ナシールッディーン・シャー

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ナシールッディーン・シャー
Naseeruddin Shah
Naseeruddin Shah
ナシールッディーン・シャー(2012年)
生年月日 (1950-07-20) 1950年7月20日(73歳)
出生地 インドの旗 インド ウッタル・プラデーシュ州バラバンキ英語版
職業 俳優
ジャンル ヒンディー語映画
配偶者 マナラ・シークリー(離婚)
ラトナー・パータク・シャー英語版(1982年-)
著名な家族 ザミール・ウッディーン・シャー英語版(兄)
ヒーバ・シャー(娘)
イマード・シャー英語版(息子)
ヴィヴァーン・シャー英語版(息子)
 
受賞
ヴェネツィア国際映画祭
男優賞
1984年『渡河英語版
フィルムフェア賞
主演男優賞
1981年『Aakrosh
1982年『Chakra
1984年『Masoom
その他の賞
パドマ・シュリー勲章(1987年)
パドマ・ブーシャン勲章(2003年)
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ナシールッディーン・シャー(Naseeruddin Shah、1950年7月20日 - )は、インド俳優パラレル映画や国際市場で活動しており[1][2]世界映画英語版で最も優秀な俳優の一人とされている。これまでに国家映画賞 主演男優賞フィルムフェア賞 主演男優賞ヴェネツィア国際映画祭 男優賞を受賞しており、映画界への貢献を認められパドマ・シュリー勲章パドマ・ブーシャン勲章を授与されている[3]

生い立ち[編集]

1950年7月20日、ウッタル・プラデーシュ州バラバンキ英語版ナワーブの家に生まれる[4][5]セント・アンセルム・シニア・セカンダリー・スクール英語版セント・ジョゼフ・カレッジ英語版で教育を受け、1971年にアリーガル・ムスリム大学を卒業した。卒業後はデリーに移り、国立演劇学校英語版で演技を学んだ。

兄のザミール・ウッディーン・シャー英語版インド陸軍の軍人(最終階級は中将)で[6]、現役時代にインド陸軍参謀次長英語版(人事・システム担当)を務め、退役後はインド軍法会議英語版の管理委員やアリーガル・ムスリム大学の副学長を歴任した[7][8]

キャリア[編集]

映画[編集]

『ダーティー・ピクチャー』オーディオリリース・イベントに出席するイムラーン・ハーシュミー英語版、ナシールッディーン・シャー、ヴィディヤー・バーラントゥシャール・カプール英語版(2012年)
Maximum』公開イベントに出席するカビール・カウシク英語版、ナシールッディーン・シャー、ネーハー・ドゥピアソーヌー・スードヘイゼル・キーチ英語版(2012年)

1967年に『Aman』でエキストラ出演し、その後は俳優として『Nishant』『Aakrosh』『Sparsh』『真っ赤なスパイス英語版』『Albert Pinto Ko Gussa Kyoon Aata Hai』『ゴアの恋歌英語版』『Bhavni Bhavai』『Junoon』『Mandi』『Mohan Joshi Hazir Ho!』『Katha』『Jaane Bhi Do Yaaro』に出演した。

1980年に出演した『Hum Paanch』をきっかけにヒンディー語映画の主要俳優として活躍するようになり、1982年には『Dil Aakhir Dil Hai』でラキー・グルザール英語版と共演した。1983年にはシャーのキャリアにとって重要な作品となる『Masoom』に出演し[9]、同作は母校のセント・ジョゼフ・カレッジで撮影が行われた。1986年に出演した『Karma』でディリップ・クマールと共演し、その後は『Ijaazat』『Jalwa』『Hero Hiralal』に出演した。1988年に出演したH・R・F・キーティング原作の『ボンベイ大走査線英語版』ではコーデ警部英語版役を演じ、妻のラトナー・パータク・シャー英語版と共演した。また、『Maalamaal』『Game』ではアディティヤ・パンチョリ英語版と共演している。

