インチ

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インチ
inch
記号 in, ″
ヤード・ポンド法
長さ
SI 25.4 mm
定義 112 ft
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1インチ×96dpi 1インチ×72dpi
主要な画面解像度での1インチ。多くのデスクトップPCはこのいずれかに近いがこの間だが、ノートPC携帯機器などでは短すぎに表示されるので注意。

インチ(inch、吋)は、ヤード・ポンド法長さ単位である。現在は1インチは正確に25.4ミリメートルと定められている。

1インチはフィート(フート)の12分の1であり、ヤードの36分の1である。すなわち、1インチ ≒ 0.08333フィート ≒ 0.02778ヤードである。

単位記号

インチの単位記号は、ISOにおいてもJISにおいても「in」と定められている[1]。これを受けて、日本の計量法でも単位記号は「in」としている。(計量単位規則別表第六[1])。

」(ダブルプライム記号) によっても書かれる。例えば「10″」は10インチの意味である。「″」はしばしば、不正確だが「」(閉じ二重引用符)や、ASCIIの「"」(引用符) や「''」(アポストロフィ2つ) とも書かれる。

フィートは「′」(プライム記号) で表記されるので、「5′10″」は5フィート10インチを表す。

なお、「′」と「″」は時間角度を意味しするので、「5′10′」は時間または角度の5分10秒とも読め、文脈によっては混乱を引き起こすおそれがある。

呼び名

インチの長さは、東アジアで用いられる(約3センチメートル)に近い。そこで、中国ではインチのことを「英寸」と呼んでおり、日本では明治時代に「」という国字が作られた。

現在の日本では、計量法の規定により「インチ」そのものを公取引に使えないので、インチ規格を「型」と呼ぶ。たとえば「30型テレビ」など。

国際インチ

「インチ」(またはそれに相当する言葉)は時代によって、また国によって異なった値をとった。それらはほとんど統一されたか、あるいは、統一される前にメートル法の単位に置き換えられた。今日、ほとんどの国において、「インチ」といえばそれは国際インチ (international inch) のことを指す。

国際インチは、正確に0.0254メートル(25.4ミリメートル)と定義されている。この定義は、アメリカ合衆国とイギリス連邦の各国が1958年に合意し、1959年7月1日に発効したヤード(国際ヤード=正確に0.9144m)の定義に基づくものである[2]

新聞などで「1インチ(約2.54cm)」などという記述が今でも見られるが、1インチは2.54cmと定義されており、「約」という表現は不要である。

歴史

由来

元々のインチは、男性の親指(爪の付け根部分)の幅に由来する身体尺だったとされている。古代ローマにおいて、フィートと関連づけられてその12等分した長さが1インチとされた。

インチ (inch) という言葉の語源は、ラテン語で「12分の1」を意味するunciaであり、質量の単位であるオンスと同一語源である。古英語の ynce(ユンケ)を経て、 inch となった。

また、親指の幅であることから「親指幅」とも呼ばれた。現在でも、多くの言語でこの単位は「親指」という言葉に似た、または同じ名称で呼ばれている。

言語 インチ 親指
フランス語 pouce pouce
イタリア語 pollice pollice
スペイン語 pulgada pulgar
ポルトガル語 polegada polegar
スウェーデン語 tum tumme
オランダ語 duim duim

これとは別に、「イングランド王エドワード2世が、大麦の穂の中央から取った3粒を縦に並べた長さを1インチとした」という説もある。1粒の長さをバーレイコーン (barleycorn) というので、1インチは3バーレイコーンとなる。

十進インチ

19世紀、スウェーデンではメートル法への移行が行われた。まず、1855年から1863年までの間で、インチが、フィートの110である十進インチ(約0.03メートル)に置き換えられた。十進法を導入することで計算が単純化されるとして導入されたが、他国で使用されていた112フィートのインチと110フィートのインチの2種類があることで余計に複雑になってしまったことから、1878年から1889年にかけてメートル法の単位が導入されることになった。

イギリスインチとアメリカインチ

イギリスイギリス連邦諸国は、「帝国ヤード標準原器」の12分の1の長さ、約 25.399 8 mm(いわゆる「イギリスインチ」)としていた。

アメリカ合衆国では1893年、メンデンホール令 (Mendenhall Order) により、1インチ=100/3937メートル(いわゆる「アメリカインチ」)と定義された。したがって、1インチ = 約 25.400 050 800 102 mm であった。カナダもこれを採用した。

いくつかの国では、1959年以前に行われた測量の結果の互換性のために、1959年以降も、以前に測量のために使われていた各国ばらばらのフィートの定義を保持している。これを測量フィート (survey foot) という。たとえば、現在もアメリカ合衆国測量フィート (U.S. survey foot) としてアメリカフィートが使われている。ただし、このような制度はフィートのみであり、アメリカインチは同じように使われることはない。

工業での使用

インチサイズで表される工業製品

  • IC、LSI、関連電子部品(特に端子間隔)
  • テレビ受像機ディスプレイモニタブラウン管の対角寸法、FPDでは表示部の対角寸法)
  • フロッピーディスク(媒体の直径)
  • ハードディスクドライブ(媒体の直径)
  • 磁気テープ(媒体幅。なお、長さの単位としてはフィートを使う)
  • コンピュータ関連の、コネクタなど多くの構成部品
  • アメリカ製自動車の、ネジなど構成部品
  • 自転車自動車タイヤ(ホイールの直径)
  • 柱時計の文字盤のサイズ
  • 配管材など(近年ではまず表記されないが、内径はインチ単位がベースである)
  • ネジ土木・建築ではインチ系列であるウイットネジが用いられる場合も多い。
  • パソコン用ネジ3.5インチハードディスクドライブの固定用ねじやパソコン関係には米国が採用しているユニファイネジが用いられる。現在は、直径4mm以上では、ISOネジと互換性がある。
  • 銃火器口径(100分の1インチが1口径である)
  • 楽器のドラム(直径ほか)

