メジェド
メジェド(英: Medjed)は古代エジプト神話において2つの意味があり、どちらもオシリスに関連している。ひとつは死者の書において言及される神、もうひとつは神聖なものとして崇拝されていた魚の一種である。
神
死者の書の第17章では、他のよくわからない神々とともにメジェド(「打ち倒す者」の意)について次のような言及がある。
「私はそれらの中で打ち倒す者の名を知っている。それはオシリスの家におり、目によって撃ち、姿は見えない。」[1]
この神についてはそれ以外はなにもわかっていない[1]。
ウォーリス・バッジによる古い翻訳における該当箇所の内容は以下のとおり。なお第17章はアニのパピルスとネプセニのパピルスからの翻訳とされているが該当箇所の原典がどちらかは不明。
「願わくは(死者の魂を害しようとする)彼等の屠殺刀をして決して我を支配せしめざらんことを。願わくは我をして彼等の残忍の機械下に陥らしめざらんことを。何となれば我は彼等の名を知ればなり。而して我はオシリスの家に住う彼等の中に居て、己の眼よりは光を放ちながら、而も他には見らるることなきマアチェトなる者(「打ち倒す者」)を知ればなり。彼は天を巡囘するに、己れの口より出ずる焔を着用し、(ナイルの神)ハアビを命令しながら、而も他に見らるることなし。願わくは我をして此世に於てラアの前に強からしめ給わんことを。」[2]
(日本語訳:田中達、カッコ内は本記事執筆時における補足)
グリーンフィールド・パピルスの紙片76における図像では、メジェドと考えられるもの[1]が、脚と目が見えるほかは錐形のもので覆われたものとして描かれている。2014年現在[update]、この絵は日本においてインターネット・ミームとして広まっており、たとえばTwitterでの活動をはじめ、LINEスタンプやビデオゲームのキャラクターになっている[3]。
魚類
"メジェド"には、古代エジプトのオクシリンコスにおいて崇拝されていたモルミルス科の一種の意味もある。この魚は、オシリスがセトによってバラバラにされ肉体をばらまかれたあとで、その陰茎を食べたと信じられている。上エジプトの居住地のひとつであるペルメジェド(Per-Medjed)はこの魚が由来であり、現在ではギリシャ風のオクシリンコスという名前で知られている[4]。
この魚はナイル川では広く見られる中型の淡水魚である。エジプトやほかの絵画において描かれている。モルミルスの一部の種は下向きに曲がった独特の吻を持ち、これは魚類学者や愛好家からはエレファントノーズという名前で呼ばれている。オクシリンコスにおいて神聖なメジェドとして知られている種はモルミルスの典型的な特徴を多くもっている。長い臀鰭、小さな尾鰭、広く大きな腹鰭と胸鰭、それに長く下向きに曲がった吻などである[5]。
出典
- ^ a b c “What is a Book of the Dead?”. British Museum (2010年9月22日). 2015年4月17日閲覧。
- ^ A. E. Wallis Budge 著、田中達 訳『死者の書(上)』世界聖典全集刊行会〈世界聖典全集第10巻〉、1920年、99頁 。
- ^ Twang, Kuanyi (2014年5月2日). “Big Brother Flying Medjed And The King Of Fear’s Curse Review: way cool, but also way too hard”. Games in Asia 2015年4月17日閲覧。
- ^ Blumell, Lincoln H. (2012). Lettered Christians: Christians, Letters, and Late Antique Oxyrhynchus. BRILL. p. 1. ISBN 9789004180987 Fn. 3 and 4, referring also to Plutarch, De Iside et Osiride 353C.
- ^ “Bronze statuette of Oxyrhynchus fish: date uncertain”. Imaging Papyri Project (1998年). 2007年5月25日閲覧。