Ghulami』『Tridev』『Vishwatma』などのマルチスター映画にも出演し、1994年には100本目の出演作となる『Mohra』で悪役を演じ、フィルムフェア賞 悪役賞にノミネートされた。また、同年にはT・V・チャンドラン英語版の『Ponthan Mada』でマラヤーラム語映画デビューし、マンムーティ英語版が演じる農奴と不合理な友情を育む地主役を演じた。1999年に出演した『Sarfarosh』ではアーミル・カーンと共演し[10]、2000年にはナトラム・ゴドセの視点からガンディー暗殺事件を描いた『Hey Ram』でカマル・ハーサンと共演し、マハトマ・ガンディー役を演じた[11]

国際市場にも進出し、2001年にミーラー・ナーイルの『モンスーン・ウェディング』に出演し、2003年にショーン・コネリーと共演した『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』ではネモ船長役を演じた。同年には『マクベス』を翻案した『Maqbool』に出演し、2004年には『Asambhav』でアルジュン・ラームパールプリヤンカー・チョープラーと共演した。2005年に『Iqbal』『The Great New Wonderful』に出演し、アカデミー国際長編映画賞インド代表作品に選出された『Paheli』では妻のラトナー・パータク・シャーと共にナレーションを務めた[12]。2006年に『Yun Hota Toh Kya Hota』で監督デビューし、コーンコナー・セーン・シャルマーパレーシュ・ラーワルイルファーン・カーンアーイシャー・ターキヤーイマード・シャー英語版ラヴィ・バシュワーニー英語版が出演している[13]。2007年に出演したショエーブ・マンスール英語版の『神に誓って英語版』でパキスタン映画英語版デビューした。2008年に出演した『A Wednesday!』ではフィルムフェア賞 主演男優賞にノミネートされた。その後、2009年に『Today's Special』、2011年に『ダーティー・ピクチャー英語版』に出演し、2013年にはアカデミー国際長編映画賞パキスタン代表作品英語版に選出された『Zinda Bhaag』に出演した。2016年に『The Blueberry Hunt』『Waiting』に出演している。2017年には『The Hungry』に出演し、同作は第42回トロント国際映画祭で特別招待作品として上映された[14]。また、ヴィーナー・バクシーの『The Coffin Maker』にも出演したが、同作は劇場公開されず個人観賞用として保管されている[15]

映画以外の活動[編集]

『ゴドーを待ちながら』公演中のナシールッディーン・シャー(2009年)

1977年にトム・アルター英語版ベンジャミン・ギラニ英語版と共同で劇団「モトニー・プロダクション」を立ち上げた。最初の舞台作はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』で、1979年7月29日にプリトヴィー劇場英語版で上演された[16]。1988年にはガーリブの半生を描いたテレビシリーズ『Mirza Ghalib』でガーリブ役を演じ[17]、1989年にはジャワハルラール・ネルーの著作『インドの発見英語版』を原作とした『Bharat Ek Khoj』ではシヴァージー役を演じている[18]。また、1990年代には『Turning Point』の司会者も務めた[19]。また、児童向けオーディオブック『Karadi Tales』のナレーションも務めている[20]

自伝の執筆に関心を持ち、10年間かけて100ページほどの内容を執筆している。シャーは未完成の自伝を友人の歴史家ラーマチャンドラ・グハー英語版に見せたところ、自伝を完成させて出版社に持ち込むように勧められた[21]。完成した自伝は2014年に『And Then One Day』のタイトルで、ハミシュ・ハミルトン社から出版された[22]

私生活[編集]

ナシールッディーン・シャーは19-20歳の時にスレーカ・シークリー英語版の妹で女優のマナラ・シークリー(芸名:パルヴィーン・ムラード)と結婚したが、彼女が15歳年上で離婚歴があり子供もいたことから両親は結婚に反対した[23]。2人の間には娘ヒーバが生まれたものの、間もなく結婚生活は破綻して別居生活が始まった[23]。1970年代にディナ・パータク英語版の娘ラトナー・パータク英語版と出会い恋愛関係に発展し、後に『真っ赤なスパイス』『ボンベイ大走査線』などで共演した[24]。この間に2人は同棲しており、シャーはマナラと離婚するためにマフルの準備を進めていた。1982年に2人は結婚し[25]、同じ年にマナラが死去している[23]。ラトナーとの間には2人の息子(イマード・シャー英語版ヴィヴァーン・シャー英語版)が生まれ、シャー夫妻はヒーバを含めた子供たちと共にムンバイで暮らしている[26]。ヒーバ、イマード、ヴィヴァーンは共に俳優としてヒンディー語映画で活動している[23]

