氷と炎の歌の世界
氷と炎の歌の世界では、ジョージ・R・R・マーティン著のファンタジー小説シリーズである『氷と炎の歌』の中に現れる、架空の世界について述べる。
- 本シリーズには岡部宏之による旧訳と、酒井昭伸による新訳が存在し、旧訳と新訳の間では多くの名称の日本語訳が変更されているため、以下においては新訳語を用い、最初に使用された箇所では括弧内に旧訳語を示す。
- 以下の内容は、第四部終了時点でのものである。
この架空の世界にはいくつかの大陸がある。物語の大部分はウェスタロス大陸で起こる。この大陸は七王国と極北の地に二分され、巨大な氷の壁で隔てられている。
ウェスタロス以外にも二つの大陸がある。巨大なエッソス大陸は、〈狭い海〉の東側に位置する。エッソス大陸の、ウェスタロスに最も近い異国は自由都市群であり、エッソス大陸の西岸沿いの独立した都市国家群である。エッソスの南岸沿いはまとめて夏の海の土地と呼ばれており、奴隷商人湾や、ウェスタロスのターガリエン家の王達のかつての故郷である、ヴァリリアの廃墟がある。
ウェスタロスの南側には、ソゾリオス大陸がある。黒い肌の人間が住み、ジャングルが多く、疫病がはびこり、ほとんど探検もされていない、ということ以外はこの大陸について知られていない。
目次 |
ウェスタロス [編集]
氷と炎の歌の物語は、おもにウェスタロス大陸が舞台である。その広さは南アメリカ大陸にほぼ等しい。しかし、極度の低温と、〈野人〉(〈野性人〉)として知られる敵意に充ちた住民のために、極北の地は未踏のままである。北部は南部よりも人口が少ない。 〈征服戦争〉の前はいくつかの独立した王国に分かれていたが、戦争の後、これらの地域が七王国としてターガリエン家の主権のもとに統一され、各地域は一つの名家によって統治されてきた。七王国は次の領域に別れる。
| 旧王国名 | 統治する諸名家 | 本拠地 | 私生児の姓 |
|---|---|---|---|
| 北の王国(北部) | スターク家 | ウィンターフェル | スノウ |
| 鉄諸島の王国 | グレイジョイ家 | パイク | パイク |
| 山と谷間の王国(アリンの谷間) | アリン家 | 高巣城 | ストーン |
| 岩の王国(西部) | ラニスター家 | キャスタリーロック | ヒル |
| 河間平野(リーチ) | タイレル家 | ハイガーデン | フラワーズ |
| 嵐の王国(ストームランド) | バラシオン家 | ストームズエンド | ストーム |
| ドーン | マーテル家 | サンスピア | サンド |
| リヴァーランド(独立した王国ではない) | タリー家 | リヴァーラン | リヴァーズ |
| 王室領(独立した王国ではない) | バラシオン家 | キングズランディング | ウォーターズ |
以上の九つの領域がいわゆる七王国である。正確に言えば、七王国とはターガリエン家にかつて統治された土地を指し、大陸を指すウェスタロスと同義語ではない。七王国は大陸の大半を占めるが、〈壁〉の向こうの極北の地はウェスタロスではあっても七王国の一部ではない。、
ウェスタロスは、何年も続くがその長さは予測できないという、不規則な季節に苦しめられている。氷と炎の歌の序盤において、ウェスタロスは10年も続く夏を満喫していたが、同じくらい長く厳しい冬が来ることを多くの者が恐れている。
北部 [編集]
- ウェスタロスの北半分であり、ウィンターフェルのスターク家によって治められている。北部は広大だが、ハイガーデンの5分の2ほどの住民しかいない、人口希薄な土地である。これはストームランドと同程度の人口であり、ドーンよりは多い。
- ホワイト・ハーバーの街は繁栄した港として描かれている。北部の北の境は、アリセーン女王によって〈冥夜の守人〉(〈夜警団〉)に永久に与えられたニューギフトであり、〈壁〉から50リーグ(240キロメートル)のところにある。
- ネック(地峡)の湿地が北部と南部の境界である。ネックの沼地には、小柄な湖上生活者が住み、ウィンターフェルの旗主(旗手)であるリード家に治められている。狭く通行困難な土地であるがゆえに、この地域は自然な境界であり、南部からの侵略に対する防衛線となっている。このため、北部は〈最初の人々〉の習慣を色濃く残す土地となった。北部に生まれた私生児は、”スノウ”姓を与えられる。
- 主な城はドレッドフォート、カーホールド、トーレンズスクエアなどである。
壁 [編集]
- 七王国の北の境界にある巨大な氷の壁。伝説によれば、北からの脅威に対して七王国を守るために、8000年前にブランドン建設王によって作られた。〈壁〉の北側には七王国の法が及ばない。〈誓約の兄弟〉とも呼ばれる〈冥夜の守人〉が〈壁〉を守備する。通常は〈壁〉の北に住む、七王国の刑罰や徴税から逃れた自由民とその子孫である〈野人〉から〈壁〉を守るが、物語が進むにつれて、超自然的な〈異形〉と、〈異形〉によって死から引き戻され操られる〈亡者〉が真の敵として姿を現す。
- 〈冥夜の守人〉は土地と称号を持たず、妻や子を持たず、家族との絆を断ち切り、七王国の争いには関わらないと誓う。誓いを破ることは死罪に値する。〈守人〉は黒い衣だけをまとうため、〈守人〉に加わることを黒衣を着るともいう。〈冥夜の守人〉に参加することは今でも名誉だと考えられ、身分にかかわらず守人の階級を登ることができる。だが近年は、七王国の防衛のために志願する少数の者のほかは、ほとんどが七王国から追放された犯罪者や裏切り者からなる弱体化した集団となっている。最後に〈異形〉が現れてから数千年が経過したため、七王国においては警戒心が薄れており、〈壁〉の防御は弱まっている。〈守人〉の員数は減り、〈壁〉に沿う19の城のうち、もはや〈黒の城〉、〈海を望む東の物見城〉、〈海辺の東方監視所〉など3城にしか守備隊がいない。〈野人〉は〈壁〉を通り抜けられないが、登って越える者、あるいは船で沿岸を迂回する者がいる。〈守人〉の新入りには役割が与えられる。〈工士〉は壁を補修し、武器を作る。〈雑士〉は日常の雑事を行う。〈哨士〉は戦いと偵察を行う。
- ギフト、ニューギフトと呼ばれる細長い土地が〈壁〉の南にあり、〈冥夜の守人〉はこの土地に補給を頼る。北部に境界を接しながらも、〈壁〉とギフト、ニューギフトは法的に独立しており、法の及ばない土地である。〈壁〉の防衛の補給のため、〈冥夜の守人〉はこの土地の管理を数千年間続けており、ターガリエン家がウェスタロスを征服して七王国を統一した時にも、ターガリエン家に名目上の忠誠を誓わせただけで、〈冥夜の守人〉にこれらの土地の管理を続けさせた。しかし、現在は住人が去っている。
ウィンターフェル [編集]
- 古からのスターク家の本城。冷涼な北部にあるため、城の下にある温泉から温水を壁の中に通して暖房している。城の地下深くには地下墳墓があり、スターク家の先祖が葬られている。代々のウィンターフェル公とかつての北の王の墓には彫像がおかれている。
鉄諸島 [編集]
- ウェスタロス大陸の西岸沖の〈鉄人の入江〉(〈鉄人の湾〉)にある荒涼たる7つの島-パイク、グレート・ウィック、オールド・ウィック、ハーロー、ソルトクリフ、ブラックタイド、オークモント-からなる。これらの島の居住者たちは、ウェスタロス人からは〈鉄人〉と呼ばれ、みずからは〈鉄諸島生まれ〉と名乗っている。彼らはパイクのグレイジョイ家によって治められている。グレイジョイ家は、〈征服戦争〉中にハレン暗黒王(色黒王)の血統が絶えた後、〈鉄人〉たち自身によって選ばれた。エイゴン征服王の到来以前には、〈鉄人〉たちはリヴァーランドと、ウェスタロスの西岸の大部分を治めていた。〈鉄人〉たちは海上では勇猛であり、かつてその海軍は比類なく、西部および南部沿岸への襲撃は、”海の恐怖”として今も恐るべき評判を保っている。鉄諸島を侵略して以降、アンダル人は現地の人間と通婚した。子孫は〈七神正教〉(〈七柱の神々〉の宗教)を奉ずるアンダル人の宗教を信仰することを止め、〈溺神〉(溺れた神)を信仰するようになった。鉄諸島の私生児は”パイク”姓を与えられる。
