トラベラーズチェック

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アメリカン・エキスプレスのトラベラーズ・チェック

トラベラーズチェック英語:traveler's cheque / traveller's check)とは、旅行や出張など海外渡航の際に、多額の現金を持ち歩かなくても済むように発行される外国旅行者向けの小切手。日本では旅行小切手(りょこうこぎって)ともいう。略してTCまたはT/Cということもあるが、日本国外では "T/C" という表現はあまり使われず、"TC" または "Cheque" が一般的な表現である。

概要[編集]

海外渡航中の現金の盗難・亡失といったリスクを回避する手段として、T/C発行元の保証により紛失時に再発行可能な小切手として用いられるものである。基本的に渡航前に所要金額分のT/Cを購入し、行先国で銀行や両替商、ホテルのフロント・キャッシャーにおいて額面の現金へ換金する。所定の手続を踏んでおけば紛失や盗難などの亡失時にリファンド(refund, 再発行)が受けられるのが最大の特徴である。

1772年に London Credit Exchange Company がヨーロッパの90の主要都市で通用する最初のトラベラーズチェックを発行した。19世紀末にトーマス・クック社が現在と同様のものを発行し、ヨーロッパ域内であっても行先国によって治安環境が異なる旅行者の不安を払拭させることに成功した。その後、アメリカン・エキスプレスが参入。同社は当時既に旅行事業の拠点を世界中に有しており、その後開始されたクレジットカード(アメリカン・エキスプレス・カード)サービスによる金融部門の発展で、現在、T/C取扱高において首位となっている。

T/C購入・売却の際の外国為替相場における為替レートは、外貨預金の預け出しや外貨建海外送金に使われる「対顧客電信相場」(TTS/TTB) が適用される。外貨現金への両替には、対顧客相場に "Cash handling charge" を加味した「現金売/買 (Cash, selling/buying) レート」が適用されて1通貨当たりの交換比率が劣ることから、これがトラベラーズチェックのもうひとつのメリットとなる。また、日本円とオーストラリア・ドル間は対顧客相場と現金建てのレートが10%前後(三菱東京UFJ銀行の場合)乖離しているため、T/Cの発行手数料を加味しても現金両替と比べて5%程度は得となる。これをエピソードにしたアメリカン・エキスプレス日本支社の広告(テレビCMなど)が2003年に展開された。

日本では20世紀後半以降海外旅行の一般化により、T/Cは馴染みのものとなっていったが、21世紀になり、国際キャッシュカード(都市銀行は撤退したが、シティバンク銀行などは提供してる)やクレジットカードの普及に伴い、日本国内での販売はすべて終了した。代替手段として、国際キャッシュカード・クレジットカード(海外キャッシング枠が必要)・デビットカードなどからATMで現金を引き出せる。国際キャッシュカードにはキャッシュパスポートなどプリペイド方式もある。

昭和30~40年代には地方銀行の共通商品として国内旅行用トラベラーズチェック(商品名:OKチェック)が販売されていた。

購入[編集]

2014年3月、日本国内での販売はすべて終了した。過去の運用は以下のとおり。

日本では外国為替業務を取り扱う銀行(ゆうちょ銀行直営店と同行の代理業を受託した郵便局の一部を含む)、外貨両替店で購入できる。地方銀行や信用金庫では取扱量の観点などから自前では取り扱わず、香港上海銀行東京支店と提携した宅配両替サービス「マネーポート」(現在は取り扱い終了)へ取次ぎの形で受託している形態が多い。

購入の際は外国為替相場のうち、外国送金にも適用されるTTS(Telegraphic Transfer Selling rate, 対顧客電信売り)レートになる。外貨現金を購入する際はCash Sellingというレートが適用されるが、TTSはCash Sellingよりも有利な交換レートになっている。詳細は為替レートを参照。

一般的に購入の際に1-3%ほどの発行手数料がかかる。日本の税制においては、外国への支払手段にかかる手数料は消費税非課税[1]なので、トラベラーズチェックの発行手数料に消費税は課せられない。