フィルモグラフィー[編集]

ナシールッディーン・シャー、ラトナー・パータク・シャー夫妻(2012年)

受賞歴[編集]

部門 作品名 結果
勲章
1987年 パドマ・シュリー勲章 N/A 受賞
2003年 パドマ・ブーシャン勲章
国家映画賞
1980年 主演男優賞 『Sparsh』 受賞
1985年 『渡河』
2007年 助演男優賞英語版 『Iqbal』
フィルムフェア賞
1980年 助演男優賞英語版 『Junoon』 ノミネート
1981年 主演男優賞 『Aakrosh』 受賞
1982年 Chakra
1983年 Bazaar ノミネート
1984年 Masoom 受賞
助演男優賞 『Katha』 ノミネート
『Mandi』
1985年 主演男優賞 『Sparsh』
1994年 助演男優賞 Sir
1995年 悪役賞 『Mohra』
1996年 助演男優賞 Naajayaz
1997年 悪役賞 Chaahat
1999年 助演男優賞 China Gate
2000年 悪役賞 『Sarfarosh』
2006年 助演男優賞 『Iqbal』
2007年 悪役賞 『クリッシュ 仮面のヒーロー』
2009年 主演男優賞 『A Wednesday!』
2012年 助演男優賞 『ダーティー・ピクチャー』
フィルムフェアOTT賞英語版
2021年 ドラマシリーズ部門助演男優賞 Bandish Bandits ノミネート
ウェブ・オリジナル映画部門主演男優賞 Mee Raqsam
国際インド映画アカデミー賞
2000年 悪役賞 『Sarfarosh』 受賞
2006年 助演男優賞 『Iqbal』 ノミネート
2009年 主演男優賞 『A Wednesday!』
2011年 悪役賞 『Allah Ke Banday』
2012年 助演男優賞 『ダーティー・ピクチャー』
悪役賞
2015年 助演男優賞 『ファニーを探して』
ジー・シネ・アワード
2004年 助演男優賞 3 Deewarein ノミネート
2006年 『Iqbal』
スター・スクリーン・アワード
2006年 助演男優賞英語版 『Iqbal』 受賞
ベンガル映画ジャーナリスト協会賞英語版
1986年 ヒンディー語映画部門主演男優賞英語版 『渡河』 受賞
2006年 ヒンディー語映画部門助演男優賞 『Iqbal』
ヴェネツィア国際映画祭
1984年 男優賞 『渡河』 受賞
アジア太平洋映画賞
2009年 男優賞 『A Wednesday!』 ノミネート
サンギート・ナータク・アカデミー賞英語版
1990年 ヒンディー語・ウルドゥー語演劇部門 N/A 受賞

出典[編集]