- 主な城としてテン・タワーズなどがある。
パイク [編集]
- 長年鉄諸島を治めて来たグレイジョイ家の本拠。パイク島の岩だらけの半島の先端に作られている。〈五王の戦い〉以後、パイクの玉座は〈海の石の御座〉(海の石の玉座)と呼ばれる。止むことなく打ちつける波の衝撃が、もともとパイク城が建っていた岩を砕いてしまったため、今や城は、本島に建つ主城と海の中の岩に建ついくつもの小さな塔からなっている。これらの塔は揺れるロープの吊り橋でつながれている。ローズポートは島のもう一方の端にある村で、ボトリー家の城が見下ろす位置にある。
- グレイジョイ家の反乱の際、ローズポートとボトリー家の砦はロバート・バラシオンによって破壊され、パイクは包囲され征服された。ベイロン・グレイジョイはパイク公として残されたが、その息子のシオンは捕虜としてエダード・スタークに里子に出された。反乱の後に、ローズポートは神殿を除いて再建され、ボトリー公は、以前の木材と編み枝の城の代わりに石造りの小城を建てた。
リヴァーランド [編集]
- トライデント河流域に広がる肥沃な土地。この地域はリヴァーランのタリー家の領地である。古の〈川の王〉の没落の後は、さまざまな南部の王国に支配され、〈征服戦争〉の時には鉄諸島のホア家に支配されていた。タリー家はリヴァーランドの王であったことはなく、ハレン暗黒王のもとを去ってエイゴン征服王を選んだ反逆者の貴族であった。リヴァーランドで生まれた私生児は”リヴァーズ”姓を与えられる。
- 主な城としてリヴァーラン、シーガード、メイドンプール、双子城、ハレンの巨城などがある。
ハレンの巨城 [編集]
- ウェスタロスの中央部の湖である〈神の目〉の北岸に位置し、当時リヴァーランドをも支配していた鉄諸島のハレン暗黒王によって、史上最大の城として建設された。黒い石を使って建設され、多くの巨大な塔と一軍を入れられるほどの大広間を持ち、この城はハレンの傲慢さの記念碑である。だがエイゴン征服王が侵略を始めた時、ハレンは工事を終えていなかった。エイゴンのドラゴンの前では、〈ハレンの巨城〉(ハレンホール)の分厚く高い壁も役に立たず、ドラゴンの炎は、城の石とハレンと息子たちを粉砕し、溶かした。ハレンの血統は絶やされ、その王国は征服された。
- ハレンの破滅の後、この城は様々な家によって居住されてきた。長い間には悲惨な末路を迎えた居住者もいたため、城には呪われていると言う悪評がついた。このように巨大な城を維持し兵を配置することが、兵站的にも経済的にも困難であったこともあって、〈ハレンの巨城〉はいわば無用の長物となった。
- 〈五王の戦い〉の開始時において、〈ハレンの巨城〉は荒れ果て、城のごく一部だけが手入れされていた。タイウィン・ラニスターがこの城を奪ったとき、サーセイ王妃は所有権をジャノス・スリントに与えたが、弟で〈王の手〉のティリオン・ラニスターは即座にこの報酬を取り上げ、スリントを〈壁〉に送った。ティリオンは代りに城をピーター・ベイリッシュに与え、それ以来、彼が名目上の所有権を保持しているが、一度も足を踏み入れたことはない。
- 戦争が進むにつれて、〈ハレンの巨城〉には新しい所有者が何人も現れ、幾度となく残虐行為が行われた。〈勇武党〉(〈勇敢組〉)の傭兵たちが城のラニスター家の守備隊を裏切った後、ルース・ボルトンが城を乗っ取った。ボルトンが城を捨てた後は、グレガー・クレゲインが〈勇武党〉を粉砕して城をラニスター家に取り戻した。
リヴァーラン [編集]
- 〈征服戦争〉以来リヴァーランド公であるタリー家の古からの本拠地。タンブルストーン川がトライデント河の赤の支流に流れ込む土地の突端にあり、砂岩を使って建てられた、三角形の城である。城を大きな船に例える者もいる。正門の他にも、〈水車の塔〉からの水路を通って、タンブルストーン川からリヴァーラン城に入ることも可能である。城の二つの側面はタンブルストーン川と、トライデント河の赤の支流に面しており、第三の側面は巨大な人工の濠であり、城が攻められた時には水が入れられる。リヴァーランで最も高いのは巨大な物見の塔であり、ここからは何マイルも先の敵を発見することができる。川と濠による防御と相まって、リヴァーラン城は極めて攻め難い。
- リヴァーランはロブ・スタークが北の王に即位した場所である。古の北の王国には属していなかったトライデント河流域の諸公も、ロブ王を支持し、軍と城を提供した(ただし、ウォルダー・フレイは例外であった)。五王の戦いの当初、ジェイミー・ラニスター(ジェイム・ラニスター)は大軍でリヴァーランを包囲したが、〈囁きの森の戦い〉でロブ・スタークに敗れて捕虜となった。その軍は後に殲滅された。後にタイウィン・ラニスターがリヴァーランドを再び攻めようとした時、エドミュア・タリーがその襲撃を退けてリヴァーランを守った。しかし、〈釁られた婚儀〉(〈血染めの婚儀〉)でロブ王が死んだ後、ラニスター家とフレイ家は再びリヴァーラン城を包囲した。サー・ライマン・フレイがエドミュア・タリー公を人質にとっていたにもかかわらず、ラニスター家とフレイ家の争いのため、包囲は無秩序で、不首尾に終わっていた。ジェイミー・ラニスターが来て、捕虜のエドミュア公と降伏案を交渉するまで、サー・ブリンデン・タリー”ブラックフィッシュ”は包囲軍に抵抗出来ていた。エドミュア公は、ジェイミーに攻められて城内の軍勢を皆殺しにされるよりは、城を明け渡すことを選んだ。そしてリヴァーランは、ラニスター家の同盟者であるエンモン・フレイの弱々しい手に渡った。
双子城 [編集]
- 緑の支流にかかる石造りのアーチ橋で結ばれた、堅固に防御された二つの城。橋は二台の馬車がすれ違えるほど広く、〈水の塔〉として知られる中央の塔によって警備されている。双子城は600年以上もフレイ家の本拠であり、数日間もの回り道を避けられる唯一の場所である関門橋(渡り場)があり、高額な渡し賃を課しているため、フレイ家は富裕である。富裕で多くの一族を抱えるため、フレイ家はタリー家に臣従する家の中では最も強力であり、1000人の騎士および騎兵と3000人の兵を戦争に送り、なおかつ少なくとも400人の守備兵を双子城に残すことができる。だが、過去においてフレイ家の忠誠心は疑問とされ、現在の家長であるウォルダー・フレイ 公は怒りっぽく高慢な老人として知られている。
- 〈五王の戦い〉の間、フレイ家は〈北の王〉のために〈鉄の玉座〉に反抗して立ち上がった。この反抗は、フレイ家の娘とロブ・スタークの婚約を条件としていた。しかし、ロブ・スタークがウェスタリング家の娘のためにフレイ家との婚約を破った後、ウォルダー・フレイ公はこの侮辱に対する復讐を計画した。フレイ公は、エドミュア・タリー公と自らの娘のロズリン・フレイとの結婚を整えた。ドレッドフォートのルース・ボルトン公およびタイウィン・ラニスター 公と陰謀をめぐらし、傭兵と騎士に楽師を装わせた。婚儀の最中に、”楽師”は、王の母である レディ・キャトリン(ケイトリン)・スタークを含む王の家族と支持者たちを殺し、リヴァーラン公エドミュア・タリーを捕虜とした。この事件は〈釁られた婚儀〉として知られるようになった。
