、菊花賞が京都農林省賞典四歳呼馬。
- ^ アメリカ三冠ではギャラントフォックスとオマハの父子が三冠を達成しているが、どちらもデビュー戦にて敗戦している。
出典
- ^ 「三冠馬物語」 - JRA公式サイト
- ^ 特別レース名解説（3回中山） - JRA公式サイト
- ^ a b 特別レース名解説（2回東京） - JRA公式サイト
- ^ 特別レース名解説（4回京都） - JRA公式サイト
- ^ 黒鹿毛の勇者 セントライト - JRA公式サイト内顕彰馬紹介ページ
- ^ 最強の戦士 シンザン - JRA公式サイト内顕彰馬紹介ページ
- ^ 奇跡の豪脚 ミスターシービー - JRA公式サイト内顕彰馬紹介ページ
- ^ 第5回ジャパンカップ優勝 シンボリルドルフ - JRA公式サイト内名馬の蹄跡
- ^ 七冠馬 シンボリルドルフ - JRA公式サイト内顕彰馬紹介ページ
- ^ 名馬で振り返る50年 時代を駆け抜けた名馬たち ナリタブライアン - JRA50周年記念サイト
- ^ 空飛ぶ英雄 ディープインパクト - JRA公式サイト内顕彰馬紹介ページ
- ^ JRAホームページ｜データファイル｜競走成績データ 第72回 菊花賞
- ^ “2020年 菊花賞 JRA”. www.jra.go.jp. 2020年10月25日閲覧。
- ^ “【菊花賞】コントレイル 父ディープインパクト 親子2代での牡馬三冠 空前絶後の大記録は達成されるのか（テレビ東京スポーツ） - Yahoo!ニュース”. web.archive.org (2020年10月27日). 2020年10月27日閲覧。
- ^ 特別レース名解説（3回阪神） - JRA公式サイト
- ^ 特別レース名解説（4回京都） - JRA公式サイト
- ^ 特別レース名解説（5回京都） - JRA公式サイト
- ^ 名馬で振り返る50年 時代を駆け抜けた名馬たち メジロラモーヌ - JRA50周年記念サイト
- ^ 咲き誇れ、3つの大輪 スティルインラブ - JRA公式サイト内 競馬コラム
- ^ JRAホームページ｜データファイル｜競走成績データ 第15回 秋華賞
- ^ JRAホームページ｜データファイル｜競走成績データ 第71回 優駿牝馬（オークス）
- ^ JRAホームページ｜データファイル｜競走成績データ 第17回 秋華賞
- ^ JRAホームページ｜データファイル｜競走成績データ 第23回 秋華賞
- ^ “【秋華賞】史上初の快挙！デアリングタクトが無敗牝馬３冠制覇”. サンスポZBAT！競馬 (産経デジタル). (2020年10月18日) 2020年10月18日閲覧。
- ^ 最強の牝馬 クリフジ - JRA公式サイト内顕彰馬紹介ページ
- ^ 昭和18年（1943年） 阪神優駿牝馬（オークス）優勝馬 史上最強牝馬 クリフジ - JRA公式サイト内 JRA Video Interactive
- ^ 東京スポーツ 2020年11月7日号 1面。
- ^ 集英社『週刊プレイボーイ』2020年11月16日号 p169-171「現役最強をかけたドリームマッチは実現するのか?コントレイルvsデアリングタクトvsアーモンドアイ 夢の三冠馬対決完全シミュレーション」
- ^ 日刊ゲンダイ 2020年11月27日号（2020年11月26日発行）