  1. ^ Naseeruddin Shah says essential for Muslims to stop feeling persecuted, assert claim on India”. The Indian Express (2017年6月2日). 2017年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月2日閲覧。
  2. ^ Naseeruddin Shah: The Angel of Chaos” (英語). Journal of Indian Cinema (2020年7月20日). 2020年10月26日閲覧。
  3. ^ Padma Awards”. Ministry of Home Affairs, Government of India (2015年). 2015年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月21日閲覧。
  4. ^ Italo Spinelli (2002). Indian Summer: Films, Filmmakers and Stars Between Ray and Bollywood. Edizioni Oliveras. pp. 144. ISBN 9788885982680. オリジナルの7 July 2014時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140707071544/http://books.google.com/books?id=Gq4aAQAAIAAJ 2019年4月6日閲覧。 
  5. ^ Bollywood wishes Naseeruddin Shah on 70th birthday: You continue to inspire us” (英語). The Indian Express (2020年7月20日). 2021年5月7日閲覧。
  6. ^ Former GOC 3 corps in VP race”. Nagaland Page (2017年5月9日). 2017年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月18日閲覧。
  7. ^ People's Vice Presidential Candidate”. State Herald (2017年5月12日). 2017年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月20日閲覧。
  8. ^ High speculation former GOC 3 Corps VP”. Morung Express (2017年5月10日). 2017年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月20日閲覧。
  9. ^ Shekhar Kapur says people wanted him to change Masoom script. Just another copy, retorts Internet” (英語). India Today (2019年8月2日). 2020年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月13日閲覧。
  10. ^ Not returning awards as they mean nothing to me: Naseeruddin Shah”. The Indian Express (2015年11月6日). 2015年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月8日閲覧。
  11. ^ Vetticad, Anna M. M.. “Naseeruddin Shah gets to play Mahatma Gandhi twice” (英語). India Today. 2019年5月17日閲覧。
  12. ^ Pahele is a revelation”. Rediff (2005年6月27日). 2015年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月25日閲覧。
  13. ^ Yun Hota.. the Rediff review”. www.rediff.com. 2018年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月28日閲覧。
  14. ^ The Hungry Trailer: Naseeruddin Shah”. HindustanTimes (2017年8月23日). 2017年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月12日閲覧。
  15. ^ Bakshi, Veena, The Coffin Maker (Drama), Shree Narayan Studios, https://www.imdb.com/title/tt1784654/ 2023年1月27日閲覧。 
  16. ^ “Still waiting, for Mr Godot”. The Indian Express. (1997年8月21日). オリジナルの2008年4月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080424080515/http://www.indianexpress.com/res/web/pIe/ie/daily/19970821/23350783.html 2023年8月19日閲覧。 
  17. ^ Ansari, Shahab (2013年12月4日). “Naseeruddin Shah says he visited parts of Lahore in disguise”. The News International. 2013年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月24日閲覧。
  18. ^ Roychoudhary, Amborish (2013年3月7日). “Being Naseer”. Filmware. オリジナルの2016年3月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160306140436/http://www.filmfare.com/features/being-naseer-2538.html 2015年4月25日閲覧。 
  19. ^ Turning Point makes a comeback with new host and producer”. India Today. 2016年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月9日閲覧。
  20. ^ “Karadi tales”. The Hindu. (2000年6月5日). オリジナルの2015年9月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150903181156/http://www.thehindu.com/thehindu/2000/06/05/stories/13050212.htm 2015年4月25日閲覧。 
  21. ^ 8 things Naseeruddin Shah's autobiography 'Then One Day' tells us about the man – Bollywood News, Firstpost”. Firstpost (2014年9月12日). 2021年1月19日閲覧。
  22. ^ Shah, Naseeruddin (2014). And then one day: A memoir. Hamish Hamilton. pp. 1. ISBN 978-0-670-08764-8 
  23. ^ a b c d The Hidden Family Relation Between Surekha Sikri, Naseeruddin Shah And His First Wife, Parveen Murad”. Bollywood Shaadis (2022年4月19日). 2023年8月18日閲覧。
  24. ^ “Naseeruddin Shah's son falls off train”. The Times of India. (2006年11月24日). オリジナルの2013年12月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131212194650/http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2006-11-24/india/27821864_1_nair-hospital-local-train-imaad 2021年11月17日閲覧。 
  25. ^ “Does Naseeruddin Shah's first marriage and divorce scare his second wife Ratna?”. Stardust. (2013年7月29日). オリジナルの2014年9月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140915030220/http://www.magnamags.com/stardust/blast-from-the-past/does-naseeruddin-shah-s-first-marriage-and-divorce-scare-his-second-wife-ratna/869 2014年9月14日閲覧。 
  26. ^ “Lipstick Under My Burkha actor Ratna Pathak Shah shares a moment in time from when she dated Naseeruddin Shah”. The Indian Express. (2017年7月30日). オリジナルの2018年1月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180119235420/http://indianexpress.com/article/entertainment/bollywood/lipstick-under-my-burkha-actor-ratna-pathak-shah-shares-a-moment-in-time-from-when-she-dated-naseeruddin-shah-4774143/ 2018年1月19日閲覧。 

外部リンク[編集]