アリンの谷間 [編集]
- ほぼ完全に月の山脈(月の山)によって囲まれた肥沃な谷。西はリヴァーランドに隣接する。アンダル人貴族の中でも最古の血統であり、エイゴン征服王以前には〈山と谷間の王〉であったアリン家に統治されている。その本拠地高巣城(アイリー)は、山の上にあり、小さくとも難攻不落である。頂きへの唯一の道は危険な山羊の道である。谷間の冬は厳しいため、山の間を旅できるのは夏に限られる。〈山岳民〉が従わないため、七王国の他の土地から谷間への旅は危険である。谷間で生まれた私生児は”ストーン”姓を与えられる。
- 主な城としてガルタウン、ストロングソングなどがある。
高巣城 [編集]
- アンダル人貴族の最も古い血統であるアリン家の古からの本拠。城は〈巨人の槍〉として知られる山の上にあり、騾馬のための細い道でしか行くことが出来ず、〈月の門〉と3つの小さな関門-〈石〉、〈雪〉、〈空〉-で守られている。高巣城は巨城と呼ばれる城の中では最小の城であり、7つの細い塔からなっている。最も上にある関門からは巨大なリフトが備えられている。ライサ・アリン(リサ・アリン)を含む多くの者が、山に囲まれているが故に高巣城は難攻不落だと主張するが、冬は雪で城への補給が不可能になるため、永久に難攻不落であるわけではない。高巣城の牢は〈空の独房〉として知られ、極めて悪名が高い。冷たい空に向かって、床が傾いていて、囚人たちは寝ている間に滑って端から落ちてしまうことを恐れる。多くの囚人たちが、囚われの身でいるよりも自殺することを選んだ場所である。高巣城での処刑は、開け放たれた広間から山の岩まで身もよだつような600フィート(180メートル)を落下する、〈月の扉〉によって行われる。〈神々の森〉がないことも高巣城の特徴である。ウィアウッドの木は石だらけの土地では根をつけないためである。
- ジョン・アリンの居城であったが、彼は〈簒奪者の戦争〉の前に、ネッド・スタークとロバート・バラシオンを里子として育てた。アリン公はターガリエン家に対抗して旗を上げた最初の者であった。戦争の後、アリン公はロバート・バラシオン一世王の〈王の手〉として仕えた。アリン公が暗殺された後、その妻ライサ・アリンは病気がちの息子ロバートを連れて再び高巣城に逃げた。〈五王の戦い〉の間、ライサ・アリンはどの王位宣言者とも同盟しなかったが、ピーター・ベイリッシュ(ベーリッシュ)が彼女と結婚することを承知したために、ラニスター家と同盟することに合意した。ベイリッシュの私生児の娘を装っていたサンサ・スタークをライサが処刑しようとした後、ベイリッシュはライサを殺し、病気がちで発育が遅れたロバート・アリンの守護代および摂政として高巣城を治めている。
西部 [編集]
- リヴァーランドの西、河間平野(リーチ)の北にある土地。この地域は、かつて〈岩の王国〉の王であった、キャスタリーロックのラニスター家によって治められている。この地域の人々はしばしば西部人と呼ばれる。キャスタリーロックに近接するラニスポートはこの地域の主要な街であり、ウェスタロスでも最大の港、最大の市の一つである。西部(ウェスターランド)は貴金属が豊富であり、これがラニスター家の富の源泉となっている。西部で生まれた私生児は”ヒル”姓を与えられる。
キャスタリーロック [編集]
- 港湾都市ラニスポートとその向こうの海を見下ろす山を刻んで作られた砦であり、ラニスター家の古からの本拠地である。伝説によれば、ラン利発王として知られる英雄がキャスタリー家を騙してロックを諦めさせ、自分の物にしたことになっている。ロック城は七王国の中でも最も強固な城の一つとして名高い。〈五王の戦い〉以前はタイウィン・ラニスター 公が所有していたが、その死後は、摂政太后(摂政女王)サーセイ・ラニスターが従兄の一人を城代とした。
- ジョージ・R・R・マーティンは、キャスタリーロックはジブラルタルの岩から着想を得たと自身のブログの中で述べている。
ラニスポート [編集]
- キャスタリーロックの強力なラニスター家の分家であるラニスポートのラニスター家により統治される賑やかな港である。ラニスポートは豊かで繁栄した街である。この街はラニス家などラニスターと類似の家名の小さな分家の故郷でもある。
河間平野 [編集]
- ハイガーデンのタイレル家(ティレル家)が治める、マンダー河流域の肥沃な土地。エイゴン征服王による征服以前は、タイレル家は、河間平野の王であるガードナー家の執政だった。ガードナー家の最後の王が〈火炎が原〉で死んだ後、タイレル家はハイガーデンをエイゴンに献上し、その報酬として、城と河間平野の領主としての地位を与えられた。タイレル家の旗主たちはしばしば南部のドーン家の旗主たちと争いをおこす。
- ドーンとの境界地方(マーチ、ドーンの辺境)は、河間平野とドーンの国境の北側にあり、タイレル家に忠誠を誓う辺境の諸公たちが居住する。河間平野の最も重要な都市はオールドタウンである。河間平野に生まれた私生児は”フラワーズ”姓を与えられる。
- 主な城としてアシュフォード、ゴールデングローブ、ビターブリッジなどがある。
オールドタウン [編集]
- ウェスタロスで最大の都市の一つであり、アンダル人の侵略以前に〈最初の人々〉によって建設された最古の都市。アンダル人に反抗せず歓迎することでその侵略を生き延びた。ウェスタロスの南西部の、ハニーワイン川河口が囁きの入江(囁きの瀬戸)とその先の〈日没海〉に向かって開けるところに位置する。
- 助言者、医者、科学者、そして郵便局長として七王国に仕えるメイスター(マイスター)の結社の本拠である、〈知識の城〉(〈大城砦〉)のある都市として最も有名である。市にある〈星の聖堂〉(〈星の神殿〉)は、キングズランディングにベーラー大聖堂が建設されるまでは七神正教の本拠であった。エイゴン征服王がオールドタウンに入り、総司祭(大神官)によって王と認められた時に正式にターガリエン王朝が始まった。
- また、七王国で最も重要な港の一つでもある。〈夏諸島〉、自由都市、その東にある都市、そしてウェスタロス中からの貿易船で常に埠頭がにぎわう。街そのものが美しく、多くの川や運河が、玉石を敷き詰めた道と交差し、息をのむような石造りの大邸宅が林立する。この街にはキングズランディングの汚らしさはないが、ウェスタロス最大の都市としての地位は譲り渡している。
- ハイタワー城は街で最大の建物であり、かつウェスタロスで最も高い建造物でもある。これは巨大な段のついた灯台であって、空に向かって800フィート(240メートル)も伸び、海上の何マイルも先から見える巨大な篝火が頂きに置かれる。オールドタウンはハイタワー城のハイタワー家によって治められている。ハイタワー家は、もとは自らが王であったが、のちにハイガーデンのガードナー家に忠誠を誓い、さらに侵略戦争の後にはタイレル家の家臣となった。ハイタワー家はその忠誠と信念によって知られる。現在の市の統治者はレイトン・ハイタワーである。
- オールドタウンは〈五王の戦い〉には巻き込まれなかったが、のちにユーロン・グレイジョイ王の下で〈鉄人〉が沿岸に大規模な攻撃を仕掛け、〈盾諸島〉とアーバー島の一部を征服し、さらにハニーワイン川の河口を封鎖しようとした。だが埠頭への攻撃は、市の守備隊によって退けられた。オールドタウンはその後も〈鉄人〉からの脅威にさらされ続けている。
ストームランド [編集]
