ホルモン焼き

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。111.64.11.6 (会話) による 2012年5月11日 (金) 03:05個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (See WP:DATED)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ホルモン焼き(ホルモンやき)とは、内臓肉(もつ)を焼く料理。狭い意味では、小腸大腸を、広い意味では、それらの他、肝臓心臓腎臓子宮などを用いる。かつては焼肉専門店や屋台などで供される料理であったが、近年[いつ?]、味付けされたパック製品が流通し、家庭でも手軽に味わえるようになった。

語源

ホルモンの語源には諸説あるが、内臓は食用の筋肉を取った後の捨てる部分なので、大阪弁で「捨てるもの」を意味する「放(ほお)るもん」から採られたという説(この説を採る代表例は、焼肉の食道園)と、安くて不気味な内臓肉の印象を向上させる為に、生理活性物質のホルモン(戦後に流行語となった)にあやかって、内臓を食べると精力がつきそうな印象から名付けられたとする説(この説を採る代表例は、西心斎橋の洋食屋の「北極星」)が有る。 「北∞ホルモン」という単語が北極星産業株式会社により昭和12年3月13日に商標が出願され、昭和15年9月16日に商標が取得されている。称呼は「ホルモン, キタホルモン, キタ」。区分は『30 牛の臓器より抽出したホルモンを含有した味噌』となっている。

なお、「大阪風味 - くいだおれ大阪どっとこむ!」の北極星の項目によると、「放る(捨てる)もん」を使っているという意味でも、また、内臓料理にはホルモンが含まれているという意味でも、「ホルモン料理」という名が付けられ定着してきた、との説明がある。

特例社団法人日本食肉協議会は平成23年1月発行の普及啓発資料『畜産副生物の知識』において、「ホルモン」の語源について以下の様に解説している。

ホルモンの語源は、大阪弁の「捨てるものを意味する『放るもん』」説や、医学用語であるドイツ語のHormon(ホルモン)、英語のhormoneは、動物体内の組織や器官の活動を調節する生理的物質の総称から、栄養豊富な内臓を食べると、活力がつくとして名付けられた説など諸説あります。 ホルモン料理の名称は戦前から存在し、戦前においては、内臓料理に限らず、スタミナ料理一般、例えば、スッポン料理などもホルモン料理と呼ばれていたことから、ホルモンは「放るもん」ではないと思われます。明治維新のころの西洋医学(主にドイツ)の影響を受け、栄養豊富で活力がつくとして名付けられた説が主流であるものと思われます。

— 社団法人日本食肉協議会、畜産副生物の知識(3)食肉消費の歴史と畜産複製物, pp.30 (PDF)

平成18年3月15日放送のテレビ番組「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」のガセビアの沼コーナー第42回においては、「ほおるもん = ホルモン」説は誤りであるとして紹介されていた。その根拠は上述の「畜産副生物の知識」の説明と同一である。

健康

田中聡著『健康法と癒しの社会史』(青弓社、1996年)によると、昭和初期、「ホルモン」は「生命の基となる物質」にして「若返りの秘薬」であり、人間や動物の内蔵・血液に多く含まれていると考えられていたという。昭和11年には東京・赤十字博物館で「ホルモン・ビタミン展覧会」なる展覧会が開かれ、「東洋古来のホルモン思想」と題された掲示の中で、「種々の臓物や血液」、「人血や生膽」がかつて秘薬として珍重されていたことが紹介され、また臓物を使った「ホルモン料理」の実演も行われた(『健康法と癒しの社会史』、pp.68-71, 80.)。

コラーゲンが含まれており美容に良いと広く信じられているが、コラーゲンを摂取すればコラーゲンの形で吸収される事は実証されていない。またプリン体を多く含み、これは痛風の原因となる。

トンチャン・とんちゃん

ホルモンの例(豚の小腸)

