トヨタ・KZエンジン
トヨタ・KZエンジン | |
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1KZ-TE型ディーゼルエンジン | |
生産拠点 |
豊田自動織機 ダイハツ工業 |
製造期間 |
1993年5月 - 2000年5月 (日本市場向け) |
タイプ | 直列4気筒SOHC |
排気量 | 2.982L |
内径x行程 | 96.0x103.0mm |
圧縮比 | 21.2 |
最高出力 | 103kw(140ps)/3600rpm |
最大トルク | 343N・m(35kgf・m)/2000rpm |
トヨタ・KZエンジンは、トヨタ自動車の水冷直列4気筒ディーゼルエンジンの系列である。
開発の経緯
[編集]小排気量からパワーを搾り出していた2L型(2,446 cc)の各ターボエンジンは、特に車両総重量の大きなRVや商用車において、熱変形によるシリンダーヘッドの割れ、ガスケットの吹き抜け、バルブシートの脱落、ピストンの焼きつき、潤滑不良などのトラブルが多発していた。そのため、過給エンジンは2L型までで、より排気量の大きい3L型(2,799 cc)、5L型(2,985 cc)では自然吸気エンジンのみとなっている。
また、バブル景気を背景に巻き起こったRVブームにより、小型ディーゼル車が急激に増加。幹線道路周辺などで粒子状物質が増加し、大気汚染の一因になっていると批判されるようになり、それに伴い、排出ガス規制は年々厳しさを増していった。設計の古いディーゼルエンジンでは、大量のEGRと過剰な燃料噴射でNOxの発生を抑える策を採るものが多く、その結果、排出される多量の黒煙はディーゼル車にネガティブイメージを与える事にもなった。[1]
これらの問題から、最早L系の改良では高性能商品としての成立が難しい状況であった。そこで、市場でのトラブルフリーとモアパワー、そして環境性能改善に対する要求の高まりへの回答として、新系列のKZ型が開発された。
欧州市場で特に問題となっていたL型系での連続高負荷運転時の熱歪み対策として、1KZ型ではシリンダーは鋳鉄製としつつアルミ製シリンダーヘッドが採用された[2]が、腰下や動弁系の成り立ちはL型系の延長線上にあり、5L型との類似点も多い[要出典]。 燃焼効率向上の為に電子制御を採用し、ガソリン車同様「EFI」の商標が使用されることとなった。
日本の自動車用量産ディーゼルエンジンとしては、初めてEGRを搭載する事となった[要出典]。前述のアルミシリンダーヘッド化、燃料ポンプの変更と、CT12B型ターボによるターボ過給により、燃費向上などの性能向上を実現している。 同時期のエンジンに倣い、商標名を「LASRE」としている。
長期規制適用に際し、TCCS[3]の採用、電磁スピル弁直接駆動式のインジェクションポンプ、シリンダーヘッドおよび燃焼室形状の最適化[4]、インタークーラーの追加採用、酸化触媒や電子制御式吸気絞り機構、水冷式EGRクーラ及びE-EGR[5]の採用と変更がなされている。これにより、グランビアにおいてマイナーチェンジ前後で7kw(10ps)/54Nm(5.5kgf)の出力向上を実現している[6]。
KZ型系では3.0 L以外の排気量は設定されていない。コースター用を除く日本国内向けの乗用登録用ディーゼルエンジンとしては、後継の1KD型同様、トヨタのラインナップ中最大排気量となる。
系譜
[編集]- エンジン型式一覧の自動車用エンジンの系譜を参照。
型式
[編集]1993年5月登場
過流室式ディーゼルエンジン
水冷直列4気筒SOHC
燃料供給方式:電子制御式分配型噴射ポンプ
弁形式:ベルト駆動直打式OHC
ターボ / インタークーラー付きターボ
1KZ-TE - 3000cc
[編集]トヨタ・1KZ-TE | |
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生産拠点 | 日本 |
製造期間 | 1993年5月-2002年 |
タイプ | 直列4気筒SOHC |
排気量 | 2,982cc |
内径x行程 | 96mm×103mm |
圧縮比 | 21.2 |
最高出力 |
96kW(130PS)/3600rpm[7] 103kW(140PS)/3600rpm(インタークーラー付き)[8] 96kW(130PS)/3600rpm(インタークーラー付き) |
最大トルク |
289.3N・m (29.5kg・m)/2000rpm[9] 343.0Nm (35.0kg・m)/2000rpm(インタークーラー付き)[10] 333.4Nm (34.0kg・m)/2000rpm(インタークーラー付き) 331.4Nm (33.8kg・m)/2000rpm(インタークーラー付き) |
- (初)ランドクルーザープラド70系(1993年5月)
- (初)4ランナー / ハイラックスサーフ130系(1993年8月)
- インタークーラー付き ランドクルーザープラド90系(1996年5月)
- インタークーラー付き ハイラックスサーフ180系(1996年6月)
- ハイエース(KZH100系)
- ハイラックスサーフ(KZN130 / 180 / 210系)
- ランドクルーザープラド(KZJ70 / 90 / 120系)
- グランビア(KCH10系)
- グランドハイエース(KCH10系)
- ツーリングハイエース(KCH40系)
- レジアス(KCH40系)
脚注
[編集]- ^ ディーゼルエンジンから排出されるNOxと黒煙(PM)は相反関係にあり、どちらか一方を低減させると一方が増える。日本のディーゼル車に対する排ガス規制はNOxが主で、黒煙の排出に対しては寛容であった。
- ^ この他にバランスシャフトをギヤ駆動で二対備え振動対策としつつカムはベルト駆動とし、並行してシリンダーヘッドカバーを樹脂製として軽量化も狙っている(モーターファン別冊グランビアのすべて 1995, p. 24-25)
- ^ TOYOTA Computer Controlled System。16bitエンジンコントロールコンピュータ採用で、従前の補正抵抗に替わり補正ユニットを採用
- ^ バルブリセスの追加によりコンバッションチャンバー容積比を58%から64%へ拡大し、バルブシート位置を下げ燃焼室無駄容積を0.8mm削減(グランドハイエース 新型車解説書 1999, p. 1-42)
- ^ リフトセンサ付EGRバルブ等。前記TCCSの指令により吸気絞り機構を用いてEGR率を制御する
- ^ また、並行し特にディーゼルスモークを見えないレベルまで低減と新型車解説書に度々記載される((グランドハイエース 新型車解説書 1999, p. 1-42,1-47)など)ほどに低エミッション性を改善している。
- ^ グランビア(マイチェン前)・インタークーラレスの数値
- ^ ランドクルーザープラド(90系)・グランビア(マイチェン後)・グランドハイエースの数値
- ^ グランビア(マイチェン前)・インタークーラレスの数値
- ^ グランビア(マイチェン後)・グランドハイエースの数値
参考文献
[編集]- モーターファン『別冊第167弾グランビアのすべて』三栄書房〈ニューモデル速報〉、1995年10月8日。
- トヨタテクノサービス(トヨタ自動車株式会社サービス部)『グランドハイエース 新型車解説書』トヨタ自動車株式会社〈新型車解説書〉、1999年8月3日。