- キングズランディングとドーン海の間の領域。東はシップブレーカー湾であり、南はドーン海である。エイゴンの征服以前は、〈嵐の王〉によって治められ、その後はターガリエン家の私生児の家系であるバラシオン家によって治められた。ドーンとの境界地方も領域内にあり、かつて〈嵐の王〉に征服され、カロン家および下位の諸公に治められている。ドーンが七王国に加わった前世紀までは、ドーンとの境界地方はストームランド、河間平野、そしてドーンの間の戦場となることが多かった。ストームランドで生まれた私生児には”ストーム”姓が与えられる。
- 主な城としてイーブンフォールホール、レインウッドなどがある。
ストームズエンド [編集]
- バラシオン家の本拠であるが、それ以前は数千年に渡って〈嵐の王〉の古の本拠地であった。伝説によれば、〈最初の人々〉の時代の最初の〈嵐の王〉ダランは海神と風の女神の間に生まれた娘であるエレネイの愛を得た。ダランはエレネイを妻としたが、怒ったエレネイの両親は強力な嵐を送りこんでダランの城を破壊し、婚儀の客と家族を殺した。ダランは神々に宣戦布告し、シップブレーカー湾に沿って、より大きくより強固な城を次々に建設した。最後の七番目の城は嵐に耐えた。これは〈森の子ら〉(森の子供たち)の助けを得たからであると言われるが、後に〈壁〉を建設したブランドン・スターク少年が、ダランに築城法を教えたからであるとも言われる。その真実は明らかでない。
- 極めて強固な城であり、七王国の時代には包囲にも嵐にも屈したことはない。その外側の防御は100フィート(30メートル)の高さの巨大な幕壁であり、最も薄い側面でも40フィート(12メートル)の厚さであり、海側の厚さは80フィート(24メートル)近くある。幕壁は砂と瓦礫の内核を二層の石積みが覆っている。幕壁は滑らかで丸くカーブしており、石があまりに巧妙に配置されているために、風がつけ入るような石の間の割れ目すらない。海側では、城壁の下には150フィート(45メートル)の崖がある。
- 城そのものは、最上部に恐るべき狭間胸壁がある巨大な円筒形の塔であり、遠くの敵には、反抗の意思を込めて空に向かって突きあげる、棘のついた巨大な拳のように見える。巨大な塔の中には馬屋、兵舎、兵器庫そして君主の居室が全て入っている。また、敵の魔法に対する防御として、幕壁に呪文が織り込まれていると言われている。
- 戦いに屈したことはないものの、ストームズエンドは近年の歴史でも何度か包囲戦に遭っている。エイゴン征服王の〈征服戦争〉の間、最後の〈嵐の王〉であるアージラック傲慢王は城を出てしまい、オーリス・バラシオンと戦場で戦って敗北した。〈簒奪者の戦争〉の間、ストームズエンドは一年間包囲され、陸ではメイス・タイレル公がその軍を率い、海側ではパクスター・レッドワインがアーバー島の艦隊を率いた。防衛軍を率いたスタニス・バラシオン(スタンニス・バラシオン)は降伏を拒否し、その軍勢はネズミを食べるところまで追い込まれた。ダヴォス・シーワースという名の密輸業者が封鎖をすり抜けて城に補給を行い、スタニスは恩賞として彼を騎士としたが、過去の密輸の罪への罰として指を何本か切り落とした。戦後、今や王となった兄のロバートが城を末弟のレンリーに与え、スタニスを寒風吹きさらすドラゴンストーンの領主としたことで、スタニスは怒り、何年も恨みを抱くことになった。〈五王の戦い〉の間、城はレンリーを支持し、スタニスに包囲された。レンリーの死後、城代は降伏を拒否した。ル=ロール(ルラー)の女祭司メリサンドルが城の下から侵入した後、城代は謎に満ちた状況で殺された。その直後、城はスタニスの軍勢に降伏した。その後の戦争で、城はメイス・タイレルの率いる強力な軍に包囲されたが、娘のマージェリーが不道徳な振る舞いをしたとして総司祭に逮捕されたため、数週間で包囲を解いてキングズランディングに戻った。城はスタニス・バラシオンに忠誠を誓い続けている。
ドーン [編集]
- ウェスタロス最南部の土地。ドーン辺境の高い山々(赤い山脈)から大陸の南岸までがドーンである。ウェスタロスで最も暑い地域であり、大陸で唯一の砂漠がある。ドーン人もまた、その熱血さで知られる。過去にロイン(ローイン)人による大規模な移住があったため、ドーン人は文化的にも人種的にも他のウェスタロス人とは異なっている。男女平等の長子相続制など、ロイン人の習慣も多く取り入れている。人口は七王国の中で最も少ない。
- ドーンはエイゴン征服王に抵抗することに成功した、ウェスタロスで唯一の王国である。その後、征服戦争の一世紀以上後になって、通婚によって七王国の一部となった。これにより、ドーンはある程度の独立性を保つことになった。ドーンを統治するマーテル家の領主は、ロイン人のならわしで自らを”プリンス”あるいは”プリンセス”と称する。ドーンに生まれた私生児は”サンド”姓を与えられる。
- 中心はサンスピア。この他、スターフォール、トーア、スカイリーチなどの城がある。
王室領 [編集]
- キングズランディングの周辺の土地は〈鉄の玉座〉の王権によって直接統治される。王室領には、ウェスタロス最大の都市であるキングズランディングのほかに、ロズビーとダスケンデールの街が含まれる。王室領はアリンの谷間の南、リヴァーランドの南東、西部の東、そして河間領域およびストームランドの北に位置する。征服後、ターガリエンの王たちは、周辺の王国から人口希薄な土地を少しずつ集めて王室領を設定した。この領域はブラックウォーター湾を見下ろすところにあり、ここで生まれた私生児は”ウォーターズ”姓を与えられる。 ターガリエン家がもともと所有するドラゴンストーン島の土地も、王室領の一部だと考えられる。
ドラゴンストーン [編集]
- かつては古代ヴァリリア永世領(古代ヴァリリア自由保有地)の最西端の前哨地であった。〈破滅〉の一世紀前、ターガリエン家がこの地を統治するために送りこまれた。〈破滅〉がヴァリリアを襲ったとき、ターガリエン家はヴァリリアのドラゴンの最後の生き残りと共に生き延びた。一世紀後、エイゴン・ターガリエンとその姉妹であるレイニス(レーニス)とヴィセーニア(ヴァイセニア)は島から大規模な征服作戦を開始し、最終的にはドーンを除く全ウェスタロスを征服した。その後、エイゴンの子孫は3世紀にわたって七王国に君臨した。
- ドラゴンストーンは同名の島の大部分を占拠する、巨大な恐るべき砦である。この城の珍しいところは、ヴァリリアの石工がドラゴンの形に刻んだ塔と、恐ろしいガーゴイルの像で覆われた城壁である。城の地下深くにいくばくかの火山活動が残っているために、城の低層階は奇妙に暖かい。城の外には小さな港と街がある。
- 〈簒奪者の戦争〉の間、キングズランディングの略奪以前に、妊娠していたターガリエンの王妃レイラ(レーラ)と息子のヴィセーリス( ヴァイセリス)はターガリエン艦隊の一部と忠実な兵士たちの守備隊と共にドラゴンストーンに送られた。だが、キングズランディングの陥落の後、ロバート・バラシオンはこの島の砦を落とすために弟のスタニスを送りこんだ。王に忠実な艦隊が嵐に破壊された後、ターガリエンの守備隊はヴィセーリスと生まれたばかりの妹デナーリス( デーナリス)を裏切ってスタニスに引き渡そうとした(王妃は産褥の床で死んでいた)。しかし、サー・ウィレム・ダリーに率いられた忠実な家来たちは王の子らを連れ出した。スタニスはやすやすとドラゴンストーンを攻略し、ロバート王は城をスタニスに与えたが、バラシオン家古来の本拠地であるストームズエンドを末弟のレンリーが相続したために、スタニスは冷遇されたと考えた。ロバートの死後、スタニスは、王妃サーセイの子供たちが近親相姦による私生児であると非難し、自らが王であると宣言した。ドラゴンストーンは彼の本拠地になった。〈キングズランディングの戦い〉で壊滅的な敗北をした後も、スタニスは当地に戻った。スタニスの助言者である女祭司、アッシャイのメリサンドルは、血の魔法によって城の〈石のドラゴン〉を甦らせるように彼を説得しようとするが、ダヴォス・シーワース公が、〈壁〉に赴き〈野人〉と〈異形〉(〈異形人〉)に対する戦いを助けるようスタニスを説いたために、メリサンドルの説得は失敗する。スタニスがドラゴンストーンを去ったあと、摂政太后サーセイ・ラニスターは島を封鎖するために艦隊を送り、城を包囲するよう命じた。だが、 サー・ロラス・タイレルは故郷のハイガーデン城を守るために艦隊を任務から解放しようと急ぎ、ドラゴンストーンを直接攻撃した。ロラスは城を手に入れたが、何千人もの兵士を失い、報告によれば彼自身も重傷を負った。現在ドラゴンストーンは再び〈鉄の玉座〉に属する。