日本円建てのトラベラーズチェックを購入する際は、日本円の額面金額プラス1-3%の発行手数料(販売する金融機関により異なる)を支払い、現地で使用する時に、日本円のトラベラーズチェックと現地通貨の交換レートが適用されて両替することになる。現地で利用する際の為替リスクを引き受けることにはなるが、渡航する国のトラベラーズチェックがない場合は日本円の現金→アメリカドルのトラベラーズチェック→現地通貨の現金という二重の両替の手間と為替の損を考えれば有効ともいえる。ただし、日本円のトラベラーズチェックは東南アジアの一部の国などや、都市部以外では使用できない場合もある。逆にアメリカドルのトラベラーズチェックはおおむね世界中どこでも通用する。

署名[編集]

トラベラーズチェックには所有者の署名(オリジナルサイン、またはホルダーズサイン)欄と使用時の署名(カウンターサイン)欄の2か所の署名欄がある。購入後すぐに全ての小切手にホルダーズサインをしなくてはならない。使用時に相手の面前でカウンターサインをし、両者の一致によって小切手としての効力を発するほか、ホルダーズサインがないトラベラーズチェックについては亡失時の再発行も行われない。使用時に身元確認のためパスポートを必要とする場合もあるのでパスポートの署名と一致していることが望ましい。

なお、誤って使用時署名欄に予めサインをしても、使用時に所有者署名欄にサインをするようにすれば、単に「使用時」と「所有者」の欄署名順が入れ替わるだけのことで、問題なく使える場合が多い。ただし所有者署名欄にまでサインをすると、#換金・使用にある「カウンターサインまで事前にしてしまった」状態となる。

換金・使用[編集]

使用する際は、必ず相手の面前でカウンターサインをしなくてはならない。カウンターサインがない限り小切手として有効ではないが、逆に「面倒だから」とカウンターサインまで事前にしてしまうと、盗難・亡失の場合現金をなくしたのと同じで補償が受けられなくなることがある。また、正当な所有者かどうか疑われて再度カウンターサインを面前でさせられることになる。パスポートなどの身分証明書の提示や、滞在ホテル名、自宅住所などを記載させることもある。

アメリカオーストラリアなどにおいては、一般に外国人旅行者がよく利用する施設、例えばホテル、空港、土産物店、有名百貨店などでは、現金化できたり、できなかったりする。一般の店舗では通常は拒否される。ただし、年々、取り扱いが悪くなっており、現金化できない場合は銀行で換金する必要がある。釣り銭が発生する場合は現金で渡される。

ヨーロッパにおいては、一般にアメリカ以上に取り扱いが悪く、銀行においてすら、現金化のサービスを行っていない場合がある。

その他の国・地域では、事前に銀行や両替所で現地通貨に両替をしておかなくてはならない。現地通貨への交換レートはトラベラーズチェックを購入した時と同様に同じ通貨の現金の交換レートよりも有利であるが、トラベラーズチェックを現地通貨に両替する場合は、提携金融機関を除き、手数料がかかる場合がある。アメリカン・エキスプレス発行のトラベラーズチェック提携銀行に持参すれば、手数料無料もしくは比較的安い手数料で換金できる。

開発途上国や中南米の銀行においては、トラベラーズチェックの換金が特定のブランドしか受け付けていない場合がしばしば見受けられる。

額面と発行会社[編集]

全ての国の通貨でトラベラーズチェックが発行されているわけではなく、以下の通貨のみで販売されている。銀行小切手のように任意の金額ではなく、商品券債券のように額面単位が決められており(USドルでいえば50ドル、100ドル、500ドルなど)、それを組み合わせて購入し、使用する。

クレジットカードの国際ブランドとして外国為替決済を引き受けているアメリカン・エキスプレスVISAマスターカードブランドによるものである。アメリカン・エキスプレスは自社で発行を行い、VISA・MasterCardブランドについてはクレジットカードと同様に、各国の金融機関が提携のうえ、発行・販売している。

世界最初のトラベラーズチェックを発行したトーマス・クック・グループは、1980年代に金融業務をミッドランド銀行香港上海銀行の前身)へ売却し、その後トラベレックス社へ譲渡している。そのトラベレックスもThomasCook-MasterCardトラベラーズチェックの発行を終了しており、日本国内のトラベレックスジャパンでは、現在アメリカン・エキスプレスのトラベラーズチェックを販売している。

