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ロッコヴィアン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロッコビアン階から転送)
地質時代 - 顕生代[* 1][* 2]
累代 基底年代
Mya[* 3]
顕生代 新生代 第四紀 2.58
新第三紀 23.03
古第三紀 66
中生代 白亜紀 145
ジュラ紀 201.3
三畳紀 251.902
古生代 ペルム紀 298.9
石炭紀 358.9
デボン紀 419.2
シルル紀 443.8
オルドビス紀 485.4
カンブリア紀 541
原生代 2500
太古代[* 4] 4000
冥王代 4600
  1. ^ 基底年代の数値では、この表と本文中の記述では、異なる出典によるため違う場合もある。
  2. ^ 基底年代の更新履歴
  3. ^ 百万年前
  4. ^ 「始生代」の新名称、日本地質学会が2018年7月に改訂

ロッコヴィアン: Lochkovian)は、国際層序委員会によって定められた地質学用語である、地質時代名の一つ。4億1920万年前(誤差320万年)から4億1080万年前(誤差280万年)にあたる、前期デボン紀を三分した前期、すなわちデボン紀の最初の期である。前期デボン紀中期プラギアンに続く[1]。日本語ではロホコフ期とも呼ばれる[2]

名称とGSSP

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名称はチェコの Lochkov にちなむ。国際標準模式層断面及び地点(GSSP)はチェコの首都プラハから南西に約35キロメートルのSuchomasty近くのクロンク英語版に位置しており、1972年に国際層序委員会が公式に批准した。クロンクには外洋や干潟の海水・河川環境の泥水による堆積物で構成された石灰岩が分布し、指標とされるフデイシMonograptus uniformis uniformis をはじめとする数多くの化石が産出している。また、このシルル紀 - デボン紀境界の上の部層からは三葉虫Warburgella rugulosa rugosa が産出する[3]

生物

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ロッコヴィアン期が属するデボン紀は魚の時代とも呼ばれる時代であり、現代では既に絶滅している魚類の綱の化石が産出している。カナダではノースウエスト準州マッケンジー山脈南部から胸鰭棘と骨盤鰭棘を持たない棘魚綱のパウキカントゥス・ヴァネルスティ (Paucicanthus vanelsti)が産出し[4]中華人民共和国雲南省からはフィロレピス目英語版に属する新属の板皮類ガヴァナスピスが産出している。特に後者は基盤的なフィロレピス目と派生的なフィロレピス目の特徴をモザイク状に示しており、フィロレピス目の形態進化史や古生物地理において重要な意義を持つ。系統解析ではガヴァナスピスはフィロレピス目内でフィロレピス科英語版の姉妹群をなしており、フィロレピス科が当時の中国に起源を持つか、あるいは彼らの共通祖先が中国とゴンドワナ大陸の両方に生息していたことを示唆する。いずれにせよ、ロッコヴィアン期の中国とゴンドワナ大陸は互いに近くに位置していたこととなる[5]

日本において

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岩手県大船渡市日頃市地域に分布する南部北上帯の大野層の珪長質凝灰岩からは、四国を中心に西南日本に分布する黒瀬川帯の Tlecerina - Glanta 群集と対比される放散虫化石群集が産出し、ロッコヴィアン階あるいはプラギアン階からエムシアン階に対比されている[6]。同県釜石市に分布する千丈ヶ滝層からも放散虫化石が産出している。この放散虫の主棘の稜は、根元にしか存在しないか途中で分岐・再癒合しているシルル紀の放散虫の物と違い、先端まで分岐しない明瞭な稜を示す。この特徴はロッコヴィアン期からエムシアン期にかけて出現したと推測され、千丈ヶ滝層の上部はロッコヴィアン以降エムシアン以前に相当するとされている[7]

従来はオルドビス系とされていた岐阜県高山市上宝村の吉城層もまた、放散虫化石群集に基づいて上部シルル系プリドリ統からエムシアン階と考えられると指摘された[8]。同じく上宝村の福地層はコノドント貝虫の化石からロッコヴィアン階からエムシアン階に位置付けられている。下部福地層は主にワッケストーンからフロートストーンまでの炭酸塩岩からなり、サンゴや層孔虫の骨格を多く含み、ウミユリ腕足動物の破片も確認できる[9]

脚注

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出典

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  1. ^ INTERNATIONAL CHRONOSTRATIGRAPHIC CHART(国際年代層序表)”. 日本地質学会. 2020年4月20日閲覧。
  2. ^ 鈴木寿志「地質年代区分2012」『日本地質学会第120年学術大会講演要旨(2013仙台)』、日本地質学会、2013年、doi:10.14863/geosocabst.2013.0_629 閲覧は自由
  3. ^ The Editors of Encyclopaedia Britannica. “Lochkovian Stage”. ブリタニカ百科事典. 2020年4月20日閲覧。
  4. ^ Gavin F Hanke (2002). Paucicanthus vanelsti gen. et sp. nov., an Early Devonian (Lochkovian) acanthodian that lacks paired fin-spines”. Canadian Journal of Earth Sciences 39 (7): 1071. doi:10.1139/e02-023. https://doi.org/10.1139/e02-023. 
  5. ^ Vincent Dupret; Min Zhu (2008). “The earliest phyllolepid (Placodermi, Arthrodira) from the Late Lochkovian (Early Devonian) of Yunnan (South China)”. Geological Magazine 145 (2): 257. doi:10.1017/S0016756807004207. 
  6. ^ 栗原敏之、佐藤義孝、田沢純一「南部北上帯日頃市地域の大野層から産出した前期デボン紀放散虫化石」『地質学雑誌』第111巻第3号、日本地質学会、187頁、doi:10.5575/geosoc.111.187 閲覧は自由
  7. ^ 鈴木紀毅、高橋大樹、川村寿郎「釜石地域の中部古生界から産出するシルル紀後期・デボン紀前期放散虫化石」『地質学雑誌』第102巻第9号、日本地質学会、1996年9月15日、102頁、doi:10.5575/geosoc.102.824 閲覧は自由
  8. ^ 栗原敏之「飛騨外縁帯福地地域の"吉城層"から前期デボン紀Palaeoscenidiidae科放散虫化石の発見とその生層序学的意義」『地質学雑誌』第109巻第11号、日本地質学会、2003年11月15日、doi:10.5575/geosoc.109.635 閲覧は自由
  9. ^ 川村寿郎、三井類、足立奈津子「飛騨外縁帯福地地域の前期デボン紀炭酸塩岩相の再検討」『日本地質学会学術大会講演要旨 第115年学術大会(2008秋田)』、日本地質学会、2008年、doi:10.14863/geosocabst.2008.0.143.0 閲覧は自由