キングズランディング [編集]
- ウェスタロスおよび七王国の首都。ブラックウォーター川河口の、エイゴン征服王がその征服を始めるためにウェスタロスに上陸した地点に位置している。市は城壁に囲まれ、〈金色のマント〉として知られる〈王都の守人〉(都市警備隊)によって守られている。壁の内側で目立つ自然景観は3つの丘であり、エイゴンとその二人の姉妹にちなんで名づけられている。貧しい庶民は城の外側の掘立小屋に住む。キングズランディングは極めて人口が多いが、醜く汚い。市の廃棄物の悪臭ははるか壁の外にも届く。
- 王城は〈赤の王城〉(〈赤い城〉)と呼ばれ、エイゴンの丘に建っている。城には七王国の玉座である〈鉄の玉座〉がある。エイゴンは、破った敵の剣から玉座を作ることを命じた。伝説によれば、統治者たるものは決して玉座に快適に座っているべきでないと信じて、刃を鋭いままにさせたと言われている。数世紀たっても、いまだに玉座に座って体に傷を負う王もいる。玉座で傷を負ったものは、玉座に”拒否”されたことを意味し、統治にはふさわしくないと、幅広く信じられている。
- キングズランディングにはまた、ベーラー大聖堂があり、〈篤信卿〉が総司祭のもとに集まる。もっとも神聖なる〈七神〉の聖堂である。
- キングズランディングのスラムは〈蚤の溜まり場〉と呼ばれ、住民はあまりに貧乏であるため、子犬や殺された人間の肉が入っているかもしれない、〈茶色がゆ〉と呼ばれる謎のシチューで生き延びている。
- オベリン・マーテルの来訪時に出迎えたティリオンの言によると、キングズランディングは、50万を超える人口があると推測されている。
狭い海の向こう側 [編集]
氷と炎の歌の物語の一部はウェスタロスから〈狭い海〉を超えて、エッソスと呼ばれる東の巨大な大陸と島々からなる地域で起こる。
〈狭い海〉は、ウェスタロスと東の地域を分けている。〈狭い海〉の北には氷におおわれたイッベン島があり、南には灼熱の〈夏諸島〉がある。東には、エッソスと呼ばれる大陸がある。エッソスはほぼユーラシア大陸と同じ大きさであり、その地形も気候も場所によって大きく変わる。西岸で目立つのはうねるように続く緑の丘、クォホール(コホール)の巨大な森、ブレーヴォス(ブラーボス)やライス(リース)のように長く続く島々である。大陸の中央部には、ドスラクの海として知られる平坦な草原と、その東には〈赤い土地〉として知られる不毛の荒野がある。〈赤い土地〉の向こうには、〈翡翠海〉に続く瀬戸の傍にクァース( カルス)の街がある。南はうねりながら並ぶ乾燥した丘が目立ち、その気候は地中海性気候であり、岸に沿って〈夏の海〉と奴隷商人湾がある。 エッソス北岸は〈震顫海〉によって北極冠と隔てられている。南岸の先、〈夏の海〉の向こうに、未踏のジャングルの大陸であるソゾリオスがあり、イーンやザメッタールなどの都市がある。はるか東、〈翡翠海〉の向こうには、アッシャイ、イ・ティ、そして〈影の土地〉と呼ばれる謎の地域がある。これら極東の地域が物理的に本土の一部であるのか、それとも〈翡翠海〉の向こう側にあるのかは推測の域を出ない。
自由都市 [編集]
- ライス、ミア、ペントス、ブレーヴォス、ロラス、ノーヴォス、クォホール、ヴォランティス(ヴォランテス)、タイロシュの九つの都市。これらの独立した都市国家は〈狭い海〉を越えた、エッソス大陸西部の、島もしくは大陸沿岸にある。自由都市の東側にある山々が西岸とドスラクの海の平原を隔てているが、ドスラクの民は山の間の峡谷を通って自由都市に来ることができる。
- 自由都市はかつて古代ヴァリリア永世領によって建設された植民地であったが、ヴァリリアの〈破滅〉のあと独立を宣言し、その結果、これらの都市の言語は高地ヴァリリア語の派生語となった。
ブレーヴォス [編集]
- 自由都市の中では唯一ヴァリリアの植民地ではなく、ヴァリリアの拡大から逃げた避難民によって密かに建設された。〈狭い海〉と〈震顫海〉が出会うエッソス大陸の北東の端の礁湖に広がる100以上の島からなる都市である。命を惜しまない刺客とその〈顔のない男たち〉と呼ばれるギルドによって知られる。砦であり巨像でもあるブレーヴォスのタイタンによっても知られる。ブレーヴォスの統治者はシーロードと呼ばれ、街の権力も富も海に依存する。その商船は多くの遠い土地に旅し、貿易品と富を故郷に持ち帰る。ブレーヴォスには資金の貸し手が多くおり、その〈鉄の銀行〉は七王国を含む諸外国に資金を用立てる。
- ブレーヴォス人は派手な身なりをするが、豊かで力を持つ人々は黒あるいは黒っぽい濃い青を着る。ブレーヴォスは高級娼婦でも名高い。全ての高級娼婦は屋形船と召使を抱え、著名な高級娼婦の美しさは多くの歌で讃えられる。金細工の贈り物が雨あられと差し出され、職人たちはひいきにしてもらうことを請う。貴族や豊かな商人は種々の行事で同伴してもらうためだけに大枚をはたく。シリオ・フォレルは〈水のダンス〉と呼ばれるブレーヴォス独特の剣技をアリア・スタークに教える。この剣技は剣士が横向きに立ち細身の剣を振るう、フェンシングの発展形である。好戦的なブレーヴォス人はしばしば決闘でその技を見せびらかす。
ペントス [編集]
- ペントスは西岸の湾にある大きな貿易港である。街には方形の煉瓦の塔がそびえ、豪商(マジスター)として知られる実際の権力者たちによって選ばれるプリンスに率いられる。時折ドスラクの海からカラザール(部族)がはるばるやって来るが、そのカ―ル(族長)たちに貢納することで侵略を免れる。ペントスの男たちは顎髭を染め、髭先を分ける。多くの自由都市と同様に奴隷は違法であるが、豊かで強力な住民は法を無視し、召使を青銅の首かせにつなぐことが出来る。
他の自由都市 [編集]
- ロラスは北の諸島の港湾都市である。ジャクェン・フ=ガーは片側を赤く染めもう一方を白く染めた長い髪をし、ロラス人を装った。
- ライス(リス)は南の島々にまたがる都市である。他の自由都市の住民と異なり、ライス人は背が高く色白で青い瞳を持つ。ライスは歓楽の館で有名であり、奴隷に愛の技を教えこみ、愛人や性奴隷として売る。ライスはしばしばステップストーン諸島や他の係争地に関して他国と争う。デナーリスの召使であるドリアと海賊のサラドール・サーンはライス人である。
- ミアはレンズ職人、精妙なレース、そして美しいカーペットで有名な沿岸都市である。暗い色の瞳と濃い色の肌のミア人は、ノーヴォスやペントスと同様に、ドスラクのカラザールに貢納する豪商たちによって支配されている。ミアは奴隷と薄緑のネクターの交易の中心である。しばしば係争地の支配をめぐって他国と争う。