ホルモンのことをトンチャンともいう。トンチャンは朝鮮語のトン[糞]、チャン[臓][腸]を意味するもので、小腸・大腸という意味である。「豚(トン)ちゃん」という意味ではない。宮城県岩沼市(岩沼とんちゃん)や岐阜県ではホルモン焼き料理そのものを指してトンチャンとんちゃんとも称する。山口県下関市では『とんちゃん鍋』という独特のホルモン鍋が名物の一つとなっている。

なお、岐阜県飛騨奥美濃地方では『鶏ちゃん(ケイチャン)』と呼ばれる鶏肉料理があるが、これは鶏の内臓肉を用いるわけではない。

調理方法

  • 焼肉 - 焼網などを使ってホルモンを直焼きにする。
  • 鉄板焼き - 下味をつけたホルモンを鉄板の上で焼く。
  • 串焼き - 焼き鳥と同じ要領でホルモンを串に刺し、タレなどで味付けして焼く。

部位

一般にホルモン焼きと言えば腸の料理を意味することが多いが、専門店や内臓食に縁の深い地域ではどの部位にするか聞かれることが多い。

地域性

気仙沼ホルモン
厚木シロコロ・ホルモン
  • 北海道旭川市北見市周辺では豚ホルモンが特に好まれ、焼肉店に行ってもホルモンをメインに食べる人が多い。旭川市では、野菜炒めや焼きそばにホルモンが用いられることもある。また、ラーメンの上にホルモン焼きが載っている「モルメン」や、日本そばの上にモツが載っている「もつそば」もある。
  • 旭川市は塩ベースの調味液につけた「塩ホルモン」の発祥地である。豚トロも旭川発祥である。
  • 宮城県気仙沼市では、遠洋漁業が発達し始めた昭和30年頃から「気仙沼ホルモン」と呼ばれる独特の豚ホルモン焼きが市民に広まった。特徴は3つあり、1つ目は白モツ赤モツをミックスした生のモツを用いること。2つ目は味噌ニンニクタレに漬け込むこと。3つ目は付け合せの千切りキャベツウスターソースをかけて食べることである。
  • 宮城県岩沼市では、生の豚のモツをジンギスカン鍋で焼く、「岩沼とんちゃん」と呼ばれるホルモン焼きが一般的である。
  • 埼玉県秩父市では、豚のホルモン焼き店が多く、安価に良質のホルモンを味わうことができる。
  • 神奈川県厚木市では戦後、養豚業が盛んになり、豚の食肉処理場が開設されたことなどから、新鮮な豚肉や内臓が入手しやすく、豚ホルモン焼き店が多く開店した。大腸(シロ)を割かずに管状のまま洗浄し、ボイルしないで生のまま流通されるのが特徴。内側に厚く脂身が残っており、ホルモン焼き店などで網で焼くと丸みを帯びてコロコロになることから「厚木シロコロ・ホルモン」と呼ばれ、味噌ダレをつけて食べられている。
  • 北陸、特に石川県(主に能登地区)では豚腸がよく食べられ能登独自のメーカーが存在する。富山県でも豚腸、福井県では牛モツがよく食される。
  • 大阪市鶴橋駅周辺は在日コリアンが多く、近鉄ホームではホルモン焼きの独特の煙が立ち込めている。
  • 兵庫県佐用町および岡山県美作地方周辺では、ホルモン焼きを焼きうどんの具に用いた「ホルモン焼きうどん」が食べられており、近年ご当地グルメとして売り出している。
  • 九州地方では、小腸をそのまま焼肉として焼いて食べる「丸腸」が焼肉店のメニューとして置かれているのが一般的である(他地域では真ん中に包丁を入れ、開いて出される)。

注意点

  • ブタの体内には、E型肝炎ウイルスが存在することがあることから、ブタのホルモンについては十分に加熱調理する必要がある。ホルモン焼きの肉として、ブタが多く用いられる北海道では、しばしばホルモンから感染した肝炎の発症者が出ることがあり、2004年には死者1名、2006年には重体1名が記録されている。

関連項目

脚注

外部リンク