()内はインチで表される部分の例

特に、インチ規格部品と、ISO規格部品が混在し、製造上問題になるのは、パーソナルコンピュータなどの電子機器である。

メートル法を使う国々でも、このような、アメリカやイギリスを起源とする商品は、互換性の維持のため、製造設備の設計上の理由、または商慣行上、現在もインチ単位を基準に設計、製造される。

ただし日本の場合、インチという単位表記は計量法商法上、本来は商取引には使用できないので、- 型と表記される場合が多い。または、表記寸法が、単に25.4 mm の倍数となっている。

インチねじ

インチねじは、ねじ山のピッチがISO規格より粗く、インチ単位で作られている。日本国内で生産される商品としては、3.5インチハードディスクドライブの固定用ねじ等に用いられる。現在は、直径4mm以上では、ISOネジと互換性がある。

分量単位

サウ

工学分野では、サウ (thou) またはミル (mil) という単位が国際インチの1000分の1 (25.4 µm) の意味で用いられることがある。今日では、サウやミルは用いず、SI単位を使用すべきとされている[誰?]

ライン

112 インチ = 2.117 mm をライン (line) と呼び、単位記号「‴」(トリプルプライム) で表す。

分・厘

日本では、18インチ = 3.175 mm を(ぶ)と呼ぶことがある[2]大工や機械工などの間で使われる。

インチより細かい長さは2の(2・4・8・16 …)を分母とする分数で表すことが多い。ここで 18 in(= 3.175 mm = 0.104775 = 1.04775)は1分(=0.1寸)に非常に近いため、「18 in ≒ 1分」とみなして、インチ規格を分や、さらにその110(=0.01寸=0.1分)で表す。これらは「1フィート≒1」とみなすことに相当する。

主に使われるのは表の呼び名になる。

インチ mm
6分 34 in 19.0500 mm
5分 58 in 15.8750 mm
4分 12 in 12.7000 mm
3分 38 in 09.5250 mm
2分 14 in 06.3500 mm
1分 18 in 03.1750 mm
5厘 116 in 01.5875 mm

組立単位

平方インチ

平方インチ(square inch)
記号 in2, sq. in.
ヤード・ポンド法
面積
定義 一辺1インチの正方形の面積
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平方インチ(へいほうインチ、Square inch)は、ヤード・ポンド法における面積単位である。1平方インチは、一辺1インチの正方形の面積と定義される。

12インチが1フィートであることから、1平方フィートは144平方インチとなる。1インチが正確に25.4ミリメートルであるので、1平方インチは正確に645.16平方ミリメートルとなる。

1平方インチは以下に等しい。

立方インチ

立方インチ(cubic inch)
記号 in3, cu. in.
ヤード・ポンド法
体積
定義 一辺1インチの立方体の体積
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立方インチ(りっぽうインチ, Cubic inch)は、ヤード・ポンド法における体積単位である。

1立方インチは、一辺1インチの立方体の体積と定義される。1インチが正確に25.4ミリメートルであるので、1立方インチは正確に16,387.064立方ミリメートルに等しい。

1立方インチは以下に等しい。

アメリカでは、エンジン排気量はかつては立方インチで表していた。自動車エンジンについては1980年代に立方インチからリットルに切り換えられ、今日ではそれ以前に製造された自動車についてのみ立方インチが使われている。イギリスでは、当初からリットルまたは立方センチメートル (cc) のみを使用しているが、これはメートル法を使用している他のヨーロッパ諸国と取引する必要があったためと考えられる。

出典

  1. ^ ISO31-1:1992(翻訳は、JIS Z8202-1:2000 量及び単位-第1部:空間及び時間) 付属書A(参考)フート、ポンド及び秒を基本とする単位及びその他の単位 (なお、「これらの単位は、用いない方がよい。」との記述があることに注意)http://kikakurui.com/z8/Z8202-1-2000-01.html
  2. ^ ヤクモ株式会社 単位のイロイロ(後編)

関連項目

長さの単位
メートルSI単位) インチ フィート ヤード 曲尺 鯨尺
1 m = 1 ≈ 39.370 ≈ 3.2808 ≈ 1.0936 = 33 = 3.3 = 2.64
1 in = 0.0254 = 1 ≈ 0.083333 ≈ 0.027778 = 0.8382 = 0.08382 = 0.067056
1 ft = 0.3048 = 12 = 1 ≈ 0.33333 = 10.0584 = 1.00584 = 0.804672
1 yd = 0.9144 = 36 = 3 = 1 = 30.1752 = 3.01752 = 2.414016
1 寸 ≈ 0.030303 ≈ 1.1930 ≈ 0.099419 ≈ 0.033140 = 1 = 0.1 = 0.08
1 尺(曲尺) ≈ 0.30303 ≈ 11.930 ≈ 0.99419 ≈ 0.33140 = 10 = 1 = 0.8
1 尺(鯨尺) ≈ 0.37879 ≈ 14.913 ≈ 1.2427 ≈ 0.41425 = 12.5 = 1.25 = 1