- ノーヴォスは大陸にある都市であり、丘の上の高みから川沿いの低地にかけて広がる。街には3つの大きな鐘があり、それぞれが独自の名前と音色をもつ。郊外にはうねる丘、段々畑と白漆喰で塗られた村があり、気候は温暖である。ノーヴォス人は染めてカーブした口髭をする。街は当地を通りすぎるドスラクのカラザールに貢納する豪商の委員会によって支配される。ここにはまた、エリート護衛を訓練する顎髭の導師たちが住む。訓練された護衛たちは義務を誓い、自らは特徴的な長柄斧と結婚したと見なしている。
- クォホール(コホール)は大陸内部のクォホールの巨大な森の中にある。美しい壁掛けと、ヴァリリア鋼を種々の色に鍛えなおすことが出来る刀職人たちで有名である。街の主要な神は黒山羊である。3000人の〈穢れなき軍団〉(〈無垢軍団〉)が25000人のドスラクの騎馬兵を退けた”3000人の戦い”以来、街は常に〈穢れなき軍団〉のみによって防衛されてきた。ドスラク人が防衛側に敬意を表して弁髪を切り取ったことを記念し、防衛軍は槍に切り取った弁髪を結びつける。
- タイロシュは強欲で悪名高い執政官に支配される沿岸の都市国家である。奴隷と梨のブランデーを交易する。多くの歓楽の館があるが、ライスほど名高いわけではない。タイロシュの武具職人は奇妙な形の精妙な鎧を作る。タイロシュは傭兵を雇いやすい場所である。しばしばステップストーン諸島や係争地を巡る争いに巻き込まれる。タイロシュ人はしばしば先の別れた顎髭と明るい色に染め先をとがらせた口髭をする。
- ヴォランティスは最古の自由都市であり、奴隷商人湾に近いエッソス大陸の南西部にある。奴隷、ガラス製品そしてワインを交易する。選挙で選ばれた三人の統治者によって支配される。ヴォランティスの傭兵は多くが顔に刺青をする。主人が奴隷や召使に刺青をすることも多い。
奴隷商人湾 [編集]
- ドスラクの海の南にあり、そこにはユンカイ、ミーリーン( ミイリーン)、アスタポア( アスタポール)と呼ばれる三つの港湾都市国家がある。これらの都市は、『氷と炎の歌』の出来事の数千年前はヴァリリアの好敵手であったが、のちに滅ぼされた古代ギスの瓦礫の中から、建設された。現在の湾岸の住民は訛りのあるヴァリリア語を話す混血である。経済は奴隷労働と奴隷貿易に大きく依存する。奴隷はしばしば酷い扱いを受けるが、市民は贅沢に暮らしている。
- 3都市全てにおいて、職業兵士は奇怪な装いと髪型をしており、戦闘の効率は犠牲にされている。実際の戦闘においては、3都市は奴隷および傭兵の別軍に大きく依存している。アスタポアは規律と有能さで有名な〈穢れなき軍団〉(〈無垢軍団〉)と呼ばれる宦官の精鋭歩兵を訓練し販売する。販売前の〈穢れなき軍団〉は必要に応じて都市の防衛に用いられる。
アスタポア [編集]
- 3都市の中で最も富貴であり、アスタポアは〈穢れなき軍団〉を購入出来る、世界で唯一の場所である。これらの奴隷兵士たちは膨大な投資を呼びこみ、アスタポアの親方達に極めて大きな利益をもたらす。都市そのものは古く荒廃しており、もはや衛兵もいない崩れた赤レンガの巨大な壁に囲まれている。市の主要な建造物は、湾の水辺にある巨大なレンガのピラミッドと、青空の下での奴隷市場、〈穢れ無き軍団〉の整列場所、そして住民の集合場所として使われる〈誇りの広場〉である。アスタポアの栄光の時代ははるか以前に過ぎ去ってはいるが、数えきれないほどの奴隷、巨大な闘技場、そして剣闘士と〈穢れ無き軍団〉の奴隷の訓練場を抱える、富貴で強力な貿易の中心地である。
ユンカイ [編集]
- 奴隷商人湾の3都市の中では最小であり、ミーリーンと同様に、〈穢れなき軍団〉の取引は行わないが、いずれも奴隷を多く必要とする闘技場と売春宿で知られる。建築様式はアスタポアに似ているが、規模は小さく、赤煉瓦の代わりに黄色の煉瓦を用いる。ユンカイの奴隷商人たちは〈賢明なる親方〉として知られる。市には〈穢れなき軍団〉がいないため、約4000人の職業兵士と奴隷の混じった軍と、少なくとも1000人の傭兵に防衛を頼る。ギスカル人にはよくあることだが、ユンカイの兵士も非実用的な服装をし、その髪には油を塗って風変わりな形にまとめており、限られた戦闘能力しかもたない。
ミーリーン [編集]
- 奴隷商人の3都市の中では最大であり、ミーリーンの人口はアスタポアとユンカイの合計に匹敵する。市は他の2都市と同様の建築様式であるが、さまざまな色の煉瓦が使われている。目立つ建物は大ピラミッドと呼ばれる巨大なピラミッドと、黄金のドームを頂上部にいだく〈美神の聖堂〉である。ギスカル人の都市には珍しく、多くの寺院がある。ミーリーンの奴隷商人は〈偉大なる親方〉として知られている。銅の小片のついた豪華なギスカル人の伝統的軍装をし、14フィート(4.2メートル)もある槍を持った槍兵の軍を備える。
その他 [編集]
アッシャイ [編集]
- しばしば”影に触れるアッシャイ”(“影のほとりのアッシャイ”)と呼ばれ、はるか南東に延びる〈影の土地〉に接する港湾都市。アッシャイに行くことは”影の下を通る”と表現されることもある。アッシャイは翡翠海に面して賑わう交易地であり、琥珀や黒曜石(ドラゴングラス)を輸出する。当地には多くの秘密の知識が蓄えられている。他のどの地よりも、ドラゴンに関する伝承を伝えているらしい。また、アッシャイの古代の書には、ル=ロール( ルラー)の教団が信じる、”エイゾール・アハイ”の予言が記録されている。アッシャイとそこに住む人々は、他の土地では不吉な評判を立てられている。アッシャイ人は、青白い肌で、多くは赤い髪であり、暗く重々しい表情を浮かべがちである。ドスラク人は、アッシャイ人は〈影の卵〉であると信じている。〈影の土地〉とアッシャイを含む地域は、単に〈影〉と呼ばれることがある。
ドスラクの海 [編集]
- ドスラク人が住む広大で平坦な草原。ドスラク人は銅色の肌をし、戦闘に長けた遊牧民で、独自のドスラク語を話し、独特の文化を持つ。ドスラク人はカラザールと呼ばれる部族単位で暮らし、それぞれがカール-族長-と呼ばれる首長に率いられている。カラザールはカスと呼ばれる集団に分かれ、それぞれがコスと呼ばれる長に率いられる。ドスラク人は熟練した騎手であり、馬は、食糧になり、輸送に用いられ、種々の原材料となり、戦争に用いられ、社会的な地位を決める、ドスラク人の文化において最も重要な存在である。持続する唯一のドスラクの都市は、ヴァエス・ドスラクと呼ばれ、ドスラク人の首都の役割を果たす。
ラザリーン [編集]
- ドスラクの海の南にある土地。銅色の肌、平べったい顔、そしてアーモンド型の眼をもつ平和的な種族であるラザリーン人が住む。大部分は羊飼いであり、ドスラク人からは〈仔羊人〉と呼ばれ、しばしばドスラク人に略奪される。ラザリーン人は〈偉大なる羊飼い〉と呼ばれる神を崇め、全ての人間は一つの群れの一部であると信じる。
クァース [編集]
- 大陸中央部に位置し、東西南北をつなぐ商業と文化の架け橋である都市。富を誇示するその建築物は、壮大な景観である。30フィート(9メートル)、40フィート(12メートル)、50フィート(15メートル)の高さの三重の壁に囲まれ、それぞれが種々の動物、戦争の場面、そしてさまざまな男女の交わりの彫刻で飾られる。街の建物は薔薇、菫そして琥珀などの色合いを帯びる。高く細い塔が街中に聳え立ち、あらゆる広場を噴水が飾る。
- クァースは、街の古代の王と女王の子孫である〈純粋人〉たちに治められる。〈純粋人〉たちは市の防衛もつかさどる。市の覇権を巡って、3つの主な豪商達のグループがお互いに競い合い、〈純粋人〉に対抗している。〈十三人組〉、〈トルマリン協会〉、〈古来の薬味者ギルド〉(〈古来の薬味者組合〉)の3つのグループである。