主な発行通貨[編集]

流通がきわめて少数であるもの[編集]

自国通貨建てのT/Cが現地銀行から発行されており、その在外支店(海外支店)で購入できるものがあったが、当該国でも商業的な流通性は少なく、銀行でしか換金できない。次のものは既に発行を取りやめている。

日本で購入できたブランド[編集]

アメリカン・エキスプレスが2014年3月31日で販売を終了したのを最後に、日本でのトラベラーズチェックの購入はできなくなった。

アメリカン・エキスプレス[2]

2013年7月31日をもって、三井住友銀行はトラベラーズチェックの販売を終了(店頭での販売は3月31日をもって終了)。

2014年3月31日をもって、アメリカン・エキスプレスは日本での販売をすべて終了した[10]

VISA
  • 1982年頃からVISA Internationalと住友銀行(現・三井住友銀行)の提携により、同行子会社の住銀インターナショナル・ビジネス・サービス(2001年にSMBCインターナショナル・ビジネス・サービスへ改称)によって発行開始。住友銀行時代は券面に「(井桁の行章)Sumitomo Bank」2001年以降は「SMBC International Bussiness Service,Inc.」表記。2008年でVISAブランドは販売終了。
  • 東京銀行 - 東京三菱銀行発足時に旧三菱銀行のMasterCardブランドへ一本化となり発行終了。券面に「BANK OF TOKYO」表記
三菱東京UFJ-MasterCard
  • 旧・三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)が1980年代に発行開始。券面表記は「(スリーダイヤの行章)Mitsubishi Bank」→「The Bank of Tokyo-Mitsubishi」→「The Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ」。2008年頃まで三菱東京UFJ銀行にて販売が行われた。
  • 2013年現在、アメリカのシティバンク銀行では、MasterCard のトラベラーズチェックは、ドル建てからドル紙幣への換金は、手数料なしで換金するが、アメリカン・エキスプレスとは異なり認証できないという理由から、$100までの制限となっている。アメリカのバンク・オブ・アメリカでは、$250までは手数料なしで換金できるが、それ以上換金するには口座開設(旅行客でも可能)が必要である。
ThomasCook-MasterCard(2006年までに販売終了)
その他

換金手数料[編集]

  • アメリカ・カナダ:金融機関ごとに異なるが3%以下が多い。一部のアメリカン・エキスプレス社との提携銀行では手数料無料になる場合もある。
  • ユーロ圏:国や金融機関ごとに異なる。アメリカン・エキスプレス社との提携銀行では2-5%のところが多い。小規模の両替商では、手数料が割高になることが多い。
  • イギリス:金融機関ごとに異なるが、アメリカン・エキスプレス社との提携銀行では1-3%が多い。
  • オーストラリア:金融機関ごとに異なるが、大手の銀行では一律7-8豪ドルのところが多い。
  • 中国:0.75%
  • タイ:1枚につき33バーツ。高額なT/C換金のほうが有利なレートとなる。
  • 台湾:金融機関ごとに異なるが、最低200台湾ドルが多い。通貨や換金金額によっても異なっており、低額、米ドル以外のT/C換金だと手数料が割高になることが多い。

資金洗浄防止のため、ほとんどの金融機関で、1日の換金上限額を設けている。

売却[編集]

旅行後使い残している時は、外国為替取扱金融機関・ゆうちょ銀行(トラベラーズチェック取扱窓口)・両替商で売却して日本円の現金に戻すことができる。売却は購入したところでなくてもよいが、ゆうちょ銀行などではVISAやMasterCardブランドのT/Cは受け入れていない場合もある。売却の際の交換レートは原則としてTTBレートが適用される。購入時と同様に外貨現金の売却レートCash Buyingよりも有利である。ただし、トラベラーズチェック・現金とも売却レートは購入レートよりも低いので、よほど短期間に為替レートの大幅な変動がない限り、通常はいくらか損をすることになる。トラベラーズチェックには有効期限がないので、使い残してもそのまま次の旅行のために保管しておく、あるいはトラベラーズチェックによる外貨預金の預入を取扱っている銀行もあるので、それに充てる、という選択もある。

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]