パウンド・フォー・パウンド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

パウンド・フォー・パウンド: Pound for pound)は、異なる階級の選手を比較、対比する方法を指し示すものとして1950年代初期に『リング』誌の初代編集長ナット・フライシャーによって造られた用語であり、その後、階級や王座認定団体、王座そのものが増えると、単に選手の優れた才能や能力を説明するために用いられるようになった[1]ボクシング総合格闘技キックボクシングなどの格闘技の世界で、仮に体重差がなかった場合に最強と目されるチャンピオンに与えられる称号、もしくはそのような選手を考える思考法を指し、PFPまたはP4Pと略される。

一般的な定義[編集]

多くの格闘技は体重別階級が設定されており、自分の体重とほぼ同じ対戦相手と試合をし、優劣を競う。特にボクシングの階級は全部で17階級もあり、最軽量級は105ポンド以下のミニマム級で、最重量級は200ポンド以上のヘビー級となっている。基本的にスピードは軽いほうが有利であるが、技の威力は重いほうが格段に強く、体重の軽重によって必要とされる技術は異なっており、本来は比較ができないが、技量が同程度であれば、体重が重い方が勝つ可能性が高い。つまり最重量級のヘビー級またはスーパーヘビー級のチャンピオンが全階級の中で最強ということになる。

しかし、もし体重差がなく、全階級の格闘家が同じ身長・体重で戦った場合誰が一番強いのか。つまり、パウンド・フォー・パウンドとは、体重差がない状態で全階級を通じて、どの格闘家が一番優れているのかを決めるときに用いられる言葉である。最重量級の選手がパウンド・フォー・パウンド最強にはなり難いとされているが、最重量級のヘビー級であるモハメド・アリマイク・タイソンエメリヤーエンコ・ヒョードルなどがパウンド・フォー・パウンド最強の有力候補として頻繁に名前が挙がっているため、その限りではない。

パウンド・フォー・パウンドと呼ばれた選手[編集]

プロボクシング[編集]

元々、この言葉はボクシングの中量級の往年の名王者シュガー・レイ・ロビンソンの強さを称える愛称として生み出された。人々は「シュガー・レイ・ロビンソンこそが階級の壁を越えた最も偉大な王者」であるという想いを、この言葉に込めたのである。

ボクシングでは1980年代は中量級四天王と呼ばれたシュガー・レイ・レナードロベルト・デュラントーマス・ハーンズマービン・ハグラー、1980年代中盤から1990年頃まではマイク・タイソン、1990年代中盤から2004年頃まではロイ・ジョーンズ・ジュニアがパウンド・フォー・パウンド最強と言われていた。

しかし、ロイ・ジョーンズ・ジュニアが衰えた後はフロイド・メイウェザー・ジュニアが、フロイド・メイウェザー・ジュニアが一度引退した後はマニー・パッキャオファン・マヌエル・マルケス、2009年にフロイド・メイウェザー・ジュニアが現役復帰して以降の現在はマニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザー・ジュニア、ファン・マヌエル・マルケスがパウンド・フォー・パウンド最強との呼び声が高い。

歴代最強のパウンド・フォー・パウンドを考えると、1930年代にフェザー級ライト級ウェルター級の3階級の世界王座を同時に保持していたヘンリー・アームストロングなど、昔の選手たちも多く候補に挙がるため、様々な議論が飛び交っている。

総合格闘技[編集]

総合格闘技では、「60億分の1の男」と言われた第2代PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(引退)や、UFCライトヘビー級王者のジョン・ジョーンズ、同ミドル級のアンデウソン・シウバ、同ウェルター級絶対王者のジョルジュ・サンピエール、同ウェルター級、ライト級元王者のBJペン、同フェザー級王者のジョゼ・アルドなどの名前が挙がることが多い。

より厳密な考え方[編集]

格闘技は階級によって競技の性格、そのものが変わるスポーツであると言える。例えば、軽量級選手はおしなべてスピード、手数、スタミナなどに優れており、重量級選手はパワーに優れている。軽量級において有効な戦術が重量級においては効率が悪いこともあれば、その逆もある。そうした点を無視して単純に体重同一時の強さを比べようとしても結局は論者の好みに左右されることが多い。

そこでより厳密な論法として次のような考え方がある。ある選手のパウンド・フォー・パウンドにおける位置付けを考える際、その選手の主戦階級における相対的な優位性を考え、それを数値化する。このような数値を各階級のトップ選手について弾き出し、それらを比較して全階級を通じたランキングを作成するというものである。

例えばロイ・ジョーンズ・ジュニアフロイド・メイウェザー・ジュニアとの間に目で見て分かるスピードの差はほとんど存在しない。しかしスーパーフェザー級スーパーウェルター級で活躍するフロイド・メイウェザー・ジュニアと、ミドル級ヘビー級に渡って活躍してきたロイ・ジョーンズ・ジュニアでは、同じ階級の他の選手と比べた際に相対的なスピードの優位性という点でロイ・ジョーンズ・ジュニアに軍配が上がると言える。これがパウンド・フォー・パウンドの能力評価方法である。

多くの人々がマイク・タイソンをPFP最強だと考えたのは、ヘビー級というパワー重視の階級においてマイク・タイソンが持つスピードの優位性と、高度なコンビネーション技術、ピーカブースタイルによるディフェンス技術によるところが大きい。

脚注[編集]

  1. ^ Michael Woods (2009年4月27日). “Top-5 pound-for-pound boxers of all time” (英語). ESPN. 2012年9月23日閲覧。

外部リンク[編集]