- クァースは東方のあらゆる場所で恐れられ敬われている黒魔導師(黒魔術師)で有名であるが、その力と威信は年月と共に衰えて来た。クァースは〈弔問者〉(〈悲しげな男たち〉)と呼ばれる暗殺者の組合の本拠でもある。
影の土地 [編集]
- はるか東の土地。既知の世界の東の端に位置し、アッシャイの隣あるいは向こう側にある。西方世界では〈影の土地〉に関する種々の物語が語られるが、どこまでが真実なのかは明らかでない。石化したドラゴンの卵は〈影の土地〉からもたらされ、ドラゴン自身が〈影の土地〉に起源を持つと言われている。ドスラク人は、〈幽霊草〉が〈影の土地〉を覆い、その茎は闇に光り、馬上の人よりも高く育つと信じている。この土地に生まれたものは〈影の人々〉と呼ばれ、体を刺青で覆い、赤い漆塗りの木の仮面をつける。彼らは陰気で恐ろしい存在として描かれている。彼らの中には、血の犠牲を必要とする呪文を用いる、血の魔法を使う者もいる。〈影の土地〉とアッシャイは合わせて〈影〉と呼ばれることが多い。
夏諸島 [編集]
- ウェスタロスの南側にある夏の海に浮かぶ、一つの国家をなす島々。〈高木の町〉(〈高い木の町〉)の港は首都の役割を負う。夏諸島の住民は、独自の言語を話し、しばしば明るい色の羽毛のマントを着る、黒い肌色の人々である。弓術は夏諸島人にとって重要な武技である。その独特な弓は他の弓よりも飛距離が長く、海賊から商船を守るすぐれた防御となる。
ヴァリリア [編集]
- かつて古代ヴァリリア永世領と呼ばれる大帝国の首都であったが、以来廃墟となっているかつての驚異の都市。絶頂期において、古代ヴァリリア永世領は最先端の文明であり、既知の世界では圧倒的な軍事と文化の力を保有していた。エッソス南岸の半島に位置し、ターガリエン家の古の故郷である。
- ヴァリリアの初期において、強力なギスカリ帝国がヴァリリアの拡大を阻止しようとして5回の戦争を戦ったが、いずれもヴァリリアが勝利した。最後の戦いではギスカリ帝国とその首都である古代ギスを破壊した。続く年月の間にヴァリリアは多くの地を征服して植民地化し、数々の大都市、およびヴァリリアを中心とした街道を建設した。アンダルやロインのような小国家はヴァリリアの拡大を逃れるために西へ逃げ、ウェスタロスに上陸した。ヴァリリアは征服した土地から多くの奴隷を得て地中深く鉱脈を掘らせた。国力が頂点に達した頃、自由保有地は東方のほぼ全体に広がった。古代ヴァリリアによって建設された都市にはオロス、マンタリース、ティリアがあり、そしてブレーヴォスを除くすべての自由都市がある。
- 古代ヴァリリア永世領は、 『氷と炎の歌』の出来事の数百年前、〈破滅〉が訪れた時に崩壊した。〈破滅〉は明らかに火山に関係したものであるが、ヴァリリアの街を取り巻く土地をばらばらに壊して小さな島々となし、島々の間には〈煙立つ海〉を作った。現在、この地域は”悪魔が出る”として描かれており、多くの人はこの土地に行くことを恐れ、”〈破滅〉がいまだにヴァリリアを支配する”と言われる。8つのヴァリリア自由都市が〈破滅〉を生き延び、ターガリエン家がドラゴンストーンに逃げおおせたにもかかわらず、ヴァリリアの文化、言語そして工芸のほとんどは〈破滅〉で失われた。
- ヴァリリアは、ドラゴンを育成して戦争の兵器として使うという、特殊な能力によって記憶されている。その軍事力のほとんどはドラゴンの戦場での有効性に負うものであり、〈征服戦争〉においてウェスタロスの王たちの数多の恐るべき軍を破ったのは、エイゴン・ターガリエンとその姉妹たちの、ドラゴンを支配する力であった。ヴァリリアはまた、比類なき質の武器を作る〈ヴァリリア鋼〉と呼ばれる魔法の金属を鍛えたことでも知られる。〈ヴァリリア鋼〉の刃は、通常の鋼に比べて軽く強く鋭く、ダマスカス鋼に類似した独特の刃紋を持つことが特徴である。この金属を鍛える秘密は明らかにヴァリリアとともに失われており、貴重な武器はあまり残っていない。ウェスタロスに残るほとんどのヴァリリア鋼の剣は高貴な名家の家宝となり、それぞれが名前と物語を持っている。スターク家の大剣”アイス”はそのような剣の一つである。
宗教 [編集]
ウェスタロスの住民はさまざまな宗教を信じているが、支配的な宗教は〈七神正教〉である。〈狭い海〉の向こうの土地でも数々の独自の宗教が信じられているが、あまり詳しくは扱われていない。
古の神々 [編集]
- 〈最初の人々〉がウェスタロスに初めて移住して来た時、〈森の子ら〉に出会った。〈最初の人々〉は〈古の神々〉の宗教を〈森の子ら〉から学び、以前の宗教を捨てた。〈古の神々〉の宗教には経典も僧の階級も伝道活動もなく、〈古の神々〉には個々の名前すらない。アンダル人の侵略によって、ネックの南のすべてのウェステロスは〈七神正教〉に改宗した。しかしながら、北では、〈最初の人々〉が征服されずに残り、多くの人々は今日まで〈古の神々〉を奉じ続けている。〈古の神々〉の信仰は何らかの現実世界の(魔法ではあるが)基盤を持っていることがほのめかされている。それは〈緑視力〉(予言力)と人狼(テレパシーによる動物の支配)などの、〈森の子ら〉の遺産である。この宗教の焦点となるのは、顔を彫ったウィアウッドの木が中心にある〈神々の森〉である。現在、〈古の神々〉の信仰はほぼ北部に限られているが、南部でも高貴な家の古の〈神々の森〉はいまだに残り、世俗的な庭園に改造されている。
七神正教 [編集]
- ウェスタロス最大の宗教であり、アンダル人が大陸を征服した時にこの地に入った。この宗教は大まかに言って中世ヨーロッパのカトリック教会に類似している(少なくとも社会的機能として)。〈七神正教〉は、七つの側面を持つ神の崇拝に基礎を置いている(三位一体の代わりとなる神性である)。この”七にして一なる”神は一家の形態をとるが、独自の個人名を持つわけではない。〈厳父〉(〈父の神〉)、(〈慈母〉(〈母の神〉)、〈乙女〉(〈乙女の神〉)、〈老嫗〉(〈老婆の神〉)、〈戦士〉(〈戦士の神〉)、〈鍛冶〉(〈鍛冶屋の神〉)、〈異客〉(〈異邦の神〉)である。したがって、この宗教の多くの側面は素数3ではなく、素数7に基づく。たとえば、この宗教の重要な図像は、水晶のプリズムに射し込んで7色の虹を作る光線である。
- 〈七神正教〉には、いくつかの経典がある。最も重要な経典の一つは〈七芒星典〉であって、これは多くの書に分かれている。聖職者たちは、明らかに神の側面に従って分かれている。〈司祭〉(〈神官〉)は〈厳父〉に仕える男性の神職であり、〈司祭女〉(〈女神官〉)は〈慈母〉に仕える女性の神職である。〈異客〉、またの名を死と未知なるものの神、に仕える女性だけの組織は〈沈黙の修道尼〉(〈沈黙の尼僧〉)と呼ばれる。神の他の側面にもそれぞれ神職の組織があるのかどうかは明らかではない。七神正教の長は総司祭(教皇に類似)であり、〈篤信卿会〉(枢機卿会に類似)として知られる高位の聖職者の会議で選ばれる。総司祭と〈篤信卿会〉は何千年もオールドタウンに置かれたが、ターガリエンの征服と首都であるキングズランディングの建設と共にその本拠は移動した。
〈七神正教〉はウェスタロスの文化における社会的な概念である〈騎士〉の基礎をなすが、宗教側に立つ実際の戦士である〈聖兵〉は、〈騎士〉とは異なる存在で、〈五王の戦い〉の時点では何世紀もの間、解体されていた。〈七神正教〉はウェスタロスの大部分で信仰されているが、鉄諸島および北部においてはあまり信者がいない。
溺神 [編集]
- 鉄諸島の独自の宗教。アンダル人がウェスタロスを侵略した時、通常はその地の〈最初の人々〉が〈七神正教〉に改宗することを強制したのだが、鉄諸島を侵略したアンダル人は地元の宗教と文化を取り入れることにした。鉄諸島人は島の船乗りの文明であり、その〈溺神〉の信仰もこれを反映する。水と、溺れることがこの宗教では主要な役割を演じる。祭司は儀式により溺れさせられる(原始的な人工呼吸によって蘇生させられる)。死刑は、海水で罪人を溺れさせ、〈溺神〉にささげることでしばしば執行される。〈溺神〉の敵は、〈溺神〉を溺れさせた〈嵐神〉であると信じられているが、これによって鉄諸島が生まれたと信じられている。一度死んだものは再び死ぬことは出来ず、より強くたくましく立ち上がるからである。死者は〈溺神〉の水の広間に招かれると信じられている。〈古の神々〉を信じる北部人と同様に、鉄諸島人には騎士がほとんどいないが、それは騎士が〈七神正教〉に伴う概念だからである。だが、〈溺神〉の教義は武勇を尊び、鉄諸島人の無慈悲な暴力と破壊をもたらす伝統的な生業である海賊行為、海上での略奪、婦人の略取がすべて正しくかつ称賛に値する行為であると教える。実際に、海賊と略奪はほとんど宗教的な行為であり、捕えた船の船員を甲板から海に投げ込んで溺れさせることは、〈溺神〉への奉納であると考えられている。
母なるロイン [編集]
- 東方の大陸からのロイン人の避難民がドーンに上陸した時(『氷と炎の歌』の出来事の1000年前)、彼らはこの地のアンダル人と混じりあった。ロイン人は文化的遺産と人種的遺産をドーンに色濃く残したが、ほとんどのロイン人は〈七神正教〉に改宗した。しかし、元来のロイン人の宗教を守る者もいる。ロイン人はもともとエッソス大陸のロイン川の網の目のような水路のそばの都市国家に住んでいたため、その結果ロイン人は川を主題とした多くの自然神を信仰する。その主神はロイン川を擬人化した〈母なるロイン〉である。そのほかにも、〈河の翁〉、そしてその敵の〈蟹の王〉などの神がいる。ロイン人がドーンに逃亡した時、ほとんどの者は程度に差こそあれウェスタロスの文化に同化したのだが、頑固にその先祖の川に基づいた文化を守り、ドーンを流れるグリーンブラッド川に沿って筏に乗って生活する者も少数ながらいる。この小規模の、川を上り下りして放浪するジプシーのような文化は、〈グリーンブラッドの孤児〉として知られているが、それは彼ら自身が自らを〈母なるロイン〉の孤児であると見なしているからである。
ル=ロール [編集]
- ル=ロール-〈光の王〉(光の神)-は主に〈狭い海〉の向こう側で信じられている宗教であるが、〈鉄の玉座〉に仕えるミアのソロスなど、ル=ロールの司祭は七王国にも在住している。ル=ロールの崇拝には火の儀式が含まれ、その多くは犠牲を必要とする。〈光の王〉の司祭は、ソロスの剣を燃え立たせるトリックや、メリサンドルの邪悪な呪文などの神秘的な力をしばしば見せる。メリサンドルの影響のもとで、自ら七王国の王と宣言するスタニス・バラシオンはこの宗教に改宗し、ル=ロールの暗黒の儀式の力を借りて〈鉄の玉座〉を探求している。ル=ロールの信仰の中には、〈壁〉の北に住む〈異形〉に関する予言も含まれ、〈歩く白魔〉(〈白い歩行者〉)はル=ロールの永遠の敵である〈偉大なる異形〉(〈偉大なる他者〉)の信奉者であると主張する。
生物 [編集]
意識を持つ種 [編集]
巨人 [編集]
- 〈巨人〉は壁の外の極北のみで見られる、絶滅しつつある種族である。〈巨人〉は二足歩行の類人猿にやや似た、巨大で毛むくじゃらのヒト型生物である。〈巨人〉には人間よりも若干低い知性しかない。〈巨人〉は〈最初の人々〉の言語を話すが、ウェスタロスの共通語を理解する者もいる。戦いではマンモスに乗り、丸太より若干ましな程度の粗雑な作りの棍棒を振う。中には〈野人〉たちと緩やかな同盟を結ぼうとしたものもいる。多くの〈巨人〉が〈壁の外の王〉マンス・レイダーの〈野人〉の大群に加わり、〈異形〉から逃れるために〈壁〉の南側に押し通ろうした。
森の子ら [編集]
- 〈森の子ら〉はウェスタロスの本来の住民であるとされる。〈森の子ら〉はシリーズでしばしば言及されるが、何千年も姿を見られていない。彼らは小柄なヒト型生物であると考えられている。色黒で美しく、夢と自然に関する不思議な力を持っていた。戦いでは黒曜石の武器とウィアウッドの弓を用いたと言われている。北部でいまだに行われる名前のない自然神への信仰、そして未だに残るウィアウッドの森を除けば、彼らの遺産はシリーズの時間軸ではほとんど残っていない。ジョージ・R・R・マーティンは彼らがエルフではないと何度も強調している。彼はこの件に関してこう言っている「(森の)子供たちは・・・(森の)子供たちだ。エルフにはもううんざりだ。」
異形 [編集]
- 〈異形〉は〈壁〉の北側で発見された邪悪な生物である。彼らは夜の間だけしか目撃されておらず、つねに強烈な寒さと共に現れる。〈異形〉は背が高く、痩せていて、光る青い目を持つ優美なヒト型生物である。かれらは一歩ごとに色を変える鎧をまとい、鋼さえ砕くほど冷たい刃をそなえた薄い水晶の剣を振う。〈異形〉は静かに動くが、その声は氷を割るかのように響く。〈異形〉は独自の言語を持つことがほのめかされている。〈異形〉に殺された生き物は、すぐに、同じような光る眼を持つ死にぞこないのゾンビーのような、〈亡者〉となって動き出す。〈亡者〉は人間に限られず、〈異形〉はたとえば巨大な熊を熊の〈亡者〉として蘇らせて自らの意思に従わせ、戦いで致命的な効果を上げることが知られている。しかしながら、〈異形〉は黒曜石(ドラゴングラスとしても知られる)で作られた武器には弱みを示し、その鎧を簡単に突き通すことができる。〈異形〉は鉄に怖じ気づき、ドラゴンの鋼、すなわち〈ヴァリリア鋼〉には傷つけられる。死ぬと、彼らは溶けて、極めて冷たい液体の水たまりとなる。〈亡者〉は黒曜石に対してはそのような弱みは見せないが、火には傷つけられる。
動物 [編集]
- 犬、猫、馬などの通常の動物に加え、氷と炎の歌の世界には、野牛、大狼、マンモスなど、現実世界での更新世の大型動物に類似した動物が登場する。ドラゴンやクラーケンなどの神話上の動物も登場する。大型動物のうちでは野牛だけが、ウェスタロス中で家畜として普通に見られる。大狼とマンモスは極北の壁の向こう側の土地だけで見られる。クラーケンは極めて希少であるために一般には神話上の生物と思われているが、実際に存在している。
ドラゴン [編集]
- ドラゴンは物語の上で重要な役割を果たす。エイゴン征服王は3頭をウェスタロスに連れてきて七王国の統一に用いた。王の子孫はドラゴンを閉じ込めて繁殖させたが、やがてその数は減じ、『氷と炎の歌』の200年前に起きた、〈ドラゴンたちの踊り〉として知られる、ターガリエン家の世継ぎをめぐるライバルの間の内戦で多くのドラゴンが殺された後、死に絶えた。物語の当初、ドラゴンは絶滅したと信じられ、石化したドラゴンの卵だけが残る。『七王国の玉座』の最後に、デナーリスはカール・ドロゴの葬儀の燃える薪の上で、3個のドラゴンの卵を孵すことに成功し、ドラゴンの種を甦らせた。この物語のドラゴンは、鱗があり、炎を吐く、動物程度の知性を持つ爬虫類である。ドラゴンには前足に蝙蝠のような皮の翼がある。氷と炎の歌の挿絵では4本の足と、独立した翼が描かれているが、作者のジョージ・R・R・マーティンはこれらの絵が不正確であると繰り返し強調している。
外部リンク [編集]
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